ラブライブ! ジードサンシャイン!!   作:ベンジャー

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1話の変更点。
無爪が高海家に同居。
レムの名前をつける時のシーンをちょっと追加。
ちなみに起動可能な3つ目のカプセルがあります。

あと今回ジード本編のような戦闘シーンが良かったとか言われるような気もしますが、それはそれ、これはこれです。




第2話 『リトルスター』

「ハァ……ハァ……!」

 

彼女、「桜内 梨子」が千歌や無爪と出会った日の夜……。

 

彼女は突如として眩い光が胸から溢れ、それとほぼ同じタイミングであの怪獣……スカルゴモラが出現した。

 

光はすぐに収まったが、スカルゴモラがこちらに向かって歩いて来ていることに気づいた梨子は必死に怪獣から逃げる為に走っていた。

 

しかし、その後は「ウルトラマンジード」が駆けつけ、スカルゴモラを撃破したこととその日以来、身体に異常も無く、胸がまた光ることもなく事なきを得るのだった。

 

 

 

 

 

 

それから数日後の夜……。

 

『音ノ木坂高校1年、桜内 梨子さん。 曲は『海にかえるもの』』

 

とあるピアノのコンクール会場にて、そうアナウンスが流れて紹介されると梨子が現れて彼女は観客たちに向かって一礼した後、椅子に座りピアノを弾こうとするのだが……。

 

「……っ」

 

梨子はどこか不安そうな表情を浮かべており、なぜか手が震えていた。

 

何時まで経っても演奏が始まらないため、観客達はざわつき始める。

 

それが……少し前の、彼女……桜内 梨子に起こった出来事。

 

現在、彼女は以前のピアノコンクールで演奏ができなかった時のことを思い出しながらもどうにかピアノを弾こうとするのだが、結局は弾くことが出来ず、気分転換にベランダに出て静かに空を見上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

その翌朝、無爪の部屋にて。

 

『先日、出現した巨大生物に対し『怪獣』という呼称を用いることが本日正式に決定いたしました』

 

彼の部屋でなぜか曜と千歌が一緒になってニュースを見ており、無爪自身も「なんで僕の部屋でテレビ見てるんだ」とでも言いたげな視線を2人に送っていたが、2人は全くそのことに気づいていない。

 

『一方、怪獣と対峙した巨人はクライシス・インパクト時に撮影された存在ではないかとの見方もあります』

 

ニュースに映る人物はクライシス・インパクト時に撮影されたウルトラマンベリアルと今回現れたウルトラマンジードの写真を比較し、目の形などが似ていることから同一人物、または何か関連があるのではないかという説が出ており、またその人物はジードのことも危険視していた。

 

「ねえ、千歌ちゃんはあの怪獣と巨人を近くで見たんだよね? やっぱり、怖かった? 私は、テレビでしか見てないんだけどちょっとどっちも怖いかなって思っちゃうんだよね……」

「まぁ、確かに怪獣は怖かったけど……」

 

と千歌がそこまで言いかけた時である。

 

「ぼ、僕ちょっとトイレ行ってくるね!!」

 

どこか慌てた様子で無爪は部屋を出ていき、そんな彼の慌てた様子に千歌と曜は互いに顔を見合わせて「んっ?」と首を傾げるのだった。

 

それから無爪は廊下をしばらく歩いた後、「はぁ」と大きなため息を吐いてその場に蹲ると、無爪の影の中からヒョコっとペガが顔を出す。

 

『無爪、大丈夫?』

「曜ねえに怖いって言われるのがこんなにショックだなんて思わなかったよ。 曜ねえでこんなにショックなんだ。 千歌ねえにも同じようなことを言われたら僕、二度と立ち上がれないかも……」

『それは、重症だね……』

 

ペガは苦笑しつつ蹲る無爪の背中をポンっとそっと手を置き、励ます。

 

「よし、決めた!! もうフュージョンライズしない!!」

 

それを聞いてペガは「えぇ!?」と驚きの声をあげる。

 

「僕が出ていくとみんなが怖がるし、曜ねえや千歌ねえをこれ以上怖がらせたくもない! そうだろ? レム?」

 

無爪は腰に装着した装填ナックルに触れながら秘密基地のレムに話しかけるとレムはネットに書いてある情報を彼に教える。

 

『ネットの記事によれば無爪とベリアルを同一視して脅威を感じている人の割合は全体の75%、世間はあなたに怯えている……。 と判断して良いでしょう』

 

それを聞き、無爪は「ほらね!」と笑い飛ばすが……その笑みはどことなく、無理して作っているようにペガには見えて仕方がなかった。

 

『無爪……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、学校にて……。

 

「ごめんなさい」

「だからね! スクールアイドルって言うのは!!」

 

今は曜と無爪を引き連れて千歌は梨子をスクールアイドルに勧誘していた。

 

だが梨子は謝罪だけをして千歌の誘いを断り、スタスタとどこかへと行ってしまう。

 

しかし千歌はそんなことではめげず今度は食堂にてスマホでμ'sの画像を見せてスクールアイドルの説明をしながら梨子を勧誘する。

 

「ごめんなさい」

「学校を救うことが出来たりして!! 凄く素敵で!!」

 

すると梨子は飲み干した缶を少し強めに「コトッ」とテーブルの上に置くと千歌、曜、無爪と周りの生徒たちは思わずそれに「ビクッ!」と肩を震わせる。

 

そのまま彼女は缶を持って立ち上がり、その場を立ち去っていく。

 

体育の授業のランニングでも相変わらず千歌は梨子と一緒に走りながら彼女の勧誘を続ける。

 

「どうしても作曲できる人が必要でぇ~!」

「ごめんなさぁ~い!!」

「待っ……うわっと!!?」

 

そして千歌はつまずいてその場に思いっきりこけてしまうのだった。

 

その後の昼休み、千歌と曜は中庭でダンスの練習を行っており、無爪は千歌に「練習で悪いところあったら教えて!!」と半ば強引に連れて来られ、2人の練習風景を見守っていた。

 

「またダメだったの?」

「うん! でも、あと一歩! あと一押しって感じかな!」

 

また梨子の勧誘を失敗したのかと曜が尋ねると千歌はそれに対して自信ありげに答えるのだが、正直そうとは思えない気がしてならない。

 

「ホントかなぁ……?」

「とてもそんな感じには見えない気が……」

 

しかも見事に無爪の意見とほぼ一致、それから一旦休憩を挟むことになり、曜はベンチに腰かける。

 

「だって最初は! 『ごめんなさい!』だったのが最近は! 『うぅ……ごめんなさい』になって来たし!」

「明らかに遠ざかってるだろそれ!! あと一歩、あと一押しどころか10歩くらい遠のいてる!!」

 

苦笑しながら無爪はそう話す千歌にツッコミを入れ、曜もどう聞いてもそれは嫌がっているようにはしか聞こえなかった。

 

「だいじょーぶ! いざとなったら!! ほい! なんとかするし!!」

 

千歌はそう言いながら音楽の教科書を取り出すが……。

 

「それは、あんまり考えない方が良いかもしれない……」

「不安要素が拭えないんだけど、大丈夫なの? そんなんで?」

 

すると、そんな無爪の言葉を聞いて千歌と曜はなぜかジーっと彼の顔を見つめて来る。

 

「な、なに?」

「いやぁ、なんやかんや言いつつ、なっちゃんは心配してくれてるんだなぁーって思って」

 

そんなことを言いながら「にしし……!」と笑う千歌に、無爪は顔を真っ赤にしてそっぽを向く。

 

「べ、別に心配なんかしてないし! 千歌ねえが梨子さんに変なことしないか見張ってるだけなんだからな!!」

(おぅ……! なっちゃんの見事なツンデレ頂いたであります!)

