アニメ延期の期間で絵が修正されればいいんですが
「起きなさい、イレギュ……木下カイト」
ノイントがカイトの肩を掴み揺すりながら話しかける。
だが、カイトは目を覚まさない。
「木下カイト、起きなさい。……全く。主もこの者を連れ去ったと思えば長い間帰還されなかったですし……帰還なされたと思えばまたどこかへ行ってしまいますし……」
ノイントは再度カイトの肩を揺すり語りかける。
「……木下カイト、起きなさい。目を覚まさない場合こちらも手があります。」
しかし起きない。
「……成程。ならば仕方ないですね。ふんっ!」
そう言ってノイントはカイトの鳩尾に踵を落とす。結構な威力だ。もしかすると、案外カイトとの戦いでエヒトにいい格好を見せられなかった事を気にしていたのかもしれない。
「っ、げっほ、ぇほっけほっ! んっ……はぁ、あー……おはようございます、ノイント。 えっと……」
「質問です。意識は明瞭ですか?」
「はい?まぁ、一応。ぼやける様な気分ではありませんよ」
「なら良いです。第二の質問です。意識を失う前の事を思い出せますか?」
「勿論。エヒトルジュエ様が……」
「(自らの真名まで教えてるとは。余程、主はこの者がお気に入りなのですね)」
ノイントが思考を回していると、言葉に詰まったカイトが頭を抱え何かを呟き始めた。それを不審に思ったノイントは直ぐにカイトを始末出来るように意識を鋭くさせる。
「どうかしましたか?まさか記憶が無いということはありませんね?」
「いえ、エヒトルジュエ様に
「(成程。木下カイトは自ら神の使徒となった、そういう事に書き変わっているのですね。それにしては身体は目が黄金に変わっている事以外全くと言っていいほど変化していませんが……)」
「────ノイント、質問です。
「……え?」
「いえ、ですから────」
「二度も言わなくて大丈夫です。えっと、それは僕、や私、などの一人称の事ですか?」
「はい」
「……、(自己のアイデンティティの消失、ですか? 随分と厄介な。下手したらエピソード記憶そのものが消えている可能性もありますね)」
「あの、ノイント? もしかして木下カイトは某、とか珍、とか 〜ってカイトはカイトは思ってみたり! とか言う感じの人間だったのですか……!?」
恐る恐る、といった様でカイトはノイントに少し怯えたような目線を送る。ノイントからすれば(誰だコイツ)と思わず思ってしまうような【神域】を攻略している時のカイトからは考えられない姿である。
「い、いえ、貴方はいたって一般的な一人称でしたよ。俺、と自分の事を呼んでましたね」
態度は俺様系だった、という事は、ノイントは胸の内に閉まっておいた。
「そうですか。……それは良かった」
心底ほっとした様子でカイトは深く息を吐いた。
「(なんだか違和感がとてつもないですね。このようなしおらしい態度なら好感が持て────)っと、忘れるところでした。そうですね……昨日食べたモノは言えますか?」
「ここ一週間程は魔物の肉しか食べていなかったのですが」
「あぁ、すみません。それは考慮していませんでした。えーっと、勇者の仲間達の顔と名前は思い出せますか?」
「え? はぁ、今から全員の名前を述べることくらいは容易ですが……それが何か?」
「いえ、もう大丈夫です。(記憶は問題ないようですね。つまりおかしくなっている原因は木下カイトを無理矢理性格を変化させて神の使徒という器に押し込めた弊害ですか。イレギュラーの元の精神と主の駒としての『こうあれ』という制約が擦れ合った部分が異常をきたしているようですね)」
そこで、話す事も無くなり、暫し静寂が訪れる。
カイトもノイントも、独りを特に忌むものだとは考えて無い為、双方口を開くことは無い。ノイントはカイトが"神の使徒"となった事で少しは見る目が変化しているが、完全な安全性を確認した訳では無い為、そうフレンドリーに接する気が無いという理由だ。それに対し、カイトは『特に必要が無いから』という考えの元である。深淵に堕ちた時から生来の女と話す時は極端に挙動不審となる、という性質は、周りのありとあらゆる存在は己を害する存在という環境の仕業で粉微塵に粉砕されたが、代わりに極端な程の効率主義となってしまった。自らの愉悦の為にはあらゆる消費を惜しまない、という快楽主義者となる歪んだ性質も追加されて。
それから幾分が経ったところでどこからかエヒトが現れた。
「……ふむ、その様子だと現状の把握程度は終わったところか?」
「主!」
「エヒトルジュエ様!」
二人はエヒトに膝をつき、恭しく頭を垂れる。
「ク、フハハッ!フハハハハハハハハハハ!!」
「どうかいたしましたか?
