アナログで書き終わってるから、みたいなことをぬかしておきながら投稿期間が少し開いたことをお詫びします。
理由としては、リアルで用事があったことと、友人に見せる用に書いていたものを投稿する際、顔も知らない方々相手に読んでいただくには不適切である部分の修正とそれによって生まれた物語の齟齬を埋めるための修正に時間がかかったからです。
僕は今、寮の裏側で人を待っている。
海とは反対側で、この先にはもうなんの施設もなくて、ただちょっとした空間があるだけの場所。
誰かとナイショのはなしをするには丁度いい場所だ。
ドキドキしながら響の言葉を思い出した。
そのまま口にする。
「人を好きになるのにおかしい事なんてない、」
そして、姉さんと提督。
「頑張ったら、大抵のことは上手くいく……想いは、思ったより簡単に伝わる。」
告白のために、夕立をここに呼び出して、ドキドキをおさえつける為にみんなの言葉を口にして、それでもやっぱり抑えきれずに僕の心臓は暴れ回っている。
初めて海に出た時だって、危ない作戦の時だって、こんなに緊張したことはなかった。
1回、2回、大きく深呼吸して、ドキドキする胸を撫でつける。
僕は、夕立が好きだ。
たった数文字の言葉、単純な僕のキモチ、
僕の恋心。
じゃり、じゃりと誰かが地面を踏みしめながらこちらへ近づいてくる音がする。
今なら、言える気がする。
今までずっと言えなかったことが。
少し落ち着いた鼓動と反対に滲み出たてのひらの汗を服の裾でぬぐった。
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先ほどまでは、あんなに簡単そうだったのに、夕立の赤い目を見てしまうともうダメだった。
「どうしたの?こんなところに呼び出して……しぐれ、大丈夫?顔色よくないけど、」
だいじょうぶ、と声を絞り出して、
小さく息を吸って、口を開いて、
「っ……!」
それでも言えなくて。
「どうしたの?どこか痛いの?」
夕立が1歩僕に近づいた。
抑えていた心臓が暴れ出す。
「あのね、夕立、……ぼ、ぼくは」
膝が震えているのがわかった。
目の前がぎゅっと暗くなって、頭がまっしろになりそうになる。
「僕はね、……ぼくは、」
言いたい。
言いたいのにやっぱり怖くて、
何度も口を開いては閉じる。
「しぐれ……やっぱり何処か悪いの?苦しいなら明石さんのとこ行こ?」
苦しいよ。
心配そうに夕立がかけてくれた声を首を振ることで否定する。
言うことが怖い。
夕立との関係が壊れてしまうのが怖い。
夕立におかしいと言われてしまうのが怖い。
でも、
夕立に、この想いを伝えられないまま死ぬのは、もっと怖い。
「……時雨、ゆっくりでいいから、聞かせて欲しいな」
夕立が、僕の握りしめた拳に触れて、その指を解いていく。
少しだけ苦しさが和らいで、
「夕立、ぼくは…僕はね、」
「うん。」
「僕は、時雨はね、」
「うん」
「夕立が、君のことが、好きです」
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「しぐれ、好きって………そういうふうな意味でいい、のかな」
何十分にも感じられる静寂の後、夕立が小さな声で問いかけてきた。
怖くて夕立の顔が見れない僕は、俯いたまま、小さくうなずいた。
「あのね、夕立はね、しぐれとは違う方の意味で、時雨が好きっぽい」
もしも夕立も僕のことを好きだったら、なんてことはあり得ないとは思っていたけど。
それでも実際に言われると、想像していたのととは比べものにならない衝撃があった。
「でもね、私はね、」
ぎゅうっと体に圧迫感を感じた。
夕立の腕に抱きしめられた、とすぐにはわからなかった。
「私が時雨と同じ意味で時雨を好きでも嫌じゃないしね、……今しぐれに言われて、そう言うことを考えてね、…夕立もしぐれとおんなじほうの意味で時雨を好きになったんだと思う」
「私は、夕立は、貴女のことが好きです」
溢れ出る嬉しさは僕の好きだという感情に、間違いはないと証明してくれていた。
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いけないとわかっていても、見るのを止めることは出来なかった。
時雨は無事、夕立に告白して、
夕立も時雨のことが好きだと言って。
嬉しい。
時雨も夕立も幸せそうで、嬉しいのに、悲しかった。
私は、嬉しさと悲しさ……想いは矛盾しないのだと知った。
時雨を愛する気持ちと、時雨を壊してしまいたいという想いも、矛盾しないのだと知った。
「時雨の恋心」は一応これで完結です。
次からは「響と恋心」を投稿していきます。