 

まるで面白いものを見たかのような表情を浮かべる曜はなぜか心の中で無爪に対し敬礼するのだった。

 

「変なことなんかしないよぉー! もう! あっ、そうだ! そういえば曜ちゃんの方は?」

 

そこで千歌が曜に頼んでいたことを思い出し、それについて問いかけると曜は「あっ!」と彼女もそのことを思い出して声をあげて手を叩く。

 

「書いてきたよ!」

 

その後、千歌と曜は自分達の教室に戻り、無爪も千歌に首根っこ掴まれて強制的に自分達の教室へと連れて行かれる。

 

そして曜はスケッチブックに書いてきたアイドルの衣装の絵を千歌と無爪に見せて「どう?」と自信ありげな顔で感想を求めるのだが……。

 

その絵は女の子が駅員の格好をしているようにしか見えず、とてもアイドルの衣装には見えなかった。

 

「おぉう……。 凄いね? でも衣装と言うより制服に近いような……。 スカートとかないの?」

「あるよ~! はい!」

 

すると曜は次のページを捲ると今度は府警の格好をした女の子が描かれており、これもまたアイドルらしくは見えなかった。

 

(っていうか、このイラストの女の子って千歌ねえがモデルなのかな? これはこれでこの格好をする千歌ねえが見たいかも……)

 

無爪がそんなことを考えていると曜は彼の考えてることを見透かしたのか、ボソっとあることを呟いた。

 

「なっちゃんのムッツリめ」

「えっ? 曜ねえなんか言った?」

「ううん、何でも」

 

無爪の問いかけに曜は首を横に振って誤魔化す。

 

「もっと可愛いのは……?」

 

千歌が曜に尋ねると彼女は「あるよ!」と答え、さらに次のページを捲ると今度は花柄の軍服を着てライフルを持っている女の子の絵が描かれていたのだった。

 

「武器持っちゃった!」

「可愛いよね~」

「花柄は可愛いかもしれないけど……」

 

どこか感性がズレている曜に思わず苦笑する千歌と呆れる無爪。

 

「可愛くないよ! むしろ怖いよ!」

 

千歌からもそうツッコまれる曜だが、彼女はなにがいけないのか分かっていないらしく、「んっ~?」と首を傾げていた。

 

「もっとスクールアイドルっぽい服だよ~」

「っと思ってそれも書いてみたよ! ほい!」

 

そう言いながら曜は次のページを捲り、無爪はまたおかしなイラストが描かれているのでは無いかと思ったのだが……。

 

今度はフリフリっとした頭にリボンがついているしっかりとしたアイドルらしい衣装が描かれており、これには流石に無爪も千歌も文句は言えなかった。

 

「すごーい! キラキラしてる! こんな衣装作れるの?」

「うん! 勿論、何とかなる!」

 

それを聞いて千歌は嬉しそうに笑みを浮かべ、「よーっし!」と気合いを入れて放課後、彼女は再び生徒会長であるダイヤに部活申請をしに行くのだった。

 

ちなみに無爪もまた千歌に首根っこ掴まれて強制連行された。

 

「だからなんで僕まで!?」

「良いじゃ~ん! ダイヤさんの説得手伝ってよなっちゃ~ん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから結局は無爪も生徒会室までついて行くこととなり、千歌はもう1度部活申請の紙をダイヤに提出するのだが……。

 

「お断りしますわ!!」

 

当然、前回の話の流れ的にもダイヤが部活申請を認めるはずもなく。

 

「こっちも!?」

「やっぱり……」

「5人必要だと言った筈です。 それ以前に、作曲はどうなったのです?」

 

ダイヤがそう尋ねると千歌はどう答えようかと一瞬悩むが……。

 

「それは~! いずれ~、きっと!! 可能性は無限大!!」

「それで話が誤魔化せる訳ないだろ、バカ千歌ねえ」

「うぅ、だよね~?」

 

どうにか話を逸らそう(?)とする千歌だったが、無爪に即座にツッコまれてしまい、ガックリと顔を俯かせる。

 

「で、でも……最初は3人しかいなくて大変だったんですよね。 『ユーズ』も」

 

「ユーズ」……その名前を聞いてダイヤは眉をピクッと動かし、無爪の影の中で話を聞いていたペガも「はい?」と少し不機嫌そうにする。

 

「知りませんか? 第二回ラブライブ優勝! 音ノ木坂学院スクールアイドル、『ユーズ!』」

 

千歌はその「ユーズ」と呼ばれるスクールアイドルのことをダイヤに説明するのだが、その際ずっとダイヤが苛立つように指を申請書の上でトントンしていることに気づかず、千歌の説明が終わるとダイヤはゆっくりと椅子から立ち上がる。

 

「それはもしかして……『μ's(ミューズ)』のことを言っているのではありませんですわよね?」

 

それを聞き、「あっ……」と千歌と曜は顔を見合わせてゴクリと唾を飲み込む。

 

「あっ、もしかしてアレ、『ミューズ』って読む……」

「おだまらっしゃーい!!!!」

 

その瞬間、ダイヤは大声で千歌達に怒鳴り声をあげる。

 

「なんか分かんないけど地雷踏んだっぽいよ!? ちゃんと謝れバカ千歌ねえ!?」

「えぇ!? え、えっとごめんなs」

 

しかし、ダイヤはそんな千歌の言葉を遮ってズイッと詰め寄ってくる。

 

「言うに事欠いて、名前を間違えるですって!? あぁん!!? μ'sはスクールアイドル達にとっての伝説! 聖域! 聖典! 宇宙にも等しき生命の源ですわよ! その名前を間違えるとは!! 片腹痛いですわ……!」

 

ズイズイと千歌に詰め寄って怒鳴るダイヤ、それに千歌はどんどん後ろに追い込まれてしまい逃げ場を無くしてしまう。

 

「ち、近くないですか?」

 

ちなみにここで今のダイヤの心情を「ウルトラマンは知ってるけど、ラブライブ! サンシャイン!! のことはあんまり知らない」という方に分かりやすく説明すると「ウルトラセブン」を「ウルトラ『マン』セブン」と呼ぶようなものである。

 

「フン! その浅い知識だとたまたま見つけたから軽い気持ちで真似をしてみようと思ったのですね?」

「っ、そんなこと……!」

 

千歌から一度離れ、そう言い放つダイヤの言葉に反論しようとする千歌だが……。

 

「ならばμ'sが最初に9人で歌った曲、答えられますか?」

「えっ……?」

 

するとダイヤはまたもや千歌にズイッと詰め寄ってくる。

 

「ブー!! ですわ!! 『僕らのLIVE 君とのLIFE』、通称『ぼららら』。 次、第二回ラブライブ予選でμ'sがA-RISEと一緒にステージに選んだ場所は?」

(あれ? もしかしてこの人……)

 

そこで無爪は何かに感づいたようだったが、特に何も言おうとはせず、取りあえず今は成行きを見守ることにする。

 

「……ステージ?」

「ブッブー!! ですわ!! 秋葉原UTX屋上! あの伝説と言われるA-RISEとの予選ですわ! 次、ラブライブ第二回決勝! μ'sがアンコールで歌った曲は……」

 

そこで千歌は今度こそと言わんばかりに手をあげて答える。

 

「知ってる! 『僕らは今の中で』!」

「ですが……。 曲の冒頭をスキップしている4名は誰?」

 

という引っかけ問題に千歌は思わず「えーっ!!?」と驚きの声をあげると又もやダイヤはズイズイっと千歌に詰め寄ってくる。

 

「ブッブッブー!! ですわ!!」

 

その際、あまりにもダイヤが千歌に詰め寄ってくるため、千歌は思わず後ろにあった校内放送のためのマイクのスイッチを入れてしまい、全校内にダイヤの声が聞こえてしまうという事態になるのだが、ダイヤはそれに気づかず話を続ける。

 

「『絢瀬 絵里』『東条 希』『星空 凛』『西木野 真姫』!!  こんなの基本中の基本ですわよ!」

「す、凄い……!」

「生徒会長もしかしてμ'sのファン……?」

 

千歌がダイヤにそう尋ねると彼女は自信たっぷりな様子で答える。

 

「当たり前ですわ! わたくしを誰だと……んんっ! 一般教養ですわ!! 一般教養!!」

 

慌てて誤魔化すダイヤだが、曜と千歌、さらには珍しく無爪も一緒になって「へー?」とジト目でダイヤを見つめる。

 

