非戦闘職業で世界最強   作:むらやん

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短めです。


夢と希望

夢を見ていた。

夢の中では、ハジメは金髪の美少女と、うさ耳を生やした水色がかった白髪の美少女、そして黒い髪の妙齢の美女を侍らせていた。俺の傍には誰もいない。

そのハジメは、白い髪に眼帯、左手には義手を付けて巨大な銃を握っている。

 

そんなハジメと、俺は殺し合いをしていた。

 

 

 

目を開けた途端、

白い、輝いた空間に俺はいた。

何も無い空間だ。

夢から覚めた筈なのに、まだ夢の中にいるような、気持ち悪い気分がある。

その時だった。

 

「おはよう、木下カイト」

「……は?」

 

これまでに見たことがないほどの美貌を備えた"ソレ"が突然現れ話掛けてきた。

 

「おっと、未だ事態が理解出来ないか。それも仕方ない、まだ頭がこんがらがっているだろうしな」

 

何だこの前の存在は、こんなものこの世界にいていいのか?

 

"ソレ"は中性的な見た目だった。

"ソレ"はこの世を全て等しく無価値だと考えているような気持ち悪い気配を纏っていた。

"ソレ"はまさに超越者だった。

 

他人事のような考えが浮かぶ程に"ソレ"が纏うものは人間離れしていた。

まるで神のように。

そう、神。

 

「……エヒト……?」

「やっと理解したか」

「な……なんで……そんな存在が俺に……行くのなら天之河……勇者のところじゃねぇのかよ……」

「ふむ、確かにそう思うのは当然かもしれない。だが生憎我はあんな下らない者に興味は無くてな。だが、お前の異常性には興味が湧いた。……お前は誰だ?」

「は?」

 

突然お前は誰だと言われても困る。

俺は俺だし、名は木下カイトだ。

一般的な父と母に育てられ、二歳下の妹がいる。それだけだ。

なのにお前は誰だとは一体どういう事なのか。

 

「あぁ、説明が足りなかったか。そうだな、そもそも、私はお前を召喚していないのだ。」

「────」

 

突然の事にカイトは声もでない。

 

「一人多いんだよ、我が召喚したはずの人数より。まぁ、それはそんなこともあるかと放っておいたのだ。だが、お前の天職の"操縦師"、あれはそもそもお前のような使い方が出来る職業ではない。言外に言われただろう?馬車を乗り回すだけの職業だと」

「じゃあ……俺は一体なんなんだ」

「それが分からないからお前と接触したのだ」

「じゃあっ!なんで────」

 

突如、空間がグラグラと揺れ、ヒビが入る。

 

「おっと、もう時間が来てしまったか。この空間はお前の意識が浮上してくる一瞬の間に創ったものでな、そう耐久があるわけじゃないんだ。お前がもし先を知りたいのなら教会の大聖堂に来い。もしかすれば、南雲ハジメといったか、あの少年を救う手立てが見つかるかもしれない」

「ッ!?ハジメは、ハジメは生きてるのか!?」

「それは────」

 

ビシンッ!!と一際大きな音を立ててヒビが広がる。ガラガラと空間が崩れていく。

 

「時間だ。全てを知りたければ大聖堂まで来い」

 

エヒトがそう言い終えた途端、空間が完全に崩壊した。

 

 

 

「……知らない天井だ」

 

王城の自室なので、本当は知ってるのだが、天井をマジマジ見たのは初めてである。やはり、言っておかないといけない気がした。

 

「おう、起きたか」

 

扉の所に立っていたメルド団長がカイトに話かける。

 

「……俺、どんくらい寝てましたか?」

「そうだな、……まだひと月は経ってない筈だ」

「えっ」

(嘘だろ、長くても三日とかだと思ったのに。一ヶ月はやばい、ろくに運動出来る気がしないぞ)

「あー……ちなみに今のは嘘だ。二日も経ってないぞ。そんなに百面相されると申し訳なくなる」

「なんだ……良かった。そういえばメルド団長はずっと居てくれてたんですか?」

「いや、様子を見に来た時にちょうどお前が目を覚ましてな。……それで、気持ちは落ち着いたか?」

「……はい。大分すっきりしました。……それで、一つお願いがあるんですが」

「なんだ?言ってみろ」

 

ここで選択を間違えれば多分大聖堂には行けない。行かなければ何も始まらないんだ。カイトは頭をフル回転させそれっぽい理由を並べる。

 

「南雲を、ハジメを弔いたいんです。無能無能と蔑まれながらもあいつは最後には俺達全員を救ってくれた。……それに、あいつの最後の顔を見たのは俺なんです。あいつは色んな感情がグチャグチャに混じった顔をしてました。でも、決していい感情は汲み取れなかった。だからせめて……せめて、祈りを捧げたいんです。俺を教会に連れて行って下さい」

「……お前は、罪悪感なんか感じなくていいんだぞ。坊主を無為に死なせてしまったのは俺の責任だ。だから、お前はそんな顔をしなくていい」

「いえ、これは俺の自己満足です。前に進んで、残りの皆で絶対に帰る為の儀式みたいなものです。だから、どうかお願いします……!」

 

ダメ押しに、ベッドの上だが擦り付けるように頭を下げる。

 

「おいおい待て待て!別に俺は無理なんて言ってない。だから顔を上げろ」

「じゃあ……?」

「あぁ、話をつけてやる」

「あっ、ありがとうございます!」

 

