ラブライブ! ジードサンシャイン!!   作:ベンジャー

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千歌ちゃん、誕生日おめでとう!!


第3話 『ファーストステップ&ゼロ参上』

千歌、曜、そしてスクールアイドルに入ることになった梨子の3人は曲も完成した為、朝から海辺でダンスの振り付けの練習を行っていた。

 

またダンスの練習はどこかズレたところや間違ったところがないかなどの確認の為、スマホで動画も撮影していた。

 

ちなみに無爪はというと、千歌が「なんやかんやで手伝ってくれるなっちゃんだけど、部員でもないなっちゃんをこんな朝早くから起こすのも可愛そうかな」ということで彼は来ていない。

 

そして一通り練習が終わると3人でその動画を見てどこかおかしなところが無いかを確認し、梨子自身はダンスなどは大分上手くなってきた気がしていたのだが……。

 

「でもここの切り上げがみんな弱いのと、ここの動きも!」

 

曜はダンスでの不自然な点を即座に発見し、そんな風に素早く間違いなどを指摘する彼女に梨子は「流石ね」と感心の声をあげた。

 

「高飛び込みやってたからフォームの確認は得意なんだ!」

「リズムは?」

「大体良いけど、千歌ちゃんが少し遅れてるわ」

 

千歌の問いかけに梨子がそう答え、自分がズレていることを指摘されて彼女は頭を抱えて「私かー!!」と嘆く。

 

その時、空を一機のヘリコプターが飛行しているのを千歌が頭を抱えた際に発見し、同じくそれに気づいた梨子は「なにあれ?」と首を傾げる。

 

「小原家のヘリだね?」

「小原家?」

「淡島にあるホテル経営してて、新しい理事長もそこの人らしいよ?」

 

梨子の疑問に曜がそう答えるのだが、直後……ヘリは心なしかなぜかこちらの方に向かって来ているが気がしたが、千歌達はまさかと思ったのだが……。

 

気のせいなどではなかった。

 

ヘリはやはりどう見てもこちらに近づいて来ており、彼女達は「うわああ!!?」と悲鳴をあげて慌ててその場に伏せる。

 

「なになに~!?」

 

するとヘリは千歌達の前に降り立つとヘリの扉が開いてその中から金髪の少女の「小原 鞠莉」が決めポーズをしながらウインクをして現れたのだ。

 

「チャオ~♪」

 

 

 

 

その後、学校の理事長室にて……。

 

そこでは千歌、梨子、曜、無爪の4人が集められており、4人の目の前には自身を「理事長」と名乗る鞠莉の姿があった。

 

「えっ? 新理事長?」

「えっ? でも3年生……ですよね? 制服着てるし」

 

無爪の言うように鞠莉はどう見ても千歌達ともそんなに歳が離れているようにも見えないし、3年生の制服も着ており、一同は自らを理事長と名乗る鞠莉に困惑した様子を見せていた。

 

「イエース!! 気軽にマリーって呼んで欲しいの! 紅茶、飲みたい?」

「あの、新理事長……!」

 

千歌が鞠莉のことを「新理事長」と呼ぶと彼女はムスっとしたふくれっ面となり、鞠莉は千歌に向かってズイっと詰め寄る。

 

「『マリー』だよ!!」

「ま、マリー……」

 

千歌は苦笑しつつ鞠莉が希望する名前で名を呼び、ちゃんと千歌に「マリー」と呼ばれた為か、どこか彼女は満足げな表情を見せる。

 

「その制服は……?」

「どこか変かなぁ? 3年生のリボンもちゃんと用意したつもりだけど~?」

「理事長ですよね!?」

 

やはり千歌も理事長なのになんで制服を着ているのか、本当に彼女が新しい理事長なのか疑問だったらしく、そのことについて戸惑いながらも尋ねる。

 

「しかーっし!! この学校の3年生!! 生徒兼理事長!! カレー牛丼みたいなものね~!」

「成程! 分かりやすい例えですね!!」

「無爪くんそれで理解出来ちゃうの!? 私は例えがよく分からないかな……」

 

自分の隣で鞠莉の言葉を理解する無爪の言葉に梨子は驚きの声をあげるが、梨子の言葉を聞いた鞠莉が困り顔で「えぇ~!? 分からないの~!?」と詰め寄る。

 

「分からないに決まってます!!」

 

その時、いつの間にか理事長室にダイヤが入って来ており、突然現れた彼女に驚いたのか鞠莉は尻餅をつくが……その顔は笑顔のままだった。

 

「生徒会長いつの間に……?」

 

無爪は何時、ダイヤが理事長室に入って来たのか不思議に思いながら頭に疑問符を浮かべる。

 

「オゥ! ダイヤ!! 久しぶり~! 随分大きくなって♪」

 

すると鞠莉はダイヤの姿を見るや否や彼女に抱きついて嬉しそうに頭を撫で回し、ダイヤはそんな鞠莉に呆れた視線を送る。

 

「触らないでいただけますか?」

「胸は相変わらずね?」

 

そう言いながらニヤニヤした笑みで鞠莉はダイヤの胸をワシッと掴み、それにダイヤは慌てて鞠莉を振り払う。

 

「やかましい……!! ですわ……」

「イッツ、ジョーク♪」

「全く、1年の時にいなくなったと思ったらこんな時に戻って来るなんて……。 一体どういうつもりですの?」

 

