演習が終わってから、しなければいけないことも、したいことも無かったのでなんとなく鎮守府の中を歩き回っていた。
夕立と響は倉庫で片付けした後どこかに遊びに行くと言っていたからすぐには帰ってこないだろう。
この前買った本はつい最近読み終わってしまったし、本棚の中から適当に取って眺めるのは昨日やってしまった。
思えば、夕立と響との関係が変わってからは暇な時はいつも一緒に居た気がする。
夕立を好きになる前は一体何をしていたんだっけ。
鎮守府の外に出たことはあまり無かったと思う。
何回かは姉さんに連れられて行ったこともあったっけ。
ふらふらと歩いていると工廠まで来てしまった。
明石さんは仕事中かな。そうじゃ無かったらちょっとお邪魔しようかな。
開いていた扉から中をのぞいて見ると、明石さんはどこかに行っているのかおらず、かわりに姉さんがいた。
手に持った単装砲を構えてみて、引き金を引いてカチリと弾切れの音を立てると何やら首を傾げて机の上に置いてある図面に鉛筆で何かしら書き込んだ。
次々と別の砲を箱から取り出して引き金を引いて、ペンを握っての作業を繰り返していると、全てのチェックか何かが終わったのか、ペンを机の上に放り出して、いつものようにくるっと一回転して「1」の指を突き上げるポーズをとる。
一回転したときに僕が視界に入っていたのか、扉の方に声がかけられた。
「時雨、こんなところで何してるの?」
隠れていた訳でもないし、 呼ばれて返事をしないのも変なので、工廠の扉から、中へと入っていく。
「何もすることがなかったから、歩いてたら姉さんがいたから覗いてたんだ。姉さんは何をしているの?」
「整備を手伝ってもらってるんですよ」
背後から聞こえた声に飛び上がった。
「明石さん⁉︎いつから…」
「途中から居ましたよ?時雨ちゃんが随分と熱心に見てたから何かあるのかなと」
背後にいたのはこの工廠の主である明石さんだった。
僕がここに来てすぐは色々な検査をしてもらい随分とお世話になった。
「姉さんって、こういうこと得意なの?」
「あれ?白露さん言ってないんですか?白露さんには武器の性能がわかる力があってですね。」
「どこが悪いとかもわかるから時々こうやってお手伝いしてるんだ」
姉さんが砲と同じ数だけあった図面を纏めて明石さんに手渡す。
明石さんが受け取った図面をぱらぱらとめくっていると、途中の一枚で手を止めた。
「白露さんの砲、どうやったらこんな傷つき方するんですか?他の人こんな所ズタズタになったりしませんよ?」
「あーそれは…やりたいことに体が追いついてなくて、無理矢理撃っちゃった時の……ごめんなさい」
「直すのが私の仕事なのでいいんですけど…これだとそのうち撃ってるうちにぶっ壊れますよ?」
「だいじょーぶだいじょーぶ。ちゃんと撃ってる時もわかってるから」
本格的な破損個所の話に入ったのだろうか。専門用語が多くてここから先は何を言っているのかわからなくなってきた。
疎外感を感じた僕は、さっきまで姉さんが見ていた砲を1つ拾い上げて、ゆっくりと引き金を引いてみた。
かちり、と音はしたものの、どこが壊れているのかはさっぱり。
少なくとも僕には姉さんみたいな芸当はできないようだ。
図面を指差しながら何か話していた明石さんと姉さんが、話が終わったのか空の砲の引き金を引く僕に近づいてきた。
「そういえば時雨ちゃんは最近大丈夫ですか?」
「僕……えっと何が?」
机の上に紙の束を置いた明石さんが振り返って僕の方を見た。
「夢ですよ夢。予知夢。」
「よ、予知夢?」
「…覚えてないですか?」
記憶を掘り返してみるも、そんな事を言われたことは……あるような無いような。
「時雨あのときまだ混乱してたのかもね。私の手握ってた頃だったし」
「じゃあもう一回説明しときます?」
「そっちの方がいいんじゃない?」