「と、兎に角……! スクールアイドル部は認めません!!」

 

 

 

 

 

 

 

「だって! 前途多難過ぎるよ~」

 

放課後、海辺でそんな風に落ち込む千歌だったが……。

 

「「じゃあ、やめる?」」

「やめない!」

 

無爪と曜がそう尋ねると彼女は元気を取り戻したように強きな表情を浮かべる。

 

「だよね~」

 

するとそこで千歌が後ろを振り返ると彼女は花丸が歩いていることに気づき、千歌は彼女に向かって「おーい!!」と声をかけると彼女の方も千歌に気づいたらしく、挨拶する。

 

「こんにちわ」

「あー、やっぱり可愛い! んっ?」

 

すると千歌は何かあることに気づき、ジッとある方向を見て目を懲らす。

 

「どうかした千歌ねえって……あそこに隠れてるのは……、ルビィちゃん?」

 

無爪が千歌と同じ方向を見ると確かに彼の言ったとおり、木の後ろにルビィが隠れており、彼女の存在に気づくと千歌は大きくルビィに向けて手を振る。

 

「あっ! ルビィちゃんもいるー!!」

「ピギィ!?」

 

千歌はルビィの元へと駆け寄って行くのだが……前回のことを思い出してか怖がらせてはいけないと思い、彼女はポケットから飴を取り出してそれをルビィに差し出す。

 

「ほ~らほら、怖くなぁ~い。 食べる?」

 

するとルビィはその飴に釣られるように木の後ろ側から嬉しそうに出てきて飴を受け取ろうとするのだが、ルビィが飴を取ろうとした瞬間、寸でのところで飴を引っ込める。

 

千歌はそのまま「ル~ルル~」と歌いながら飴を餌にルビィを誘導。

 

「犬かな? っていうか餌付け……?」

 

無爪が呆れた視線を千歌に送っているが、彼女はそんなことには気づかず、「フッ」と不敵な笑みを浮かべると飴を大きく放り投げる。

 

それを見てルビィが驚いている間に千歌は彼女に抱きつく。

 

「捕まえた!」

「うわわ! うゆうゆ!?」

 

いきなり抱きつかれたことにビックリするルビィだったが、丁度先ほど投げて落ちて来た飴がルビィの口の中に見事収まり、それを見て無爪は「スゲぇ!」と感心するのだった。

 

「でも今のはルビィちゃんが凄いのか千歌ねえが凄いのか……」

 

その後、途中まで花丸とルビィは帰りのバスが一緒ということで一同は全員でバスに乗ることとなり、千歌は花丸とルビィにスクールアイドルのことを話していた。

 

「スクールアイドル?」

「すっごく楽しいよ! 興味ない?」

 

地味にここでも勧誘する千歌だったが、花丸は図書委員の仕事があるからと断り、千歌はルビィはどうかと尋ねるのだが……。

 

「ふぇ!? えっと、ルビィはその……お姉ちゃんが……」

「お姉ちゃん?」

「ダイヤさんはルビィちゃんのお姉ちゃんずら」

 

花丸からの説明を受けて千歌は「えっ!?」と驚きの声をあげ、そこで曜はルビィが戸惑う理由を理解した。

 

「なんでか嫌いみたいだもんね、スクールアイドル」

「……はい……」

 

下を俯きながらそう答えるルビィ。

 

(いや、絶対好きだと思うんですけど……。 少なくともあの人絶対μ'sの大ファンだよ……)

 

とは思った無爪だったが、それを口にすべきかどうか少し悩み、ダイヤがあそこまでスクールアイドル部を拒否するには何か理由があるのではと考え、下手に踏み込むべきでもないだろうと考え結局は黙っておくことにするのだった。

 

「今は、曲作りを先に考えた方が良いかも。 何か変わるかもしれないし!」

「そうだねー。 花丸ちゃんはどこで降りるの?」

 

千歌が花丸にそう尋ねるとなんでも彼女は今日は沼津まで学校を休んでる善子にノートを届けに行くらしい。

 

「そう言えばあの娘、入学式以来全く見てないな……」

 

ちなみに無爪も花丸達と同じクラスである。

 

「実は入学式の日……」

 

花丸の説明によるとクラスでの自己紹介の時に善子は色々とやらかしてしまったらしい。

 

『堕天使ヨハネと契約してあなたも私のリトルデーモンに、なってみない?』

 

なんていう強烈な自己紹介をかました後、「ウフ♪」と不敵な笑みを浮かべ、クラスメイトの殆どが唖然。

 

『ピーンチ!!』

 

その光景を見たからか、彼女はすぐさま教室から出て行き、それ以来全く学校に姿を現さないのだという……。

 

「それっきり、学校に来なくなったずら」

「そうなんだ……」

 

これを聞いて曜は苦笑するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、千歌と無爪はバスを降りて曜達と別れるのだが……その時、バス停のすぐ側にある海辺に梨子がいることに気づく。

 

「桜内さーん!」

 

梨子の存在に気づいた千歌は彼女の名前を呼びながら手を振り、梨子はこんなところまで自分を勧誘しに追って来たのかと思い、「はぁ」と溜め息を吐く。

 

「まさか、また海に入ろうとしてる?」

 

すると千歌は梨子の元に駆け寄るといきなり彼女のスカートを捲り、梨子は「してないです!!」と慌ててスカートを押さえるのだが……。

 

「あっ……」

 

そこで梨子は両手で目を塞いでいる無爪の存在に気づき、彼女は顔を真っ赤にして彼に「見たの?」と問いかける。

 

「み、見てないです!! ちょっとしか……! あっ……」

「結局見てるんじゃ無い!!」

 

顔を真っ赤にして怒る梨子だが、無爪に非は無いので彼女はそこまで怒ることはなく、無爪も顔を赤くしつつ千歌の頭に軽くチョップを叩きこむ。

 

「いたっ!? なにすんの!?」

「千歌ねえのせいでしょ!」

 

「むぅ~」っと頬を膨らませる千歌。

 

「それよりも、こんなところまで追いかけて来ても答えは変わらないわよ?」

 

梨子のその言葉に千歌は一瞬「えっ?」となるが、すぐに梨子が何か勘違いしていることに気づく。

 

「違う違う! 通りかかっただけ! そう言えば、海の音、聞くことができた?」

 

千歌は梨子にそう尋ねるのだが、梨子は暗い表情を浮かべたまま黙り込んでしまい、千歌はそれを見て未だに彼女が悩みを解決できないのを察するとあることを1つ彼女に提案した。

 

「じゃあ今度の日曜日、開いてる?」

「……どうして?」

「お昼にここに来てよ! 海の音、聞けるかもしれないから!」

「聞けたらスクールアイドルになれって言うんでしょ?」

 

梨子が千歌にそう問いかけると彼女は「うーん、だったら嬉しいけど」と言いながら両腕を組む。

 

「その前に聞いて欲しいの! 歌を……」

「歌?」

 

梨子が首を傾げると千歌は梨子はスクールアイドルのことを全然知らないから、だから知って貰いたいのだと語り、千歌は梨子にそれではダメかと尋ねる。

 

「あのね、私ピアノやってるって話したでしょ? 小さい頃から、ずぅーっと続けてたんだけど、最近、幾らやっても上達しなくて……やる気も出なくて、それで環境を変えてみようって!」

「成程、つまり……梨子さんは今はスランプ中ってことですか?」

 

無爪の問いかけに梨子は静かに「そう」と頷く。

 

「だから、海の音を聞ければ何か変わるのかなって」

 

梨子はそう言いながら両腕を伸ばして手の平を海に向ける。

 

「変わるよ、きっと」

 

そんな梨子に千歌はそう言いながら彼女の両手を握りしめる。

 

「簡単に言わないでよ!」

「分かってるよ、でも、そんな気がする。 ジーッとしてても、ドーにもならないんだから!」

 

千歌のその言葉に梨子は思わず少しだけ笑い、「変な人ね」と呟いた後、千歌の手から離れようとする。

 

