非戦闘職業で世界最強   作:むらやん

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今回はスーパーガバガバ理論で進行していきます。
「おかしいじゃねぇかオォン?」なんて思っても心に秘めておいて貰えると幸いです。


変貌

(ここまで死を身近に感じたのは初めてだ)

 

 カイトは膝を抱え胎児のように丸まって地面に転がっていた。

 状況は一変せず、寧ろ体に保有する水分の関係で刻一刻と追い詰められ、常に襲いかかってくる渇きと飢餓感に苦しんでいる。

 

(暗い(寒い))

 

 目が覚めてからはイカレそうになるほどの苦痛によって眠れなく、漠然とした死への恐怖に震えることしか出来ない。肌は自分の体じゃないかのように乾き、全身には常に痛みが走っていた。

 

(怖い(痛い))

 

 なんでこんな目にあっているのだろうか。何故こんな目に遭わなければいけないのだろうか。つい一ヶ月程前までは家族と笑い合い、暖かい飯にあり付けていたのに。

 

(一体、俺が何したっていうんだ)

 

 世界を呪う。

 自分は独りだ。助けてくれる人間はなく、どれだけ希望を探しても見つからない。何をすれば良いのか分からない。生きる為の指標が見つからない。

 

(こんな目に遭うくらいなら、死んでおけば良かった)(死にたくない)

 

 相反する気持ちがぶつかり合う。

 

(なんで、なんで、なんで、なんでなんでなんで)

 

 なんでこんな目に。

 

(死にたい(死にたくない)死にたい(死にたくない)死にたくない(死にたい)死にたくない(死にたい)死にたくない)

 

(嫌だ、死にたくない)

 

 カチャカチャと、犬がフローリングを爪で叩くような音が聞こえる。

 

(そうだよ。なんでこんな所で俺が終わらなきゃならないんだ。こんな所で死ぬなんて嫌だ。生きる。生きるんだ)

 

 その音は段々と近づいてくる。

 

(なんで俺がこんな目に遭ってるんだ?誰のせいだ?何がダメだった?)

 

 そういえば、此処に堕ちる前、一匹の魔物が着いてきてはいなかったか。

 

(そうだ。エヒトのせいだ。じゃあ、俺は何が出来る?俺は何をすればこの理不尽に対して満足出来る?)

 

 「────ルルル」

 

 復讐。

 その二文字しかカイトの頭に浮かばなかった。

 

(エヒトは殺す。いつか、絶対に。どんな事をしてでも殺してやる)

 

 いや、そもそもの話、ハジメが墜ちなければ、檜山が白崎にいい格好を魅せようとしなければ、オルクス大迷宮に行かなければ、教会の奴らがいなければ、召喚さえされなければ。

 

 「──ルルルルル」

 

 全てはIFの話であって今から取り返しの着くような物事ではない。だがしかし、カイトはそれでもと思ってしまう。死にたくない故にこの世界で生きる為の指標を、目標を求める。自分が今ここにいる原因を全て壊す事を本懐に据える。カイトが人として、生きながら死んでいるような生への亡者にならない為に。

 だから

 

(教会の奴らも殺そう。それがいい)

(王国の奴らも。いや、トータスにいる目に付いた人間全てだ)

 

 カイトは誓う。

 皆、ひたすらに絶望させた後で

 

( 殺してやる )

 

 「グルルァアアアアアッ!」

 

 先程から聞こえていた奇妙な音の源、飛びかかって来た四つ目狼をゴロゴロと転がって回避する。そのまま立ち上がり四つ目狼を睨む。

 そういえば、こいつも要因の一つではないか。

 ガチン、と何かが組み合わさった様な感覚。体内に燻っていた黒い何かと一つになったような。

 カイトは、目の前の()()に向けて、殺意と生への執着を高める。

 殺せ!殺せ!殺せ!とカイトの中の何かが叫ぶ。

 

 「殺して喰ってやる」

 

 "加速"と小さく呟いて一歩を踏み出す。ゼロから一気にトップスピードへ。

 これを逃せばもう先はない。カイトはそれを確信していた。逃げられでもすればあとは惨めに野垂れ死ぬしか未来はない。今こうやって立ってマトモな思考を巡らせる事が出来るのは大量分泌された脳内麻薬が働き、限界を超えているからだ。故にカイトは目の前の生物を狩る事に全てを掛ける。

