百足と狐と喫茶店と   作:広秋

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 …言い訳と謝罪が活動報告にあるので先にそちらを御覧ください(´・ω・`)

 …本当に申し訳ありませんでした<m(__)m>

~前回までのあらすじ~

 化け物としての訓練を始めたカネキ。そしてリンネの違和感に気が付いたトーカ。
 そんな中、気ままな狐は更に行動を起こす。
 狐の気まぐれは徐々に大きな歪みを齎す。

※サブタイトルが間違っていたので修正しました


13話 少年の叫びは九尾へと

――20区・あんていく――

 

 

 

「あんたは身体が細すぎる。もっと筋肉つけて、そんで赫子を出せないときの戦い方も習得しないといけないね。…あとは身体づくりか…」

 

「身体づくり?」

 

「そ、基本的な筋トレくらいはした方がいいでしょ」

 

 リンネとの訓練を終えたカネキがあんていくのフロアでトーカと今回の訓練の反省を行っていると珍しい客があんていくを訪れた。

 

「…」

 

 無言であんていくのドアを開けて中に入ってきたのは、

 

「あれ?ウタさん?」

 

「ウタ…さん?どうしたんですか?」

 

黒いニット帽をかぶり、サングラスをかけたウタだった。

 

「ごめんね、こんな時間に。マスクが出来てね、届けに来たんだ」

 

 ウタはサングラスを外すと、手に持っていた小荷物から黒いマスクを取り出す。

 

「ほんとは置いていくつもりだったんだけど、できれば着けているところを見てみたいんだけどいいかな?」

 

 ウタの問いにカネキは「もちろんいいですよ」と答えるとウタの指示に従いマスクを着けていく。

 

「そう、そこは耳の下に通して…うん、その部分は口元を覆うように…うんこれでいいかな」

 

 そうしてカネキの顔を覆ったマスクは右目を隠す眼帯状のパーツ、そして口内をイメージさせる歯と歯茎を模した部分と、両頬にガスマスクのような丸いパーツの着いた顔の下半分を隠すパーツからなる黒い革製のものだった。

 

「眼帯…僕がしている側と反対なんですね…」

 

「そうだよ…君の隠している方の目が見たかったから…」

 

 その後ウタがマスクの説明を続けたがカネキには聞こえていなかった。

 

 カネキが感じていたのは冷たい革の感触と普段は塞がれている右目の世界が齎す異様な高揚感。そして、ついに自らも“化け物”の一体となったのだという冷たい事実を突きつけられた背徳感にも似た妙な興奮だった。

 

 

 

 

――20区・あんていく地下――

 

 

「うーん…一撃がやっぱり軽すぎるね…」

 

「ご、ごめん…」

 

 カネキがマスクを手に入れた翌日。

 カネキは引き続きリンネとの訓練に明け暮れていた。 

 

「純粋に体格の問題もありそうだけど、やっぱ精神的な問題かなぁ…?」

 

「うーん…よく分からないなぁ…」

 

 そのような会話をしつつしばらく組手や赫子の扱いなどを主に訓練しているとトーカの声が地上につながる

ハッチから聞こえてくる。

 

「おーい、まだやんの?」

 

「え?もうそんな時間?」

 

 そう言ってカネキは近くに置いておいた上着を手に取り、ポケットから携帯を取り出し時刻を確認する。

 携帯の液晶には13:12と表示されており、カネキは携帯の画面をリンネにかかげて時間を知らせる。

 時間を知らされたリンネは数瞬間を置いた後に口を開く。

 

「あー…そろそろ切り上げるか」

 

 そしてあんていくに戻ってきたリンネとカネキに対してトーカは紙袋を差し出しながら声をかける。

 

「あんたたち暇なら少し手伝ってくれない?」

 

 トーカの唐突な問いに対しカネキとリンネは首をかしげる。

 

「手伝う?トーカちゃん、何をしろって言うの?」

 

 カネキの問いに対しトーカは簡単な説明を始めた。

 

「ここに服がある。今からこれに着替えて変装して。そんでCCGの支部に行ってリョーコさんの捜査をかく乱するための偽の情報を掴ませに行くの」

 

「ちょっと待っ「いいじゃん!面白そう!」リンネちゃん!?」

 

 トーカの無謀ともいえる提案にカネキが悲鳴じみた抗議をしようとするがリンネの言葉に遮られてしまう。

 

「お、リンネは乗り気だね。で、カネキは?まさかか弱い女の子二人に任せて自分は何もしない…なんてことはないよね?」

 

 結局、リンネの割り込みによって反論する機会を失ったカネキはもう後に引けなくなってしまった事を悟り小さくため息を吐くとあきらめたように言った。

 

「分かったよ…行くよ…」

 

「よっし、ならさっさと着替えて!行くよ!」

 

「今からなのぉ!?」

 

 カネキの抗議は相変わらず聞き入れられることなく流されていった。

 

