百足と狐と喫茶店と   作:広秋

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さてさて今回はお話は原作だと真戸さんが退場するあたりですね。

ちなみに今回は大きな原作乖離が発生します。
…タグでバレてる気がしなくもないが気にしない気にしなーい…(´・ω・`)

私生活が安定しなくて時間がない…
執筆時間ほしい…誰か下さい(懇願)


~前回までのあらすじ~


 マスクを手に入れ、トーカらと共にCCGのかく乱を図ったカネキ。
 そして、ヒナミを討たんとする真戸が動き出すと同時に、一人の少女が立ち上がる。


14話 復讐者の怨嗟は九尾へと

――20区・あんていく――

 

 

「とー、トーカちゃん…もう勘弁して…」

 

「あ!?」

 

「ナンデモナイデス…」

 

「トーカちゃんもあんまりカリカリしてると皴増えるよ?」

 

「あんたみたいにヒトの神経逆撫でしてくる奴が居なきゃもっと楽なんだけどね…」

 

「いやーそれほどでも…」

 

「誉めてねぇよ!」

 

 そうして三人が騒いでいると表のガラス戸が勢いよく開き、一人の人影が飛び込んできた。

 

「え!」

 

「あれ?」

 

「店長!?」

 

 息を切らし、焦りを顔に浮かべた芳村だった。

 

「一体どうしたんですか!?そんなに慌てて…何かあったんですか?」

 

 芳村に駆け寄るトーカだったが芳村の問いに動きを止め顔を強張らせた。

 

「ヒナミちゃんを…見ていないかい?」

 

「え?」

 

 状況を呑み込めていないトーカ以下三人に芳村が説明を始めた。

 

「ヒナミちゃんが居ないんだ。恐らく君たち三人が店を出た後だと思う。私も買い出しで店に居なかったので細かい時間は分からないが、そのタイミングで店を出て行ったみたいなんだ」

 

 その説明を聞いたトーカは言葉を失い、カネキは驚きを隠せなかった。

 

「迂闊だった…誰もお店に居ないタイミングを狙って出て行ったんだ…もう日も暮れる…心配だ…」

 

「そんな…ヒナミ一体何を…」

 

 そうしていくらもしないうちに芳村が踵を返す。

 

「私はもう一度外を見てくる。お店は開けておく、ヒナミちゃんが戻ってきた時のためにね」

 

「私も行きます」

 

「うん、助かるよトーカちゃん」

 

「僕も行きます!」

 

 そうして手分けしてヒナミを捜索する手筈が整っていくが、そんな中一言も言葉を発することなければ微動だにしなかった者が一人いた。

 

「…」

 

「そうだ!リンネちゃんも一緒に…!」

 

 表情を消し、まるで能面のような無表情を顔に貼り付けたリンネだった。

 

「…!」

 

「…」

 

 リンネの状態に気が付いた三人は言葉を失い、周囲に沈黙が満ちるが不意にリンネが口を開いた。

 

「店長…ヒナミちゃんが行きそうな場所に心当たりは?」

 

「…申し訳ないが心当たりはない…」

 

「そう…」

 

 芳村の答えにそっけなく返すとリンネは店から出て行った。

 残された三人は普段の様子から大きくかけ離れたリンネの様子を目にし、動揺を隠せずその場から動けなかった。

 

 三人がショックから立ち直り行動を再開したのはリンネがあんていくを経ってから数十秒後のことだった。

 

 

 

 

――20区・市街地――

 

 

 あんていくを飛び出したヒナミは目的地があるわけもなく薄暗くなりつつある街を彷徨っていた。

 

「…」

 

 俯いたまま歓楽街を抜け、人通りのない物静かな方へ足を向けたヒナミは嗅ぎ慣れた“匂い”を感じ立ち止まる。

 

「…?この匂い…」

 

 それは少女が失ったはずのもので、今一番少女が求めるもの。

 

「おかあ…さん…?」

 

 まるで花の蜜に引き寄せられる虫のように、ヒナミは覚束無い足取りでその匂いを辿って行った。

 

 

 

 

「ちぃっ!…ヒナミ…どこに…!」

 

 あんていくを出たトーカは市街地の外れまで来ていた。

 ちなみに芳村は駅前周辺、カネキは市街地を中心に捜索を行っている。

 

「そろそろ天候も崩れかねない…一体どこまで…」

 

 トーカは持ち前の足の速さを生かしてヒナミを探し回るも今のところは何の成果もなかった。

 その時トーカの携帯が着信を告げた。

 

「…!」

 

 トーカは急ぎ手に持っていたバッグから携帯を取り出し着信相手を確認する。

 その画面に映っていた名前はイラつく奴(“リンネ”)だった。

 

