ラブライブ! ジードサンシャイン!!   作:ベンジャー

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第12話 『9人のAqours』

2年前、浦の星学院スクールアイドル部にて。

 

「・・・・・・へっ?」

「私、スクールアイドル・・・・・・辞めようと思う」

 

まだスクールアイドルとして活動していた時期の、唐突に告げられた果南から放たれたそんな言葉。

 

それを受けて鞠莉は目を見開き、突然の果南の発言に対し、彼女は困惑するばかりだった。

 

「なんで・・・・・・? まだ引きずっているの? 東京で歌えなかったくらいで・・・・・・」

 

鞠莉は次のライブで自分達が使う予定の衣装を両手に持ちながら、東京でのスクールアイドルのイベントで失敗してしまったことを果南が引きずってそんなことを言っているのだろうかと思ったのだが・・・・・・。

 

「鞠莉、留学の話が来てるんでしょ? 行くべきだよ」

 

しかし、果南は鞠莉の問いかけには応えず、彼女は鞠莉の留学関係の話に話題をすり替えると果南は鞠莉に留学に行くべきだと言い出したのだ。

 

「どうして? 冗談は辞めて! 前にも言ったでしょ? その話は断ったって・・・・・・。 ダイヤも、なんか言ってよ!!」

 

どうやら鞠莉の中では、スクールアイドルの活動を続ける為にも留学の話は断って既に終わった話のつもりだったらしいのだが、いきなり果南はそのことを話題に出して留学を進めだし、そんな彼女に鞠莉はダイヤに助けを求めるのだが、ダイヤは黙ったまま、ただ彼女は複雑そうな表情を浮かべながら目を反らされてしまったのだ。

 

「ダイヤ・・・・・・?」

 

ダイヤなら、果南に何か言ってくれるのではないかという期待を抱いた鞠莉であったが、鞠莉が予想していたものとは違う反応がダイヤから返ってきたことで鞠莉は激しく動揺し、そんなダイヤの様子から鞠莉は「まさか・・・・・・」と嫌な予感が過ぎるのを感じた。

 

「ダイヤも同じ意見・・・・・・。 もう続けても、意味が無い・・・・・・」

 

果南は鞠莉にそう冷たげに言い放つと、彼女はダイヤと共に部室を立ち去ろうとするのだが・・・・・・。

 

「果南! ダイヤ!!」

 

そんな立ち去ろうとする2人を鞠莉は必死に呼び止め、自分の手に持つ衣装を果南とダイヤの2人に見せるのだが、果南もダイヤも、彼女等はこれ以上スクールアイドルとしての活動を続けるつもりはないようで果南は鞠莉に対し、これでお仕舞いにしようと告げるのだった。

 

「終わりにしよう・・・・・・」

 

 

 

 

 

そして現在。

 

「夏祭り!?」

「屋台も出るずらぁ~」

 

現在、Aqoursの6人+無爪とモコは十千万の待合室で今度沼津で開催される夏祭りから「ライブをして頂けませんか?」というオファーが来きたことで、千歌達はそれについて自分達はどうするのかと思い悩み、ライブをするのか、しないのかと話し合っているところであった。

 

「これは・・・・・・痕跡! 僅かに残っている、気配・・・・・・!」

「モコォ~!」

「善子ちゃん話聞いてる? っていうか何してんの? 痕跡? 花丸ちゃん、通訳できる?」

「ヨハネよ!」

 

無爪は夏祭りをどうするのかという話を自分達はしているのだが、善子はなぜかそれらの話に加わろうとはせず、何時もの返しを無爪にはしつつ、、彼女は背中にモコを乗せながらなぜか椅子の上に寝そべって頬ずりをしていたのだ。

 

「どうしよう、東京行ってからすっかり元に戻っちゃって・・・・・・」

「気にすることないずら無爪くん。 何時もの堕天使モードが発動しているだけだから放っておくずら」

 

そんな善子に、ルビィとのっぽぱんをリスのように囓っている花丸は彼女に呆れたような視線を向けつつ、2人はこのまま善子のことは放置することを決めたのだった。

 

「それより、しいたけちゃん本当に散歩でいないわよね?」

 

犬が苦手な梨子はしいたけがいないかと警戒しながら不安げな表情で辺りを見回し、無爪はそんな梨子に苦笑しつつ「大丈夫ですって」としいたけが今は散歩で確かに不在であることを伝える。

 

「千歌ちゃんは夏祭り、どうするのー?」

 

そこで曜はAqoursのリーダーでもある受付けで店番をやっていた千歌にも夏祭りにライブをするのかどうか意見を求めると千歌は頭をカウンターの台の上で突っ伏させながらどうするべきかと悩んでる様子を見せ、「うーん」と唸るような声をあげた。

 

「そうだよねぇ。 決めないとねぇ~」

「沼津の花火大会って言ったら、ここら辺じゃ1番のイベントだよ? そこからオファーが来てるんでしょ?」

 

まだ転校してきて日の浅い梨子への説明も兼ねて、曜がそう言うと、花丸はAqoursの知名度を今よりももっとあげられる可能性が高いことも、出来ればオファーを受けたいという気持ちではあった。

 

しかし・・・・・・。

 

「Aqoursを知って貰うには1番ずらね」

「でも・・・・・・今からじゃあんまり練習時間ないよね・・・・・・」

 

折角オファーを貰ったのだから、出来ることならば夏祭りでライブをしたい・・・・・・。

 

それはここにいる全員が同じ考えだった。

 

しかし、既に夏祭り開催まであまり時間が無い為、ルビィは確かにAqoursの知名度あげるには打って付けのイベントであることは間違い無いのだが、今からでは練習しても間に合わないのではないかと考えてしまい、それに梨子も今は自分達は練習を優先した方が良いのではないかと考えるのだが・・・・・・。

 

「うん、私も今は練習を優先した方が良いと思うけど・・・・・・」

「うーん、千歌ちゃんは?」

 

そこで曜は改めて千歌に意見を求めて受付けの方へと視線を向けると、先ほどまでいた筈の千歌の姿が無く、曜は一瞬「あれ? どこ行ったんだろう?」と思ったのだが、すぐにこちらに駆け寄って来る千歌の姿が見え、彼女は曜達に向かって夏祭りのイベントに参加したいと自分の気持ちを素直に強く言い放ったのだ。

 

「うん! 私は出たいかな!!」

「・・・・・・そっか!」

「千歌ちゃん・・・・・・!」

 

心の中のどこかで千歌がそう言ってくれることを曜や梨子は期待していたのか、そんな彼女等の期待に応えるように千歌が「夏祭りでライブをやりたい」と力強く言ってくれたことで曜と梨子の2人はそれに嬉しげな表情を見せ、前回と比べると何か無理をしている様子も無く、何時ものように大分明るく振る舞う千歌に無爪もほっと内心で安堵の溜め息を吐くのだった。

 

「そうでないと。 うん、そうじゃないと千歌ねえらしくないもんね」

「うん! 今の私達の全力を見て貰う。 それでダメだったらまた頑張る! それを繰り返すしかないんじゃないかな・・・・・・」

「ヨーソロー!! 賛成であります!!」

 

千歌は無爪の言葉に頷きつつ、そんな彼女の色々と吹っ切れた姿を曜達に見せると彼女達は千歌がライブをやりたいと言うならば自分達もやりたいと言い放ち、これを受けて自分に賛同してくれたみんなに感謝するように千歌は「うん!」と嬉しげに頷くのであった。

 

「変わったね、千歌ちゃん」

「うん」

 

ボソリと曜が梨子の方に振り返りつつ、小声でそんな会話をしていると・・・・・・。

 

不意に千歌はその場で膝を抱え込んで座り込むと、彼女は今朝の走り込みであった出来事を思い返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「んっ?」

 

それは今朝・・・・・・淡島神社の階段下で偶然果南と出会った千歌はそのまま果南と共に、自分はスクールアイドルの体力作りの一環として、彼女は日課で淡島神社の階段を駆け上がることになったのだが・・・・・・。

 

「練習、頑張ってね!」

 

最後まで登り切ったは良いものの、千歌はぜえぜえと息を切らしていたのに対し、果南は息の乱れ1つ無く涼しい顔をしており、「流石だなぁ」と千歌は果南の運動神経の良さに感心していると不意に先日聞かされたダイヤの話が頭に浮かび上がり・・・・・・。

 

割とデリケートな問題かもしれないというのは理解しているが、それでも果南も昔スクールアイドルをやっていたのかどうか、どうしても本人の口から聞きたくなった千歌は彼女にそのことについて思わず問いかけてしまったのだ。

 

「やってたんだよね!? スクールアイドル・・・・・・」

「聞いちゃったか・・・・・・」

 

だが、果南は特にそれを聞いて怒るような様子は見せず、どちらかと言えば「あはは・・・・・・」と苦笑気味に笑い、ただ「ちょっとだけね」とだけ千歌に応えて彼女は神社の階段を走りながら降りてゆくのだった。

 

 

 

 

 

 

「どうしたの?」

 

そんな風に、果南と今朝あった出来事を膝を抱えながら思い出しながら思い悩んだ様子の千歌を心配して、梨子がそう声をかけると千歌はなぜ果南はスクールアイドルを辞めてしまったのか、それが分からなくて悩んでいるのだと仲間達に打ち明けるのだが・・・・・・。