どこか不機嫌そうにダイヤは鞠莉にそう尋ねるのだが、鞠莉はそんなダイヤの言葉をスルーしてなぜかカーテンを勢いよくバサッと開く。

 

「シャイニー!!」

 

それに怒ったダイヤは鞠莉のリボンを掴みあげてグイっと自分の方へと引き寄せる。

 

「人の話を聞かない癖は相変わらずのようですわね!?」

「イッツ、ジョーク♪」

 

鞠莉は再び笑顔でそう言い放ち、ダイヤは呆れつつもその手を離して鞠莉を解放する。

 

尚、そんな鞠莉とダイヤのやり取りを見て無爪は「鞠莉さんってフリーダムな人だなぁ……」と心の中で苦笑いするのだった。

 

「兎に角、高校3年生が理事長なんて冗談にも程がありますわ!!」

「そっちはジョークじゃないけどね!」

 

その鞠莉の言葉にダイヤは「はっ?」と間の抜けた声が出てしまい、鞠莉はどこからか1枚の紙をダイヤに向かって突き出すように見せるとそこには「任命状」という文字が書かれていた。

 

さらにそれには「浦の星学院三年 小原 鞠莉 殿。 貴殿を浦の星学院の理事長に任命します」とも書き込まれ、判子まで押されている。

 

つまり、これは鞠莉が本当にこの学校の理事長になったことを意味していたのだ。

 

「私のホーム!! 小原家の学校への寄付は、相当な額なの」

「そんな! なんで……!」

 

確かな証拠を見せられたが、ダイヤは未だに信じられないといった顔を浮かべる。

 

「実は、この浦の星にスクールアイドルが誕生したという噂を聞いてね?」

「まさか……それで?」

 

ダイヤの疑問に鞠莉は「そう!」っと胸を張って答える。

 

「ダイヤに邪魔されちゃ可哀想なので……応援に来たのです!」

「あの、それなら千歌ねえ達がここにいる理由は分かるんですが、なんで僕まで……?」

 

その無爪の問いかけに鞠莉は「ホワッツ?」と不思議そうに首を傾げる。

 

「なんでって、てっきりあなたは彼女達のマネージャー的なやつかと思ったからよ? 色々手伝ってるって聞いたし」

「いや、全然マネージャーとかじゃないんですけどね……。 手伝いとかたまにしますけど……」

「そうなの? なんか残念……」

 

なぜか少し残念そうにする鞠莉に無爪は「一体僕になにを期待してたんだ」と思ったが、あんまり深く考えない方が良いかと思い、取りあえずは気にしないことにした。

 

「それよりも! 応援に来てくれたって本当ですか!?」

「イエース! このマリーが来たからには心配ありません! デビューライブは秋葉ドゥームを用意して見たわ!」

 

そう言いながら鞠莉は手持ちの小型のノートパソコンを開いて秋葉ドームの画像を千歌達に見せる。

 

「ちょっと、それハードル高すぎない!?」

「そ、そうよ! いきなり……!」

 

無爪と梨子はいきなりそんな場所でライブなんてハードルが高すぎると思ったのだが、千歌はその辺は全く気にしておらず、「き、奇跡だよ~!」と感激していた。

 

「イッツ、ジョーク!」

「ジョークの為にワザワザそんなもの用意しないでください」

 

しかし、これも鞠莉のジョークであり、それを聞いて千歌はツッコミを入れ、千歌、梨子、曜、無爪の4人からジトっとした視線を送られる。

 

「実際には……」

 

 

 

 

そうして一同は鞠莉に案内されて連れて来られたのは学校の体育館であり、彼女が言うにはデビューライブの会場はここを使って欲しいとのことだった。

 

「ここを満員に出来たら人数に関わらず部として承認してあげますよ?」

「えっ? ホント!?」

「部費も使えるしね♪」

 

それにに千歌は「やったー!!」と嬉しそうに笑みを浮かべるのだが、そこで梨子が「満員に出来なければ?」と疑問に思ったことを彼女に尋ねる。

 

「その時は解散して貰うほかありません」

「えっ、そんなぁ……」

 

鞠莉のその言葉を聞いて千歌は今度は少し不安な表情になる。

 

「嫌なら断ってくれても結構ですけど……? どうします?」

 

ニヤリとした笑みで鞠莉は千歌達に視線を送り、曜も体育館は結構な広さであるため、ここを満員に出来るかどうかは微妙であると感じ、「やめる?」と千歌に問いかけるが……。

 

「やめない!! 他に手がある訳じゃないんだし!!」

「まぁ、数少ないチャンスだし、ジーッとしててもドーにもならないもんね、千歌ねえ?」

 

無爪の言葉を受けて千歌は「うん!!」と力強く頷き、それに同意するように曜と梨子も頷くのだった。

 

「OK、行うということで良いのね……?」

 

鞠莉はそれだけを言い残して体育館から立ち去って行くのだが、その時、梨子があることに気づいた。

 

「待って! この学校の生徒って、全部で何人?」

「えっと~……あっ!」

 

梨子の問いかけに対して曜は少し考え込んだ後、すぐにあることに気づくのだが、千歌と無爪はイマイチ分かっていないらしく、首を傾げる。

 

「分からない? 全校生徒全員来ても……ここは、満員にはならない……」

「そういうことか……。 あの理事長、多分分かっててあんなこと言ったな……」

 

