壊れた女の子   作:天城修慧/雨晴恋歌

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時雨の恋心4

 

 

 

 

僕は改二になってから、少しだけ嗅覚が良くなった気がする。

 

艤装の改装をした結果、それを装備する体にも影響が出ることはよく知られているが、背が伸びたり、目の色が変わったりする以外の変化もあるんだな、と改装当時は思った。

 

この犬の耳みたいな髪ーーどうやら時々動いているらしいーーといい、僕は犬に近づいているんじゃないかと考えて、すぐに怖くなって頭の中から追い出した。

 

人間の嗅覚は、味覚と比べるとはるかに少ない刺激でも敏感に嗅ぎ分ける事が出来るらしい。

 

警察犬というものもあるが、空気中に散らばった匂いをかき集めるのでないなら……そう、触れ合うぐらい近くにいる誰かの匂いなら、僕はその匂いが誰のものかぐらいはわかる。

 

今、僕の隣にある匂いは…

 

「…姉さんと、提督?」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

目がさめると提督の部屋の大きなベッドの上だった。

 

「あ、時雨も起きたんだね」

 

右耳に、姉さんの静かな声が入ってきた。

左側には、寝息を立てている提督の気配がする。

 

「提督からお話聞いたんだけど…大丈夫だった?」

「…そうか、僕、きのう、」

 

あの夢で起きたあと、ふらふらと提督の部屋まで来て、提督の首に、この両手を掛けて、

 

自分の目から、涙が溢れるのがわかった。

 

「姉さん、僕、こわかったよっ…!…提督に、あんなこと…!」

 

提督の命を奪おうとしたという事実が、今になって重くのしかかってきた。

 

夕立も、僕自身も幸せになんてなるはずないのに、何も分からなくなって、殺したくなんてないのに、

 

自分自身が怖くなって、隣にいる姉さんのぬくもりに縋り付いた。

 

「姉さん、姉さんっ、」

「…うん。大丈夫だからね、時雨。」

 

それだけ言って、姉さんは僕を優しく撫でてくれた。

 

身を預けて少しして、落ち着いてきてから姉さんに意識を向けると…やっぱり、抑えきれない怒りの感情を感じた。

 

僕は…きのう、

 

 

姉さんの最愛の人を、殺そうとしたんだ。

 

 

もし夕立が死んじゃったとしたら。

僕たちは戦う身だから、今日にもその時は訪れるかもしれない。

とても怖くなった。

 

「ごめん……ごめん、なさい」

「謝らないでよ。私は時雨のお姉ちゃんなんだから。…時雨の敵じゃないんだから」

 

そんな禁忌を犯そうとした僕を、姉さんは許して……違う、僕の姉だから、と我慢していた。

 

姉さんの腕が、ぼくをぎゅっと締め付ける。

 

「ねえ、時雨…言いたくなかったらでいいんだけどね、……昨日のこと、時雨から教えて。時雨が感じたことを、そのまま」

 

こういう言い方は良くないとわかっているんだけど、それでも姉さんはずるい。

 

姉さんにお願いされて、僕は断れた試しがないのに。

今まで、一度だって。

こんなにも僕を心配してくれているんだから。

 

「聞かせてくれる?」

 

僕は無言で、しっかりと頷いた。

 

 

「ねえ、時雨。………提督に何されたの?」

 

 

………………ん?

 

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〜解説、白露姉さんの勘違い〜

 

時雨「提督に、あんなこと(しちゃって)!」

白露「提督に、あんなこと(されて)!」

 

時雨「(提督にあんなことして)ごめん…ごめん、なさい」

白露「(姉さんがいるのに、提督とこんなことになって)ごめん…ごめん、なさい」

 

別に白露ねえちゃんがえっちだとかそういう訳ではなくって、単純に提督が日頃信用できない行為してるから勘違いしただけなんですけど、そんな勘違いしちゃう白露はえっちだと思います。(何言ってるんだこいつは)

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

あの後、姉さんは提督を文字通り叩き起こした。

 

提督は、人には知られたくないんじゃないかって、うまく隠してくれていたらしい。

僕からと提督からと、2人で説明したら誤解は解けてくれたみたいで、

 

「ああうん、しっと、怖いよね。私も提督殺しそうになったことあるもん」

 

とのこと。

 

何回も信頼している相手から殺されそうになるなんて少し可哀想だな、と思ったけど、僕達みたいな女の子を纏める仕事である以上、そういう感情は避けては通れない問題なのだろう。

 

「ごめんね、提督」

「ああいや、今こうして生きてるし、気にしてないからいいんだけど」

 

提督はひだり頬に残った紅葉のようなあとを撫でながら言った。

 

「それだけ、好きなんだろ。……頑張れよ。頑張ったら、大抵のことは上手くいくから」

 

ベッドの上であぐらをかいている提督の背中から顔を出して、姉さんは笑った。

 

「大丈夫だよ。好きって想いは思ってるより簡単に伝わるから。時雨が好きなら、ちゃんと伝わるよ。」

 

そういえば、姉さんは提督から告白されていた。

その姉さんが言ってくれると思うと、少し気が楽になった。

 

提督が僕の体を控えめに抱きしめて、姉さんが背中越しに僕の頭をわしわし撫でてくれる。

 

「なんだかこうやって話してると、…子供ができたらこんな感じかなってなるなぁ」

「白露が……お母さん⁈」

 

提督はどうしてそこに反応したんだろうか。

 

 

 

僕は夕立にちゃんと想いを伝えて、提督と姉さんみたいになりたいと思った。

 

 

 




嫉妬で人を殺しそうになるなってそう多くあるわけじゃないと思うし、二回も殺されそうになる提督は絶対不幸。

いや白露をおよめさんに出来るとか幸せすぎないか……?

ヤンデレっちゃヤンデレかもしれないけど壊れた女の子だから仕方ないね
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