その日、海の上で。私はあの子を見つけた。
広がる青い空の下で。
青い目をした女の子。私とおんなじ服を着て、黒い髪を下まで垂らした女の子。
頭のてっぺんからはアホ毛がぴょこんと飛び出していて、背中には手に持って使うのだろうか、少し大きめの砲を吊っていた。
「こんにちは。はじめまして」
声を掛けると、その子のどこかを見ていた目が私を見つける。
「貴方のお名前は?」
その子は少しだけ低めの、小さな声で呟いた。
「僕は……白露型の2番艦、時雨だよ」
しぐれ。時雨。
「私は、白露型の1番艦の、白露。時雨のお姉ちゃんだよ!」
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「提督、新しい子拾ってきたよ」
「その服…白露型なのか」
「うん。ほら、時雨、挨拶して」
「……やだ…この人、怖い」
「なん…だと?」
「ふっ」
「おい白露今笑ったろ!」
「ごめんごめん…ほら時雨、大丈夫、この人はいい人だから」
「そうだぞ、お前に危害加えたりとかは「…ひっぐ…ぐす、えぐ。」
「あー!提督泣かせた!」
「………ごめんなさい、あっちに引っ込んでますね、白露さんは鎮守府の案内してきてくださいね」
「ごめん、言いすぎちゃった、元気出してって」
「…辛い。俺何かした?」
「あっ!提督さん新しい子泣かせてるっぽい!」
「へー、提督そんなことするんだ。…村雨、ちょっとがっかり」
「ちげえよ!俺は何も…してない、と、思うんだけど」
「もー、提督さん自信持って、提督さん結構いい人よ?」
「私達と同じ服着てるってことは白露型なの?」
「うん。…時雨、2人には挨拶できる?」
「…僕は、白露型2番艦の、時雨、だよ」
「なら、私達のお姉ちゃんっぽい」
「よろしくね、私は3番艦の村雨」
「4番艦の、夕立っぽい!」
「…うん、多分覚えた。よろしくね」
「さ、行こ!鎮守府の案内するっぽい!」
「え、あ、」
「夕立、そんなに引っ張らないの…提督、いい?」
「ああ、頼む」
「はいはーい、…鎮守府のちょっといいとこ、教えたげる♪」
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「男の人が怖い、とかなのかな」
「それか、姉妹以外が怖いとかなのかもしれんが…」
「…大丈夫かな、慣れてくれるかな。」
「こればっかりはこっちでどうにかできるもんでもないしな。…白露」
「うん。時雨のお世話ね。…また妹が増えて、なんか嬉しいな」
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(数時間後、食堂)
「…時雨、食べれる?……あ、食べ物って知識にあった?」
「うん、多分……口に入れて、噛んで、飲み込んだらいいんだよね」
「うん…じゃ、スプーン持って。これね。…食べる時には、頂きますって言うんだよ」
「…いただきます」
「ちょっと熱いから気をつけてね」
「うん…………!ぐ、ふっ、げはっ」
「わ、大丈夫⁉︎」
「…ごめん、汚しちゃった」
「いいの。後で片付けたらいいんだから……それで、どんな感じだった?」
「…飲み込もうとしたら、喉がぎゅうってなって、それで」
「大丈夫?今は苦しくない?」
「…うん」
「そっか………口移ししてみる?」
「くちうつし?」
「うん。私がよく噛んだのを、時雨のお口にちゅうって注ぎ込むの……どうかな」
「……うん。やってみたい」
「よし、じゃ、………………。ちゅ、」
「ん、…。んぁ、……んぐ、んくっ」
「…………っと、どう?」
「……ん、大丈夫」
「やったね。じゃ、慣れるまではこうやってちゅうってしよっか」
「うん…でも、恥ずかしくないの?みんな見てるよ?」
「時雨のためなら平気。じゃ、もう一回しよっか……。ほら!見せものじゃないんだから散りなさい!」
「姉さん、ほっぺ赤いよ」
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(数日後)
「あ!いた!時雨!」
「今時間ある?」
「うん…どうしたの?」
「ほら、時雨のその髪」
「垂れてるの邪魔じゃない?」
「…たしかに、わさわさするかも」
「やっぱり!ほら、こっちの部屋来て」
「ここに座って」
「わっ…」
「髪触るけど、触ってほしくないところとかある?」
「ううん、とくに」
「なら、最初は私とおんなじにしてみるわね。………っと、……。よし」
「はい鏡」
「……なんだか、すごく変わったね」
「他にも変えてみるわね」
「時雨、髪長くて綺麗だから…ポニーテールとか」
「…、………、と、はい」
「鏡ね」
「……可愛いけど、なんか後ろでぴょこぴょこしてるのが落ち着かない、かも」
「じゃ、今度は三つ編みね」
「。……………?…うーん」
「…どうしたの?」
「なんでもないっぽい」
「もう一回編み直すわね…今度は一本にして、…………左に垂らしてみたら、と……うん」