 

 

 

その後、4人は学校の授業も終わって帰りのバスに乗っていたのだが、千歌は窓の外を見ながら「どうしよう……」と今後のライブのことで頭を悩ませていた。

 

「でも、鞠莉さんの言うことも分かる。 それくらい出来なきゃ、この先もダメということでしょ?」

「ラブライブみたいな大きな大会を目指すなら尚更だよね? これが成功してもまだ小さな一歩ってことだし」

 

実際にこれくらいやってのけなければこの先到底スクールアイドルなんてやっていけないだろうし、梨子も無爪も鞠莉の出した課題はそういうことなのだと理解していた。

 

「やっと曲が出来たばかりだよ? ダンスもまだまだだし!」

 

すると曜と無爪は苦笑しながら顔を見合わせると千歌にある言葉を投げかける。

 

「「じゃあ諦める?」」

「諦めない!!」

 

曜と無爪のその言葉を聞いて千歌は拳を握りしめて逆にやる気を出す。

 

「なんでそんな言い方するの?」

 

そこで梨子はその言葉を聞いて少しキツい言い方をした2人にどことなく不満そうな顔をするが、曜と無爪曰く「こう言った方が彼女は燃えるから」とのことで実際に千歌はいかにもやる気満々といった表情を浮かべていた。

 

すると彼女は何かを思いついたのか突然「そうだ!!」と言って立ち上がり、そんな千歌を見て曜は「ねっ?」と視線を梨子に送る。

 

 

 

 

 

 

「お願い!! いるでしょ、従業員?」

 

家の旅館に帰った千歌は居間でテレビを見ながらくつろぐ美渡にプリンを差し出して彼女が勤務している会社の従業員を今度のデビューライブに誘って欲しいと頼み込んでいた。

 

ちなみに曜、梨子、無爪は今は千歌の部屋で待機している。

 

「そりゃいることはいるよ?」

「何人くらい?」

「本社も入れると……200人くらい?」

 

それを聞いて千歌はぱあっと明るい表情を浮かべて自分達が制作したポスターを美渡に見せる。

 

「あのね! 私達来月の初めにスクールアイドルとしてライブを行うことにしたの!」

「スクールアイドル? アンタが?」

 

美渡は千歌の言葉を聞いて思わず笑ってしまうが千歌はそれにムスっとしつつもそれでも会社の人200人ほど誘って彼女にも来て欲しいとお願いするのだが……美渡は呆れたような表情を浮かべる。

 

「むっ、満員にしないと学校の公認が貰えないの!! だからお願い!!」

 

千歌は両手を合わせて改めて美渡にそうお願いするのだが、美渡はテーブルの上にあったマジックペンを手に取り……千歌の額に「バカチカ」と書き込むのだった。

 

 

 

 

「むぅ~、おかしい……! 完璧な作戦の筈だったのに!」

 

それから美渡に追い返された千歌は自分の部屋に戻り、濡れティッシュで額の文字を消そうと拭きながらそんなことをボヤく。

 

「普通そうなる」

「うん、私もお姉さんの気持ちも分かるけどね~」

 

無爪と曜も美渡の気持ちは分かるし、むしろ断られる可能性の方が高いのでこうなる結果は何となく分かっていた。

 

そんな2人に対して千歌は「えぇ!? 2人ともお姉ちゃん派!?」と驚きの声をあげるが……そこで彼女は一緒に来ていた筈の梨子がいないことに気づき、曜に尋ねるとお手洗いに行ったそうだ。

 

尚、その梨子はというと現在……千歌の部屋のすぐそこの廊下でしいたけが眠って道を塞いでいた為、彼女はしいたけを避けようとして襖と手すりに手と足をかけて移動しようとしていた。

 

「ぐぐぐ……!」

 

するとそこで襖が開いて千歌と無爪が顔を出し、そこでそんな梨子の今の状況に2人は気づく。

 

「あれ? そんなとこで何やってんの?」

「ストレッチ……?」

「違うわよ!」

 

それよりも今は先ず人をどうやって集めるかを考えなければならないのが先決だと曜は言い、千歌も腕を組んで考え込む。

 

「なっちゃんは何か良い案ない?」

「うーん、町内放送とかは? 頼めばできるんじゃない?」

 

それを聞いて千歌も「成程!」と無爪の意見に納得し、曜も「確かにそれならいけるかもね」と呟く。

 

あとは高校がいっぱいあるのでスクールアイドルに興味ある高校生もいっぱいいるだろうと考えて沼津にでも行って宣伝するのもありかもしれないと千歌は意見を出し、取りあえず人を集めるためにやることは大体決まった。

 

その際、丁度力の限界が来た梨子は手と足を手すりと襖から滑らせて「ひいいい~!!」と悲鳴をあげてしいたけの上に落っこちてしまうのだった。

 

 

 

 

翌日、学校の終わりに千歌、梨子、曜、無爪の4人は沼津駅にチラシを持ってライブの宣伝をするために訪れていた。

 

「東京に比べると人は少ないけど、やっぱり都会ね~」

「そろそろ部活終わった人達が来る頃だよね?」

「よーっし、気合い入れて配ろう!!」

「っていうか、やっぱり僕も付き合わされるのね……」

 