 空気を裂き、"加速"により一つの砲弾となったカイトは四つ目狼に突撃する。しかし、幾ら四つ目狼が一匹だけで直接戦闘系固有魔法を保持していないとはいえ、その本質は奈落級の魔物。単調な攻撃など避けられてしまうことが道理。

 

 「グルラァァァァッ!!」

 「犬っころが、大人しく死んでおけよ!」

 

 物凄い速度で突進してきた四つ目狼に、カイトは再度攻撃を仕掛ける。クルリと回るようにしてカイトは蹴りを放つ。"加速"により、視認するのさえ困難な速度の蹴りが四つ目狼目掛けて飛び込むが、それを四つ目狼はまるで()()()()()()()()()()()回避する。

 

 「ッチ、」

 

 カイトは舌打ちを一つ零し、ダンッと脚を地面に叩きつけ"廻操"を発動する。

 だが、

 

(操れるものが……ない?)

 

 カイトは予想だにしていなかった事に一瞬硬直する。少し考えれば分かりそうな事であったが、勿論世界の墓場とも言える此処、深淵に人工物らしい人工物はなく、自然物らしい自然物は存在し得ぬ。人間、予想外の事に直面すれば冷静ではいられなくなるというもの。しかし、今は戦闘中。雑魚でもヘビモスもかくやという強さの奈落級の魔物と対面しているのだ。その隙を逃すような甘い真似はしてくれなかった。

 ドスン、という衝撃が体に走り、カイトはノーバウンドで三、四メートルの距離を飛んだ。

 ドシャァアア!と地面を擦れる程に吹っ飛ばされる。

 

 「ごっ、ごぼっ……」

 

 カイトは粘ついた血を吐き出し、嗚咽する。だが、すぐさま立ち上がり、四つ目狼を見る。もしかすると、肋骨が折れているかも知れない、内臓が損傷したのかもしれない。だが、そんな事は全く気にならなかった。少年漫画やライトノベルには、肺に肋骨が突き刺さっていたり体に風穴が空いていても立ち上がり右の拳を握り締めるような主人公(ヒーロー)がいる。カイトはいままで何故そうしてまで戦えるのか疑問でならなかった。しかし、今なら分かる。それは意志の力だ。目標に向けて全てを掛けれるような気概があれば怪我などなんてことではない。安っぽい主人公補正かもしれない。三流のストーリーかもしれない。だが、カイトは今を生きているのだ。神の視点からの考えなんて養豚場の豚にでも喰わせれば良い。

 

 「絶対に殺してやる」

 「グルルァァァン!」

 

 四つ目狼は笑っていた。口を裂けたように開き、涎を垂れ流してカイトを見ている。

 ゾクンッ、と背中に氷柱を突っ込まれた様な悪寒が走ったと同時に、殺意が増幅する。

 

 「犬が、粋がるなよ」

 「グルルァアアアアアッ!」

 

 挑発を理解出来ていたのかは分からない。だが、それに反応するかのようにして四つ目狼はカイト目掛けて飛びかかって来た。

 

 「それしか脳がねぇのか!」

 

 型も法則も技術もない攻撃。その全てはスルリと躱される。

 

(まただ。またこんな風に避けられる)

 

 どう考えてもおかしい。カイトが攻撃を始める前から四つ目狼は回避行動を始めている。見てから回避しているとは思えない。

 

(クソッ、このままじゃジリ貧だ。少なくとも魔物が人間より耐久がないとは思えない。俺が先に限界が来るのは目に見えてる)

 

 そもそもの所、今のカイトは既に幾つかリミッターがトんでいるのだ。カイトが動けなくなるまでもう時間があるとは思えない。

 

(一か八か……)

 

 瞬間、カイトは全身の力を抜いた。フッと体を弛緩させ、まるで四つ目狼を受け入れるかのようなポーズをとる。

 

 「グルラァァァァッ!!」

 

 好機とばかりに四つ目狼が大口を開けて飛びかかって来る。そこにカイトは自分から四つ目狼の口に腕を突っ込む。四つ目狼はそのまま食いちぎろうと牙を食い込ませる。ギチギチとした音と共に激痛が走る。

 

 「くは、予想通りの行動ありがとう。捕まえたぞ」

 

 突き入れた腕で四つ目狼の体内を引っ掴む。そしてそのままカイトは口が裂けたような笑みを浮かべ、四つ目狼の目に指を刺し入れる。

 

