両投げ両打ち!!   作:kwhr2069

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前回:道隆、洋介との出会い。朔良との再会。そして、入学式。


Episode.2

ヤキュウブ

 

 入学式も終わり。

 新入生のための宿泊研修を経て。

 

 普通に学校生活が始まった。

 

 そして、俺と朔良はもちろん野球部へ。

 

 一年生は俺たちのほかに二人。道隆と洋介だ。

 

「えっ!おまえらも野球部なん?」

 

「それはこっちのセリフ。何?野球経験者だったりするの?」

 

 俺が驚いて尋ねると、少し不機嫌そうに洋介が聞き返してきた。

 

「まあな。俺と、コイツ...梨田朔良は、シニアで野球やってた。」

 

「よろしくね、えっと...?」

 

「梨田朔良か...。さっくんって呼ぶね!僕は、歌間道隆。ミッチーって呼んでいいよ。」

 

「俺は、渡洋介。よろしく。」

 

「僕は、洋くんって呼んでるよ!」

 

「・・そっか。じゃあ、よろしくね、ミッチー!洋くん!」

 

 気さくなやつだな、朔良も。

 あだ名で呼ぶことに抵抗を感じないのだろうか。

 

 あと、『ミッチー』と朔良が言ったとき、洋介の眼が光ったのを俺は見逃さない。

 

 ・・やっぱ、あだ名呼びはできそうにないな。

 

 

 グラウンドに着いた。

 そこでは、九人の人が練習をしていた。

 

「おお!四人も来たな!よし、皆!一旦止めて、集合してくれ!」

 

 ノックをしていた、キャプテンと思しき人が声をかけ、練習は、一時止まった。

 

「うん、じゃあまずは、こっちから。俺は、キャプテンの鈴木だ。一年とはあまりできないと思うが、よろしく!」

 

 その後、杉山、佐藤、後藤、高橋、土屋と続いた。

 三年生は、六人。

 

 次は、二年生。

 元気な、サードをしていた人から挨拶を始める。

 

「俺は、松宮 琉果(まつみや るか)だ。道隆と洋介とは小さい頃からの知り合い、幼馴染だ。よろしく!」

 

「僕は、玄山 大也(くろやま だいや)。この学校の、現生徒会長でもある。よろしく。」

 

「オレは、小野原 理玖(おのはら りく)だ。父が、この学校の学園長をしてる。よろしく!」

 

 二年生の先輩たち、三人の自己紹介が終わった。

 

 その後、俺たち一年生四人も自己紹介をした。

俺と朔良が、名の知れたシニアのエースだったことを聞き、先輩たちは興味を持った様子だった。

 

 そして、一年生たちの実力を見ようということになった。

 ちなみに、道隆と洋介は、中学生のころから野球をしていたそうだ。

 

 軽くアップをすませる。

 

 その後、まずは、道隆、洋介がシートノックを受ける。

 道隆がショート、洋介はセカンドに入った。

 

「「お願いします!!」」

 

 二人の声で、ノックが始まる。

 ノッカーの鈴木キャプテンが的確にノックを打つ。

 

 

「上手い...!」

 

 誰かが漏らすようにつぶやく。

 

 確かにそうだった。

 道隆は、ショートの深いとこからでも正確にファーストに投げ返せるいい肩をしている。

 また洋介は、とにかく一歩目が早い。守備範囲は、一年生のそれとは思えないレベルだった。

 

 そして、洋介がセカンドベース付近までを確実に取ることで、道隆は通常のショートの定位置よりもサードベース寄りに守り、二人で内野の打球を全て捕れるのではという期待を持った。

 まあ、さすがにそれは無理な話なのだが。

 

 二人のノックは、ゲッツーでより阿吽の呼吸を見せられて終わった。

 

「ミッチー、洋くん!二人ともめっちゃうまいじゃん!」

 

 ノック終わりの二人に、朔良が声をかける。

 

「別に。お前らにとってはこれくらいは普通なんじゃないのか?」

 

 普通だろ、という顔をする洋介。

 