 

「果南ちゃん、どうしてスクールアイドル辞めちゃったんだろう?」

「生徒会長が言ってたでしょ? 東京のイベントで歌えなかったからだーって」

 

しかし、善子は先日ダイヤがそれは説明していただろうと千歌に指摘するのだが、果南とは幼馴染みで昔から彼女がどういった性格なのかをある程度知っている千歌はあの果南がそれだけの理由でスクールアイドルを辞めたとは思えなかったのだ。

 

「でも、それで辞めちゃうような性格じゃないと思う」

 

それには千歌と同じく果南と幼馴染みで、千歌と同じぐらいには彼女の性格もある程度理解している曜や無爪も同じ考えなようで、2人とも「確かに」と同意するように頷く。

 

「ダイヤさんの話を聞いた限りではあるんだけど、なんか・・・・・・あのカナねえにしては、ちょっと簡単に諦めすぎてるんじゃ無いかなぁって思っちゃうんだよねぇ・・・・・・」

 

ダイヤから話を聞いただけではあるが、無爪も果南がスクールアイドルを辞めたことには違和感を感じているようで、そんな千歌や無爪の2人の言葉に梨子が「そうなの?」と不思議そうに尋ねると千歌は「うん」と頷き、梨子達に昔、果南と一緒に海で遊んでいた時のことを話し始めたのだ。

 

「うん、小さい頃は何時も一緒に遊んでて・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは数年前のこと。

 

千歌や無爪がまだ小学生だった頃。

 

千歌と無爪は果南に誘われて近場の海で3人で遊んでいた時のことだ。

 

まだ幼かった頃の無爪と果南は桟橋から海に飛び込んだりして遊んでいたのだが、千歌だけはそこから飛び込むのが怖くて震えており、彼女はそこから飛び込むことが出来ず、そんな千歌に果南は怖くないからおいでと優しく呼びかけていた。

 

『怖くないって千歌! ここで辞めたら後悔するよ? 絶対出来るから!!』

『や~い、千歌ねえのビビり~!』

『・・・・・・なんでそういうこと言うかなぁ、無爪はさぁ~!?』

 

そしてそんな励ましの言葉をかける果南とは逆にニヤついた笑みで千歌を煽る無爪に果南は彼の頬を「なんでそんな意地悪言うの!!」とでも言いたげな表情を浮かべながら軽く引っ張り、頬を引っ張られて果南に怒られたことで無爪は涙を浮かべながら千歌や果南に謝るのだった。

 

『いだだだ!? ごめんなひゃい~!』

『ほら! 無爪にもこんな風に言われてちょっと悔しいでしょ!? こんな意地悪なこと言う奴今すぐ見返してやろうよ!』

『うっ、うぅ~! たあ!!』

 

未だに震える千歌に、果南がそう激を飛ばすと無爪に煽られた苛立ちも多少あったことから彼女は遂に意を決して勇気を出し、果南の「さあ!」という呼びかけと共に桟橋から海に飛び込んだのだ。

 

 

 

 

 

 

 

そして、時は戻り・・・・・・。

 

無爪達は先ほど千歌の話した桟橋に移動して、千歌は当時の思い出を振り返りながらみんなにその時のことを話すと、話を聞いた梨子は「そうだったのね」と納得したように頷くのだった。

 

「ってか今思い返すと、昔のなっちゃんって今と比べて私に意地悪だったよねぇ?」

「えっ!? いや、それは・・・・・・その、ごめん・・・・・・」

 

ジトッとした目を向けられながら、無爪は千歌に睨まれてしまい、それに対して無爪はどこか罰が悪そうな表情を浮かべることしかできなかった。

 

(それ好きな娘につい意地悪したくなるアレじゃん!!)

 

無爪の影、ダークゾーン内から話を聞いていたペガは千歌の過去話を聞き、たまに聞く「好きな娘に意地悪したくなるアレ」じゃないかと心の中で思うのだった。

 

「・・・・・・とてもそんな風には見えませんけど・・・・・・。 あっ、すいません・・・・・・」

 

すると、そこでルビィが千歌から果南の話を聞いて思わずそう呟いてしまったのだが、すぐにハッとなった彼女は即座に千歌達に謝罪するのであった。

 

「まぁ、だから・・・・・・そんな風に、誰かの背中を押してくれる、勇気を促してくれる、そんな漫画やアニメの王道的な主人公みたいなイメージがあったから、カナねえがスクールアイドルを辞めたことに違和感を感じてるんだと僕達は思う」

「漫画やアニメの主人公かぁ。 なっちゃんらしい表現だけど、でも確かになっちゃんの言う通りかも」

 

無爪の表現の仕方に、曜は確かに果南を分かりやすく例えるならそんなイメージがあると納得し、それと同時に千歌もそんな無爪の例えを聞いたことでやはり果南が東京で歌えなかっただけがスクールアイドルを辞めた理由のようにはどうしても思えず、彼女は悩ましそうな表情で考え込んでいると・・・・・・。

 

「はっ・・・・・・! まさか、天界の眷属が憑依!?」

「モコ!」

 

そこでモコを頭に乗せながら善子が何時もの調子で厨二発言をするのだが、これもまた何時ものようにみんなからは呆れられたような視線を向けられ、スルーされると千歌は海を見つめながら果南からもう少し詳しい話を聞けないかと項垂れるのだった。

 

「もう少しスクールアイドルやっていた頃のことが分かれば良いんだけどなぁ~」

「聞くまで、全然知らなかったもんね」

「言ってくれれば良かったのに・・・・・・」

 

千歌、曜、無爪の順で3人がそれぞれそう言うと、そこでふっと千歌、曜、梨子、無爪の4人は「あれ? そう言えば・・・・・・」と果南は「ダイヤ」や「鞠莉」と共にスクールアイドルをやっていたという話を不意に思い出し、4人の視線が一斉にダイヤの「妹」であるルビィに向けられ・・・・・・。

 

「ピギィ!?」

 

そしてそんな4人から一斉に視線を向けられたことに、一瞬ビクッと驚くルビィ。

 

「ルビィちゃん、ダイヤさんから何か聞いてない?」

「小耳に挟んだとか」

「ずっと一緒に家にいるのよね? 何かある筈よ・・・・・・!」

「カナねえのことについてももう少し詳しく何か聞いてたりしない!?」

 

千歌、曜、梨子、無爪の4人に一辺に強く問い詰められ、徐々に頭の中がパニック状態となるルビィ。

 

「あわ、あわわわ・・・・・・! ピギャアアアア!!!?」

 

それにより、4人からかけられるプレッシャーに耐えきれず、最終的にはルビィは悲鳴をあげながらその場から勢いよく走り出して逃げ出してしまったのだ。

 

「あっ、逃げた!!」

「フッ・・・・・・」

 

しかし、次の瞬間、モコを地面に置きながら善子が不敵な笑みを浮かべると彼女は逃げ出したルビィに即座に走って追いつくと、ルビィにコブラツイストを繰り出して彼女を捕まえることに成功。

 

「堕天使奥義!! 堕天流鳳凰縛!!」

「やめるずら」

 

だが、直後に善子の頭に花丸の軽めのチョップが叩きこまれ、善子はそれによって「はい・・・・・・」と言いながらルビィを解放するのだった。

 

(・・・・・・あれ戦いに使えるかもな、堕天使奥義、堕天流鳳凰縛・・・・・・)

 

そしてそんな善子の技を見て、怪獣との戦い等にも使えるのではないかと考える無爪であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

そこから無爪達はさらに場所を移して学校の部室に訪れると、そこで一同はルビィから詳しい話を聞くことになったのだが・・・・・・。

 

「本当に?」

「・・・・・・ルビィが聞いたのは、東京のライブが上手くいかなかったって話ぐらいで・・・・・・。 それから、スクールアイドルの話は殆どしなくなっちゃったので・・・・・・」

 

なんとなく、大方の予想はしていたがやはりルビィもライブの件以上の詳しい話をダイヤからは何も聞いておらず、ダイヤがスクールアイドルを嫌いになってしまったこともあってそれに関係した話も全くしなくなった為、これといった情報をルビィから引き出すことは出来なかったのだった。

 

最も、最近の様子を見るとダイヤは本心からスクールアイドルを嫌いになった訳では無いようだが。

 

「ただ・・・・・・」

『ただ!?』

 

しかし、ほんの1つだけ気にかかることがあるようで・・・・・・「ただ」なんだと全員がルビィに聞き返すと、彼女はそんなみんなに愛想笑いをしつつ、昔、鞠莉が黒澤家に訪れた時のことを語り出したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

『逃げてる訳ではありませんわ!』

 

鞠莉が黒澤家に訪れ、鞠莉がダイヤの部屋で2人で話し合っている時、ルビィはお客様用にと2人にお茶を運んで来た際、ほんの少しだけ2人の会話を聞いたことがあった。

 

『・・・・・・』

『だから、果南さんのことを逃げたなんて言わないで・・・・・・!』

 

鞠莉と向き合いながら、ダイヤは彼女に対してそう言い放った場面をルビィは目撃しており、彼女はその険悪な雰囲気の様子からとても部屋に入ることができず、邪魔をしてはいけないと思い、ルビィはその場からその時は立ち去ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「って・・・・・・」

「逃げた訳じゃない・・・・・・かぁ・・・・・・」

 