 

 

 

 それからしばらく経ち三人が着替え終わってあんていくの裏手に集合していた。

 トーカは後ろ髪を二つに結わえ眼鏡をかけた委員長のような姿に。

 カネキはぼさぼさの髪申し訳程度にまとめたさえない感じの男子学生に。

 リンネは髪型こそ大きな変化はないが制服を着込んでいるため、見た目は完全に女子高生となっている。

 

「よし、カネキもリンネもこれなら大丈夫かな」

 

「…すごく不安なんだけど」

 

「ダイジョブダイジョブ。心配し過ぎだよ、カ~ネキ君」

 

「…不安しかない」

 

 そう言いながら集まった三人はCCG20区の支部へと向かっていった。

 

 

 

 

――20区・CCG20区支部前――

 

 

「さて、着いたわね」

 

 そういうトーカに率いられた一行はCCG支部前にたどり着いた。

 

「ああ…不安だ…」

 

「さてと、行くよ」

 

「あいあい」

 

「…」

 

 そうして三人はCCG支部内に足を踏み入れた。

 

 

 

 

――20区・CCG20区支部・ロビー――

 

 

 三人が足を踏み入れたCCG支部のロビーは多くの職員や捜査官が行き来していた。

 

「ここに居る人が…全部僕たちの敵…」

 

 そう言っておどおどしているカネキに女子二人からのフォローが入る。

 

「カネ…モト、いい私たちはただの情報提供者。怯える必要はないの」

 

「そうそう。キンちゃんは何も気にしなくていいよ。いざとなったら私が何とかしてあげるからね」

 

 そう言う二人に自分だけが気を使っているのに馬鹿々々しくなったカネキは開き直り、いつもの振る舞いに戻った。

 ちなみにトーカは「カトウ」、カネキは「カネモト」、リンネは「スズキ」という偽名を名乗ることになっている。

 

 

 

 

「あらー、可愛い情報提供者さんたちね。今日はよろしくね」

 

 そう言ってロビーの一角にある仕切りられたスペースに通された三人の前に現れたのは累沢(るいさわ)と名乗った温厚そうな女性だった。

 

「あらあら、両手に花でいいわね」

 

「い、いえ…そんなことは」

 

「あはは…」

 

 そうして軽く会話を交わすと累沢と名乗る女性が話を切り出してくる。

 

「さてと、お喋りもこれくらいにしてと。そろそろ本題に入ってもいいかしら?」

 

 その言葉にトーカが頷くと聞き込みが始まった。

 それからしばらくトーカの発言にカネキとリンネが相槌を打っていた。

 そしてしばらくして話がひと段落したタイミングでトーカが言葉を発する。

 

「でも、あんなに小さな子を、親諸共殺してしまうのは少し心が痛みそうですね」

 

 しかし、その言葉に対する累沢の答えがその場の空気を凍り付かせる。

 

「大丈夫よ、喰種は人間じゃないし、あんな危険な化け物(・・・)駆逐されて当然(・・・・・・・)なのよ」

 

 カネキとトーカは表情をこわばらせるが累沢はその様子を見て「そんなに緊張しないで」とにこやかに言う。

 そう言われて二人は苦し紛れの笑みを浮かべた。

 しかし、その会話を聞いていたリンネは苦虫をかみつぶしたような表情浮かべていたが、それに気づいたものはその場にはいなかった。

 その後、しばらく当たり障りのない会話をしたのちに事情聴取お開きとなった。

 

 

 

 

「…」

 

「カネ…モト、顔が怖いよ」

 

「そうそう、リラックスリラックス」

 

 事情聴取を終え帰路に着こうとする三人だったがカネキは先ほどのやり取りのせいか暗い表情を浮かべていた。

 トーカとリンネの二人が声をかけるが効果はなく、カネキは俯き、何かを考えこんだ様子のまま歩いていく。

 そして、前を見ていなかったせいで前から歩いてきた男とぶつかってしまう。

 

「イッテ…!」

 

「む?」

 

 カネキは後ろに尻もちをついてしまうが目の前の男はよろめく様な様子もなく「大丈夫かね?」と言いながらカネキの顔を覗き込んでくる。

 

「…っ!」

 

 その男の顔色の悪い、不気味な容貌に「死」の気配を感じたカネキは身体をこわばらせてしまう。

 そしてトーカはカネキにぶつかった男が先日自分を痛めつけた相手と同一人物ということに気が付き、焦りをあらわにしてしまう。

 

「…ふむ」

 

 目の前の二人の様子がおかしいことに気が付いた男は近くにいた職員、先ほどまで三人の事情聴取をしていた累沢に声をかける。

 

「そこの君、彼らは?」

 

「先程、親子の喰種の情報提供をしてくれた子たちですよ」

 

「ほう…!」

 