 「グルァアアー!?」

 

 四つ目狼が絶叫する。残り二つの目はしっかりと恐怖の感情を写していた。

 

 「くっは、はははははっ!痛てぇよなぁ?大丈夫だ。すぐ楽にしてやるよ」

 

 カイトはそのままグチュグチュと指を掻き回す。四つ目狼が必死に踠き、腕を噛みちぎって逃げ出そうとする。が、もう遅い。

 

 「ここら辺か?」

 

 眼球の若干下の方、ほんの少しの凹みにカイトは全力で指を押し付ける。そしてそのまま"廻操"を発動させる。指を押し付けた場所は視神経乳頭。細かい制御なんて要らない。ただ神経をズタズタにすること。それを脳まですればいいだけなのだから。

 断末魔の絶叫を上げる四つ目狼。しばらく叫んでいたが、突然、ビクッと痙攣したかと思うとパタリと動かなくなった。

 

 「ははっ、よし、よし!やっとだ!やっと口にモノを入れられる!」

 

 カイトは四つ目狼の目から指を抜き、そこに口付ける。

 純粋な水じゃないとはいえ、水分は水分。それはカイトの体に染み渡り、極上の法悦を与えた。

 

 「あ、はぁぁぁ………」

 

 味は最悪。だが、空腹は最高のスパイスとはよく言ったもので、砂漠の中でキンキンの水を飲んだかのようなシチュエーションの今、細かい事はどうでもよかった。そしてカイトは目蓋から口を離し、そのまま四つ目狼の首筋に噛み付いた。

 

 「あ?硬ぇな」

 

 犬歯を使って皮を引きちぎり、筋肉を傷つける。ゴクリゴクリと大量に溢れてきた血を嚥下する。喉が潤った後は食欲だ。皮の剥ぎ方なんざ適当。とにかく今はなんでもいいから喰いたいと、飢餓感に突き動かされるように喰らい始めた。

 

 「がぁっ、ぐぅあ、肉の方はくそまじぃなおい!」

 

 悪態をつき、何度も吐き戻しながら一心不乱に喰らいつく。強烈な獣臭に硬い筋ばかりの肉を必死に飲み込んでいく。食事というよりは摂取。歯で小さくしてから飲み込む事を繰り返す。

 

(マトモな人間のする食事じゃねぇな。でも、メシが喰えるという事がこんなにも幸せ────)

 

 瞬間。

 

 「がっ、あ?────があ"ア"ア"あ"っ!!」

(身体が砕けるようなコレは……)

 

  突如、全身を激しい痛みが襲った。まるで身体の内側から何かに侵食されているようなおぞましい感覚。その痛みは、時間が経てば経つほど激しくなる。

 

 「ぎ、ィ…あぐァ"ァ"ァ"あ"あ"あ"っ!!」

 

 耐え難い痛み。自分を侵食していく何か。カイトは地面をのたうち回る。四つ目狼に噛まれた腕の痛みなど吹き飛ぶような遥かに激しい痛みだ。

 

 カイトは確信していた。このままじゃ絶対に死ぬと。

 

(どうすれば、どうすればこれから逃れられる!?あ"あ"痛ェ"っ!)

 

 カイトの身体が痛みに合わせて脈動を始めた。ドクンッ、ドクンッと身体全体が脈打つ。至るところからミシッ、メキッという音さえ聞こえてきた。

 たった一つの可能性に掛けてカイトは"廻操"を発動させる。

 "廻操"は、自分が持てるだけの重量の物体を操作する技能だ。そこに、これといった制限はなく、一つの物体として認識していなければ総重量が何トンになろうと操ることが出来る。勿論、その全てに意識を向けて動きをイメージすることが出来れば、の話だが。次に"加速"だが、これは単純な技能だ。ありとあらゆるモノの加速。それだけである。強力な技能に思えるがその分消費魔力が馬鹿にならない。自分の身体を加速させるだけで結構な魔力を喰うのだ。これが概念的なものとなると、ありえないレベルの魔力が必要なる事だろう。

 

(嫌だ。ここまでやってダメだったなんて絶対に嫌だ。生き残ってあのクソ野郎(エヒト)をぶっ殺すんだから)

 