ルビィの話を聞き、千歌が意見を求めるように無爪の方に視線を向けると、視線を向けられた無爪は腕を組みつつ、自分の考えを千歌へと告げた。

 

「もしかしたら、やっぱり東京で歌えなかっただけが原因じゃないのかもね・・・・・・」

「だよね! 私も、なっちゃんと同じ。 なんかそんな気がする・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

そしてその翌日、朝も早い時間の早朝にて集まった千歌達。

 

なぜ、そんな早くからみんなで集まったのかと言うと、毎日何時も早い時間から日課としてジョギングをしている果南を尾行する為である。

 

『というかこれ、所謂ストーキングというやつなのでは・・・・・・?』

「それは、言わないお約束・・・・・・だと僕は思うな」

 

無爪の影に隠れながら、ペガがボソッとそんなことを呟いたが、そんな彼の言葉を無爪は聞かなかったことにしたのだった。

 

「ふあ~、まだ眠いずら」

「毎日こんな朝早くに起きてるんですね」

 

そんな風に、欠伸をする花丸と果南が朝早くから走り込みをしていることに感心の声をあげるルビィ。

 

すると、準備運動を終えた果南が早速そこから走り出すと、一同はそれと同時に、彼女に見つからないように尾行を開始するのだが・・・・・・。

 

「それより! こんな大人数で尾行したらバレるわ!」

「だって、みんな来たいって言うし・・・・・・」

 

ダークゾーンの中に隠れているペガを除けば、無爪を入れて7人も跡を付けているので流石にすぐに果南に尾行しているのがバレてしまうのではないかと最もなことを言う梨子。

 

しかし、全員果南のことが気になって仕方なかった為に結局全員行くこととなってしまったのだが・・・・・・。

 

「しっかし早いねぇ~・・・・・・!」

「一体、どこまで走るつもり・・・・・・!?」

「もう、かなり走ってるよね?」

 

千歌、善子、曜がそんな会話を3人で交えつつ、一同は必至で走る果南を追い続けるのだが・・・・・・彼女は既にかなりの距離を走っているにも関わらず、果南はまるで汗ひとつかかずに涼しげな顔で走りのペースを落とすこともなく走り続けており、無爪を除いて千歌達はついて行くのも必死になって息を切らしていた。

 

「マル、もうダメずらぁ・・・・・・!」

「花丸ちゃん!?」

 

やがて、この中でも特に体力の無い花丸が弱音を吐く中、どうにか千歌達は淡島神社の階段前まで果南を追いかけることは出来たのだが、既に限界だった彼女等は全員その場でへばってしまうのだった。

 

尚、果南はそのまま淡島神社の階段も最後まで駆け上がって行った模様。

 

「ぜえ、ぜえ・・・・・・。 ねえ、なっちゃん。 実は果南ちゃんもウルトラマンだったりしない?」

「いや、確かにカナねえは僕から見ても体力お化けだとは思うけど、多分・・・・・・違うんじゃないかなぁ?」

 

息を切らしながら、果南のそのあまりの体力お化けっぷりと唯一彼女についていけていてこの中で一切息を切らしていない無爪を見つめながら、小声で実は果南も無爪と同じウルトラマンなのではないかと疑ってしまう千歌。

 

一応、レムにも確認して貰ったがレム曰く、果南は間違いなく純度100%の地球人とのことだった。

 

「ぜえ、ぜえ、まぁ、確かに果南ちゃん、流石になっちゃんほどの怪力はないもんねぇ・・・・・・」

 

普通の女性と比べると、少し力もある果南ではあるが流石に無爪に匹敵するほどの怪力はないため、無爪の言う通り流石に違うかと千歌は納得し、少しだけここで休んだら自分達も階段を登ろうと提案し、それを受けて曜達も「りょうか~い」と弱々しくも千歌にそう返事を返すのだった。

 

「ふう・・・・・・。 それにしても、果南ちゃん・・・・・・。 走ってる時凄く気持ち良さそうだったね!」

 

階段の上を見上げ、朝日が照らす道を走る果南の姿を思い返しながら千歌がそう言うと、それに梨子も同意するように「そうね」と頷き、少ししてから千歌はある程度息が整うと、彼女は他のみんながまだバテていることもあり、みんなよりも一足先に無爪と共に階段を上ることに。

 

「あれは・・・・・・」

 

階段を上ると、そこでは果南が1人、その場でダンスを披露しており、流石元スクールアイドルだけあって動きも綺麗でとても洗礼されており、ほんの一瞬だったとはいえその光景は千歌や無爪を魅了するには十分なほどの動きだった。

 

「綺麗・・・・・・」

「流石、運動神経抜群で元スクールアイドルだけあるね」

 

思わず木の陰に隠れながら、果南のダンスの感想を言い合い千歌と無爪。

 

すると、そんな時果南の背後から「パチパチパチ」と誰かが手を叩いて拍手をする音が聞こえ、千歌と無爪が音のした方に視線を向けるとそこにはいつの間にか現れていた鞠莉が立っており、果南も一瞬鞠莉の方に視線を向けのだが、すぐに彼女は不満げな顔でそっぽを向いてしまう。

 

「復学届け、提出したのね」

「・・・・・・まぁね」

 

鞠莉の言葉に対し、ぶっきらぼうに返事を返す果南。

 

「やっと逃げるのを諦めた?」

「・・・・・・勘違いしないで。 学校を休んでいたのは父さんの怪我が元で・・・・・・。 それに、復学してもスクールアイドルはやらない」

 

ここに鞠莉が来たのは、どうせまた自分をスクールアイドルに誘う為だろうと思った果南は何度誘われたとしてもスクールアイドルを再びやるつもりはないとそれだけを言い残してその場から立ち去ろうとするのだが・・・・・・。

 

「私が知っている果南は、どんな失敗をしても笑顔で次に向かって走りだしていた。 成功するまで諦めなかった」

 

しかし、去ろうとする果南に鞠莉がそう言い放つと、果南は足を止めて立ち止まるのだが、彼女は鞠莉に対し例え今スクールアイドルに復帰したとしてももう自分達は3年生で再びスクールアイドルをやるには遅すぎると反論。

 

「卒業まで、あと1年もないんだよ?」

「それだけあれば十分!! それに、今は後輩もいる」

『うぇっ!?』

 

いきなり話題に出されたことで、千歌と遅れてやってきた梨子達含めて驚きの声をあげる一同。

 

「だったら、千歌達に任せれば良い」

「・・・・・・果南・・・・・・」

 

そして、後輩もいると言うのであれば千歌達にスクールアイドルのことは任せれば良いと鞠莉に言葉を返す果南。

 

「どうして戻ってきたの? 私は、戻ってきて欲しくなかった」

「果南・・・・・・!?」

 

そう言いながら果南は睨むように鞠莉の方へと顔を振り向かせると、そんな果南のキツい言葉と表情に鞠莉は僅かながらにショックを受け、一瞬動揺を見せるものの、彼女はすぐさまに冷静さを装って軽口を叩こうとするのだが・・・・・・。

 

「ふふ、相変わらず果南は頑固なんだか「もうやめて!!」っ・・・・・・!?」

 

そのように果南は鞠莉の言葉を強引に遮ってしまったのだ。

 

「もう、あなたの顔・・・・・・見たくないの・・・・・・」

「っ・・・・・・!!」

 

そして、果南は最後に鞠莉にそのような冷徹な言葉を浴びせると、彼女は鞠莉に背を向けてその場を歩き去ってしまい、その場に残された鞠莉は・・・・・・悲しげな表情で、顔を下に俯かせるのだった。

 

ただ、鞠莉は気付かなかったが、その場から去って行った果南の表情も、鞠莉と同じぐらいにどこか悲しげなもので・・・・・・。

 

「・・・・・・カナねえ・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから、そんな鞠莉と果南のやり取りの一部始終を見ていた無爪達はというと・・・・・・。

 

「・・・・・・酷い」

 

果南が神社の階段を下る為にこっちに向かって来ていた為、一同は大慌てでその場から逃げるようにしてその場を走り去り、別の場所に移動すると千歌達は先ほど見た果南と鞠莉のやり取りについてみんなで話し合ってみることとなり、その中でルビィは先ほど果南が鞠莉に対して言った言葉は、あまりにも酷いのではないかと思わず苦言を零していた。

 

「・・・・・・やっぱり、何かありそうだね」

 

そして、あの2人の様子からしてやはりダイヤから聞いていた話以上のことがあるのは間違いないだろうという確信に近いものを曜は感じ取っており、それには千歌も同意するように「うん」と頷いた。

 

「逃げるのを、諦めた・・・・・・かっ」

「んっ?」

「あっ、ううん、なんでもない!」

 

すると、先ほどの鞠莉の言葉に何か引っかかるものを感じたのか、梨子がボソリと小さく呟くと、梨子の言った発言が気になった千歌が彼女の方に視線を向けるのだが、それに梨子はなんでもないと誤魔化すように笑うのだった。

 

「なっちゃんはどう思った? さっきの果南ちゃんを見て」

 

曜が無爪に意見を求めると、無爪は少しばかり考え込んだような仕草を見せた後、彼は先ほど去り際に目撃した果南の表情のことを思い返した。

 