「なろー…」

 

 その名前を見たトーカは通話ボタンを押し、息を吸って怒鳴りつけようとしたが、

 

「『成果は?』っ…!」

 

普段と似ても似つかない冷たい声音で話しかけられた瞬間、息を詰まらせてしまった。

 

『…?聞こえないの?』

 

「あ…いや…」

 

 酷く無感情な、冷たい声をかけられたトーカが言葉を返すことが出来ずにいると電話口の向こうのリンネがそっけなく告げた。

 

『あの子を助けたいなら急いで“匂い”を追いな』

 

「は!?アンタ…一体何を知って」

 

 トーカはという詰めようとするがリンネはそのまま通話を切ってしまった。

 

「くそっ…あいつ…!」

 

 トーカは悪態をつきながら再度通話を試みるもつながることはなく、苛立たし気に携帯をしまい込んだ。

 

「くっそ…“匂い”ったって…」

 

 そう文句をたれながらも周囲の匂いに注意を向けてみると妙に気になる“匂い”を感じた。

 

「なに…この匂い…」

 

 寒気を覚える、何とも言えない違和感を伴う匂い。

 

リンネ(あいつ)の言ってた“匂い”ってこれか?」

 

 一瞬迷ったものの“匂い”に引っかかるものを覚えたトーカは“匂い”の下へと向かった。

 

 

 

 

――20区・郊外、橋の下――

 

 

 トーカが“匂い”の元にたどり着いたのは雨が降り出した直後だった。

 そこは郊外を流れる川に架かる橋の下、普通の人なら近寄ることのない場所だった。

 そしてそこにはトーカの死角となる右手に何かを持ち、俯いて立ちつくすヒナミが居た。

 

「ヒナミ…こんなところに…?」

 

 しかし、ヒナミの不自然な様子に気が付いたトーカが言葉を切るとヒナミが小さな声でボソボソと話し始めた。

 トーカは周囲の雨の音に掻き消されそうな声に耳を傾けた。

 

「私達は…私達(喰種)はどうしていつも取り上げられちゃうのかな…?いつも…いつも…」

 

 トーカは俯いたまま、肩を震わせながら言葉を続ける。

 

「私達が何か悪いことをしたのかな…?私たちは生まれてきちゃいけなかったのかな…?」

 

「ヒナミ…」

 

 トーカが苦々しげな顔をしてヒナミに近づくと唐突にヒナミが身体ごと向き直り右手に持っていた何かを掲げた。

 

「ん?ヒナミ、何を持って…!?」

 

 ヒナミが掲げて見せたもの。

 それは“人の腕”だった。

 

「あんた…それ…」

 

 その“腕”は色白の左腕だった。そして、それは薬指にあたる部分には指輪を付けており、その腕の持ち主が既婚者であることを示していた。

 それらの情報と、先ほどから周囲に漂っていた“匂い”からその腕の“持ち主”を悟ったトーカにヒナミが告げた。

 

「この腕…お母さんの…」

 

「!」

 

 ショックを受け絶句するトーカの前でヒナミは先程よりも高いトーンで謡うように言葉を続ける。

 

「この指輪はお母さんとお父さんの結婚指輪だし、黒子の位置も爪の形もお母さんと一緒だし」

 

 そしてその腕を胸に抱きかかえ嬉しそうな口調で言い切る。

 

「少し冷たいけどこの優しい感じは間違いなくお母さんだもん」

 

 そう言いながら光のない瞳でほほ笑むヒナミは“壊れかけていた”。

 

「…」

 

 目の前の光景に理解が追い付かないトーカだったが不意に感じた殺気に身体をこわばらせヒナミの左手を掴み物陰にもぐりこんだ。

 

「トーカお姉ちゃん…どうしたの?」

 

「しっ!静かに…」

 

 トーカの感覚は正しくそっと暗がりから周囲をうかがうとどこかに電話をかける男が居た。

 

「ああ、亜門君。喰種()()にかかった。そうだ、こちらに来てくれ」

 

 そう電話している男は先日、トーカに重傷を与えた男だった。

 

「…!」

 

 そのことに気付いたトーカは戦闘が避けられないと悟ると手に持っていたバッグから2枚(・・)の仮面を取り出し、そのうちの片方をヒナミに渡す。

 

「あいつは捜査官(白鳩)、多分戦闘になる。コレつけて」

 

 そうしてヒナミに渡されたのは真新しい兎のお面だった。

 

「ソレ、私の予備。少し大きいかもだけど無いよりかはましだから」

 