上から梨子、曜、千歌、無爪の順で喋り、千歌は右腕を上げ気合いを入れてチラシ配りを開始。

 

「あの! お願いします!!」

 

したのは良いのだが……千歌はチラシを帰宅中の2人の女子生徒に配ろうとしたが、見事にスルーされてしまう。

 

「意外と、難しいわね……」

「こういうのは気持ちとタイミングだよ! 見てて!」

 

曜は梨子にそう言った後、すぐに先ほどとはまた別の女子生徒2人を発見して下から顔を出すようにしてその2人の目の前に現れ、チラシを配る。

 

「ライブのお知らせでーす!! よろしくお願いしまーす!!」

「ライブ?」

 

すると女子生徒の1人はチラシを受け取り、もう1人の女子生徒は「あなたが歌うの?」と尋ねると曜は「はい!」と元気よく挨拶しながら「来てください♪」と敬礼する。

 

「日曜か~、行ってみる?」

「よろしくお願いしまーす!!」

 

そしてその光景を見て梨子は思わず「す、すごい……」と呟くのだった。

 

「コミュ力お化けだね、曜ねえ……」

「よーし私も!!」

 

もう1度気合いを入れ直した千歌は眼鏡をかけた、気弱そうな女子生徒に右手で「壁ドン」をして左手でライブのチラシをその女子生徒に見せる。

 

「ライブやります、是非……」

「えっ、でも……」

「是非……!」

 

すると千歌はキリッとした表情と声を出してその女子生徒に顔を近づけ、女子生徒は戸惑いつつもチラシを受け取ってその場から逃げるように去って行くのだった。

 

ちなみにそれを見ていた無爪はなぜか羨ましそうな視線を千歌に送っており、梨子はそんな無爪を見て「なんで羨ましそうに見てるの?」と疑問に思うのだった。

 

「勝った!」

 

そう言いながらガッツポーズを決める千歌、またその一部始終を見ていた曜は無爪と千歌を交互に支線を送り、何かを思いついたのかニヤリとした笑みを浮かべる。

 

「千歌ちゃん千歌ちゃん! ちょっと!」

 

曜は手招きしながら千歌の名を呼び、彼女「なぁに~?」と素直に曜の元に行くと彼女はゴニョゴニョと千歌にあることを耳打ちし、それを聞いた千歌は「よし!」と笑みを浮かべると彼女はジッと無爪の方へと顔を向ける。

 

「えっ、な……なに? なんか怖いんだけど……」

「あの2人何を企んでるのかしら……?」

 

すると千歌はドシドシと大きな足音を立てながら無爪の方へと歩いて行き、それに驚いた無爪は後ろ歩きで後方へと下がっていくのだが……すぐそこには壁があった為それ以上下がることはできず、千歌は「フフッ」と不敵な笑みを浮かべると……。

 

そのまま「ドン!!」っと無爪に壁ドンしたのだった。

 

「ふぁっ!?」

 

それに驚きつつも無爪は顔を赤くして少し嬉しそうだった。

 

「えへへ、驚いた~? 曜ちゃんがなっちゃんにもこれやればなっちゃんが喜ぶって言われたからやってみたんだけど……」

(ま、まさかの逆壁ドン……!?)

 

しかし、それだけには留まらず、千歌は再び不敵な笑みを浮かべてキリっとした表情を見せながら無爪の顎をクイっとあげる。

 

「ちょ、ちょっ……ちちちちちち、千歌ねねねねね……!!」

 

顔を真っ赤にして頭から湯気を出す無爪に曜はお腹を押さえて笑っており、また梨子はそんな2人を見て彼女も顔を赤くしつつも「千歌ちゃんの顎クイ……」と小さく呟いていた。

 

「よし、また勝った!!」

 

そして無爪を解放し、又もやガッツポーズを決めて誇らしげにする千歌。

 

「って勝負してどうするの!?」

 

と梨子がそこでツッコミを入れる。

 

最もなツッコミである。

 

「次、梨子ちゃんだよ!」

「えっ、私!?」

 

しかし千歌に突然そんなことを言われて梨子は戸惑ってしまう。

 

「当たり前だよ! 3人しかいないんだよ!」

「それは、分かってるけど……ってん? 3人?」

 

そこで梨子はここには自分、千歌、曜、無爪の4人で来た筈なのだが……なぜかチラシ配りをする人数が1人減っており、彼女は辺りを一旦見回すとそこには先ほどの千歌の「壁ドン&顎クイコンボ」が余程効いたのか、未だに頭から湯気を出して目を回してダウンしている無爪の姿があるのだった。

 

「ちょっ、無爪くん思いっきりダウンしてるじゃない!! 千歌ちゃんのせいで!!?」

「えぇ!? 私のせい!? それを言うなら元々曜ちゃんが……」

 

千歌と梨子は曜の姿を探すと彼女は既にチラシ配りの作業に戻っており、一生懸命頑張っている姿を見たら怒るに怒れなかった。

 

「はぁ、こういうの苦手なのに……」

 

そして意を決した梨子はチラシを手に取って堂々と宣伝を行う。

 

「あの! ライブやります!! 来てね……!」

 

映画のポスターに対して。

 

「……何やってるの?」

 

ごもっとも。

 

「練習よ、練習!」

「練習してる暇なんてないの! さあ!!」

 

千歌は素早く梨子の背後に回り込んで慌てる彼女の背中を押す。

 