「確かに、ルビィちゃんの言う通りカナねえの鞠莉さんに対しての言葉は酷いし、あんまりだと思う。 だけど・・・・・・」

「だけど?」

「チラッと見えただけなんだど、鞠莉さんの前から立ち去ろうとする時のカナねえ、凄く悲しそうな顔してた。 なんか、無理して悪ぶってる感が凄い」

 

無爪の言うように、果南は先ほど鞠莉の前から立ち去る時、とても悲しそうで辛そうな表情を浮かべていた。

 

そのことから、無爪は果南が無理しているようにしか見えなかったと彼は曜の問いかけに応えると、だとすればなぜ果南はそんな自分までもが辛い思いをしてまで鞠莉にあんなことを言ったのかと新たな疑問が生まれ、千歌達はますます果南が何を隠しているのか分からず、困惑するばかりだった。

 

そして、そんな時のこと・・・・・・。

 

「クオオオオオオン・・・・・・!」

『!!!?』

 

突如としてどこか悲しげな鳴き声のようなものが聞こえ、無爪達が声のした方へと顔を向けるとそこには1体の巨大な半透明の怪獣が突如として出現しており、唐突に現れたその怪獣の出現に、当然ながら千歌達は驚きの声をあげる。

 

「なっ、怪獣!? いつの間に・・・・・・!?」

「それよりも早く逃げなきゃ!」

 

無爪も、怪獣の出現を受けてジードライザーに一瞬手をかけるが、千歌やペガ以外のメンバーがいては目の前でジードに変身することが出来ないために、どうやって変身しようかと迷っていると・・・・・・。

 

「クオオオ・・・・・・!」

 

怪獣は再び悲しげな鳴き声をあげた後、その場から最初からいなかったかのようにその場から消え去ってしまい、それに一同は「あれ?」と首を傾げる。

 

「ちょっと! 怪獣、消えちゃったけど・・・・・・」

「なんだったの、今の・・・・・・?」

 

善子が周囲を見回しても、先ほどまでいた筈の怪獣の姿は確認できず、梨子も特に何かをする訳でもなくいきなり消えてしまった怪獣に戸惑うばかりだった。

 

「レム、さっきの怪獣がなんだったのか分かる?」

 

それを受けて、無爪は腰に装着された装填ナックルに触れながらみんなに聞こえないように小声でレムに先ほど出現した怪獣について尋ねると、レムはあの半透明の怪獣についてのことを無爪に説明する。

 

『先ほど、その辺りの付近で『マイナスエネルギー』の反応を検知致しました。 恐らく、あの怪獣はマイナスエネルギーによって発生した怪獣だと思われます』

「マイナスエネルギー・・・・・・?」

 

「マイナスエネルギー」という初めて聞く単語に、無爪がそれはどういったものなのかと再びレムに尋ねると、レムは無爪の問いかけに応えるべく、マイナスエネルギーについての説明を行う。

 

『『マイナスエネルギー』とは、人間の悲しみや怒りといった負の感情によって発生するエネルギーのことで、そのマイナスエネルギーが大きく高まるとそれが怪獣となって実体化することがあるのです。 ですが、先ほど無爪が見たあの怪獣は・・・・・・』

 

しかし、レム曰くあの怪獣は姿が半透明だったことからまだ実体化していないとのことで、実体化するにはまだ時間がかかるとのことだった。

 

「そんなものがあるのか。 どうにか、完全に実体化する前に止める方法はないの?」

『マイナスエネルギーの発生源となっている誰かの負の感情を無くすことが出来れば理論上可能です。 しかし、誰が発生させているのかまでは本人達が無自覚なこともあり、特定は非常に困難です』

 

まだ実体化していないのならば、実体化する前になんとかなる解決作があるのではないかと無爪は思ったのだが、レムからはそれはほぼ不可能に近いと言われ、無爪は「じゃあどうすれば・・・・・・」と考え込むのだが・・・・・・。

 

(マイナスエネルギーの発生源になっている人・・・・・・。 いや、まさかとは思うけど・・・・・・)

 

レムのマイナスエネルギーについての説明を一通り聞き終えた無爪は、その発生源となってしまった者に僅かに心辺りがあるのだが・・・・・・取りあえず今はレイジやゼロにも報告するのを優先すべきだと思い、その日、曜達と別れた後に連絡を入れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

それから、その翌日、学校の休憩時間にて。

 

「えっ、果南ちゃんが!?」

「うん、今日から学校に来るって」

 

千歌、曜、梨子の3人と彼女等の教室を訪れた無爪の4人は教室のベランダで果南が今日から学校に再び通うことになった果南のことについて話し合っているところだった。

 

「それで、鞠莉さんは?」

「まだ、分からないけど・・・・・・」

 

果南が復学したことで、梨子は鞠莉が再び彼女をスクールアイドルに誘うのではないかと考え、何かしらの行動を起こしているのではないかと思ったのだが、曜が言うには今のところ特にそういった感じの話は聞いておらず、現状その辺りのことは分からないとのことだった。

 

「まぁ、現在進行形で鞠莉さんが何かしらのアクションをカナねえに起こしている可能性も無くはないと思うけど・・・・・・」

「それは確かに、今私達がこうしている間にも・・・・・・」

 

無爪と曜が互いに顔を見合わせ、2人でそんな会話をしながら千歌や梨子と共に今、果南と鞠莉は何をしているのだろうと考えながら上の階にあるであろう3年の教室見上げるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

そして、その果南や鞠莉、ダイヤのいる3年の教室では・・・・・・。

 

案の定無爪の予想通り、鞠莉は果南をスクールアイドルに引き戻す為の行動を現在進行形で起こしており、彼女は自分達がまだスクールアイドルとして活動していた時、次のライブで使う予定だったが、グループ解散となった為に未使用に終わってしまった衣装を引っ張り出してそれを果南に見せつけるように持って来ているところだったのだ。

 

これを見れば、果南が少しでもスクールアイドルに戻ろうとしてくれるかもしれない。

 

「果南!」

 

そう願って鞠莉は衣装を持って来たのだが、それで果南の心が変わるようなことはなく・・・・・・。

 

彼女は鞠莉から衣装を奪うようにしてそれを摑み取ると、なんと果南はその衣装を窓の外へと投げ捨てたのだ。

 

「なっ・・・・・・!?」

 

そして、その投げ捨てられた衣装は丁度ベランダで会話中だった千歌達の目の前まで落ちて来るのだが・・・・・・。

 

「クンクン・・・・・・制服!!」

「「ダメェー!!?」」

「何してんだバカ曜ねえ!?」

 

大の制服好きの曜がピクピクと鼻を動かすと、その衣装の匂いに引き寄せられるように彼女はベランダから身を投げ出して衣装を掴み取るのだが・・・・・・。

 

当然、千歌達のいる場所は建物から2階以上の位置する場所なのでそんなことをすれば真っ逆さまに落下して大怪我するのは間違い無く、その為に梨子と千歌と無爪の3人は慌てて曜の身体を掴んで引っ張り上げることに成功し、曜は事なきを得たのだが・・・・・・引っ張り上げられた曜は「危ないでしょ!」と怒る無爪に頬を両手で引っぱられてしまうのだった。

 

「ちょっ、いたっ!? なっちゃん痛いってぇ~!?」

「制服好きなのは良いけどさ、周りが見えなくなるのはどうにかしてよ! 僕等がいなかったらどうしたんだ曜ねえ!!?」

「うぅ、ごめんなさぁーい!」

 

無爪に叱られて反省した曜は無爪や梨子や千歌に謝ると、梨子が曜が先ほど手に取った衣装に視線を移しながら「それでそれは?」と尋ねると、無爪達全員その衣装に目を向ける。

 

「これって、スクールアイドルの・・・・・・」

「上から落ちてきた? まさか・・・・・・果南ちゃん達?」

 

衣装が落ちて来たのは、果南達3年の教室で何かあったからなのだろうかと思い、無爪、千歌、曜、梨子の4人は取りあえずは3年生の教室に行ってみようと考え、一同は果南達のいる教室へと急いで向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

「離して!! 離せって言ってるの!!」

「良いと言うまで離さない!! 強情も大概にしておきなさい!! たった1度失敗したくらいで何時までもネガティブに・・・・・・!!」

「うるさい! いつまでもはどっち!? もう2年前の話だよ!? 大体今更スクールアイドルなんて・・・・・・! 私達、もう3年生なんだよ!?」

 

そして3年の教室では無爪達がある程度予想していた通りの出来事が起こっており、鞠莉は果南の腰にしがみつきながら2人は激しい言い争いをしており、3年の教室の前には騒ぎを聞きつけた花丸やルビィも駆けつけており、遅れながら千歌達もそこで合流。

 

それからそんな果南と鞠莉の2人をダイヤはあたふたと慌てつつもクラスメイト全員に注目されてしまっていることから必死に止めようとするのだが、2人は全く聞く耳を持たない。

 

「2人ともお辞めなさい! みんな見てますわよ!?」

「だって、ダイヤもそう思うでしょ!?」

「辞めなさい! 幾ら粘っても果南さんが再びスクールアイドルを始めることは有りませんわ!」

 

ダイヤに同意を求める鞠莉であったが、ダイヤ自身は果南がまたスクールアイドルをやることはないと断言し、それを聞いた鞠莉はそれはなぜだと不思議に思わずにいられず、腕に力を入れてさらに果南にしがみついてくる。

