新入生たちの実力を見る回となっております。
実力者達と主戦事情
「よし。まあひとまず、これぐらいでいいか。」
「オーケー!じゃあ、タケル!打席入って~。」
松宮先輩と小野原先輩が練習を取りしきる。
マウンドに立つのは、玄山先輩。
三遊間に道隆、二塁ベースよりのセカンドの位置に洋介、ファーストに友章。
レフトに伊月、ライトに朔良。
センターには、さっきまでノックを受けていた善と矢部がいる。
キャッチャーはもちろん小野原先輩。
松宮先輩は、ノックを打ち終えた後、今は一塁側ベンチ付近にいる。
そして、そのベンチ近くのブルペンには玄山弟、キャッチャーは國分。
それを見ているのが俺、双葉諒という構図だ。
ちなみに、芳美、井槻、陸奥の三人は今日は揃いも揃って休んでいる。
新入部員が入ってくる、大事な日なのに。
外野ノックをさっきまでしていたわけだが。
どちらの一年生も上手く、さらにこれからにも期待できる出来だった。
矢部は、足が速く、守備範囲が広かった。
前からそうだったが、現在はさらに打球勘もついているようだった。
多少、荒いようなプレーも見受けられたが、それは伸びしろと考えておこう。
そして、善琥羽夜。
正直、自分の予想を遥かに超えてうまかった。
外野手として、一つ一つの動作が洗練されていた。
唯一、肩はあまり強くないようだったが、それを踏まえてみても、一年生とは思えないようなレベルに見えた。
今、俺は玄山弟と國分の様子を見ているわけだが。
こっちもこっちで、すごい。
特に、玄山弟。
兄のベタ褒めも納得の実力である。
また、フォームも良い。なにせ――、
カッキィィンン!!
突然の打球音に振り返ってみると、少剛月が外野の間をきれいに割る打球を飛ばしていた。
前からの、突出した長打力は健在のようだ。
ブルン!
ブルン!
コツッ
ブルン!
・・・。
一発屋で空振が多いところも、変わってなかったか...。
「あの~。」
いきなり話しかけられたのでそっちを向くと、玄山弟と國分が並んで立っていた。
「先輩って、エースなんですよね?」
「ああ、まあね。」
「あの!ちょっとだけでいいので、ピッチング見せてくれませんか?」
「はい?」
まさか、自分が投げることになるとは。
まあ、見てるだけっていうのも物足りなかったし、ちょうど良かったけど。
キャッチャーに座る國分、そして玄山弟がその後ろにスタンバイ。
「じゃあ、いくよ。」
振りかぶって、身体をひねり、、投げる!
パァンン!
ミットの、乾いた良い音がした。
「おお...!」
「構えたところにきたずら...。」
『おお...!』って、なんか照れるな。
ていうか、ちょっと気になってたけど國分の言ってる"ずら"ってなんなんだろう?
後で聞いてみるか。
返球されたので、もう一球。
パァァン!
またまた良い音だ。
ずっと思ってはいたが、國分のキャッチングはすごくキレイというか、なめらかというか。
投げていて、すごく気持ち良くなるタイプのキャッチャー。
良いね。なんか、どんどん投げたくなってきた。
そのままの調子で、十数球投げる。
変化球も、國分は難なくきっちりと捕球したので、素直にすごいと思った。
そして、アウトローいっぱいに決まるストレートを投げたところでお終いに。
もう少し投げたかったな。
ちょっと残念だ。
「先輩!ありがとうございました!」
「いやいや、こっちこそ、投げさせてもらえてよかったよ。」
「國分も。すごく、投げやすかったよ。」
「こちらこそ!すごく、捕りやすかったず...です。」
「そうそう。國分がたまに語尾につけるのは、何なの?」
そう聞くと、突然慌てはじめる國分。
「ごっ、ご、ご、語尾!?な、何のことずら?」
「その語尾だよ。"ずら"って何?」
「いや~、これは~...。うう...助けて!文也くん!」
「ええっ!?ぼ、僕!?ちょ、ちょっと、、どっ、どうしよう。。」
なんか、玄山弟まで巻き込んでバタバタし始めたな。
そこに。
「おーい!そろそろいいか~?」
主将から声がかかる。
どうやら、一通り終わったようだ。
少剛月と中山田の、打撃と内野守備。善と矢部の打撃。
それらを終えて、残るはバッテリーだけとのことだ。
中山田の実力をしっかり見てみたかったのだが、それは出来ず。
まあ、一緒に練習すれば嫌でも見ることになるし、特に気にすることはないのだが。
玄山弟と國分の二人は、洋介と道隆と、対戦するようだ。
洋介と道隆は、打撃面で絶賛成長中だし、先輩らしいところを是非とも見せて欲しい。
だが。
果たして、どうなることやら。
ふと、気付くと。
俺の目の前に、玄山先輩が満面のドヤ顔をして立っていた。
「僕の弟、すごかっただろ?な?」
・・すごい圧だ。
しかし、事実なので肯く。
「そうだよな~。エースは、文也に確定したってことでいいよな?」
・・何言ってるんだ。この人は。
「俺が、譲るとでも?」
「いやいや。冷静に考えて、だよ。なあ!?琉果!?」
「・・何言ってんだ、お前。」
「・・ごめんなさい。」
まあ、弟への愛が甚だしいということは理解しましたよ、先輩。
練習が終わった。
今日は、一年生もきたし、いつもよりも盛り上がって練習ができた。
明日は陸奥たちも来るだろうし、そうなれば18人か。
多いな。
「いやいや、少ないだろ。」
「なんだよ友章。人の心を読んだみたいなこと言って。」
「というか、18人だぞ?多いだろ。」
「・・感覚が狂ってるんだろうけど、それはかなり少ない方だぞ。全国的に見て。」
「・・だよね。ハハ...。」
「それはそうと、一年生、皆けっこう期待できそうだな。」
「ああ。」
「諒が望んでたピッチャーが入ってくれたわけだけど、率直にどうよ?」
「まあ、嬉しいよ。一人でマウンドに上がり続けるっていうのも、正直キツイし。」
「ふ~ん。エースの座は、大丈夫そうか?」
「うーん、まあ、別にいいんじゃないか?俺、特にエースにこだわりあるわけじゃないし。」
「そうなのか?ふーん。」
「一応言っとくが、俺は一年に負けるつもりなんて全くない。」
「!・・そ。まあ、そう言うと思ったよ。」
「友章も、四番の座、奪われたりすんなよ。」
「当たり前だろ。」
「それならいいけど。」
「まあ、何はともあれ、これで、甲子園に一歩近づけたかな?」
「そうだな。最後は、俺たち自身の努力次第だけどな。」
「勝ちたいな、全試合。」
「もちろんだ。まずは、この春。」
「おう。俺たちは、経験も少ないし、とにかく試合をたくさんしたいな。」
「そのためにも、勝たないとな。」
「再来週頃から、大会も再開するし、頼むぞ、エース!」
「四番の働きにも、期待してるぞ。」
「じゃあ、」
「「また明日。」」
結果的に、こういう形になってしまいました...。
新入生たちの能力、全然明かしてないですね。ごめんなさい。
前書きにて大嘘をついてしまい、申し訳ない限りです。
こんなはずじゃなかったんですけどね。。
まあ、気にせずいきましょう。
よろしければ、玄山弟の能力とか、予想してみてください。
では。今話も読んでくださって、ありがとうございました!