 その答えを聞いた男は目を見開き尻もちをついたままのカネキを半ば力任せに立たせ、カネキの手を握ったままゲートの方へ大股で歩いていく。

 そのゲートは「Rc検査ゲート」。

 喰種を見分けるための装置で、カネキはそれを目にした途端目に見えて落ち着きを失ってしまう。

 

「私はその喰種の事件を担当している者でね。奥で話を聞かせて貰えないかい?」

 

「あ、あの!これから塾があるので!」

 

「なに、時間は取らせない」

 

 カネキの抗議を受け流した男はそう言ってカネキをそのまま力尽くで引きずっていく。

 

「ま、まって…!」

 

 そして、焦った様子のカネキ引きずって男がゲートを通り抜ける。

 つまり、カネキ諸共ゲートを潜り抜けたはずだがゲートは反応しなかった(・・・・・・・)

 

「な…なんで…?」

 

 ゲートが反応しなかったことに驚いているカネキに向かってリンネがスタスタと歩いていく。

 明らかにゲートをくぐろうとしているリンネにトーカが焦って声をかけようとするがリンネはあっさりとゲートをくぐってしまった。

 

「…!」

 

「馬鹿っ…!」

 

 カネキは息をのみ、トーカは思わず声を漏らす。

 二人は次の瞬間の事態を想像し身構えるが、ゲートは沈黙を保っていた。

 

「…え?」

 

 訳が分からないといった様子のトーカとカネキをよそにリンネはけらけらと笑いながらカネキに声をかける。

 

「キンちゃ~ん、たいじょうぶ?」

 

 訳が分からないといった様子のカネキをよそにリンネは話を進めていく。

 

「まあ、奥で話を聞くってことなら塾が控えてるキンちゃんとカトちゃんはここで引き揚げて貰って、私が話をするけど…」

 

 リンネはそこで一度言葉を切るとカネキの手を掴んだままの男に向かって声のトーンを少し下げ言う。

 

「無理矢理って言うのは、天下のCCG捜査官としてはどうなのかな?」

 

「…」

 

 リンネの言葉にカネキの手を握っていた男は動きを止め、値踏みをするようにジロリと彼女の方を見る。

 

「…」

 

「…」

 

 そうして無言で睨みつけ合っていた二人だったが、しばらくすると男の方がため息を吐きカネキから手を離した。

 

「…そうだな、私たちは一応“正義の味方”だ」

 

「そう…よかった、貴方が“正義の味方”で」

 

 しかし、男はリンネの皮肉に動じることなく言葉を続けた。

 

「そうだ。私は“人間(正義の味方)”だ。“喰種(ゴミ虫)”を駆逐する…な」

 

 男はそう言い残すと奥へと引っ込んでしまった。

 

 その後、トーカ、カネキ、リンネの三人は近くの職員に見送られる形でCCGの支部を後にした。

 

 

 

 

「…」

 

 学生の三人組が支部を出て行ったあと真戸は自らに割り振られた事務室に戻って来ていた。

 

「…」

 

 真戸は無言のまま椅子に腰かけるとデスクの横に置かれた“ナルカミを収めた黒いケース”と大人一人が小脇に抱えられるくらいのサイズの保冷バッグをデスクの上に乗せた。

 

「今回は“手札”を1枚切るとするか…」

 

 そう言って真戸は保冷バックの中身を取り出すとそれを新聞紙で包んだ後、適当な布で覆う。

 

「今度こそ…今度こそ…あの時の娘を…」

 

 そう言って不気味な笑みを浮かべた真戸は新聞紙と布で包んだ何かをコートのうちにしまい込むとナルカミのケースを手に持ち部屋を出て行った。

 

 

 

 

――20区・あんていく1階――

 

 

「全く、なんであんたたちはこうも警戒心がないの?」

 

「あはは…ゴメンゴメ「ごめんで済むと思ってるの?」おぉう…」

 

 無事にCCG支部を脱出し、あんていくに戻った三人だったが額に青筋を立てたトーカに説教されていた。

 ちなみにカネキに至ってはあんていくに表から入ろうとしてトーカに拳骨を貰っている。

 

「カネキはあっさり白鳩(ハト)につかまるし、リンネは真正面から喧嘩吹っ掛けるし…」

 

「とー、トーカちゃん…もう勘弁して…」

 

「あ!?」

 

 あんていく1回の裏でトーカはカネキとリンネに説教をし続けた。

 

 …2階からヒナミの気配が消えている事に気づかず…

 

 




お待たせいたしました13話
今回でやっとカネキ君にマスクを持たせることに成功しました。
次回は真戸VSトーカ、亜門VSカネキ戦を予定しています。

次回をお楽しみに


~次回予告~


 マスクを手に入れたカネキ。
 CCGのかく乱を狙うトーカ。
 ヒナミを討たんとする真戸。
 三者三様の思惑が交差する中一人の少女が立ち上がる。

 次回、百足と狐と喫茶店と 第14話
 
 復讐者の怨嗟は九尾へと
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