 

「どうして!? あの時の失敗はそんなに引きずること!? 千歌っち達だって再スタートを切ろうとしてるのになんで!!?」

「千歌とは違うの!!」

「むぅ・・・・・・!」

 

しばらく果南や鞠莉、ダイヤの3人の様子を教室の外から無爪達と共に伺っていた千歌だったが・・・・・・。

 

何時まで経っても話が終わる気配がなく、それも話が平行線のように感じ、少しばかりうんざりとした千歌は流石にこれ以上黙って我慢していることができなくなってしまい、彼女はムスッとした表情を浮かべながら無爪や曜の呼びかけにも応じず鞠莉達の元へと歩いて行くと、息を大きく吸い上げて・・・・・・。

 

「千歌・・・・・・?」

「いい加減にぃ・・・・・・!! しろおおおおおお!!!!」

 

荒げるような声で、果南、鞠莉、ダイヤの3人にそう言い放ったのだった。

 

「もう!! なんかよく分からない話をいつまでもずーっとずぅーっとずぅぅぅーっと!!!! 隠してないで、ちゃんと話しなさい!!」

「千歌には関係な「あるよ!!!!」」

 

果南は千歌に関係のないことだと言いかけたが、そんな果南の言葉を遮りながら、千歌は自分にだって関係のあることだと言い放ち、千歌はダイヤも、果南も、鞠莉も3人とも放課後になったら自分達の部室に来るようにと伝える。

 

「ダイヤさんも、鞠莉さんも、果南ちゃんも3人揃って放課後部室に来てください!」

「いや、でも・・・・・・」

「い・い・で・す・ね!!?」

 

もはや有無を言わせない、そんな勢いの千歌に対して果南も鞠莉もダイヤも「NO」と言うことが出来ず、3人は思わず「はい」と頷くと、その一部始終を見ていた曜達は3年生に向かってあのように啖呵を切った千歌に感心の視線を向けるのだった。

 

「千歌ちゃん凄い・・・・・・!」

「3年生に向かって・・・・・・」

「少し、見直しちゃったな、千歌ねえのこと。 ちょっとカッコ良かった・・・・・・」

 

なんてルビィ、曜、無爪がこの時の千歌にそれぞれの感想を述べるのだが、その際、千歌は「あっ」と思わず声を漏らし、「やってしまった」と言いたげな表情を浮かべるのであった。

 

 

 

 

 

 

その後、放課後にスクールアイドル部の部室に集まることとなった一同。

 

果南やダイヤも鞠莉も、ちゃんと千歌に言われた通り誰1人逃げるようなこともせず、部室に集まると、千歌は果南とダイヤを椅子に座らせ、先ずは果南から詳しい話を聞くことに。

 

ちなみに、また先ほどのように鞠莉や果南が激しい口論にならないように教師の目があった方が良いだろうという曜の判断から、彼女から一通りの事情を説明されて呼び出されたレイジもこの場には訪れており、彼は話し合い自体は千歌達に任せ、自分は大きな喧嘩になったりしないようにと千歌達の様子を見守っていたのだった。

 

あとついでに善子は何時も通り頭にモコを乗せている。

 

そして、千歌は果南にスクールアイドルを辞めた詳しい理由を聞き出そうとしたのだが、やはりと言うべきか果南は東京のイベントで歌えなかっただけだと主張し、それがスクールアイドルを辞めた理由だと話すのだが・・・・・・。

 

「だからぁ、東京のイベントで歌えなくって・・・・・・!」

「その話はダイヤさんから聞いた。 けど、それで諦める果南ちゃんじゃないでしょ?」

 

一瞬、果南は「お前そこまで千歌達に話したのか?」とでも言いたげな視線を向け、ダイヤを睨む彼女であったが、それに対して気まずそうにそっぽを向いて知らんぷりを貫く態度を見せるダイヤ。

 

「千歌ねえに激しく同意だね、僕も。 そうでなかったら異星人か誰かが化けた偽者かなんかでしょ」

「そこまで言う!?」

「でも千歌っちや無爪くんの言う通りよ!! だから何度も言ってるのに!!」

 

千歌や無爪の言うように、東京でイベントで歌えなかっただけで簡単に果南が取り組んでいたものを、スクールアイドルを諦めてしまうとは思えない。

 

「何か、事情があるんだよね? ねっ?」

 

そんな2人の意見に、鞠莉も力強く頷き、千歌は本当は何か別の事情があるのだろうと果南から本心をどうにか聞き出そうとするのだが、果南は一向にそれを話そうとはしてくれない。

 

「そんなものはないよ。 さっき言った通り、私が歌えなかっただけ」

「嘘つけやコラァ!? 言っとくけど、もうその辺嘘だってバレバレだからね!?」

「あーもう!! 私もイライラするぅ~!!」

 

何かを隠してる、歌えなかっただけがスクールアイドルを辞めた理由じゃないのはここにいる全員に確実にバレてしまっているというのに、それでも尚堅く口を閉ざす果南。

 

「その気持ちよーく分かるよ!! ほんっと腹立つよねコイツ!!」

 

それに無爪は思わず怒鳴り、千歌は頭をグシャグシャと掻きむしって苛立つのを堪えられず、その気持ちがよく分かると共感しながらビシッと果南を指差す鞠莉。

 

「勝手に鞠莉がイライラしてるだけでしょ!?」

 

しかし、鞠莉のみならず、無爪や千歌にまでも果南の言っていることが嘘であることがバレバレだと指摘されても、それでも果南はあくまでもシラを切り通そうとする姿勢を崩さない。

 

「でも、この前弁天島で踊っていたような・・・・・・ピギィ!?」

「・・・・・・ッ!!」

 

だが、そこでふっと思い出したかのようにルビィが先日、果南が神社の前で踊っていた光景のことを呟くと、そこを指摘された果南は顔を真っ赤に、ジロッとルビィを睨み付け、睨まれた彼女は思わず小さな悲鳴をあげてしまった。

 

「おぉ! 赤くなってるぅ~!」

「うるさい・・・・・・!」

 

顔を赤くする果南を見て、口元がニヤついてしまう鞠莉。

 

「や~っぱり未練あるんでしょう~?」

「っ~!! うるさい!!」

 

すると、果南は椅子から立ち上がって怒鳴るように声を張り上げ、彼女は鞠莉を睨み付ける。

 

「未練なんてない!! 兎に角、私は・・・・・・もう嫌になったの!! スクールアイドルは、絶対にやらない!!」

 

果南はそう、鞠莉や千歌達に突きつけるようにして言い放つと、彼女はそれだけを言い残して部室を去って行ってしまうのだった。

 

「・・・・・・全く、ダイヤさん」

「うぇっ!?」

 

不意に梨子に名前を呼ばれ、ビクリと肩を震わせるダイヤ。

 

「何か知ってますよね?」

「えっ!? わたくしは、何も・・・・・・」

 

そのような梨子の問いかけに、果南同様にあくまでシラを切ろうとするダイヤ。

 

『こいつ等往生際が悪いな。 もはや隠しきれないだろ、ここまできたら』

「あはは、確かに・・・・・・。 割と部外者な僕でも見るからになんとなく隠し事出来る状況じゃないなっていうのは分かりますね・・・・・・」

 

今まで千歌達の様子を黙って見守っていたゼロやレイジも、流石にこれ以上言い逃れするようなことはできないだろうと考え、千歌達も一斉にダイヤの方に視線を集中させると・・・・・・ダイヤはみんなから視線を合わせないようにそっぽを向く。

 

「だったら、どうしてさっき果南さんの肩を持ったんですか?」

「そ、それはぁ・・・・・・くっ!」

「あっ、逃げた!」

 

梨子の鋭い問いかけに、ダイヤはゆっくりと椅子から立ち上がると彼女はその場から急いで駆け出して逃げ出してしまう。

 

「善子ちゃん!!」

「ギラン!」

 

しかし、そうはさせない、逃しはしないと言わんばかりに千歌が善子の名前を呼ぶと、彼女はすぐさま走ってダイヤに追いつくと、先日ルビィにも喰らわせた「堕天使奥義 堕天流鳳凰縛」という名のコブラツイストを繰り出したのだ。

 

「だからヨハネだってばぁー!!」

「ピギャアアア!!!?」

 

ちなみに、この時ダイヤはルビィが喰らった時と同じ体勢をしており、それを見た花丸は「流石姉妹ずらぁ」と謎の感心をしていたのだった。

 

『あの技戦いの時に使えそうだなぁ』

 

ついでに、善子の技を見たゼロも無爪と同じ事を言っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『ワザと!?』

 

その後、場所を黒澤家の客間室まで移動してきた千歌達はダイヤからより詳しい話を聞いてみると、どうやら当時、果南が東京のイベントで歌えなかったのはワザとやったことなのだというのだ。

 

「そう、東京のイベントで果南さんは歌えなかったんじゃない。 ワザと歌わなかったんですの」

「・・・・・・どうして・・・・・・?」

 

窓の外の曇り空を見つめながら、鞠莉はダイヤになぜ、果南はそんなことをしたんだと問いかける。

 

「まさか、闇の魔術で・・・・・・「モコッ!」むぐっ!!」

「・・・・・・あなたの為ですわ」

 