そうしてやって来たのは召喚された日にも来た玉座の間である。

普通こういうのは何らかの儀式の時のみに使われるものだと思うのだが、いつも王様はここにいるのだろうか?異世界だからそこら辺の機能も付いてたりするのかもしれないな。なんてカイト考えた。

 

「陛下、この者がとある事をしたいと申しまして、教会に行きたいのですが、連絡をとってはくれませんか?」

「何故だ」

「カイト、理由を言ってみろ」

 

連絡用の何かがあるのかと関心していたら、突然話しかけられ体が跳ねる。

 

「は、はいっ。えっと……陛下も俺、じゃなくて、私達のクラスメイト……仲間が奈落に落ちたことを知っていますよね?」

「それでどうした」

「はい、それで落ちた奴は俺が一番仲のいいと思って奴なんです。それで、せめてエヒト様への祈りでアイツを弔ってやりたいと思いまして……」

「そうか」

(そうか?そうかってなんだよ、それだけかよ。ハジメがいなかったら俺達もここにはいなかったのに)

 

認めてもらう為に、カイトはさらに言葉を続ける。

 

「あのっ!ハジメがいたから俺達は無事帰ってこれたわけでして────」

「もうよい、お前の言い分は分かった。教会の方には話を付けてやる。行け」

「えっと……?」

(なんだそれは?いいのか?許可されたって事なのか?)

 

すると膝を付いていたメルド団長が立ち上がり、カイトに言う。

 

「おいカイト、行くんだろ?直ぐに行かねぇと日が暮れるぞ」

「それって……あ、ありがとうございます!」

 

王様に礼をしてから外へ向かう。

 

「善はなんとやらだ。急いで行くぞ」

「はいっ!」

 

 

外に出ると、カイト達がここに来る時に乗った魔法陣が描かれた台座があった。隣には召喚されたときにカイト達を取り囲んでいた内の一人がいた。

 

「話は聞いております。どうぞお乗り下さい」

 

カイトとメルド団長が台座に乗ると法衣を着たその人が詠唱を始める。

 

「彼の者へと至る道、信仰と共に開かれん、"天道"」

 

ガコン、と音を立てて台座……リフトが動き出す。ここからは神山の頂までは少し時間がある。カイトは深く息を吐いた。

 

「そういえば、メルド団長は俺なんかに付いてきて良かったんですか?」

 

カイトがそんな事を聞くとメルド団長は微妙な表情を浮かべた。

 

「……いや、どうだろうな。お前の様子を見てくるだけの筈だったからな、今頃すごい探されてるかもな!」

 

ハッハッハと笑うメルド団長の顔は微妙に引き攣っていた。どうやら、完全に何も考えずにここまで来たらしい。

 

「……大丈夫なんですか?」

「どうだろうな?だが、お小言無しってことにはならんだろうな」

「えぇ……」

 

そこから神山山頂まで、言葉はなかった。

 

 

「ようこそいらっしゃいました。いやはや、お仲間の為に祈りを捧げたいなど、素晴らしい事です。どうぞ、案内致します」

 

教会に着くと、イシュタルがニコニコと笑いながら出てきた。聖職者的に、この行動は良くとられたようだ。

 

「こちらです」

 

案内された先は、カイト達が召喚された場所、大聖堂である。他の場所ならどうしようと思ったが祈りを捧げる間は大聖堂だと考えて間違いでは無かったようだ。

 

「では、我々は外に出ていますので、気の済むまで、エヒト様に祈りを捧げて下さい。ご満足なさったらここから出てきて下されば王城までお帰し致します」

「はい、ありがとうございます」

 

カイトは、まじまじと大聖堂を見渡す。繊細な彫刻が施された柱、エヒトの姿が描かれた壁画、今見ればその壁画からは、得体のしれない気持ち悪さが漂っている。

大聖堂に来たというのに、エヒトからのコンタクトはない。取り敢えずカイトは、台座に向かい、膝を付き、やるはずのなかった祈りを始める。

すると……

 

(来たか)

 

突然頭に響いた声にカイトは体を跳ねさせる。何をすればいいのか分からず取り敢えず頭の中で返事を返す。

 

(エヒトか?)

(ふふ、我を呼び捨てにするとは……頭が高いぞ、少年)

(そんなことはどうでもいい。お前は何を話かけてたんだ)

(これを知れば、もう後には戻られんぞ?)

(それでもだ)

(お前が危険に晒されることにもなる)

(それでもだ)

 

エヒトは、随分と勿体ぶってくる。カイトは少々イラつき始めた。

 

(そう怒るな。つまり、お前は何があっても知りたいというのだな?)

(ああ)

(ならば、至って来い)

(は?)

 

エヒトが訳の分からない事を言ったと思えば、カイトの足元が燦然に輝き出す。召喚されたときの、世界を超えるようなものでは無い。もっと違う、引き摺り込まれるような────

カッと光が強まり、何も見えなくなる。

 

瞼の上からでも分かる程の強烈な光が収まると、カイトは目を開けた。

 

そこは、極彩色に彩られた世界だった。

 

 

 

 

「さぁ、勝手に死んでくれるなよ? 【神域】を制覇して、我の所に辿り着いてこい。楽しませてくれよ?イレギュラー」




エヒトはとあるのエイワスみたいなイメージです。
一章最終話です。二章は少し書き溜めてから投稿するので時間が開くかもです。
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