「えっ? あっ、えっ? 千歌ちゃん!?」

 

その際、まだ春だというのにコートを着て、サングラスとマスクをつけたいかにも不審者なスタイルをした少女とぶつかりそうになってしまう。

 

「あっ、すいません!」

 

すぐさま謝る梨子だが、すぐにハッとしてこの際チラシを渡そうと思ったのか彼女は「あ、あの、よろしくお願いします!!」と戸惑いながらもチラシを不審者少女に渡す。

 

「うぅ……」

「……あの……」

 

しばらく受け取るかどうか悩んだような素振りを見せた不審者少女は最終的に梨子の持っていたチラシを受け取り、そのまま彼女は逃げるように走って行くのだった。

 

「受け取ってくれた……!」

 

それに梨子は嬉しそうな笑顔を見せる。

 

「あの人……どっかで見たような……」

 

またその光景を少し離れた位置で見ていた曜は先ほどの不審者少女に見覚えがあったのだが、思い出せず、取りあえず今はチラシ配りに専念しようと通りかかった人にそれを渡そうとするのだが……。

 

「アレ? 曜ちゃん?」

「へっ?」

 

そこにいたのは、ガタイがよく、物凄く厳つい顔をしたヤクザみたいな怖い顔つきの男性が立っていた。

 

「……んっ? はっ、ち、千歌ちゃん!! 大変!! 曜ちゃんがなんだか怖い人に絡まれてるわ!!」

 

また、それを見た梨子は曜がそのヤクザみたいな顔の男性に絡まれているところを目撃して慌てて千歌を呼ぶ。

 

「えぇ!?」

「ってアレ、レイジさんじゃないの?」

 

のだが、どうやら千歌や無爪の知人らしく、梨子は彼女のその言葉を聞いて「えっ?」と首を傾げた。

 

「ホントだ! あの人は『渡辺 レイジ』お兄ちゃん、曜ちゃんの従兄だよ!!」

「えっ、そうなの!?」

 

千歌のその言葉に梨子は驚きの声をあげる。

 

「もう、静岡まで帰って来てるんなら連絡くらいしてくれれば良かったのに……」

「ごめんね? 曜ちゃんを驚かせようと思って……」

 

再び場面は「渡辺 レイジ」と呼ばれた男性と曜が会話しているところに戻り、レイジは静岡県出身なのだが現在は東京の学校で教師として働いており、今回は少し長めの休暇が取れたのでこちらに戻って来たのだという。

 

「へぇ~、スクールアイドルやるんだね、曜ちゃん。 うん、曜ちゃんは可愛いし、人気者だからきっと人気出るよ、そのスクールアイドル!」

「うん!! それに千歌ちゃんや、東京からやってきた梨子ちゃんって娘と一緒に今度ライブやるんだ!! レイジ兄ちゃんも見に来れたら来てみてよ!」

 

曜はそう言いながらレイジにチラシを受け渡し、それを手に取った彼は「うん」と頷き、彼女の頭を撫でる。

 

「頑張ってね? 僕も応援してるから」

「えへへ♪ 頑張るであります!」

 

曜は頭を撫でられて嬉しそうにしながら敬礼し、レイジは「それじゃ、僕はこれから行くところがあるから」とだけ伝えて彼は千歌や無爪にも軽く挨拶した後、その場を去って行き、曜はそんなレイジに「バイバーイ!」と手を振って別れるのだった。

 

それから一同はチラシ配りを再開するのだが、しばらくすると千歌が花丸とルビィが一緒に歩いているのを発見。

 

「あっ、花丸ちゃーん!!」

 

千歌は手を振りながら花丸達の元へと駆け寄り、それを見てルビィは慌てて花丸の後ろに隠れる。

 

そして千歌は彼女にも「ライブ来てね?」と花丸にチラシを渡し、その言葉を聞いて反応したのか、花丸の後ろに隠れていたルビィが食いつくように飛び出して来た。

 

「やるんですか!?」

「えっ……?」

 

しかし、すぐに気恥ずかしくなったのか、ルビィはまた花丸の後ろに隠れてその場に膝を抱えてしゃがみ込んでしまう。

 

「絶対満員にしたいんだ? だから来てね? ルビィちゃん?」

 

千歌は優しい口調でルビィにチラシを渡し、その様子を見ていた無爪はというと……。

 

「……姉の嫌いなものを自分も嫌わないといけない……かっ」

 

今の光景に何か思うことがあったのか、彼はそんなことを呟いていた。

 

それから千歌はまだチラシを配らないといけないからと別れを告げて立ち去ろうとするのだが、そこでルビィに「あ、あのぉ!!」と呼び止められる。

 

「えっ?」

「ぐ、グループ名は……なんて言うんですか!?」

「グループ……名?」

 

千歌はルビィに言われてそこで未だにまだ自分達のスクールアイドルのグループ名を考えていないことに気づき、彼女は「あっ……」と小さく呟いた。

 

「やれやれ、千歌ねえらしいと言えばらしいけど……」

 

そして近くで話を聞いていた無爪も千歌に呆れて溜め息を吐くのだった。

 

すると……その時のことである。

 

突如、上空に赤黒い光が現れ、その光はやがてウルトラマンにも酷似した姿……「ダークロプスゼロ」となって地上に降り立ったのだ。

 