空気を読まずに厨ニ的な台詞を言おうとする善子の口を塞ぐモコと花丸の姿を横目にしつつ、ダイヤは問いかけに応えると、それを受けた鞠莉はダイヤの方へと顔を向け、「どういうことだ?」とでも言うような表情で首を傾げる。

 

「私の・・・・・・?」

「覚えていませんか? あの日、鞠莉さんは怪我をしていたでしょう?」

「・・・・・・」

 

勿論、そのことは鞠莉は覚えていた。

 

『本当に大丈夫ですの!?』

『全っ然! 果南、やるわよ!?』

 

2年前、ダイヤの言う通り東京のイベントに出場することになった鞠莉はダンスの練習で傷を負ったのか、右の足首を怪我しており、鞠莉は痛みを堪えてでも東京の舞台に上がろうとしていたのだ。

 

『・・・・・・』

『・・・・・・? 果南・・・・・・?』

 

その結果、果南は鞠莉のことを気遣い、果南は「プレッシャーに押し負けて歌えなかった」という体でイベントでワザと歌わなかったのだ。

 

「そんな・・・・・・! 私は、そんなことして欲しいだなんて一言も・・・・・・!」

「あのまま進めていたら、どうなっていたと思うんですの!? 怪我だけでなく、事故になっていてもおかしくなかった・・・・・・」

 

ダイヤから当時のイベントでの出来事、果南が歌わなかったことの本当の理由を聞かされ、激しく動揺する様子を見せる鞠莉。

 

「英断、ですね。 ダイヤさんの言う通り、下手をすれば傷が悪化して鞠莉さんが一生まともに歩けない身体になってた可能性もあった訳ですし・・・・・・」

 

話を聞いていたレイジも、イベントでパフォーマンスすら行えなかったのは残念だったとは思うが、それならば果南の下した判断は何も間違っていない行動だったと評し、鞠莉の怪我が悪化しなくて良かったと安堵するが・・・・・・。

 

「でも・・・・・・!!」

 

だとしても、理解はできるが納得はできないとでも言いたげな鞠莉。

 

「だから、逃げた訳じゃないって・・・・・・」

「でも、その後は・・・・・・?」

 

確かに、果南がイベントで歌えなかった理由や「逃げた訳じゃない」とダイヤや果南が言っていた理由は分かったが、まだその2人がスクールアイドルを辞めた理由が分からないままだ。

 

「そうだよ、怪我が治ったなら、続けても良かったのに・・・・・・」

 

その疑問を千歌が口にすると、彼女に同意するように肩を震わせながら、窓に添えていた自分の右手を拳に変えながら、「そうよ」と小さく呟く。

 

「花火大会に向けて、新しい曲作って・・・・・・! ダンスも衣装も完璧にして・・・・・・! なのに・・・・・・!!」

「心配していたのですわ。 あなた、留学や転校の話がある度に全部断っていたでしょう?」

「そんなの当たり前でしょ!!?」

 

声を大きく張り上げながら、叫ぶようにしてそう言い放つ鞠莉。

 

「果南さんは、思っていたのですわ。 このままでは自分達のせいで鞠莉さんから色んな可能性が奪われてしまうのではないかと・・・・・・そんな時・・・・・・」

 

ある時、偶然職員室を通りかかった果南は、そこで鞠莉が教師から留学の話を蹴っていた場面を彼女は目撃したのだ。

 

『本当に断るの? ご両親も先方も是非って仰ってるの。 もし向こうで卒業すれば大学の推薦だって・・・・・・』

『良いんです。 私、スクールアイドル始めたんです。 学校を救う為に・・・・・・!』

 

教師と鞠莉の話を聞いた果南は、自分とダイヤがスクールアイドルに鞠莉を半ば強引に誘ってしまったせいで彼女の未来を妨害し、奪い去ってしまった。

 

そう感じ取った果南はダイヤと共に自分達がスクールアイドルを辞めれば、凝りのようなものが残ってしまうだろうが、鞠莉は海外に留学することができる、彼女の未来を約束することができる。

 

そう考え、だから、果南は鞠莉が戻って来た時も敢えて厳しい態度を取り、あそこまで頑なにスクールアイドルを再びやることを拒否したのだ。

 

「まさか、それで・・・・・・」

 

ダイヤから事の真相を聞かされ、果南の気持ちを知った鞠莉は思わずそこから走り出そうとするが、それをダイヤは呼び止める。

 

「どこへ行くんですの!?」

「・・・・・・ぶん殴る!! そんなこと、一言も相談せずに・・・・・・!!」

「・・・・・・お辞めなさい。 果南さんはずっとあなたのことを見てきたのすよ。 あなたの立場も、あなたの気持ちも。 そして・・・・・・あなたの将来も・・・・・・。 誰よりも考えている・・・・・・!」

 

ダイヤの言葉を受けながら、鞠莉は頭の中でこれまでの果南やダイヤと初めて出会った時のことや、一緒に過ごしてきた時間のことを思い返しながら、身体をふるふると震わせながら、強く拳を握りしめ、唇を噛み締める。

 

「そんなの分からないよ。 どうして言ってくれなかったの?」

「ちゃんと伝えていましたわよ。 あなたが気付かなかっただけ」

「っ・・・・・・!!」

 

そして、鞠莉は目尻に涙を溜めながら降り出した雨の中、彼女は黒澤家を飛び出すと鞠莉は激しく降る雨の中を必死に走り、ある場所に向かって突き進んだ。

 

しかし、鞠莉は途中でつまずいてその場に転んでしまい、彼女の目からはポツポツと溢れた涙が地面に垂れる。

 

(私は、ずっと・・・・・・!)

 

これまでずっと、果南やダイヤがスクールアイドルを突然ちゃんとした理由も言わないまま辞めたことに腹を立てて、不満を抱いていた。

 

ここに戻って来た時、2人をまたスクールアイドルに戻そうと色々としてきた。

 

ダイヤに拒否されようが、果南にどれだけ冷たくされようが、必ずあの時の「輝き」を取り戻そうと必死にあがきまくった。

 

だけど、真実を知った今、鞠莉は果南やダイヤがどれだけ自分を想い、どんな想いで自分のことを考えてくれていたのかが分かった。

 

だが、自分はそんな2人の想いに、それに全く気づくことができなかった。

 

ずっと果南が自分を拒絶することに苛立ちを覚えていたが、今はそれ以上に果南達の想いに気づけなかった自分が腹正しくて、悲しくて、情けなくて・・・・・・色々な感情がグチャグチャになるのを鞠莉は感じていた。

 

だから・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな鞠莉のごった煮とも言えるようなグチャグチャの感情が、「マイナスエネルギー」となるのは必然であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の瞬間、鞠莉の身体から青白い炎のようなものが溢れ出し、それが彼女から離れるとそれはこれまで蜃気楼としてゼロや無爪が目撃してきたあの怪獣は、「硫酸怪獣 ホー」となって遂に実体化したのだ。

 

「グアアアア・・・・・・!!」

「えっ、なに・・・・・・今の・・・・・・?」

 

一瞬、身体に力が抜けるような感覚に見舞われた鞠莉であったが、顔を上にあげた彼女はすぐにほぼ目の前で怪獣が出現したことに気付き、ホーは鞠莉の方に視線を降ろし、互いに目が合うと鞠莉は「ひっ」と小さな悲鳴をあげ、ホーはゆっくりと鞠莉に近寄ってくる。

 

「アアアアア・・・・・・!!」

「鞠莉さん!! ジーッとしてても、ドーにもならねえ!! 決めるぜ、覚悟!!」

 

だが、間一髪そこへ駆けつけた無爪がジードライザーを構えてそれを掲げると、ジードライザーから光が溢れて無爪の身体を包み込み、彼は初代ウルトラマンとウルトラマンベリアルの力を融合させた姿、「ウルトラマンジード プリミティブ」となって変身。

 

『ウルトラマンジード! プリミティブ!!』

『シェアア!!』

 

鞠莉に迫ろうとするホーに、変身を完了させると同時にジードはニーキックをホーへと叩き込み、蹴り飛ばすとジードは鞠莉を見下ろし、「ここは任せろ」とでも言うように頷く。

 

「ウルトラマン・・・・・・ジード・・・・・・!」

 

戦闘BGM「ウルトラマンジードプリミティブ」

 

それからジードはファイティングポーズを取りながらホーに向かって駈け出して行き、勢いをつけた拳をホーの顔面に喰らわせ、ホーを大きく怯ませるとすかさずジードはもう1度ホーを殴りつけようとするのだが・・・・・・。

 

「グアアアア!!」

 

ホーはするりとジードの拳を躱して背後に回り込むと口から七色の光線を吐き出し、光線はジードの背中に見事命中。

 

『ウアアア!!?』

 

それを受けて片膝を突くジードにホーは後ろから蹴りを喰らわせて突き飛ばすとジードは地面に倒れ込み、そのままホーがジードの背中に馬乗りとなるとまるで駄々をこねるかのように両手でジードの身体を殴りまくり、それと同時に泣き叫ぶような声をあげながら目から硫酸の涙を大量に流してジードに浴びせる。

 

「アアアア・・・・・・!! アアアア・・・・・・!!」

『ウグアアア!!!!?』

 

硫酸の涙を身体に受けたジードの身体からは「ジュウウ・・・・・・!」という音を立てながら煙が発生し、このままではまずいと感じたジードはレオとセブンのカプセルを使い、防御力とパワーに特化した形態「ソリッドバーニング」へとフュージョンライズ。