 そう言ってトーカも左半分が焦げ、欠けた兎のお面を身に着けた。

 するとそこで先ほどまで電話をかけていた男が声をかけてきた。

 

「さて喰種(ゴミ虫)共、そこに居るのだろう?いくら身を隠そうと気配で分かる大人しく出てきたまえ」

 

「ちっ!バレてる…」

 

「お姉ちゃん…大丈夫なの?」

 

 不安そうに声をかけてくるヒナミにトーカは苦笑いしながら返す。

 

「正直1対1はきつい…ヒナミはここに居て隙を見て逃げて」

 

 トーカはそう言い残すと先手必勝と言わんばかりに物陰から飛び出し赫子を用いた一撃を放った。

 

「クタバレェ!」

 

「ふん!」

 

 しかし、トーカの一撃は男の左手のクインケによって防がれてしまった。

 そのクインケは「フエグチ壱」。

 それは大きくうねりながら一撃を加えんとトーカに迫ってきた。

 

「フッ!」

 

 トーカはその一撃を素早く間合いを開けることで回避する。

 

「ったく…一筋縄じゃいかねぇか…」

 

 するとトーカのマスクを見た男が嬉しそうに笑う。

 

「ほう!その仮面…あの時の喰種か!…それともこう呼んだ方がいいか?」

 

 男はそこで言葉を切り右手にクインケ「ナルカミ」展開する。

 

「“ラビット”。今度こそ、貴様も終いだ」

 

 そう言ってあの時と同じ雷撃を仕掛けようと溜めの動作に入る。

 

「ここが貴様の墓場だ」

 

 

 

 

――20区・市街地の外れ――

 

 

 分担の結果市街地の割り当てになったカネキは姉が降り出したのも意に介さずヒナミを探して走り回っていた。

 

「くっ…ヒナミちゃん…一体どこへ…」

 

 すると近くで電話をかけている若い男の声が耳に入ってきた。

 

「ラビットに複数の喰種ですか!?わかりました!すぐに応援に向かいます!」

 

 男はそう言って電話を切ると駆けだした。

 その一部始終を目にしていたカネキは強張らせた。

 

「リョーコさんの時と同じようなことは、もう御免だ…!」

 

 恐らく目の前の男は喰種捜査官で、近くで見つかった喰種を退治()しに行くのだと悟ったカネキは素早くマスクを身に着けると捜査官の男の前に立ち塞がった。

 

 

 

 

「なんだ貴様…?」

 

 突然目の前を遮った仮面をつけた少年に怪訝な声を上げる男。

 

「…ここから先は行かせない…」

 

 そう言う少年に対し捜査官の男は忌々しげに息を吐くと吐き捨てる。

 

「消えろ、邪魔だ」

 

 しかしその言葉を気にも留めずカネキは魔の前の男に殴りかかっていく。

 カネキの脳裏に声が響く。

 

“いい?喰種は基本的に常人以上の膂力、馬力があるからね。きちんとした形で殴りつければ吹き飛ばすことだって可能だよ”

 

・・・目の前の相手は人間

 

“よっぽど相手がでかいとかそんな状況でもない限り人間相手なら、喰種(私達)は有利に立ち回れる”

 

・・・身長は僕より高い…けどそこまで差はない

 

“もし人間相手だったら、間合いの内側に入り込んでキツイのぶち込んでやりな。それで粗方ケリが付くから”

 

・・・なら、懐に飛び込んで一撃を叩きこむ!!

 

「ガアアアアァァ!」

 

 そうして、一瞬で懐に飛び込んだカネキは喰種としての膂力を十分に生かした一撃を放った。

 その一撃に油断しきっていた捜査官は反応しきれず、カネキのこぶしが鳩尾に直撃し、吹き飛ばした。

 

「ぐっ、がぁ!?」

 

 吹き飛ばされた捜査官は地面を数回バウンドしながら受け身を取ったものの、電柱に背中から叩きつけられ威力を受け流しきることが出来なかった。

 

「ぐ、ううぅ…」

 

「はあ、はあ…」

 

 捜査官の男は口元の血をぬぐいながら立ち上がり、カネキはこぶしを放った格好のまま静止していた。

 

「が、ふうっ…チッ!油断した…20区にこんな喰種が居たとは…」

 

 自分の攻撃に効果があったことを確認したカネキは男に話しかける。

 

「ここから踵を返して、どっかに行って下さい。僕はあなたを殺す気はありません」

 

 しかし、その言葉に捜査官の男は激昂する。

 

「殺す気は無いだと!?舐めているのか!喰種如きがァ!」

 

 捜査官の男は手に持ったケースから巨大な棍棒のようなクインケ、ドウジマを展開し一気に間合いを詰める。

 確かに素早い踏み込みだったが、カネキはそれをはっきりと捉えていた。

 