「うわあ!? なにあれ!? ウルトラマン……?」

 

突然現れた千歌達ははダークロプスゼロに驚くが……、無爪は直感からか、ダークロプスゼロがすぐにウルトラマンではないことを感じ取った。

 

「違う、アレはウルトラマンじゃない!! 千歌ねえ達は早く逃げて!!」

「あっ! なっちゃん!!」

 

無爪は千歌達にそれだけを言うと彼はすぐさまどこかへと走り出し、またダークロプスゼロは腕をL字に組んで放つ必殺光線「ダークロプスゼロショット」を放って1つのビルを粉々に破壊した。

 

「ピギャアアアア!!?」

 

突然の出来事にルビィは驚きの声をあげ、千歌は「みんな兎に角逃げよう!!」と言って彼女は曜、梨子、ルビィ、花丸を連れてすぐにその場から走り出すのだった。

 

 

 

 

 

 

数十分前の宇宙……。

 

そこでは突如、丸い穴のようなものが開き、その中から銀色の鎧「ウルティメイトイージス」を纏った戦士「ウルティメイトゼロ」が姿を現した。

 

だがゼロは「うぐっ……!?」っと苦しそうな声をあげた後、ウルティメイトイージスは「ウルティメイトブレスレット」というブレスレットに変形。

 

ゼロの左腕に装着されるのだがブレスレットには所々に亀裂が入っており、ゼロはブレスレットをジッと見つめる。

 

『ありがとよ、ウルティメイトイージス……。 調子が戻ったらその内直してやるからな』

 

そしてゼロは視線を別の方向へと映すと、そこには1つの地球があった。

 

『キングの爺さん、久しぶりだな。 俺の声聞こえてるか?』

 

その後、ゼロは人目のつかないところで地球人としての姿……「モロボシ・ラン」へと変わって地球に降り立ち、彼はかつてのクライシス・インパクトで街に何か影響が出ていないか確認するため、歩き始めるのだが……。

 

「ぐっ……!? 地球人の姿になっても、身体へのダメージはやっぱり残ったままか……」

 

ランは古傷を押さえつつも再び歩き出し、しばらく街を歩いているとビルに設置された巨大なテレビ画面にのニュースでスクールアイドルと思わしき少女達の特集が取り上げられており、その中には現役時代のμ'sの姿も確認でき、ランはそれを見て少し驚いた様子を見せる。

 

「ありゃ、穂乃果達か? 成程な、この世界はどうやら、オーブのところと似た世界らしいな。 だがこの世界にも穂乃果達までいるとは驚いた……。 まぁ、アスカやコウマのどちらの世界にも響達とかがいたし、不思議じゃないか」

 

そう呟きながらランがまた歩き始めようとしたその時、突如として黒い光のようなものがどこからか放たれ、ダークロプスゼロが出現。

 

ダークロプスゼロは現れてすぐさま街を破壊しながら歩き始める。

 

「アイツは……ダークロプスゼロ!?」

 

それに以前対戦したことのあるダークロプスゼロを見てランは驚きの声をあげる。

 

さらにランはダークロプスゼロが元々はベリアルが作った「ダークロプス」というロボットだったことから、彼はまさかベリアルが生きているのかと考え、真相を確かめる為にもランはゼロに変身しようと変身アイテム「ウルトラゼロアイNEO」を取り出すのだが……。

 

『ウルトラマンジード! プリミティブ!』

 

そこに、ダークロプスゼロに対抗するため無爪が変身した「ウルトラマンジード プリミティブ」が現れ、ジードはジャンプして勢いをつけて拳をダークロプスゼロに叩き込む。

 

『ぐぅ!? いったぁ~!!? ってか硬い……!』

 

しかし、ジードはダークロプスゼロの予想以上の硬さに手をブンブン振り、その隙にダークロプスゼロはジードの肩を掴んで胸部を殴りつける。

 

『ウグァ!!?』

「アレは……! あの目は、ベリアル……!? いや、似ているが……違う……?」

 

ランはジードを見て一瞬自身の宿敵でもあるベリアルかと思ったが……。

 

ジードからはベリアルほど邪悪な気配を感じなかった為、即座にジードがベリアルではないことを理解した。

 

そしてジードは今度はダークロプスゼロに蹴りを入れようとするのだが、ダーロプスゼロは膝を曲げてそれを受け止め、ジードの右肩にチョップを叩きこむ。

 

『グア!?』

 

さらに続けざまにダークロプスゼロは2回連続で拳をジードに叩き込み、最後に腹部にストレートキックを炸裂。

 

『ウワアア!!?』

 

蹴り飛ばされ倒れるジードだが、なんとか立ち上がってジャンプし、ダークロプスゼロの背後に回り込むと後ろから掴みかかってバックドロップを決める。

 

『オリャアア!!』

 

それを喰らいながらもダークロプスゼロはなんとかすぐにジードから離れ、多少はダメージはあったのか若干フラつく。

 

しかしダークロプスゼロはすぐに体勢を立て直し、単眼から発射する破壊光線「ダークロプスメイザー」をジードへと撃ち込む。

 

『ウルトラマンジード! トライスラッガー!』

 

それに対してジードは「トライスラッガー」となるとジードは3つのアイスラッガーを操って扇風機の容量で光線をかき消そうとするのだが……ダークロプスメイザーはそれを撃ち破ってジードに直撃する。