 

『ソリッドバーニング!』

 

ソリッドバーニングとなったジードの硬い装甲にはホーの硫酸の涙はまるで通用せず、未だにベチベチと鈍い音を立てながら殴って来るホーを立ち上がって押し退かして立ち上がり、ホーと向き合うと、ホーの顔面にジードはすかさず強烈な拳を炸裂させる。

 

『ハアア!!』

「グアアアッ!!?」

 

それによって大きく怯むホーであったが、直後にホーからの光線がジードへと向けて放たれ、ジードはそれを両腕を交差してガードし、耐え抜く。

 

『ジュア!!』

 

そのまま両腕を振るってホーの光線をかき消すと、反撃とばかりに腕部のアーマーを展開し、右腕の拳から発射する必殺光線「ストライクブースト」をジードはホーに放つ。

 

『ストライクブーストォ!!』

「アアアアア・・・・・・!!!!?」

 

ジードの光線による直撃を受けたホーは悲しげな声を上げながらその場に倒れ込み、爆発し霧となるのだが・・・・・・。

 

「アアアアア・・・・・・!!」

 

爆発した際に発生した霧はジードの背後で1つとなると先ほどジードが倒した筈のホーとなって復活。

 

復活したホーはジードの背中に向けて口から光線を発射し、光線はジードの背中に見事に命中。

 

『ウアアアッ!!?』

 

防御力の高いソリッドバーニングになっていたことでダメージこそあまり通らなかったものの、衝撃でジードは前のめりに倒れてしまい、すかさずホーは倒れたジードに向けて七色の光線を撃ちまくる。

 

『ぐっ、鬱陶しい・・・・・・!! アイツ、さっき倒した筈なのに・・・・・・!!』

『あの怪獣は、恐らくは小原 鞠莉の悲しみのマイナスエネルギーによって生まれた怪獣だと思われます。 つまり、彼女の悲しみが無くならない限り、あの怪獣を倒すことは・・・・・・』

 

ホーによる光線を受けながら、ジードは倒した筈のホーが復活したことに対して疑問を口にするとレムからその疑問に対しての返答があり、彼女が言うにはホーが出現したのは鞠莉の悲しみの感情によるものであるため、それを無くさない限りあの怪獣は倒し切ることが出来ないのだという。

 

『やっぱり、あの怪獣は鞠莉さんの・・・・・・』

 

ホーの光線を耐えながらも、どうにか立ち上がるジード。

 

そこでふっと「そう言えば鞠莉はどこに行ったのだろうか?」という考えが過ぎったジードはホーから連射される光線に耐えつつ、立ち上がってかぎ爪型の武器「ジードクロー」を呼び出して右手に持つと、背中のブーストを使って一気に加速し、すれ違いざまにホーを斬りつける。

 

『タアアア!!!』

「グルアアア!!?」

 

ダメージを受けたホーはその場に片膝を突くとジードはその間に周囲を見渡して鞠莉の姿を探す。

 

『・・・・・・いた!!』

 

見れば、鞠莉はあれからどうやら浦の星学院に向かっていたようで、人々の様子を見たところ、避難場所にも指定されていない学校になぜ鞠莉が向かっているのかと不思議に思っていると、そこへホーの勢いをつけたタックルが繰り出され、ジードはそれを受け止めると膝蹴りをホーに叩き込み、ジードクローを振りかざしてホーを斬りつける。

 

『アアアア・・・・・・!!?』

『タアアア!!!!』

 

さらに後ろ回し蹴りをホーに喰らわせて自分から引き離すとインナースペース内の無爪はジードクローのトリガーを2回引いてボタンを押すと、全身にエネルギーを身に纏い、ジードクローの切っ先を回転させながら敵に突っ込む「コークスクリュージャミング」をジードはホーへと繰り出す。

 

『コークスクリュージャミング!!!!』

「アアアアア・・・・・・!!!!!?」

 

ジードの繰り出したコークスクリュージャミングはホーの身体を見事に貫き、ホーは火花を散らして爆発して霧となるのだが・・・・・・。

 

やはりと言うべきか、霧は再び1つとなってホーとなり復活、ホーはドロップキックをジードへと繰り出し、それを受けたジードは衝撃で軽く吹き飛ばされてしまう。

 

『うわっ!? クソ、コイツ・・・・・・そんなに強くは無いけど、何回も即座に再生されるんじゃ切りが無い!』

 

ホーの強さ自体はそこまで大したものではない。

 

だが、自分には「3分」という時間制限がある以上、このままではジリ貧になるだけ。

 

どうすればこの不死身とも言える相手を倒すことが出来るのかと考え込むジードだが・・・・・・そこでふっとジードはあることに気が付いたのだ。

 

『・・・・・・そうか! 鞠莉さんの悲しみは、恐らくはカナねえとの確執が原因だった・・・・・・。 だとしたら、あの怪獣を倒せるのは事実上、1人だけだ・・・・・・』

 

 

 

 

 

 

「そっか、分かったよ。 レム」

 

ようやくホーの攻略法に気付いたジードこと無爪はレムに連絡して千歌に伝言を頼み、無爪の指示を受けたレムは言われた通り、怪獣が出現した為、みんなと避難中だった千歌のスマホにメッセージを送り、それを読んだ彼女は「ごめん、みんな先に行ってて」と曜達に伝えると彼女はみんなから離れてどこかへと行ってしまう。

 

「えっ!? ちょっと千歌ちゃん!?」

「どこ行きますの!?」

 

突然の千歌の行動に曜やダイヤは驚きの声をあげ、いきなりいなくなった千歌を追いかけようとする曜達だったが、それをレイジが引き止める。

 

「曜ちゃん達は先に避難場所に行ってて! 千歌ちゃんは僕が追いかけるから!」

「レイジお兄ちゃん・・・・・・!」

 

レイジは曜達にそう言うと彼は急いで千歌を追いかけ、みんなから離れて彼女を追いかけると・・・・・・しばらくして人気のない場所にいた千歌の姿を発見。

 

彼女の元に駆け寄ったレイジは一体どうしたのかと尋ねると、千歌はレイジに一通りの説明を終え、これからホーを倒す為にも、果南に電話することを伝える。

 

「でも、こんな状況で出るかな」

「出てくれないと困る」

 

通話に出てくれることを願いつつ、千歌が果南に電話をするとしばらくの着信音の後、「もしもし?」という果南の声が聞こえた。

 

『どうしたの千歌? こんな時に・・・・・・』

「あのね、果南ちゃん!! 鞠莉さん、学校の部室で待ってるから!!」

『・・・・・・えっ?』

 

果南が通話に出るや否や、間髪入れず千歌は鞠莉が学校の部室で待ってることを伝えるとそれを受けた果南は電話越しでも分かるぐらいに動揺するのが感じ取れ、彼女は戸惑いつつも「どういうこと?」と千歌に問いかける。

 

「ダイヤさんからなんで果南ちゃんがスクールアイドルを辞めたのか、話は全部聞いたよ。 それで鞠莉さん、怪獣が出現する少し前に、学校に向かったみたいなんだ! それはきっと、果南ちゃんと今度こそお互いに隠し事も無しで本心で話し合う為・・・・・・」

『そんな・・・・・・怪獣が出現してるんだよ! 鞠莉の奴、こんな時に何してんのさ!?』

 

ジードが相手をしてくれているとは言え、ホーが出現して街で暴れ回っているというのに、こんな時に学校に行くなんて鞠莉は一体何を考えているんだと果南は怒り、千歌もそんな果南の怒りは最もだと頷く。

 

「だよね。 果南ちゃんの言いたいことは分かるよ。 でも、お願い。 私も果南ちゃんを困らせることを言ってるっていうのは分かってる。 だけどどうか鞠莉さんを迎えに行ってあげて。 鞠莉さんの涙を拭えるのは、果南ちゃんしかいないから・・・・・・!」

『・・・・・・千歌・・・・・・でも、私・・・・・・』

 

電話越しながら、どこか迷うような素振りを見せる果南。

 

「もう! スクールアイドルのことも! 鞠莉さんのことも! 本当はまだ大好きなんだろコラァ!!!!」

『っ!?』

 

そんな迷いを見せる果南に、千歌は3年の教室の時と同じように思わず声を荒げながらそう叫ぶと、それを受けた果南や近くで様子を見守っていたレイジは身体を「ビクッ!」と震わせ、驚きの表情を見せる。

 

「果南ちゃんはずっとこのままで良いの!? ずーっと鞠莉さんと喧嘩したままで!? 鞠莉さん、待ってるよ!! あの部室で!! ダイヤさんや果南ちゃんと一緒にスクールアイドルとして過ごしたあの部室で!!」

『っ・・・・・・』

 

そしてそんな千歌の言葉を受けた果南は、通話を何も言わずにプツリと切ると、彼女は通話を切る際、何も言わなかったが千歌はきっと果南は鞠莉の元に向かったのだろうと察し、千歌は心の中で「お願い」と果南が鞠莉を救ってくれることを願うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雨に濡れた状態のまま、学校のスクールアイドル部の部室へとやってきた鞠莉。

 

「・・・・・・バカ・・・・・・」

 