「兎に角、スクールアイドルなんてやってる暇なんて無いの。 ごめんね?」

 

しかし、千歌は離れようとする梨子の手をもう1度握りしめ、それに梨子は少し驚いた様子を見せる。

 

「分かった! じゃあ海の音だけでも聞きに行ってみようよ! スクールアイドル関係なしに!」

「えっ?」

「なら良いでしょ!?」

 

笑みを浮かべながら千歌がそう言うと梨子は少しだけ口元に笑みを浮かべる。

 

「ホント、変な人……」

 

その時のことである。

 

突如として梨子の手が熱くなり、手を握っていた千歌は「熱っ!?」と思わず手を離してしまう。

 

すると梨子の胸に眩い光が溢れ、そのことに千歌や無爪、梨子自身も驚きの表情を浮かべる。

 

「なっ、そんな……また!?」

「な、なに!? 梨子ちゃん大丈夫!?」

 

梨子は身体が熱くなるのを感じ、彼女は胸の光を両手で押さえ込む。

 

その光はすぐに消えたが、彼女の身体は熱いままであり、梨子の不安そうな表情は消えていない。

 

「何だったんだ? 今のは……? 梨子さん、身体なんともない?」

「え、えぇ、でも、この前もさっきみたいに胸に光が溢れたことがあったの……。 お医者さんに診て貰っても身体にはなんの異常も見当たらなかったらしくて……。 しばらく光が溢れることも無かったから、もう大丈夫だと思ったのに……!」

 

梨子は無爪と千歌にそう語り、彼女はどこか怯えた様子を見せており、千歌と無爪はどうにか梨子を取りあえず落ち着かせようとする。

 

「怪獣が現れたのも、この光が溢れた時だった……。 しかも、怪獣はあの時、心なしか私の方に向かって来てる気がして……。 だからまた……!」

 

どうやら、梨子が怯えているのはまたこの光が発祥したせいで再び怪獣が現れないか心配だったらしく、そんな風に不安そうな梨子を励ますように千歌は「大丈夫だよ!」と声をかける。

 

「あの怪獣は、あの巨人がやっつけてくれたじゃん!!」

「で、でも……!」

「見つけた……!」

「「「っ!!!?」」」

 

その時だ。

 

突如として一同の背後から全身黒ずくめの……黒い帽子と黒いマスクをしたいかにも怪しさ満載の男がこちらに向かって不気味な笑みを浮かべながら近づいて来ていた。

 

「な、なんですかあなた!?」

 

気配に気づいた無爪は後ろを振り返って男にそう言いながら梨子と千歌を後ろに下がらせる。

 

「ダダァ……!」

 

男は無爪の頭上を軽々とジャンプして飛び越えると一気に梨子の元まで辿り着き、千歌を押し退かして彼女の左腕を掴むのだが……。

 

「い、嫌!? 来ないで変態!!」

 

梨子は右腕を突き出すとそこから炎が溢れ出して男の身体を燃やし、男は悲鳴をあげながら吹き飛ぶとその正体を表した。

 

それはシマシマ模様の身体とオカッパのような頭が特徴の異星人「三面怪人 ダダ」であり、ダダは「ミクロ化器銃」という武器を梨子に向ける。

 

「うぇ!? 梨子ちゃんの手から炎が! っていうかな、なにあれ!?」

「も、もしかして……宇宙人……!?」

 

梨子が炎出すのを見て驚く2人。

 

だがそれ以上にダダの姿を千歌と無爪は見て驚く。

 

「何してんだこのオカッパ野郎!!」

 

だがそこですぐに無爪がダダに向かって掴みかかり、そのままウルトラマンとしての腕力を使ってダダを遠くへと投げ飛ばす。

 

『ぐわああ!!? チッ! 邪魔をするな!!』

 

地面を転がって倒れ込むダダ、無爪はそのまままダダに向かって駈け出して行き、再び掴みかかろうとするがダダはパッと姿を消してしまう。

 

「あれ!? どこに行った!?」

 

無爪が辺りを見渡すと瞬間移動したダダが梨子の目の前に現れており、梨子を助けようとダダに飛びかかる千歌だったが、又もや瞬間移動で躱されてしまう。

 

そしてダダは今度は梨子の背後に姿を現し、ミクロ化器銃を梨子に向けて引き金を弾くとそこから光の粒子のようなものが放たれ、それを梨子が浴びると彼女は身体が縮小され、ダダの持つ1つのカプセルの中に吸い込まれてしまった。

 

「きゃあああ!?」

『ダダァ……!』

 

そのままダダはカプセルに入った梨子を連れ去って走り去って行き、無爪と千歌は急いでダダのあとを追いかける。

 

「待てー!! 梨子ちゃん泥棒ー!!」

 

その後、ダダを追いかけて人気のない場所行くとダダは突然立ち止まり、小型の光線銃を取り出して無爪達に向ける。

 

「危ない!!」

 

咄嗟の判断で無爪は千歌の肩を掴んで一緒に頭を下げ、ダダの放った光弾をどうにか躱すことができた。

 

「ありがと、なっちゃん!」

「それより梨子さんを助けないと!!」

 

無爪は人間とは思えないほど大きくジャンプしてダダの背中に跳び蹴りを叩き込み、地面を転がるが……ダダはそれでも梨子の入ったカプセルを離さず。

 

「こんのぉー!! 梨子ちゃんを返せ~!! 今度梨子ちゃんと一緒に海の音を聞きに行くんだからぁ!!」

 

そう言いながら今度は千歌が立ち上がろうとしているダダに後ろから跳び蹴りを喰らわせ、それによってようやくダダは梨子の入っているカプセルを手放し、それを無爪が見事にキャッチ。

 

『な、なんて乱暴な奴等なんだぁ……!』

「お前にそんなこと言われたく無いんだけど!?」

 

そのままダダは逃げ出していき、カプセルに入れられていた梨子もダダがいなくなると彼女はカプセルから出てきて元の大きさに戻り、千歌は慌てて梨子の元へと駆け寄る。

 

「梨子ちゃん大丈夫だった!? 身体、なんともない!?」

「え、えぇ、一応平気よ……。 でも、まだあの力は消えてないみたい……」

 

梨子はそう言いながら右手から少しだけ小さな炎を出し、千歌も無爪も一体彼女の身に何が起っているのか分からず、首を傾げていた。

 

(レムなら何か知ってるかな……?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、とある廃工場に逃げ込んだダダだったが……そこに、スカルゴモラに変身していたあの黒ずくめの男性がダダの前に現れた。

 

『誰だ? 貴様は……?』

「光に引き寄せられて来たか? 研究の邪魔は控えて貰おうか……」

『貴様、『ストルム星人』か! あれは俺が見つけた光だ! 渡さない!!』

 

しかし、「ストルム星人」と呼ばれた男はそんなダダの言葉を一蹴するように「無駄だ!!」と言い放った。

 

「あの光、『リトルスター』は宿主からの分離が難しい。 分離されるのは、宿主が祈った時だけだ。 ウルトラマンに……」

『っ、黙れぇ!!』

 

逆上したダダはミクロ化器銃を構えて男に光線を放つが、男は片手でバリアのようなものを張り巡らせて攻撃を防ぎ、一瞬で姿を消す。

 

『むっ……!?』

 

すると背後に男は現れ、右手から衝撃波をダダにち、ダダは身体が粉々に砕け散る。

 

『ぬぐあ!!?』

「フン……。 それよりも、奴はリトルスターの宿主を保護したか。 この状況、利用させて貰う!!」

 

男はそう呟くと「怪獣カプセル」を取り出してそれを起動させ、それを装填ナックルに装填。

 

「『ドレンゲラン』!! エンドマークを打ってこい!!」

 

そのまま「ライザー」を取り出して装填ナックルをスキャンし、ライザーを外に向かってかざすとそこから「宇宙鉱石怪獣 ドレンゲラン」を召喚した。

 

『ドレンゲラン!』

 

それからドレンゲランは無爪達の元へと一直線に進んでいき、それに気づいた梨子は再び怯えた表情を見せる。

 

「ま、また怪獣……!?」

 