“人間の中にもたまに化け物みたいなのが居るけどそうでもない限り、私の赫子よりは遅い。しっかり見て、受けるか避けるかしな”

 

・・・動きは速い。けどリンネちゃんほどじゃない

 

“ただし、捜査官の持つ特殊な武器、クインケの攻撃は注意しな。あれは喰らうと不味い”

 

・・・目の前の男は捜査官。そして手に持った不気味な武器。クインケか

 

“基本的にクインケの攻撃は避けるのがいいけど、カネキ君の赫子なら受けてもいいね。そうそうやられないと思うよ”

 

・・・なら、覚悟を決めろ、ここで実戦だ

 

 カネキは自らの中の“(化け物)”を呼び起こす。

 体の中にある歯車をかみ合わせ、体の中の力を外側に向ける。

 

「はああぁぁぁ!」

 

 そして気合と共にカネキの背中から発現した赫子は、捜査官の棍棒のようなクインケをまるでチーズのように切断し男の肩も深く切り裂いた。

 赫子の一撃を受けた男は切り裂かれたクインケが吹き飛んでいくのを見て一瞬呆然とするが、すぐに肩の傷の痛みに顔をしかめた。

 

「ガ、アァ!?」

 

 一撃でクインケを破壊され、自らも深手を負った男はその場に膝をつく。

 

「そんな、20区にこんな…すまない…張間」

 

「去れ」

 

 目の前で膝をついた男にカネキは冷たく言い放つ。

 しかし、男は驚きを隠そうともせずに問いかける。

 

「こ、殺さないのか…?」

 

 カネキは態度を変えることなく男の問いに答える。

 

「死にたいんですか?今のあなたを殺す必要はないし、僕は人殺しになるつもりはありませんから」

 

「な!?情けをかけているつもりか!?」

 

「情け?何を言ってるんですか?」

 

 男の怒りをあっさり受け流すとカネキは赫子を戻し話始めた。

 

「今回あなたを倒したのは僕たちの邪魔をしたから。僕たちだって黙って“奪われ続ける”気は無い。いいですか、僕たちはただ人を食らう化け物ではありません。それなりに色々考えてますし、都合もあるんです。だからあなた達の都合で殺される訳にはいかないんです」

 

 カネキの説明に捜査官の男はさらに声を荒らげる

 

「化け物の分際で…何を偉そうに!」

 

 ついに言葉が過ぎたのか先ほど戻した赫子を再び発現させ男のすぐ横に叩きこんだ。

 

「…っ!?」

 

 当然、ただのアスファルトが赫子の一撃に耐えられるはずもなく粉々に砕けた。

 

「僕は人を殺したくない。臆病だ、偽善だと言われても」

 

「何を…っ!?」

 

「早くいってくれ…殺したく、無いんだ…」

 

 そういうカネキの目からは涙が零れていた。




本当は原作三巻終わりまで行くつもりだったけど文字数もきつくなってきたし霧もいいので次回。
基本的に1話につき5000字前後で書いています。
もし「もっと長く書けや」とか「長すぎるんだよ」などの意見があれば頂ければ調整したいと思います。
なにぶん、ssを書くなんて初めてのことなのでそのあたりの加減が分からないので…


さあ、ようやくストーリーが進んできましたね(原作三巻くらい)

いきなり亜門さんをワンパン出来る強さのカネキ君。
カネキ君強くしすぎたかなぁ…(´・ω・`)
まあ、いいか…
でも、原作でもなんだかんだぶっ壊れになってたし、問題ない…よね?

…時間がない…大体の流れは出来上がってるのにそれをきちんとした文章に推敲するする時間がない…
くそぉ…就活を舐めていた…

とにかく次回について。
次回は真戸VSトーカ決着ですね。
さて一番悩んだ部分…早めに纏まるといいが…


~次回予告~

 “化け物”の力を行使し亜門を下したカネキ
 しかし少年はまだ人を殺めること良しとしなかった
 その頃、復讐者(トーカ)復讐者(真戸)の戦いにも決着が着こうとしていた

 次回、百足と狐と喫茶店と 第15話

 復讐者の悲嘆は九尾へと



(主)「さて、次回で原作三巻終了か…」

トーカ「こんなスローペースでちゃんと完結できるの?」

(主)「出来るかできないかじゃない、するんだよ!」

ヒナミ「今までの更新履歴の日付見直して来たら?」

(主)「…」

カネキ「なにもフォローできないや…」

(主)「…」


誤字報告、感想お待ちしています<m(__)m>
次回もお楽しみに!

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