「はい、かがみ」
「……あ、これいいかも。…結構すきかも」
「なら、これで決まりね………夕立、」
「待って……。うー、私黒いのしか持ってないっぽい」
「私のも、紫とか青色とかならあるんだけど…。」
「時雨の髪でも目立つ色がいいよね。赤とかオレンジとか」
「ま、無い物は仕方ないわね。とりあえず黒いリボンでとめとくね」
「時雨、今度一緒に買いに行くっぽい」
「…うん」
「じゃ、練習っぽい。自分でも出来るようにならなきゃね」
「やり方の知識はある?」
「……あるにはあるけど、一から教えてくれると嬉しいな」
「わかったわ。夕立、鏡そこで持ってて」
「ぽい」
「じゃ、最初からね。まず、ここから髪をすくって1つにまとめて、この時にーーーー
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(また数日後)
「よし、こんな感じかな。どう?秘書官のお仕事覚えられた?」
「……うん。大体なら」
「あとは俺と2人でも仕事出来るようになればいいんだけどな」
「……ごめんね、嫌いなわけじゃないんだけど、まだちょっと怖くて」
「いい。ま、何かあったら言えよ。時雨が俺の事どう思ってたって、出来る限りのことはしてやるからな」
「ありがとう………あれ、」
「時雨、どうした、」
「…なんだか、ふわふわして」
「…時雨、悪いな、触るぞ」
「う、ん」
「脈、は、問題なさそう、呼吸も、体温もおかしくはないのか…白露、明石呼んでこい」
「わかった」
「時雨は…ソファーまで行けるか?」
「うん…なんとか」
「眠いなら寝てていいからな、無理するなよ」
「…ありがとう」
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夢を、見ている。
生まれてから何回か目の夢。
でも、これは今までとは違った。
正面にあるのは黒い村雨と夕立の写真だ。
桃色のフレームに収まった2人っきりのツーショット。
ピキリ、と写真の上のガラスにひびが入る。
砕け散った。
黒い何かが、写真の裏側から村雨を貫いた。
写真から赤い雫が滴り落ちる。
穴が空いた写真を残して、貫いた何かは闇に溶けていく。
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誰かに話しかけられた。
「村雨を助けないと」
初めて聞いたはずなのに、その声はどこかで聞いたことがあって……
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「…あ、時雨ちゃん、起きましたか?」
「…あかし、さん?」
「はい。明石です。気分はどうですか?」
「………村雨が、」
「はい?」
「村雨が死んじゃう‼︎」
「待ってください、時雨ちゃん落ち着いて、」
「提督、提督はどこ⁉︎」
「今ちょっと出てて……あ、戻って来ましたよ」
「お、時雨おきたのかって…何があった」
「時雨ちゃんが、村雨が死んじゃうって…」
「お願い提督、村雨を助けて!」
「………よし、任せろ」
「提督⁉︎……あーもう、何か考えがあるんですね」
「ああ。…初めて頼ってくれたんだから、なんとかしないとな。明石、海図もってこい」
「そこの机の上に置いてますよっと…これでいいですか?」
「ああ。今日の観測結果出てるか?」
「気温は…関係ないんでしたね。海温は、こことここと、ここは出てます。風はこっちからこっち……本当に、提督どうやってこんなので場所わかるんですかね」
「ふっ…ちょっとな。…明石、現在時刻」
「1103です。…村雨ちゃんと夕立ちゃんが出てちょうど2時間ですね」
「なら……大体この辺か。……ここ、すっごい嫌な予感するんだけど」
「うそ…じゃ、村雨ちゃんと夕立ちゃんは深海棲艦に襲われた可能性も?」
「…明石、この前艦娘探知できる電探作ってたろ、あの範囲広いやつ。あれもってこい。……あと、アレも引っ張り出してこい。アレ使えば間に合うかもしれん」
「アレ……って、アレですか?」
「白露なら使えんだろ…時雨、行くぞ」
「う、うん…何があったのかよくわかってないけど…」
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「提督に呼ばれてきたけど…明石さん、なんなんこのでっかいの」
「艤装に後付けするブースターの試作品ですね。…名前は、…土星エンジンとかどうでしょう?」
「…なんでそんなに不穏な名前なの」
「不穏なものなんです。出力上げすぎて制御できない欠陥品、稼働させ続けるとオーバーヒートする。……提督が、白露ちゃんならって」
「まあ私なら……」
「やれるだろ?」
「うん。…妹のためなんだもの」
「艤装に繋ぐから少し待ってくださいね。電探もバカでかいのつけますから重さかなり変わっちゃいますけど…」
「なんとかするよ」