部室に訪れた彼女は、そこに置かれたホワイトボードにかつて書かれていた作詞の文字の跡を指先で触れると、頭をコツンっとホワイトボードに軽くぶつけ、一言だけ小さく呟いた。

 

「鞠莉!!!!」

 

するとそこへ、千歌から連絡を受けた果南が慌てた様子で駆けつけ、突然現れた果南に鞠莉が驚いた表情を浮かべていると、すかさず果南は怪獣が出てるにも関わらず逃げずに学校に来ていた鞠莉を怒鳴り上げた。

 

「何してんのバカ!! 怪獣が出てるの分かってる!!? なんでこんな時に・・・・・・」

「・・・・・・ごめん。 迎えに来てくれたのね・・・・・・果南。 迷惑をかけて、ずっと・・・・・・ずっと、ごめんなさい・・・・・・」

 

果南の言うことは最もである為か、鞠莉は反論するようなことはせず、避難しないで学校に来て果南に迷惑をかけてしまったことや、ずっと果南の気持ちに気付くことが出来なかったこと、それら全てのことを鞠莉は背中を果南に向け、顔を下に俯かせながら彼女に謝罪した。

 

「それでも、だとしても、どうしてもここに来ずにはいられなかったの・・・・・・。 ねえ、果南。 どうして言ってくれなかったの? 思ってることちゃんと話して・・・・・・! 果南が私のことを想うように、私も果南のことを考えているんだから・・・・・・!」

 

果南に背を向けたまま、彼女に力強く鞠莉はそう言い放つ。

 

「将来なんか今はどうでもいいの! 留学? 全く興味無かった! 当たり前じゃない! だって、果南が歌えなかったんだよ・・・・・・?」

 

震える声で、今の自分の気持ちを全力で伝えようとする鞠莉。

 

「放っておける筈ない!!」

「っ・・・・・・!」

 

目に涙を浮かべながら、果南の方へと鞠莉が振り返ると、そんな鞠莉の表情を見て果南は何も言えなくなってしまい黙り込んでしまう。

 

すると、次の瞬間、鞠莉は果南の頬を突然引っぱたいたのだ。

 

「私が、私が果南を想う気持ちを甘くみないで!!」

「・・・・・・! だったら、だったら素直にそう言ってよ!! リベンジとか、負けられないとかじゃなく、ちゃんと言ってよ!!」

 

果南もまた、目に涙を溜めながら鞠莉にそう言葉を返すと、鞠莉は苦笑気味に「だよね・・・・・・」とどこか自分に呆れたような口調で呟くと、彼女は自分の頬を指差しながら「ほら果南も叩いて良いよ?」とでも言うように果南に差し出し、それを見た果南は右手を構えるのだが・・・・・・。

 

その時、果南は昔、ダイヤと一緒に鞠莉の家が経営している淡島ホテルの庭に忍び込んだ時のことを思い出し、そこで鞠莉と初めて友達になった時のことを思い返していた。

 

『み、見つかったら怒られますわ・・・・・・!』

『平気だよ!』

『んっ? あなたは・・・・・・?』

 

しかし、結局は鞠莉に見つかってしまうのだが、そもそもの目的は鞠莉と友達となることだった為、果南は戸惑いつつもボソッとあることを呟いた。

 

『は、ハグ・・・・・・』

『へっ?』

『ハグ・・・・・・!』

「・・・・・・しよ?」

 

そうして、昔と同じように、初めて出会った時と同じように、今の果南が幼かった頃と同じように両手を広げて優しくそう言い放つと、鞠莉は一瞬驚いた表情を見せた後、彼女はボロボロと涙を溢れんばかりに流し、果南に抱きついてハグしたのだ。

 

「あ、う・・・・・・うわあああああ!!!!」

「うく、ふうう・・・・・・」

 

そして果南もまた鞠莉を抱き留めてハグをすると、彼女も溢れるように涙を流すのだった。

 

それと同時に、彼女等2人の心を照らすように雨が止み、空から太陽の光が差し込んで・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

「アアアア・・・・・・」

『っ、大人しく・・・・・・なった?』

 

一方で、ホーと戦っていたジードはというと・・・・・・。

 

突如として、見よう見真似でやっていた善子の「堕天使奥義・堕天流鳳凰縛」でホーの動きを封じていたジードはホーが突然動きを止めて大人しくなったことに気付き、ホーの拘束を解くとジードは果南が鞠莉の悲しみを拭ったのであろうことを察することができた。

 

『そうか、カナねえ・・・・・・ありがとう』

「アアアア・・・・・・」

 

ホーがジードの方へと振り返ると、ホーは両手を広げて無防備な状態で晒し、ホーの意図を何となく察したジードは頷くとウルトラマンコスモス・ルナモードとウルトラマンヒカリの力を融合させた青い姿の「アクロスマッシャー」にフュージョンライズ。

 

『ウルトラマンジード! アクロスマッシャー!!』

 

そこからジードは両手から興奮抑制の効果を持つ光線「スマッシュムーンヒーリング」をホーへと向けて放つ。

 

『スマッシュムーンヒーリング!』

「アアア・・・・・・!」

 

ジードの光線を受けたホーはどこか満足げな表情を見せると光の粒子となって消滅し、消滅したホーはそれ以降復活する様子もなく、ホーが完全に消滅したことを確認するとジードは晴れた空の上へと飛び去って行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

それから・・・・・・ホーがいなくなったことで、怪獣騒動が収まったこともあり、鞠莉や果南はどうしたのだろうと気になったダイヤは学校の学校のアイドル部の部室に自然と足を運んでいた。

 

そこでは互いに抱きしめ合って未だに泣きじゃくる果南と鞠莉の姿があり、それを影からこっそりと伺ったダイヤは2人の間にあった大きな溝はこれで埋まり、色々と丸く収まったのだろうと考え、彼女はホッと胸を撫で下ろすとそのまま2人の間に入るような真似せず、安心して学校を立ち去ることにしたダイヤ。

 

「うふふ! ダイヤさんって、本当に2人が好きなんですね!」

「っ・・・・・・。 それより! これから2人を頼みましたわよ! あー見えて2人とも繊細ですから」

 

だが、校門を出た先には待ち構えていたように千歌が立っており、千歌の言葉にダイヤは気恥ずかしそうな顔を浮かべながら、そっぽを向きつつ、果南や鞠莉のあの様子から2人は恐らくAqoursに加入することはほぼ確定していることから彼女は果南や鞠莉のことを頼むとダイヤは千歌にお願いするのだが・・・・・・。

 

「じゃあダイヤさんもいてくれないと!!」

「えっ!? わたくしは生徒会長ですわよ!? とてもそんな時間は・・・・・・」

 

ならばダイヤも一緒にAqoursに入ろうと千歌は誘うのだが、ダイヤは生徒会長としての職務があるからと一度は断ろうとする。

 

「あれ? ダイヤさんが推してるって言う絢瀬 絵里さんと千歌ねえが推してる高坂 穂乃果さんは生徒会長やりながらスクールアイドルやってたって僕の友達(ペガのこと)が言ってましたけど・・・・・・?」

 

いつの間にか千歌の後ろからひょっこりと現れながら千歌達が目標としているμ'sもまた生徒会長をやりながらスクールアイドルとして活動していたメンバーがいたことを無爪が指摘すると、それに続くように生徒会は問題ないと千歌が発言。

 

「それなら大丈夫です! 鞠莉さんと果南ちゃんと、あと・・・・・・6人とちょっと生意気な私の弟もいるので!」

「僕のとこ一言余計!」

 

気付けば、ダイヤ達の目の前には曜や梨子、花丸や善子にルビィも集まっており、そこで代表するようにルビィが前に出て両腕で抱えて持って来ていた1つの衣装をダイヤに微笑みを向けながらそれを差し出してきたのだ。

 

「親愛なるお姉ちゃん! ようこそ、Aqoursへ!!」

「あっ・・・・・・」

 

そして、ダイヤもルビィに微笑み返すと、彼女はその衣装をゆっくりと手に取るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

それから、ダイヤ、鞠莉、果南の3年組がAqoursに無事加入し、9人となった千歌達は練習も十分できた状態で夏祭りのイベントに無事出場。

 

9人となった、そんな彼女達Aqoursがそこで歌う曲は・・・・・・「未熟DREAMER」

 

 

 

 

 

 

「ふふ、Aqoursか・・・・・・」

 

そしてライブを無事に終えた千歌達は舞台裏に移動すると、不意に果南が笑い出し、そんな彼女に曜が「どうしたの?」と不思議そうに尋ねると果南は実は自分達が1年だった頃にスクールアイドルとして活動していた時のグループの名前も「Aqours」だったことを明かしたのだ。

 

「私達のグループも『Aqours』って名前だったんだよ」

「えっ、そうなの!?」

「そんな偶然が・・・・・・?」

 

当然、このことに驚く千歌達。

 

だが、そんな偶然があるのだろうかと梨子が疑問を口にすると、全員の視線がダイヤに向けられた。

 

「・・・・・・」

「千歌達も、私と鞠莉も、多分まんまと乗せられたんだよ!」

 

そう、あの時、砂浜で千歌達が見つけた砂浜に書き込まれた「Aqours」という名前。

 

あれを書いたのは本人は知らんふりを決め込んでいるが、何を隠そうそこにいるダイヤだったのだ。

 

「誰かさんに・・・・・・」

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