そしてドレンゲランの姿を見て無爪は思わず装填ナックルに手を伸ばしたが……。

 

『フュージョンライズしますか?』

「……いや、しない」

 

レムのその問いかけに無爪はそう答え、無爪と千歌は兎に角今はドレンゲランから逃げようと3人は一斉に逃げ出す。

 

「兎に角逃げよう!」

 

千歌が無爪と梨子にそう言って2人は頷き、3人はその場から逃げるように走り出す。

 

その後、3人が逃げていると偶然買い物中だったという梨子の母親と出会い、一同は梨子の母親と一緒にドレンゲランから逃げようと走り出すのだが……。

 

「……アレ?」

 

なぜか、無爪だけはその場から動くことができなかった。

 

「……ペガ、僕の足、なんで掴んでるんだ?」

 

するとひょっこりと無爪の影からペガが顔を出す。

 

『何もしてないよ? ペガは』

「じゃあ、どうして足が動かないんだ?」

 

無爪のその疑問にペガは答える。

 

『それは、君の意思だ』

「僕の……?」

『君はベリアルの息子、でも……君は君だ! 梨子ちゃんを怪獣から救いたいと、本心では思ってる筈だよ?』

 

ペガにそう指摘され、少しだけ黙り込んだ無爪はそのまま千歌達とは反対の方向に走り去って行く。

 

「あれ!? なっちゃん!? そっちには怪獣がいるよ!! 危ないよぉー!!」

 

千歌は怪獣の方に向かって行く無爪に気づき、彼女は無爪を追いかけて来るとだけ梨子に言い残して彼を追いかける。

 

「千歌ちゃん!!」

「危ないわよ!!」

 

しかし、梨子と梨子の母親の制止を振り切って千歌は無爪を追いかける。

 

そして人気のない場所に行くと無爪は「ジードライザー」を取り出す。

 

「ジーッとしてても、ドーにもならねえ!!」

「なっちゃん……?」

 

そこに千歌も現れるのだが、無爪はそれに気づかず「ウルトラマン」のカプセルを起動させるとそこからウルトラマンが現れる。

 

「融合!!」

 

ウルトラマンのカプセルをナックルに装填し、続いて無爪は「ウルトラマンベリアル」のカプセルを起動させ、今度はそこからベリアルが姿を現す。

 

「アイ、ゴー!!」

 

同じくベリアルのカプセルをナックルに装填し、ジードライザーで装填したカプセルを無爪はスキャンする。

 

「ヒア、ウィー、ゴー!!」

『フュージョンライズ!』

「決めるぜ、覚悟!!」

 

そしてジードライザーを掲げて胸の前でスイッチを押すとウルトラマンとベリアルの姿が重なり合い、無爪は2人のウルトラマンの力を合わせた「ウルトラマンジード プリミティブ」へと変身を完了させたのだ。

 

「はああ!! はぁ!! ジイィーーーード!!!!」

『ウルトラマン! ウルトラマンベリアル! ウルトラマンジード!! プリミティブ!!』

 

ジードへと変身した無爪は大地へと降り立ち、それを見た千歌は目を見開き、驚きの顔を浮かべていた。

 

「なっちゃんが、あの巨人……? 嘘……!?」

『行くぞ!!』

 

戦闘BGM「ウルトラマンジードプリミティブ」

 

ジードはファイティングポーズを取りながらドレンゲランへと駈け出して行き、助走をつけて勢いよく膝蹴りを叩きこむが……ドレンゲランは「だからどうした」と言わんばかりにその長い首を横に振るってジードの身体を叩きつけて吹き飛ばす。

 

『ウアッ!?』

 

フラつくジードに対してドレンゲランは口から吐く火炎弾を放って攻撃し、ジードは前面に円状のバリアを展開する「ジードバリア」でどうにか攻撃を防ぐ。

 

『シュア!!』

 

バリアを解除してジードは再びドレンゲランに駈け出して行くが、ドレンゲランは首をさらに長く伸ばしてジードに頭突きを喰らわせ、首を元に戻すとさらにまた火炎弾を撃ち込んでくる。

 

「ギシャアアア!!!!」

『ぐううう……!?』

 

するとドレンゲランは高くジャンプしてその巨体を生かしてジードを踏み潰そうとするが、ジードはどうにか飛行してそれを回避し、空中へと逃げる。

 

『レッキングリッパー!!』

 

前腕の鰭状の部位から放つ波状光線「レッキングリッパー」をジードはドレンゲランの背中に炸裂させ、ドレンゲランは少し悲鳴をあげなたことから多少のダメージを与えることに成功。

 

ジードはそのままドレンゲランの背中に乗り込むとそのままドレンゲランにチョップなどを叩きこんでいく。

 

『かったぁ……!?』

 

しかし、流石に直接攻撃するのはキツいらしく、逆にこちらの方がダメージを受けてしまう。

 

さらにそこでドレンゲランが尻尾でジードの首を後ろから締め上げ、そのまま後ろの方へと投げ飛ばすとジードは地面を転がる。

 

『グゥ……!?』

「グルルルル……!!」

 

ドレンゲランはジードの方に振り返ると口から火炎弾を発射。

 

しかしジードはそれをジャンプして躱し、一気に詰め寄るとドレンゲランの頭を左手で掴んで右拳で何度もパンチをドレンゲランの顔面に叩きこむ。

 

『顔の部分は背中ほど硬くないみたいだな!』

 

だがドレンゲランは首を激しく左右に振ってどうにかジードを突き飛ばし、再びジャンプしてその巨体を生かした重い体当たりを喰らわせ、ジードは吹き飛んで地面に倒れ込む。

 

『シェア!!?』

 

そこからドレンゲランは又もや首を伸ばして頭突きを喰らわせようとしてくるが、ジードはそれを避けて脇にドレンゲランの首を挟み込み、そのままフルスイングしようとするのだが……。

 

『お、重い……! こいつ、前に戦った怪獣より重いぞ……!?』

 

そのままドレンゲランはジードを掴んだまま首をさらに長く伸ばして首を上にあげるとそのまま首を上下に動かして自分の首を掴んでいるジードを地面に叩きつける。

 

『ウゥ……』

 

腕を離してなんとかドレンゲランの攻撃から逃れるジードだが、ドレンゲランは今度はその長い首をジードの身体に巻き付けて拘束し、零距離からの火炎弾を撃ち込んでいく。

 

『ウグアアアア!!!!!?』

「なっちゃん!!」

 

それを見て悲痛な声をあげる千歌。

 

そしてドレンゲランは拘束を解くとジードはその場に倒れ込み、カラータイマーが点滅を始め、ドレンゲランは再び梨子の方へと向かって歩き出す。

 

しかも、梨子と梨子の母親はまだこの街に来たばかりなこともあり、道に迷ってしまい、行き止まりに追い込まれてしまった。

 

「な、なんでこっちに来るのよ!?」

 

梨子の母親は悲痛な声でそう叫び、梨子も怯えきった様子を見せている。

 

『無爪、怪獣には目的があるようです』

『目的……?』

『怪獣はあなたへの追撃より、移動を選択しました』

 

そこで無爪はレムの教えでやはりあの怪獣は梨子の光、「リトルスター」を狙って行っているのだと確信し、立ち上がろうとするが……先ほどの攻撃がかなり効いたのか、ジードは思うように立ち上がれなかった。

 

「なっちゃあああああああん!!!!!」

『っ!?』

 

その時、千歌が自分を呼ぶ声が聞こえ、ジードは千歌の方へと顔を向ける。

 

『えっ? 千歌ねえ? もしかして今、こっちに向かって言った……?』

『どうやら、無爪が変身したところを目撃されたようです』

『嘘だろ……』

 

レムに言われ、無爪は頭を抱えて「やってしまった……」と落ち込むが……。

 

「なっちゃーん!! 梨子ちゃんを、助けてあげて!! お願い!!」

『千歌ねえ……』

「私は、なっちゃんのことをずっと信じてる!! だから、立ち上がって!!」

『……』

 

