やっと…やっとだ…私は解放される…!
時雨を夕立を響を、彼女たちが笑う様を想像し、創造することができるようになる…!
時刻は夜。場所は提督の私室の前。
ノックしようかな、と思ったけどもし寝ていた時に起こしてしまうのも悪いので控えめに扉を叩く。
「…えっと、誰?入っていいけど…」
提督の声を聞いてから、ドアノブをつかんでゆっくり回す。
少し緊張しているのを誤魔化そうとして、小さく笑みを浮かべながら扉を開いた。
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扉を開いて入ってきたのはいつぞやの時と同じ寝間着を着た時雨だった。
その時起きた事を思い出して後ずさりしそうになるがあいにく壁際に置かれたベッドの上で本を読んでいた俺には逃げ場はない。
「こんばんは。…今日は、起きてるんだね。」
おいおい。いま「今日は」って言っちゃったよ。前回のこと少なからず意識してるよ。
取り繕うようにつけられた笑顔に恐怖心を感じないでもないが、それを無視して話しかける。
「えっと…どうしたんだ?こんな時間に、」
「ねえ、提督の隣に行ってもいいかな」
質問の答えの前に返された質問に、つい「ああ」と返事をしてしまう。
とん、とん、と時雨が近づいてくるたびに、例えようのない圧のような物を感じた。
白露とケッコンしてから買った少し大きなベッドの中で、俺の右隣にちょこんと座る。
右側は警戒心が薄い、みたいな話をどこかで聞いた気がした。
「今日はね、提督とお話ししたくて来たんだ。…大事なだいじな…ね。」
時雨の笑顔が少しだけ剥げて、いつもの、深海棲艦に対する表情が浮かんできた。
落ち着け…選択肢を間違えれば、終了してしまうかもしれないんだ。慎重に、かつ的確に、素早く正解にたどり着けば…
時雨の手が伸びて、この前掴まれたあたりをさまようようになでる。
「ねえ、殺されそうになるって、どんな気持ちなの?」
ダメみたいですね。
「提督は、姉さんになら殺されてあげそうだよね。……たとえば僕が、提督を自分の物にしたいって言って殺そうとしたら……どんな風に思うの?」
時雨がずいと顔を近づけて来て、青色の瞳が俺を見つめる。
時雨の手が首を軽く締め付けた。
「どっちがその人の為になるんだろね。死んであげるのか、その人が殺人者にならないようにするのか。……まあ僕たちは、アイツらを嫌という程殺してるんだけど。」
それはもう殺人者だから殺すのになんの抵抗もないということでしょうか…
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ぽこん、と飛び出た提督の喉仏を指でくりくりといじってみる。
「ねえ提督、何か言ってよ」
静寂は、妙に居心地が悪かった。
「ねえお願い。……教えて、じゃないと僕は、」
響にも、夕立にも、どういうふうに接していいのかわからない。
僕だけじゃ、僕は自分が正しいのかわからないから、
提督の言葉をもらえるなら、
それを正しいと思えるのなら、
「あー、そうだ、そうだな、」
提督の喉を包み込んだ両手に声を感じ取った。
「まあ、怖い、かな。それが信頼できる相手なら、俺何かしたかな、とか。……何か悩んでるなら、なんとかしてあげたいとか。」
そこで提督が1度口をつぐんで、
「……時雨、何か俺にできること、あるか?」
その言葉を聞いて、僕の心はかたまった。
決めた。僕は、響を助けてあげたい。この前の僕のように苦しんでいるのなら、なんとかしてあげたい。
夕立も悲しませたくない。僕を受け入れてくれた夕立だけは、何があっても。
「ねえ提督、もう1つだけおしえて」
「ああ、いいぞ。何でも言ってみろ」
首にかけていた僕の手を外しながら提督が答える。
僕の両手を包む手のひらは、とっても大きい。…これは、信頼できる、かな。
「好きな子と、2人と関係を持つ方法を教えてください」
「は?」
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いろいろと提督に事情を話した結果、とりあえず姉さんのところに行くことになった。
のだが、
「うーん、難しい、かな。気持ちなんて夕立と響によるとしか言えないし……上手く答えてあげられなくてごめんね?」
答えは、あまり良いものでは無かった。
座っていた姉さんの部屋のベッドに後ろ向けに倒れこむ。
「…そうだよね。本当は夕立と響の所に行くべきなのに」
「まあとりあえず明日だな。しっかり寝て飯食ってからだ」
「私の胸触りながら言うのやめてくれない?」
視線だけ2人の方に向けると、提督のあぐらの上に座っている姉さんに、背後から二本の腕が伸びていた。
ならば、とするする下に降りて行くてをはたいて姉さんは言葉を続ける。
「ごはん食べた後、私の所に来て。2人には私から声かけとくから。…提督、私たちの午前中ちょっと貸して?」
「まあいいけど…俺は仕事が外せんから頼むぞ。……艤装の使用許可も出すから、何かあったら頼む。」
「大丈夫。まかせて。最悪だけは何があっても潰すから」
体を大きく捻って、提督の唇を啄んでから立ち上がった姉さんは部屋の押入れに向かって行き、中をごそごそといじり始める。
少し小さく聴こえた、
「3番倉庫のカギ貸して?あとでちょっともの取ってくるから」
と言う声に「いいぞ」と返してから、手持ち無沙汰になったのか提督は僕の体を触り始めた。
「えっと、提督…」
「ああ、嫌だったか?」
「…イヤじゃないけど」
1度止まった手がまた、僕の体を触り始める。
頭をわしゃわしゃと撫でたり、ほっぺをむにむに触ったり、握手をするように僕の手を握ってみたり。
不快ではないんだけれど、少し変な感じがした。
不意に提督が口を開く。
「頑張れよ。頑張れば大抵のことは、」
「上手く行くんだよね?」
提督の手をぎゅっと掴んで、小さく笑いかける。
それをポケットに何かを入れながら戻ってきた姉さんが見て、
「あ!提督何やってるの〜!」
と駆け寄ってくる。
怒られるかな、と思ったけれど、ベッドまで来た姉さんは提督と僕を挟むように隣に座った。
「私も時雨といいことしたい!」
いいことって何なのだろうか。
じゃれついてくる姉さんと提督にいろんな所を触られる感覚が、明日のことを随分と楽にしてくれた。
「…ありがとう」
提督の手は、どこか少し遠慮しているように、
逆に姉さんの手は遠慮なく際どい所まで、
ただ、2人とも、とても暖かかった。
最近、尊すぎて死ぬ、という感覚を理解出来るようになったしゅえさんです。
用事が沢山あったけど全部消化できたのでまた文字を書く時間が取れるようになりました。