 

『シェアアア!!!?』

 

火花を散らして倒れ込むジード、ジードはアイスラッガーの1つを頭部に戻した後、なんとか立ち上がって2つのアイスラッガーを両手に持ってダークロプスゼロに向かって接近。

 

それに対してダークロプスゼロも頭部の2本のブーメランである「ダークロプスゼロスラッガー」を両手に持ち、ジードはアイスラッガーを素早く振るうのだが……ダークロプスゼロはトライスラッガーの素早さにもついて行き、ジードのアイスラッガーによる攻撃をことごとく防ぐ。

 

「姿が変わった……。 アレはまかさ、ウルトラカプセル……? アイツが持ってるのか?」

『グッ、こいつ……硬いだけじゃなくて動きも読んでくる……!』

 

先ほどはドレンゲランの時と同じようにアイスラッガーでジードは相手の関節を狙おうとしたのだが、ジードの言うようにダークロプスゼロはこちらの動きを読んでくるため、ドレンゲランと同じようにはいかなかった。

 

さらにダークロプスゼロがジードの攻撃を次に受け流すと近距離からダークロプスメイザーが放たれて直撃し、直撃を受けたジードは膝を突き、ダークロプスゼロはジードにトドメを刺そうとダークロプスゼロスラッガーを振り上げる。

 

しかし、その時、ジードにトドメを刺そうとするダークロプスゼロを見てランはウルトラゼロアイNEOを目に装着する。

 

「デュア!!」

 

するとランは「ウルトラマンゼロ」へと変身し、ダークロプスゼロとジードの間に割り込むようにして現れる。

 

『お前等2人には色々と聞きたいことがある……! 先ずはダークロプスゼロ! なんでテメーがいる!? ベリアルは生きているのか!?』

 

しかし、ダークロプスゼロはゼロの問いかけには答えず、敵意だけを向けてダークロプスゼロスラッガーを構えて襲いかかってくる。

 

『なんとか言えよコノヤロー!!』

 

それに対してゼロも反撃しようと駆け出して行く。

 

戦闘BGM「ウルトラマンゼロ アクション」

 

ダークロプスゼロはダークロプスゼロスラッガーを振るって攻撃するがゼロはそれを頭をしゃがめて回避し、後ろに回り込む。

 

それに気づいたダークロプスゼロは即座に振り返りざまにダークロプスゼロスラッガーを振るうが、ゼロはそれを受け流し、ダークロプス腹部に連続で拳を叩き込む。

 

『デヤアア!!』

 

ダークロプスゼロは一度後退してゼロから距離を取ると額のビームランプから放つ光線「ダークロプスゼロスラッシュ」を放つがゼロはジャンプしてそれを躱し、そのまま右足に炎を宿した跳び蹴り「ウルトラゼロキック」を急降下キックの容量でダークロプスゼロへと叩きこむ。

 

『ウルトラゼロキック!!』

 

それを喰らって身体から火花を散らしてよろめくダークロプスゼロだが……、その時、クライシス・インパクトの時のダメージによってゼロは一瞬苦しそうな声をあげて胸の辺りを右手で押さえる。

 

その隙にダークロプスゼロは腕をL字に組んで放つ必殺光線「ダークロプスゼロショット」を発射。

 

それに対抗するようにゼロもすぐさま左腕を伸ばした後、腕をL字に組んで放つ必殺光線「ワイドゼロショット」を放つ。

 

『ワイドゼロショットォ!!』

 

2人の光線がぶつかり合うが……ゼロの方が威力が上だったらしく、ダークロプスゼロの光線はアッサリとかき消されてゼロのワイドゼロショットがダークロプスゼロに直撃。

 

完全に倒せなかったもののかなりのダメージを受けたダークロプスゼロは部が悪いと思ったのか、ゼロに背を向けてその場から飛び去ってしまう。

 

『逃がすかよォ!!』

 

しかし、ゼロは逃がすまいと頭部の2つのブーメラン「ゼロスラッガー」を胸部のカラータイマーの左右に装着し、エネルギーをチャージしてそこから放つ強力な光線「ゼロツインシュート」を逃げようとするダークロプスゼロに発射。

 

『ゼロツインシュート!!』

 

そしてダークロプスゼロはゼロツインシュートの直撃を受けて空中で爆発し、完全に破壊されるのだった。

 

『はぁ、はぁ、流石に身体へのダメージはそれなりにあるせいで何時もよりは上手く戦えねえな……』

 

するとゼロは話を聞こうとジードの方へと振り返り、肩で息をするジードにゼロは「おい、大丈夫か?」と声をかけるのだが……。

 

『うぅっ……! あなたは……?』

『あっ、オイ!!』

 

そのままジードはその場に倒れ込み、それと同時に変身が解除されて無爪の姿へとジードは戻ってしまう。

 

そんな倒れ込んだ無爪の元に「大丈夫!?」と声をかけながら心配そうにペガと千歌が駆けつける。

 

『……仲間がいるのか?』

『い、行こう無爪!』

 

今は無爪の身体を安静にさせるべきだと考えたペガは取りあえずはゼロのことは置いておいて一旦秘密基地の「星雲荘」に行こうということで一同はその場を離れ、ゼロは「オイ!」と声をかけようとするのだが、その時……ゼロの目に崩れ落ちそうなビルが彼の目に飛び込んできた。