 カイトがしようとしている事は単純だった。"加速"により自分の体内時間を加速し、"廻操"で異常が出た身体の部位を治癒。それだけである。言うのは簡単だがやるとなると異常な精神が必要になる。

 少しでも反応が遅れれば死ぬ。生きたければ痛みに耐えこの地獄を乗り切るしかないのだ。絶叫しながらもカイトは頭を回す。

 血管が破裂する。近くに存在する血小板をかき集め血を止める。肉芽組織を動かし、無理矢理に修復を始めさせる。

 爪が剥がれる。剥がれた爪を皮膚に押し付けこれまた無理矢理に再生させる。

 骨が折れる、皮膚が千切れる、筋肉が断裂する。

 これが同時に何十、何百も発生するのだ。

 壊して、治して、壊して、治す。

 

 それを続けていくと、カイトの身体に変化が現れ始めた。

 まず髪から色が抜け落ちてゆく。許容量を超えた痛みのせいか、莫大な演算のせいか、それとも別の原因か、日本人らしい黒髪がどんどん白くなってゆく。次いで、筋肉や骨格が徐々に太くなり、身体の内側に薄らと赤黒い線が幾本か浮かび始める。

 魔物の肉は人にとって猛毒であり、魔石という特殊な体内器官を持ち、魔力を直接身体に巡らせ驚異的な身体能力を発揮する。体内を巡り変質した魔力は肉や骨にも浸透して頑丈にする。

 この変質した魔力が詠唱も魔法陣も必要としない固有魔法を生み出しているとも考えられているが詳しくは分かっていない。とにかく、この変質した魔力が人間にとって猛毒なのだ。人間の体内を侵食し、内側から細胞を破壊していくのである。

 過去、魔物の肉を喰った者は例外なく身体がボロボロに砕けて死亡したとのことだ。

 カイトもただ魔物の肉を喰っただけなら身体が崩壊して死ぬだけだっただろう。しかし、異常な程の生への執着がそれを許さなかった。壊れた端からすぐに修復していく。その結果、身体が凄まじい速度で強靭になっていく。

 破壊と再生の繰り返し。脈打ちながら肉体が変化していく。その様は、あたかも転生のようだ。

 やがて、脈動が収まり、カイトは倒れ込んだ。その頭髪は真っ白に染まっており、服の下には今は見えないが黒い線が数本程走っている。そして極め付きは全身に刻まれた傷の跡である。魔法的な回復ではなく、あくまで自然治癒の力を底上げしていた為、傷跡が残ったのだった。

 カイトは、薄らと目を開け、めいっぱいに息を吸い込む。

 

 「……生きてる」

 

 手をグーパーと開閉し、自分の意思で身体が動くか確かめる。大丈夫と分かった瞬間、腹の底から歓喜の感情が溢れだした。

 

 「生きてる、俺は、生きてるんだ……ははっ、」

 

 疲れ果てた表情で、自嘲気味に笑うカイト。

 乾きと飢餓感が無くなり、傷も治ったようで久しぶりに何の苦痛も感じない。それどころか妙に身体が軽く、力が全身に漲っている気がする。

 途方もない痛みと莫大な演算の仕業で精神は疲れ果てているものの、ベストコンディションと言ってもいいのではないのだろうか。腕や腹を見ると明らかに筋肉が発達している。身長も、百七十前半だったものが、夢の百八十代にのったのであった。

 

 「……俺の身体はどっなっちまったんだ?それにこの身体に見えるこの黒い線。まるで魔物みてぇじゃねぇか……っとそうだ。こんな時にこそステータスプレートだよな」

 

 =================

 

 木下カイト

 17歳

 男

 レベル : 12

 天職 : 操縦師

 筋力 : 150

 体力 : 300

 耐性 : 150

 敏捷 : 800

 魔力 : 400

 魔耐 : 400

 技能 : 廻操[+現象操作]・魔力操作・胃酸強化・加速・限界突破・結応・言語理解

 

 =================

 

 「……あかんやろ」

 

 驚愕のあまり思わず関西弁でツッコミを入れるカイト。ステータスが総じて急増しており、技能も三つ、派生技能を入れると四つ増えている。しかもステータスプレートの色が真っ黒になっている。文字は白で浮かび上がり、目が痛くてしょうがない。

 

 「魔力操作?」

 