そして、その言葉を受けたジードはコクリと頷いて拳を握りしめ……フラつきながらもどうにか立ち上がる。

 

『千歌ねえにそう言われちゃ、立つしかないよな!! それに、今思ったけどもしかしたらアイツ……!』

 

ジードは立ち上がるとさらに無爪は新たに別のカプセル、「ウルトラマンオーブ エメリウムスラッガー」のカプセルを起動させる。

 

『融合!!』

 

するとカプセルからオーブ エメリウムスラッガーが現れ、無爪はカプセルをナックルに装填。

 

続いて無爪はベリアルのカプセルを再び起動し、カプセルからベリアルが現れる。

 

『アイ、ゴー!!』

 

ベリアルのカプセルもナックルに装填し、ジードライザーで装填したカプセルを無爪はスキャンする。

 

『ヒア、ウィー、ゴー!!』

『フュージョンライズ!』

『飛ばすぜ、光刃!!』

 

そしてジードライザーを掲げて胸の前でスイッを押す。

 

「はあああ、はあ!! ジイィーーーード!!!!」

『ウルトラマンオーブ エメリウムスラッガー! ウルトラマンベリアル! ウルトラマンジード! トライスラッガー!!』

 

最後にオーブ エメリウムスラッガーとベリアルの姿が重なり合い、2人の力を合わせた姿「ウルトラマンジード トライスラッガー」へとジードは姿を変える。

 

トライスラッガーへと姿を変えたジードは大きくジャンプしてドレンゲランの頭上を飛び越え、振り返るとそのままジードはドレンゲランに掴みかかって進行を阻止しようとする。

 

『これ以上、梨子さんの元には行かせない!!』

 

しかし、それでもドレンゲランの進行は止まらない。

 

ドレンゲランは近距離から火炎弾をジードに撃ち込もうとするがジードはドレンゲランの顎を掴みあげて顔を上に向け、火炎弾を何もない上空に撃たせる。

 

するとジードは顔だけを梨子の方へと向け、「任せろ」とでも言うように頷く。

 

「あの巨人は……」

 

それを見てか、梨子はジードが必死に怪獣をこちらに向かわせないようにしているのだと理解し、彼女は両手を祈るように握り合わせる。

 

(もし、本当にそうなら……お願い、助けて……!)

『こんのおおおおお!!!!』

 

挿入歌「GEEDの証」

 

するとジードは左手でドレンゲランの頭を掴みあげて右拳で何度も素早く顔面にパンチを叩き込み、最後にアッパーカットを叩きこむ。

 

ドレンゲランは火炎弾をジードに撃ち込むがジードは素早く後退して攻撃を躱し、頭部にある2本のブーメラン「アイスラッガー」を両手に持って構える。

 

『ハアアアア!!』

 

そのままジードはドレンゲランに向かって駈け出して行き、ドレンゲランは火炎弾を放つが、ジードはそれらを全て切り裂きながら突っ込んでいき、身体を勢いよくスライディングさせてすれ違いざまにアイスラッガーでドレンゲランの右の足の膝を斬りつける。

 

するとドレンゲランは膝から火花を散らし、背後に回り込んだジードはさらに中央のアイスラッガーと両手のアイスラッガー、合計3つを飛ばして1つはドレンゲランの尻尾を切り裂き、もう2つはドレンゲランの足の膝の裏を切り裂く。

 

「キシャアアアア!!!!?」

『狙い通り! 硬い奴は関節が大体弱いからな!!』

 

アイスラッガーを頭部に戻し、ドレンゲランはジードに振り返って首を伸ばして頭突きを喰らわせようとするが、ジードはジャンプしてそれを回避し、右足に炎を宿して急降下キックでドレンゲランの首を踏みつけるように蹴りつける。

 

「グア!?」

 

そのままジードはドレンゲランから離れると3本のアイスラッガーを放ち、そこに腕をL字に組んで光線を発射して反射させ、拡散させ四方八方から浴びせる必殺技「リフレクトスラッガー」をドレンゲランへと繰り出す。

 

『リフレクトスラッガー!!』

 

そしてドレンゲランは自慢の身体の硬さもこの技を完全に耐えれるほどの防御力は無かったらしく、1番脆い間接部に幾つも光線が直撃したこともあり、火花を散らして爆発したのだった。

 

「グルアアアアア!!!!?」

 

ドレンゲランが倒され、梨子や彼女の母、千歌は「やったああああ!!!!」と喜びの声をあげる。

 

すると、梨子に宿っていたリトルスターの光は彼女から分離し、光はジードのカラータイマーの中へと吸い込まれ、ジードの中にいる無爪の持つカプセルを入れる小型ケースの中に宿る。

 

それを見て無爪はケースを開けるとその中に新たなカプセルがあり、それを取り出すとカプセルに「ウルトラマンレオ」の姿が浮かび上がる。

 

『ウルトラマンレオカプセルの起動を確認しました』

『これは、新しいカプセル……?』

 

そしてジードは空へと飛び去るのだった。

 

また、ドレンゲランを召喚した男はジッと空に飛び立つジードを見つめていた。

 

「これで必要なカプセルは残り……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あいたたた……」

『無爪、大丈夫?』

 

戦いを終えた無爪は腰を押さえてペガに支えて貰っており、無爪は「はぁ」と溜め息を吐くと彼はそのまま近くにあったベンチに座り込んだ。

 

「ふぅ、疲れた……」

 

するとその時、無爪の頬に「ピトッ」と冷たい感触が伝わり、慌てて振り返るとそこには缶ジュースを持った千歌が立っていた。

 

「お疲れ様、なっちゃん」

「あ、うん、ありがとう……。 千歌ねえ、さっきも……」

「それにしても驚いたよ! なっちゃんがあの巨人だったなんて!」

 

千歌はどこか興奮した様子でズイズイ顔を近づけ、無爪はそれに少し頬を赤くしつつ「取りあえず説明するから」と言って千歌を隣に座らせる。

 

それから無爪は千歌に自分がジードというウルトラマンにどういう経緯でなったのか、また父親がかつてクライシス・インパクトを引き起こした張本人「ウルトラマンベリアル」で、自分はその息子なのだということを彼女に一通り説明した。

 

「なっちゃんが、ベリアルの息子……」

 

ただでさえ無爪がジードであることに驚いたというのにさらにベリアルは実在し、無爪は彼の息子だという事実に、千歌も流石に驚きを隠せなかったようで、そんな様子の彼女を見て無爪は沈んだ表情を浮かべる。

 

「やっぱり千歌ねえも僕のこと……怖い?」

 

本当は千歌がジードを、自分のことをどう思っているのか聞くのが怖かったが……こうなってしまっては気になって仕方が無い。

 

一緒に暮らしている仲ならば尚更だ。

 

その為、無爪は勇気を振り絞って千歌が自分が怖いかどうかを問いかけた。

 

「ううん、私はなっちゃんのことをずっと信じてるってさっきも言ったじゃん。 最初にジードとして現れた時も、必死に怪獣を止めようとしてジードは私達を守ろうとしてくれてるってすぐ分かったもん」

「千歌ねえ……」

「よく頑張ったね。 ナデナデ♪」

 

すると千歌はそう言いながら無爪を抱きしめて彼の頭を撫で、無爪は照れ臭そうにしつつも抵抗せず受け入れるのだった。

 

(無爪、嬉しそう。 良かった……)

 

またそんな2人の様子をペガは微笑ましく見守るのだった。

 

「さっ! 梨子ちゃんも心配だし、そろそろ探しに行こう!」

「そうだね」

 

そして千歌は無爪の手を引いて2人は立ち上がり、梨子を探しに行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

日曜日、あれから梨子の身体に異常が起こることもなくなり、今日は約束通り海の音を聞く為、果南の家のダイビングショップに訪れていた。

 

ちなみに曜や無爪も千歌に誘われてダイビングショップには来ている。

 

「イメージ?」

「人間の耳には、音は届きにくいからね! ただ、景色はこことは大違い! 見えてるものからイメージすることは出来るとは思う」

 

そして今は果南からダイビングについてのことを説明しており、梨子の「海の音」を聞きたいという意見に対しても色々とアドバイスを受けていた。

 