「いやいや!シニアレベルだと思うよ、なあ諒!」

 

「まあ、確かに。帝徳シニアの二遊間をほうふつとさせられた...気はする。」

 

 帝徳シニアは、全国でもかなり強いシニア。

 打撃力がえげつなく高く、守備もエラーが少ない。レベルの高い野球をするチームだ。

 

「おい!双葉と梨田!」

 

 そこで、鈴木キャプテンから声がかかる。

 

「外野、できるか?歌間と渡のバッティング見る間、頼む。守備も見たいからな。」

 

 俺は、気になったことを聞く。

 

「あの、バッピは誰が?」

 

「それなら、エースの後藤にさせようかと思っていたが...。投げたいのか?」

 

「いえ!エースの球が見られるんだったら、いいです。」

 

「俺たちも、打たせてもらえるんですよね?」

 

 今度は、朔良が質問する。

 

「もちろんだ。二人のバッティングの後、お前らにも打ってもらって、そのあと最後にピッチングを見せてもらう予定だ。期待してるぞ、二人とも!」

 

「「っはい!!」」

 

「じゃあ、よろしく頼む。」

 

 そうして、俺たちは外野守備についた。

 

 

 数十分後。

 

「・・よし、まあいだろう。次、双葉と梨田!」

 

 ようやく呼ばれた。

 

 二人のバッティングは、二人の守備特化を証明してくれた。

 道隆は、パワーはあるのだろうがバットに当たらない。当たれば飛ぶだけというだけのアンパイのバッター。

 一方の洋介は、ミート力はあるが、パワーがなく、ヒット性の当たりは道隆と同じくあまりなかった。

 

「二人の守備見てドキドキしてたけど、打力なくてほっとした~。」

 

 さらっと、トンデモ発言をする朔良。

 

「そうだな。清水シニアをほうふつとされられた。」

 

 それに乗っかる俺。

 ちなみに清水シニアは、打力がなく常に貧打に苦しむ弱小チーム。

 初戦で対戦することになれば、諸手をあげて喜べるようなチームだ。

 

「よし。まずは、双葉から!」

 

 俺は、右打席へ向かう。

 

 エースの後藤先輩は、部内で一番背が高い。186cmらしい。

 その長身を生かした、角度のある直球、そこから鋭く落ちるフォークが投球の軸。

 ほかには、カットボール、スライダーが持ち球。

 と、俺が知っている情報はこれくらい。他にも球種はあるかもしれないが、主はこの四つだろう。

 

 俺は、バッティングは好きな方だ。まあ、野球が好きなんだから当たり前なんだけど。

 

「お願いします!!」

 

 掛け声とともに打席に入る。

 

 後藤先輩がマウンドの上に立っているのを見ると、より高く感じる。

 

 初球はストレート。振ったが、少し高かった。

「(もっと水平に。きれいにボールに合わせる。)」

 

 次も、ストレート。今度は当たったが、キャッチャーファウルチップ。

「(違う。今度は下を振りすぎた。タイミングは合ってる。しっかりボールを見て...。)」

 

 次に来たのは、外に逃げるスライダー。見送った。ボール。

 

「おい、後藤!なに本気で抑えに行ってんだよ!」

 

 他の先輩からのヤジが飛ぶ。

 

 確かにまるで試合かのような雰囲気だ。

 でも、こっちの方がいい。エースと真剣勝負。

 楽しい。笑みがこぼれる。

 

 次は...おそらくフォークだろう。

 

「さ、こぉい!!」

 声をだし、気合を入れる。

 

 後藤先輩が振りかぶる。

 俺は、バットを合わせファールを打とうと試みる。

 

 しかし。

 

 フォークにしては早すぎる後藤先輩の投じたボールは。

 俺のバットの上を通っていった。

 

 ストレート。

 

 裏をかかれたようだ。

 

 やっぱり、エースは違う。

 

「ありがと...」

 

「コラコラ!なに勝負しちゃってんだ!実力を図る軽いテストだろうが。まったく...。」

 鈴木主将の声が飛ぶ。

「双葉!打席から出らんでいい!もう少し打てよ。後藤!バッティング練習だからな!」

 