突然高笑いをあげたエヒトに対して、二人は疑問の表情を浮かべる。
「いや、なに、ここまで悦を感じたのは"解放者"の思惑を尽く叩き潰した以来だと思ってな。態々
「???」
理解できない、とばかりにカイトは疑問の表情をさらに深める。それに対してノイントはエヒトの言葉に少しであるが苦悶の表情を浮かべた。
「あぁ、無駄な話であったな。ところでカイト、既にステータスプレートは確認したか?」
「いえ、先程エヒトルジュエ様が仰っていたように俺の現状までをノイントと確認していただけなのでステータスプレートは確認しておりません」
「そうか。なら今見ろ。
「是」
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木下カイト
17歳
男
レベル : ???
天職 : 操縦師
筋力 : 16320
体力 : 19300
耐性 : 16320
敏捷 : 23650
魔力 : 19920
魔耐 : 19920
技能 : 廻操[+現象操作][+法則操作]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作][+効率上昇][+魔素吸収][+身体強化][+部分強化][+集中強化]・胃酸強化・纏雷[+雷耐性][+出力増大]・威圧・迷彩・先読[+投影]・威圧・遠見・気配感知[+特定感知]・魔力感知[+特定感知]・咆哮[+恐慌付与]・風纏・水流操作・自動再生[+水贄]・火炎放射・全属性耐性・分解能力・複合魔法・熱源感知[+特定感知]・気配遮断[+幻踏]・神眼[+千里眼][+遠見][+看破][+追憶][+透視][+魔力視][+赤外線視][+魅了]・剛力・毒耐性・麻痺耐性・剛腕・天歩[+空力][+縮地][+豪脚][+瞬光]・高速魔力回復[+魔素集束]・魔力変換[+体力変換][+治癒力変換][+衝撃変換]・加速[+効率上昇Ⅱ]・限界突破[+覇潰]・結応[+侵食]・言語理解
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「これは……」
「ふむ、思っていたより化け物じみているな」
「主よ!これはどういう事でしょうか」
ノイントは理解出来ないのだろう。何故ここまで爆発的にステータスが上がっているのか。何故ここまでの量の技能を手に入れているのか。
「なに、此奴が意識を失っている内に神獣の肉を食わせ、双大剣術以外の使徒としての力を付与しただけだ。何故か身体の変容は不可能であったがな」
そこで、エヒトは言葉を区切りカイトの方へ向き直る。
「だからカイトには魔力炉が無い。持ち前の魔力だけでなんとかするんだな」
「"神眼"を与えて下さっただけで充分です。"解放者"達の迷宮を全て制覇してみせましょう」
「理解しているな。フリードとやらが先に迷宮攻略に乗り出している。お前も奴のように我の箱庭を守る為尽力するのだぞ?」
「この身は既にエヒトルジュエ様のモノです」
その解答に満足したのか、エヒトは愉悦の笑みを浮かべ、ゲートを開く。地上───本来のカイトが渇望して止まなかった通常世界への扉である。
「頭に知識は入っているだろう」
「是。全ての迷宮の位置は把握してます」
「なら良い。多少の自由は認める。
「仰せのままに」
そう言って、カイトはゲートに飛び……こもうとしたが、それをエヒトが呼び止めた。
「御用でしょうか?」
「あぁ、餞別だ」
そう言ってエヒトは小さな何かを投げ渡す。
「……指輪? でしょうか」
「そうだ。空間魔法が付与されている特別製のな。奴らはそれを"宝物庫"と呼んでいた」
「"宝物庫"……。"解放者"のものですね? 」
「その通りだ。中身も一応入っているから自由に使うといい。魔力を込めれば物体の出し入れが出来るだろう」
「感謝しかありません。では、行ってまいります」
「励めよ」
「御心のままに」
そう言って今度こそカイトはゲートに飛び込んだ。
残ったのはエヒトとノイント。
ノイントは、恐る恐るといった様子でエヒトに話しかける。
「主よ、木下カイトにあそこまでの力を与えるのは不味かったのでは無いでしょうか。それに、主が仰っていた『態々我が動いた』という言葉の真意は……」
「あぁ、洗脳が解ける、という意味ならば不味かったであろうな。奴は精神のみを見ればとんでもない化け物だ。何せ、我の干渉を何度も弾くような奴なのだからな。矛盾も何もかも一切合切を無視して己の為に全てを使い切るような奴だ。今も、一見お前達"神の使徒"のような感じだが、本質は欠片も変わってないだろう」
「ならば!」
「
「……主がそう仰るのであれば」
ありふれ零でミレディが本気での戦闘は残り一回しか出来ないとか言ってたんですけど……これはゴーレムの強化度合いをとんでもないことにしなければいけないのかな?あとありふれ零読んでると全ての敵に対して「ハジメなら二秒で殺せる」って考えてしまう……これは完全に毒されてますね
加筆しましたー
"宝物庫"無いと色々困るので追加しました。