「想像力を働かせるってことですか?」

「まっ、そういうことね。 用は勝利のイマジネーションってこと! できる?」

「やってみます」

 

それから梨子、千歌、無爪、曜、果南の5人はダイビングスーツに着替えて一緒に船に乗ってある程度進むとそこから海の中に4人で潜り、梨子は「海の音」を聞こうとするのだが……。

 

「ダメ?」

「残念だけど……」

 

一度船の上にあがり、曜は「海の音」を聞くことができたどうかを尋ねるが、やはりそう上手くはいかないらしい。

 

「イメージか、確かに難しいよね」

「海の音をイメージしろってことだし、千歌ねえの言う通り難しそう」

「そうね、簡単じゃないわ。 景色は真っ暗だし」

 

すると千歌は梨子の「真っ暗」という言葉を聞いてなにか思いついたのか、「もう1回良い?」と言って千歌と曜はもう1度海の中に飛び込み、それを追うように無爪も海の中へと飛び込んだ。

 

梨子もまた3人を追いかけるように再び海の中に潜り、しばらく4人で泳ぐのだが……。

 

そこで梨子は以前のコンクールでスランプからピアノを弾けなかったことをフッと思い出し、このままでは何時まで経ってもスランプから抜け出せないのではないかと不安になる。

 

その時、突然、海の中が明るくなり、梨子は曜と千歌が上を指差していることに気づいて見上げると蒼くて光輝く美しい光景が広がっていた。

 

それを見て梨子はなにかが聞こえたような気がした。

 

それはまるで、ピアノの音のようなもので……。

 

彼女はピアノを弾く時のように両手をあげるとさらにピアノの音色のようなものが聞こえ、それから4人は海面から顔を出す。

 

「ぷはぁー!」

「聞こえた!?」

「うん!」

 

どうやら梨子が聞いた音色は他のメンバーにも聞こえていたらしく、曜や無爪にも聞こえていた。

 

「私も聞こえた気がする!」

「ホント!? 私も!」

「僕も聞こえたよ!」

 

それに千歌、梨子、曜、無爪は思わず笑い合い、その光景はとても楽しそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その翌日……。

 

「うぇ!? 嘘!?」

「ホントに!?」

 

なんと梨子は自分が曲作りを手伝うと申し出、それを聞いて千歌は涙目に「ありがと~!」とお礼を言いながら彼女に抱きつこうとするのだが……梨子はそれを華麗に躱す。

 

「待って、勘違いしてない?」

「ふぇ?」

「私は曲作りを手伝うって言ったのよ? スクールアイドルにはならない!」

 

それに対して千歌は「えぇ~!?」と不満そうな声をあげる。

 

「そんな時間はないの!」

「そっかぁ~」

「無理は言えないよ」

 

曜にもそう言われた為、千歌は「そうだねぇ」と残念そうにしつつも曲作りの手伝いをしてくれるだけ十分だと思い、梨子へのスクールアイドルへの勧誘は取りあえずは諦めることに。

 

「じゃあ詩を頂戴?」

「詩?」

 

すると千歌は「詩?」と言いつつ教室の扉を開けてみたり、ベランダを開けてみたり、なぜかみかんが2つ入ってある鞄の中を開けてみたりする。

 

「詩ってなに~♪」

「多分~、歌の歌詞のことだと思う~♪」

 

そこで千歌と曜は歌いながらそんな会話をし、最終的に2人は「歌詞?」と首を傾げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、一同は歌詞についてのことを考えるために一度千歌の家の旅館に行くことに。

 

「あれ? ここ……旅館でしょ?」

 

尚、千歌の家が旅館であることに梨子は驚きの様子を見せていた。

 

「そうだよ!」

「ここなら時間気にせずに考えられるから! バス停近いし帰りも楽だしね~」

 

するとそこで志満が「お帰り~」と外に出てきて千歌達を出迎えてくれたのだが、その時、梨子はすぐそこに高海家の飼うペットの犬の「しいたけ」がいることに気づく。

 

そしてしいたけを見るや否や彼女は顔をなぜか引き攣らせる。

 

「そちらは千歌ちゃんが言ってた娘?」

「うん! 志満姉ちゃんだよ!」

 

千歌は長女である志満を梨子に紹介し、梨子も慌てて名前を名乗って自己紹介を行う。

 

それから梨子はまた視線をしいたけに戻し、彼女は冷や汗を流す。

 

「わん!!」

 

そしてしいたけが一吠えすると梨子は「ひぃ!?」と悲鳴をあげてそのまま旅館の中へと逃げ込むように入る。

 

ちなみにそれと同時に次女の美渡も志満に用があったのか彼女の名前を呼びながらやってきていたのだが……、その手には食べかけのプリンが握られていた。

 

「美渡ねえ……。 そのプリン、もしかして……!」

「やばっ!」

 

そのまま美渡は千歌から逃げるように走り去って行き、千歌はそれに怒ってすぐに彼女を追いかける。

 

「待てぇー!! 私のプリーーーーーン!!!!」

 

その後、千歌、曜、梨子はなぜか無爪の部屋に訪れて千歌は自分の部屋の海老のぬいぐるみを抱きしめながら椅子に座り、頬を膨らませてふて腐れていた。

 

「だからなんで何時も僕の部屋に来るんだ……。 梨子さんだって嫌でしょうし、異性の部屋とか……」

「嫌というか……何というか、凄いわね……」

 

尚、無爪は「ドンシャインの再放送があるから」ということで一足先に家に帰って来ており、また梨子は無爪の部屋がドンシャインのポスターや武器の玩具、アクションフィギュアやソフビ、DVDなどが大量に置かれている部屋を見て唖然としていた。

 

「しかも特にこれ凄いわね……」

 

その中でも特に目立っているのがアメコミヒーロー映画みたいに部屋に飾られているドンシャインのコスプレ衣装だった。

 

「っていうか無爪くんって千歌ちゃんと一緒に住んでるの!?」

「色々複雑な事情があるもんで……。 っていうか何時まで千歌ねえはふて腐れてるんだ?」

 

無爪が千歌に視線を移すと彼女は未だに頬を膨らませてプリンを勝手に食べられたことを怒っていた。

 

「酷すぎるよ! 志満ねえが東京で買ってきてくれた限定プリンなのに!! そう思わない!?」

「それより作詞を……」

 

梨子はそんな千歌に苦笑しつつ、作詞を考えようと言い出そうとしたのだが、その時彼女の後ろにあった部屋の扉が開いて美渡が現れる。

 

「何時までも取っておく方が悪いんです~!」

 

「べーっ」と美渡は舌を出し、そんな彼女に「うるさい!!」と海老のぬいぐるみを千歌は美渡に投げるのだが……それは見当違いな方に飛んでいき、梨子の顔面に激突。

 

(……フェイ〇ハガーかな?)