 鈴木主将の注意に、思わず顔を見合わせる俺と後藤先輩。

 

「じゃあ、いくぞ!」

「お願いします!」

 

 

 それから、主将の声がかかるまで打った。

 

 俺の後に打つのは、もちろんこの男。

 

「おねがいしま~す!」

 

 梨田朔良だ。

 俺の記憶では、あまり打撃は上手ではなかったが...。

 

 左打席に入る朔良。

 

 あっそういえば、俺右でしか打ってねえや。

 まあ、いい。後で打たせてもらえるか聞いてみよう。

 

 でも確か、朔良は右打ちだったはず。

 

 その初球。

 

 朔良は、完璧にボールを捉え、学校グラウンドのライト側に設置された柵まで打球を飛ばした。

 推定飛距離、90m。

 

 は??という顔を皆がする中。

 

「後藤さん?次、お願いします。」

 

 少し放心していたエースは、気を取り直して次を放る。

 アウトコースに入ってくるカットボール。

 

 それを、またまた朔良のバットが捉える。

 今度は、左中間に。きれいに外野の間を抜ける、長打コースだ。

 

 この二球で心を軽く折られたエース。

 そのエースに、投球を要求する新入部員。

 

 エースは、心を復活させ、投げ続けた。

 

 その内、おかしいことが起こり始めた。

 回数を重ねるごとに朔良の打撃は悪くなっていったのだ。

 

 そして最終的には、空振りまで。

 

 たまらず、主将が声をかける。

「おい、梨田?どうした?最初は良かったのに、どんどん悪くなって...。」

 

 すると、朔良は驚くべきことを言い放った。

 

「俺は、どんどん打撃の質が下がっていっちゃうんです。」

 

 聞いたところによると、朔良は打席に入って数球は極限まで集中が高まるらしいが、それが、バッティングをし続けるにつれてどんどん欠けていくそうだ。

 つまり、打席に入って何球かは最強だけど、それが終わると弱体化するということだ。

 

 それは、野球の試合においては無敵ともいえるだろう。

 打席は、たいてい五球くらいで勝負がつくからだ。

 

 ちなみに、朔良が左打ちになったのは去年の夏の終わりのころで、右で打てなくなってきたから左で打ってみたら、今みたいな感じになって、これは使える、と思ったからだそうだ。

 

 何はともあれ、新入生の打撃チェックは終わった。

 次は、待ちに待った...

 

「双葉!梨田!マウンドへ!」

 

 来た!!ピッチングだ!

 

「二人とも、いいか。聞いてくれ。これから、三年生二人ずつと対戦してもらう。いいピッチング、期待してるぞ!」

「まずは、梨田から。相手は、杉山と土屋だ。」

「はい!」

「その後に、双葉だ。佐藤と高橋と対戦してくれ。」

「はいっ!!」

 

「キャッチャーを、正捕手である小野原にしてもらう。リードは、どっちがしてもいい。それと、今回は真剣勝負だからな。本気で、行けよ。」

「「はい!!」」

 

 主将が小野原さんを呼んだ。

 

 さあ、俺と朔良のピッチングは通用するだろうか?

 

 それと、左打席でのバッティングは見せられていない。

 

 俺がまた、聞くのを忘れてしまっていたからだ。




登場人物
・小野原理玖:小原鞠莉
・松宮琉果:松浦果南
・玄山大也:黒澤ダイヤ
モブの方のフルネーム
・鈴木四季(すずきしき)主将 右左、レフト
・後藤六(ごとうりく)エース 右右
・杉山一春(すぎやまいちはる)右左、ショート
・佐藤夏三(さとうなつみ)左左、ファースト
・高橋秋五(たかはししゅうご)右右、センター
・土屋冬二(つちやとうじ)右右、セカンド

選手能力は、番外編の方で紹介したいと思っております。

読んでいただき、ありがとうございました!
感想、誤字訂正等、お待ちしています。
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