壊れた女の子   作:天城修慧/雨晴恋歌

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時雨の恋心2

 

入渠といっても、普通のお風呂とそれほど変わらない。艤装は別の場所で修理するし、怪我をしていない状態で入るならもはや差などない。

 

ドックは広くて、十数人程度なら一緒に入れる広さだ。それを3人で使っている今はなおさら広く感じた。

 

「時雨、先に上がってるね」

 

夕立がぱしゃり、とお湯を散らしながら立ち上がる。

それと同時に、ある箇所が大きく揺れた。

どうして僕は、こんな事が気になってしまうのだろうか。

普通のおんなのこなら、何も感じないだろうに。

やっぱり僕は異常なんだろうか。

 

夕立が扉を開けて、脱衣所に出ていった。

夕立と自分自身の思考に気を取られていると、不意に背中に柔らかさを感じた。

 

「時雨、邪魔者はいなくなったよ。愛を語り合おうじゃないか」

「僕は響とそんな関係になったつもりはないんだけど」

 

少しわざとらしい声がして、背後から回された白い腕が首に絡みついた。

 

「別に私との事じゃなくても…愛の事じゃなくてもいいさ」

「っ、…どうして、」

 

絡みついた腕が、軽く締まる。

 

「私と、時雨の仲だろう。いつもみたいに私に話してくれればいいさ」

「…響に相談なんて、数えるくらいしかした覚えないけど」

「…時雨はノリがわるい」

 

響の右腕だけがするりと解けて、僕の顔をほぐすように優しく撫でた。

 

「残念だけど、私には時雨が悩んでるだろうってことはわかっても、まだ何を悩んでるかはわからないから」

 

だから、話してほしい。

 

響の声につられて、僕は口を動かした。

響なら、僕が何を言ってもいつも通りつつみ込んでくれる気がして、

響になら、言っても許されるのではないかなんて思ってしまった。

 

「僕、ね。……女の子を好きになっちゃったみたいなんだ」

 

少しの空白の後、響の腕が緩むのを感じた。

僕はその腕をすり抜けて、逃げるように立ち上がる。

 

「ごめんね、変なこと言って。忘れて、いいから」

 

今更ながらに後悔が重くのしかかる。

感じた寒さを誤魔化そうとてのひらで肌を擦る。

 

「ごめん、僕どうかしてるよ。少ししたら、またいつもの時雨に戻れるから、少しだけ…」

 

ぎゅうぎゅうする胸を押さえながら、響から逃げようとして、

もう1度、柔らかさに包まれた。

 

「大丈夫だよ、時雨。おかしくなんてないさ」

 

胸の下に回された手が、少しづつ僕の苦しみを忘れさせてくれた。

 

「多分、夕立だろう?…別に、人を好きになるのにおかしい事なんてないよ。相手なんて関係ない。」

 

本当に正しいのかなんてわからない。それでも響がそう言ってくれるなら、僕は少し、楽になれる気がした。

 

「それに、好きって気付いてるのに、その気持ちを抑え込むことほど、苦しいことはない。……そんな思い、時雨にはしてほしくないよ。」

 

小さいけども、はっきりと、響の声が聞こえた。

 

「大丈夫。私はどんな時雨でも嫌いになったりなんてしないから。」

 

 

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時雨が、私の事を好いてくれたら、どれほど嬉しかっただろうか。

 

それでも、時雨には苦しんで欲しくはない。

 

時雨が夕立と結ばれて、私の入る余地がなくなってしまっても、

 

 

こんな苦しい思いをするのは私だけでいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

苦しいよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

たすけて、時雨。

 

 

 




あー時雨とお風呂入りたい
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