 文字通りなら魔力が操作出来るということだろうか。

 カイトは集中し"魔力操作"とやらを試みる。

 カイトが右手に意識を集中させると、黒い線が再び薄らと浮かび上がった。すると、ゆっくりとぎこちないながらも奇妙な感覚、もとい魔力が移動を始めた。

 

 「おっ、んん?おーん?」

 

 変な声を上げながら試していると、集まってきた魔力が身体を巡り始めた。驚きながら"加速"を試してみるカイト。するとフッと意識が変わる。いつも自分に"加速"を発動したときの感覚だ。

 

 「マジか。詠唱無しでいけるようになっちゃったのか。確か魔力を直接操作出来るのは魔物だけだとか座学の時間に聞いたような……」

 

 なんとカイトは魔物の特性を取得してしまった。カイトは次に"結応"を試す。

 

 「えっと……どうすればいいんだ?これあれだろ?四つ目狼のヤツだろ?四つ目狼ってなんかそれっぽい事してたっけな……結ぶに反応だろ?うーん……」

 

 カイトが思う四つ目狼の特徴はなんか目が多いことと攻撃をひたすら回避してくることだけである。

 

 「もしかして相手の心と繋がるてきなやつか?俺ボッチじゃん。無理じゃん……」

 

 膝と手を地面に付いてカイトは項垂れる。

 

 「おー……地面よ、今はお前だけが心の拠り所だよ……」

 

 カイトはスリスリと地面に顔を擦り付ける。どうやら極限状態から余裕が出来た反動で些か頭がおかしくなっているらしい。

 

 「せめて……こう、無機物と意識を同期させれるみたいな……」

 

 試しにカイトは地面を強く意識する。すると、半径三メートル程の範囲がまるで手に取るかのように理解出来るようになった。

 

 「なんだこれ?」

 

 この場には風も物も何も無いため分かりにくいが、確かに今カイトの意識は半径三メートルの範囲まで巨大化している。

 

 「ふーん、中々面白い技能だな」

 

 次は"胃酸強化"。魔物の肉を喰っても身体が痛くならなかった。以上。

 その次は"廻操"の派生技能[+現象操作]だ。

 字面だけ見ればこれだけで俺TUEEEE出来そうなものだが実態はいかに。

 

 「現象……現象だろ?こう……そうだな」

 

 カイトは手を軽く扇いで弱い風を吹かせる。そこに"現象操作"を発動し、風が台風クラスの暴風になる事をイメージする。

 途端、ゴオオォォォッ!!と風が唸りを上げて渦を巻いた。身体にかかる風圧は相当なもの。思わずカイトは笑っていた。軽く扇いだだけでこれだ。全力全開で使えば一体どんな破壊を齎すのか。

 

 「はははははっ!すげぇ、とんだチートじゃねぇか!これならあの魔物共も殺せるぞ!」

 

 しかし、忘れてはならないのがここはまだスタートラインでもないという事だ。まずこの深淵を抜けてから全ての話が始まる。

 

 「さぁ、あのクソゴミの面をぶん殴ってやる」

 

 意識を高める。ゴゥッ!とカイトを中心に黒い竜巻が巻き起こる。そのすべてが一ミクロンの起伏もない地面へ吸い込まれてゆく。四つ目狼から手に入れた技能"結応"を発動させ、この世界の構造を掴みにかかる。先程の傷を修復させた時以上の演算量。しかしカイトはそんな事はお構い無しとばかりに力を注いでいく。

 

 「俺がここに行き着いたってことは必ず何処かに穴がある筈だ」

 

 意識を広げ、頭を回す。

 

(何処だ、何処にある。俺はこんな所じゃいられねぇ。あのクソゴミを殺す為にも、俺に答えを寄越せ)

 

 

 いつまでそうしていたのか。カイトは突然に目を見開く。

 

 「()()()()

 

 ビシン、パキ、バギン

 

 ガラスが割れるような音と共に真っ黒の空間から光が漏れ出す。カイトはそこに向かって足を進める。

 

 「じゃあな、もう絶対にこんな場所にゃこねぇよ」

 

 人の大きさ程のなった光にカイトは足を踏み入れた。

 

 

 

 

 カイトは、眩しさに目を痛めながらゆっくりと目を開ける。

 

 そこは極彩色に彩られた空間だった。




気がついたら主人公が一般人に対しても手をかけるような奴になってしまった。
プロットって大事なんだね(白目)
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