急な話に驚いたが、僕も自分の事は理解しておきたかったので首を縦に振った。
「じゃあまず…ドロップ組の話って覚えてます?」
「何か力を持ってる場合がある、ってやつかな」
「はい。それです。私は特に何も持ってなかったんですけど、白露さんの場合は、」
「手に持った武器を理解して使いこなす力だよ」
「解析みたいな使い方できるんで死ぬほど羨ましいんですけどね。なんで神様は私にその力くれなかったんでしょうね。」
「私は明石さんみたいに美味しい料理作れる力とかが良かったなー。そしたら提督に何か作ってあげるのに。」
「まあとなりの芝は青いという事で。話を戻しますとそういう風に力を持ってる場合があります。まだ艦娘のことは詳しくはわかってないんですけど、時雨ちゃんの場合その力が。」
そこで言葉を止めた明石さんの言葉につないで、小さく口にする。
「…予知夢」
「はい。夢だけじゃなくて、なんか嫌な感じがする、みたいなことも言ってましたけど夢が1番よく何かを当ててましたね。ほら、こんな機械着けて眠ってもらったのとか覚えてます?」
明石さんが取り出したのは、頭に取り付けるごついヘルメットのような機械。
なんとなく、それを覚えている気がした。
「なんだか時雨ちゃんで実験をしてるみたいで…というか実際にしてたんですけどね。怯えてる時雨ちゃんにそういうことするのがだんだん心苦しくなってきたし結果もあまり良くはなかったのでそのうち止めたんです。それで、最近はどうだったのかなと思ってさっき聞いたんですけど、」
最近、か。夢は毎日見ているけどそんな予知夢みたいな夢は…いや、たしか
「…あった。」
「本当ですか⁈内容とか覚えてます⁈」
「確か響が白いハンカチを僕の顔に近づけているっていうのが。あとはおやつがプリンだったこと」
「な、なんだかぱっとしない内容ですね。予知の能力使いこなせれば戦闘とか色々、危険を察知するのには役立つんですけど…制御できます?」
「…僕も今知ったばかりだからなんとも言えないかな」
「じゃあ今すぐ寝て見ましょうよ!」
明石さんは興奮した様子で僕の手を掴んで、壁際に置いてある仮眠用のベッドの方へ引きずっていく。
「私の使ってるので悪いんですけどここで寝てください。あとこれも着けてもらえますか?」
さっきのようなヘルメットのような物に加え、手首と胸につけるものがいくつか。
心苦しいと言っていたが嘘だったのだろうか。それとも同意があればいいのだろうか。
「腕のは心拍数を、胸のは呼吸を、頭のは脳波を測るやつです。……あ、嫌ならいいんですけれど」
興奮した様子から少し落ち着いたのか、僕の意見を聞いてくれた。
「私に強要する権力とかないので、本当に嫌だったらいいんですけど」
「やるよ。…機械は勘弁してくれると助かるけど」
「ありがとうございます!夢見たら内容教えてくださいね!」
まだ靴を脱いでいない僕をグイグイとベッドの上に押し上げようとしてくるので、慌ててベッドの下に履いている靴を落とす。
「ついでに白露さんも寝ます?リラックスしてると効果あるかもしれないですし」
「いいねー。ちょうどお昼寝したかったんだ。」
姉さんも隣に上がってくると仮眠用のベッドは随分と狭くなってしまった。
それでも隣に姉さんの温もりがありだけでどんどんと眠たくなってくる。
「起きたら呼んでくださいね。あとこの毛布使ってください。」
ふわり、と上からかけられた毛布は僕たち2人を包み込んだ。
明石さんと姉さんの臭いがする。
悪くない香りだ。
明石さんが、おやすみなさいと言って工廠の扉を閉めに行った。
姉さんが、時雨と寝るの久しぶりだね、と囁いた。
僕はようやく思い出す。
初めのうちはよく姉さんと一緒にいたな。
そのまま僕の意識は眠りへと落ちて行った。
あと設定を少し。
時雨は夕立と響と肉体関係を持っています。(百合)
夕立は村雨とも持っています。(ry)
白露と提督はやることやってます。