「わかりました…提督、ちょっと手伝ってください」
「わかった」
「…………姉さん」
「ん?どうしたの?」
「帰って、くるよね…姉さんも、村雨も」
「もちろん」
「……姉さんがいなくなったら、僕、」
「大丈夫だって……そうだ、心配なら一緒に来る?」
「…え、」
「時雨も、一回海出てみようよ。…っていっても海で出会ったんだけどね私達」
「……僕が」
「うん………あ、そうだ、ちょっと待ってて。すぐ戻って来るから」
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「ただいま。…はい、これあげるよ。もう使ってないから」
「赤い…リボン?」
「私が昔使ってたやつ。……それ、御守りにしてよ私と村雨と時雨が、ちゃんと帰ってこれるように」
「……うん」
「付いてきてくれる?」
「うん」
「よかった。…じゃあ、…時雨なら髪かな?そこの黒いリボンの代わりに………よいしょ」
「…ありがとう。姉さん」
「白露ちゃん、終わりましたよ」
「はーい。ついでに時雨の艤装も海の方に回しといて」
「わかりました。時雨ちゃんも出るんですね」
「うん…行って来るよ」
「はい。いってらっしゃい。…の前に、白露ちゃん、こっちに」
「?」
「はい、プスっと」
「い……何注射したの?」
「ドーピングですね。ちょっとでもエンジン使うとき楽になればと」
「ありがとう…じゃ、ドック空けて待っててね」
「はい」
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「白露、ちゃんと背負ったか?」
「いつでもいけるよ。時雨もちゃんと掴まった?」
「うん。」
「よし、じゃあ点火するぞ」
「おっけー…行って来るね」
「早く帰ってこいよ……じゃ、点火まで3、2、1、今」
「…え、はや、」
「何このG、うぎゃー!」
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「て、提督」
「大丈夫だろうよ。白露なら。…明石、長風呂してる奴らにバケツぶっかけに行くぞ」
「…人使い荒いんですから、もう」
「お前じゃなきゃこんなことしねえよ」
「それ白露ちゃんに聞かれたらやばいですからね」
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「時雨ー!ちゃんと捕まってるー⁉︎」
「なんとかー!」
「あのさー!…明石さんのおくすりもう切れちゃったみたい!」
「え」
「さっきから景色見えない!」
「それって大丈夫なの⁉︎」
「電探は生きてるから、なんとか!」
「それでどうやって村雨達助けるの⁉︎」
「時雨の出番だよ!私だけじゃ無理だったからついてきてもらって正解だった!」
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「村雨、前に!」
「砲撃、2、1、今」
「右に、援護するっぽい」
「1つ、2つ、いっこ落とした!」
「いける…当てた…つぎ…村雨!下‼︎」
「うっそ、グギッ」
「村雨‼︎」
「い、ける、まだ…ああ、砲落としちゃった。…魚雷全部脱落、」
「下がって…もダメ、しゃがんで」
「さっきの…何かの触手みたい。下も気配って」
「正面!蹴って!」
「またコイツっ…夕立‼︎」
「3本⁉︎、むり、避けきれな「夕立ぃっ!」
「村…!また変に庇って!」
「だい、じょうぶ?」
「村雨が庇ったからね、でも」
「…私の方が、ダメみたいね」
「許さない!勝手に村雨だけ死んだら許さないんだから!」
「生きたいわよ、私だって!」
「だったら……まって、何か来てる」
「これ…姉さんの識別信号?」
「…速すぎない?」
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「村雨と夕立をかすめるように行ってそのまま鎮守府に帰るよ!…ちゃんと掴んでね!」
「でも、」
「ちゃんと合図するから!右に手出して!」
「…わかった!」
「あと5…4、3、
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「夕立、見える?」
「光の塊が…左に、」
「私達を拾って帰るつもりなのね…下から来るわよ」
「…接触までカウントして。私に飛んで。村雨掴んで掴まるから」
「できるの」
「やるしかないっぽい」
「いくわよ、3、2、1、」
「掴んだ…届けぇっ!」
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「よーし回収成功!」
「村雨、血が、」
「私は大丈夫、それより、」
「白露、下っぽい!」
「なにこれ、触手⁉︎……チッ、一本掠った、時雨!何か取れた⁉︎」
「メーターが1つと…パイプ一本持ってかれてる!」
「やっぱり!…ブレーキきかないもん」
「え、今なんて」