「甘いわ!!」

 

さらに今度は美渡が浮き輪を千歌に投げるのだが……それは千歌ではなく梨子の頭の上から首まですっぽりと入り、それに美渡は「やばっ」と呟く。

 

すると梨子その状態のまま立ち上がって美渡に振り返る。

 

「失礼します」

 

梨子はそれだけ言うと扉をピシャっと閉めるのだった。

 

「新手のホラーだこの光景……」

 

そしてその光景を見て苦笑する無爪だった。

 

「さあ、始めるわよ?」

 

そこで梨子は作詞作曲についてのことを始めようとするのだが……。

 

「曜ちゃんもしかしてスマホ変えた!?」

「うん! 進級祝い!」

「良いな~」

 

とこんな風に千歌と曜は作詞作曲に全く関係のないことで話し込んでおり、それに梨子は力強く「ドスン!」っと床を踏み、千歌、曜、無爪は肩を「ビクッ」と震わせる。

 

「は・じ・め・る・わ・よ?」

 

海老のぬいぐるみが顔から外れると物凄く怖い形相で睨むように梨子は千歌達にそう言い放ち、それに千歌、曜、無爪は顔を引き攣らせつつ「は、はい……」と返事をするのだった。

 

そこから作詞は千歌が考えることになり、「どうせなら恋の歌が作りたい!」ということでそれをテーマに作詞を考えようとしたのだが、中々良いのが思い浮かばず、彼女は「う~ん」と悩みながらテーブルの上で突っ伏していた。

 

「やっぱり、恋の歌は無理なんじゃない?」

「嫌だ! μ'sのスノハレみたいなの作るの!」

(スノハレってμ'sの中でもかなりの神曲だし、スノハレみたいなのはハードル高いと思うなぁ)

 

無爪の影の中で話を聞いていたペガはそんなことを思い、梨子がいるので変わりに無爪にそのことを言って貰おうかと思ったが、言ったところで千歌が素直に聞くとは思えないのでペガは取りあえず黙っていることにした。

 

「そうは言っても恋愛経験ないんでしょ?」

「なんで決めつけるの!?」

 

梨子と千歌のその会話に漫画を読んでいた無爪はほんの少しだがピクっと反応し、視線を漫画に向けたまま聞き耳を立てる。

 

またそれに気づいた曜は無爪を見てニヤっとした笑みを浮かべた。

 

「じゃああるの?」

「っ……、それは……」

 

千歌は一瞬、無爪の方を見たあと、梨子の質問に答える。

 

「な、無いけど……」

 

漫画を読んでるフリをして聞き耳を立てていた無爪はその千歌の返答にがっかりとする。

 

(あれ? もしかして千歌ちゃんも割と……)

(なんで高海さんは今無爪くんの方を見たのかしら? ハッ、まさか……!)

 

しかし、そのことに無爪だけは気づかなかったが、曜とペガ、梨子だけはしっかりとそのことに気づいていた。

 

「でも、っていうことはμ'sの誰かがこの曲を作った時、恋愛してたってこと? ちょっと調べてみる!」

 

話を逸らしたい為か、千歌はそう言ってノートパソコンを開くのだが、梨子と無爪はなんでそうなるんだとツッコむ。

 

「でも気になるし!」

「千歌ちゃん、スクールアイドルに恋してるからね」

「本当に……」

 

そこで、今ほど呟いた曜の言葉に梨子は「あっ!」とあることに気がつき、それに続くように曜も今の自分の発言の中に作詞のヒントになるようなものがあることに気づく。

 

「なに?」

「今の話聞いてなかった?」

「スクールアイドルにどきどきする気持ちとか! 大好きって感覚とか!」

「それなら書ける気しない?」

 

曜と梨子の言葉を受けて千歌はハッとなり、彼女は顔をあげる。

 

「成程、スクールアイドルに対しての憧れっていうか愛を書こうってことか」

「そうだねなっちゃん!! 確かにそれなら書ける! 幾らでも書けるよ!! えっと、先ず輝いているところでしょ! それから!」

 

曜と梨子の言葉からヒントを貰った千歌は早速色々と紙に文字を書き込んでいく。

 

そんな楽しそうな千歌の様子を見ながら、梨子は幼い頃の昔のことを思い出していた。

 

『梨子ちゃん、とっても上手ね!』

『だって、ピアノ弾いてると空飛んでるみたいなの! 自分がキラキラしてるの! お星様みたいに!』

 

するとそこで千歌が「はい!」と1枚の紙を梨子に手渡し、彼女はもうできたのかと驚く。

 

「それは参考だよ、私その曲みたいなの作りたいんだ!」

「……『ユメノトビラ』?」

「私ね! それを聴いてね! スクールアイドルやりたいって、μ'sみたいになりたいって本気で思ったの!」

 

そう楽しげに語る梨子は「μ'sみたいに?」と首を傾げて尋ねる。

 

「うん! 頑張って努力して力を合わせて奇跡を起こしていく! 私でも、できるんじゃないかって。 今の私から、変われるんじゃないかって! そう思ったの!」

「本当に好きなのね?」

「うん!! 大好きだよ!!」

 

そして梨子の問いかけに千歌は満面の笑顔でそう答えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

それから夜、家に帰った梨子は薄暗い部屋の中でベッドにボーっとしながら座っていた。

 

梨子はなんとなくスマホを取り出して動画画面を出し、そこには「ユメノトビラ」と書かれた動画があり、彼女はそれを再生させる。

 

『みんな私と同じようなどこにでもいる普通の高校生なのに、キラキラしてた。 スクールアイドルって 、こんなにも、キラキラ輝けるんだって!!』

 

梨子は千歌と初めて会い、話した時のことを思い出しながらμ'sの「ユメノトビラ」のライブ動画を視聴する。

 

すると彼女はベッドから降りて立ち上がり、自分の部屋に置かれたピアノの元へと向かい、椅子に座り込む。

 

「……」

 

そして彼女はピアノを開いて「ユメノトビラ」の曲をピアノで弾きながら歌い始めたのだ。

 

その時だ、彼女が窓の外を見ると……そこには風呂上がりなのか、頭にタオルを巻いた千歌がこちらを嬉しそうに見つめながら立っていた。

 

それは梨子の部屋と千歌の部屋は丁度向かい合う形となっていたからである。

 

「高海さん!?」

「梨子ちゃん! そこ梨子ちゃんの部屋だったんだ!」

 

梨子はそのことに驚き、梨子は引っ越したばかりで隣が千歌の家の旅館だということに全く気づかなかったらしく、梨子は窓を開けてベランダに出る。

 

「今の『ユメノトビラ』だよね! 梨子ちゃん歌ってたよね!?」

「いや、それは……」

 

梨子はなんとか誤魔化そうとするが……。

 

「ユメノトビラ……ずっと探し続けていた……」

「……そうね」

 

千歌にそう言われ、特に誤魔化す必要もないだろうと思った彼女は観念し、その曲を歌っていたことを認める。

 

「その歌、私大好きなんだ! 第2回ラブライブの……!」

「高海さん!」

 

とそこで梨子が千歌の名前を遮るように彼女の名を呼び、それに千歌は「へっ?」と首を傾げる。

 

「私、どうしたら良いんだろう? 何やっても楽しくなくて、変われなくて……」

「梨子ちゃん……」

 

どこか落ち込んだ様子を見せる梨子、そんな彼女を見て千歌は……。

 

「やってみない? スクールアイドル?」

 

梨子に右手を伸ばし、再び彼女をスクールアイドルへと誘ってみる。

 

「ダメよ! このまま、ピアノを諦める訳には……!」

「やってみて、笑顔になれたら、変われたらまた弾けば良い……! 諦めることないよ! 言ったでしょ? ジーッとしててもドーにもならないって!!」

 

しかし梨子は千歌は本気でスクールアイドルをやろうとしているのに、そんな気持ちで自分が一緒にやるのは失礼だと言って彼女はその場に蹲ってしまう。

 

しかし千歌は……。

 

「梨子ちゃんの力になれるなら、私は嬉しい。 みんなを、笑顔にするのがスクールアイドルだもん」

 

彼女はそう言い放って身を乗り出し、さらに右手を梨子に伸ばすのだが、その際風によって頭に巻かれていたタオルが取れる。

 

「あっ、千歌ちゃん!!」

 

それに気づいた梨子は慌てて立ち上がるが、千歌は変わらず笑みを梨子に向けながら手を伸ばし続けていた。

 

「それって、とっても素敵なことだよ?」

「あっ……」

 

千歌にそう言われて梨子も薄らと笑みを浮かべながら彼女も自分の右手を千歌に伸ばす。

 

しかし、その手は僅かに届かない。

 

「流石に、届かないね……」

 

梨子が手を引っ込めようとした時だ。

 

「待って!! ダメぇ!!」

 

それでも千歌は諦めずに必死に梨子に手を伸ばし、それを見て梨子もさらに手を伸ばす。

 

そして、互いの一差し指が触れ合い、梨子と千歌の2人は嬉しそうな笑顔を浮かべるのだった。

 

「わああ……!」

「はぁあ……! ふふっ♪」

 

 




尚、このドレンゲランはそこまで動きが遅くなく、並みの怪獣くらいにはそれなりに動けます。

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