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「明石、どうだ」
「あと少し…つながりました!」
「白露!聞こえるか!」
『提督!あのね!ブレーキきかないの!どうしよ!』
「…明石、」
「白露ちゃん、よく聞いてください、エンジンはがっつり固定しちゃってるんで艤装ごと外してください。…2人はどうです?」
『連れて来たよ!…でも、村雨が怪我してる!』
「夕立ちゃんが抱えて降りれますか?白露ちゃんは、艤装解除したまま飛び降りてもらうしか……。ドックの準備はできてます。…出来るだけ早く連れて帰って来てあげてください」
『わかった…提督!』
「なんだ?」
『大好き!帰れなかったらごめんね!』
「許さねえ!帰ってこい!」
『わかった!』
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「夕立、村雨抱えて下りれる⁉︎」
「いけるっぽい!……村雨」
「…ちょっと眠いの……夕立、私の命、預けていい?」
「…任せて。いっぱいいっぱい、おやすみなさいっぽい」
「じゃあ、ちょっと、だけ…」
「夕立!」
「大丈夫!…いくよ。白露も時雨も、ちゃんと帰って来てねっ!」
「………大丈夫、ちゃんと着水できたみたいだよ姉さん!」
「よーし!次私達だね。…私達ってさ、艤装ないとすっごく脆いじゃない?ちゃんと受け止めてね」
「…大丈夫、きっとなんとかなるよ」
「いい?いくよ?」
「うん」
「「せーのっ!」」
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「白露、大丈夫だった⁉︎」
「うん…時雨は疲れたって言って寝ちゃったけど、時雨の艤装借りたから。帰るだけならなんとか」
「………ねえ白露」
「どうしたの夕立?」
「あのえんじん、鎮守府の方に飛んでってない?」
「あ」
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「おい明石、あれこっちに来てね?」
「言わないでくださいよ、せっかく現実逃避してたのに!」
遠くから進んでくる光の塊。大まかに計算したけど、あれじゃドックに突っ込んじゃいますね。
「…提督、止めて来ますね」
「どうやって」
女神積んで体当たりですかね、と呟くと、提督が顔を歪める。
「大丈夫ですよ。女神の力は、私が1番研究したんですから」
大体なんでも知ってます。一度、死の淵を覗いてしまうことや、痛みは無効化してくれないことも。
「提督は、いつも通り私に命令してくれればいいんですよ」
提督を心配させないように、いつも通りににへらっと笑う。
やっぱ痛いかな。あれ、丈夫めに作りましたし。
「このままだと、ドックも工廠も吹き飛んで村雨ちゃん治せなくなっちゃいますよ?」
時雨ちゃんのお願いなんでしょ?初めて頼ってくれたんでしょう?
提督が、ゆっくりと口を開きました。
「頼む」
「やだなあ、そんな顔しないでくださいよ。死んだりしないんですから」
艤装を背負って海に飛び込んだ。
提督に言われて海に出るのは久しぶり。
なんだかとっっても気持ちがいい。艦娘の性質なんでしょうか。それを調べてみるのも悪くないかもしれない。
でも今は、あれを止めないと。
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「いった…いなぁ」
『明石』
「あ、無線は生きてたんですね」
『…起きたなら、早く帰ってこい。村雨直してもらわないと困る』
「うへぇ、ちょっとぐらい休ませて…なんて、言ってる暇ないですね」
『…すまんな』
「提督は謝らなくていいんですって。…大好きですよ?私も、提督のこと」
『………』
「やだなあ、冗談ですって。…ひとつ、お願いしてもいいですか」
『……なんだ』
「村雨ちゃんを元気にできたら、褒めてくれませんか?…褒めてくれるだけでいいんです。提督には、それ以上求めませんから」
『……ああ、いくらでも褒めてやる』
「…ふふ、ありがとうございますね」
『……早く帰ってこい。村雨、そろそろつくらしいから』
「はい。すぐに」
鎮守府に向かって、起こした体を走らせる。
結局、私は村雨ちゃんを元どおりに治してあげることができず。それからはちょっと村雨ちゃんと気まずかったり。自責で泣いてるところも見られちゃいましたしね。
提督への片思いも、潰えました。…白露ちゃんには信頼でも負けてますし、なにより白露ちゃんはちゃんと妹達を連れて帰ってきたのに、私は提督に言われた、村雨ちゃんを治すという命令も果たせませんでしたし。
今となってはいい思い出。…なんて割り切れたらよかったんですけどね。
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つい明石さんの好意を提督に向けてしまった。