 

そしてビルが崩れて瓦礫が1人の小学生の少年目がけて降り注ごうとし、それをあのレイジという1人の男性がその少年の元に「危ない!!」っと駆け出そうとするのだが……。

 

その際、足下にあった「バナナの皮」に気づかず、レイジはそれを踏んづけてツルっとその場に盛大に倒れ込んでしまったのだ。

 

「うわあああ!!?」

 

しかも運の悪いことにバナナの皮を踏んづけてしまったことで道路にいきなり飛び出した形となり、1台の運転中のトラックと衝突してしまうのだった。

 

 

 

 

それからしばらく経った後の星雲荘にて……。

 

「いやぁ、曜ちゃんや梨子ちゃんに色々と誤魔化すの大変だったね? 私も途中で2人とはぐれちゃってなっちゃんを探しに行っちゃったから後で合流した2人から怒られるし」

「うん、今度からもう少し心配かけないようにしないとね……」

 

今は無爪は傷を癒やすことと倒されたとはいえ念のために敵の情報を知ること、そしてあのウルトラマンゼロについてのことを知るために、無爪、千歌、ペガはこの場所に訪れており、先ずはレムに頼んでゼロのことを調べて貰うことにした。

 

「っていうか、私、初めてこの秘密基地に来たけど凄いね~! カッコイイ!!」

 

千歌は興味深そうに辺りを見回し、それに対して無爪は「でしょ!」と言ってどこか自慢げな表情を浮かべる。

 

『あっ、2人とも! データ出たみたいだよ!』

 

ペガの声を聞いて無爪と千歌の2人は部屋の中央に出されたモニターに視線を送り、そこではゼロが今日戦ったダークロプスゼロと戦闘を行っている映像が映し出されており、レムはゼロについての説明を行う。

 

『彼の名前はウルトラマンゼロ、ベリアルと敵対するウルトラの星の戦士です』

「えっ? ってことは、僕のこと捕まえに来たのかな……? 僕が、ベリアルの息子だから……」

 

レムの話を聞いて無爪は不安な気持ちになるが、そんな無爪の気を使ってか千歌は「大丈夫!!」と言って無爪の両手を握りしめる。

 

「なっちゃんは何も悪いことなんてしてないもん!! 捕まる理由なんかないし、例えそうだとしても私がどうにかゼロに話を聞いて貰えるように説得する!!」

「う、うん……! ありがとう、千歌ねえ……。 でも、あの……」

 

両手を握られ、顔を赤くしてドギマギする無爪に千歌はキョトンっとした表情をしながら不思議そうに首を傾げる。

 

「あ、あの……! その、なんていうか、手を握られるのちょっと恥ずかしいっていうか……」

「あっ……」

 

無爪にそう言われて彼の両手を握りしめている自分の両手に視線を送り、そこで彼女は急に恥ずかしくなったのか千歌はパッと急いで手を離し、「あ、あははは!」と笑って誤魔化す。

 

「ご、ごめんね?」

「い、いや……」

 

ただ手を離された無爪はどことなく名残惜しそうにしており、同時にまた「千歌ねえの手、柔らかかった……」などと考えていたりするのだった。

 

『ところでアレは? ウルトラマンゼロに似てる! 親戚かな?』

「いや、親戚だったらゼロが倒すのおかしくない?」

 

ペガがダークロプスゼロの方へと指差すとレムはすぐにダークロプスゼロのことについての解説を行う。

 

『ダークロプスゼロ、かつてゼロを模して作られたロボット兵器です』

「成程、通りで硬い訳だ……。 しかもドレンゲランと違って機動性は高いみたいだし、あの時みたいに関節を狙うのは難しかったよ」

 

取りあえず、何にしてもゼロがダークロプスゼロが倒してくれたおかげでファーストライブのことにも心置きなく集中できるし、しばらくは大丈夫かもしれないということで千歌はライブのことは自分達に任せて無爪は寝て傷を治すように言い、彼を寝かしつけるのだった。

 

「なんだったら眠れるまで子守歌でも歌ってあげようか?」

 

「ニシシ♪」とからかうように笑う千歌に無爪は「いらないよ!」とふて腐れたように言い返す。

 

「第一、僕もうそんなに子供じゃないし!!」

「まぁ、何にしてもしばらくはここで休んでて。 それじゃ私は梨子ちゃん達と一緒にグループ名考えなくちゃいけないから!」

 

千歌はポンポンっと無爪の頭を軽く撫でたあと、彼に手を振ってからエレベーターに乗り、地上へと戻るのだった。

 

 

 

 

とある病院にて……。

 

そこでは少年を助けようとトラックに轢かれ、瀕死の重傷となったレイジが運び込まれており、彼の命はもう長くは持ちそうには無かった。

 

「ご家族にはもう連絡した?」

「いえ、まだ……」

「ちょっともう、急がないと!」

 

病院の看護師達がそんな会話をしているとレイジの前に周りには見えないようにしたゼロが現れたのだ。

 

『見てたぞ? お前は少年を助けようとした。 顔は怖いけど良い奴じゃねえか、気に入ったぜ』

 

ゼロはそう言い終わった後、彼の命を救うためにゼロはレイジの身体の中へと入り、レイジとゼロは同化……。

 

すると、ゼロがレイジと同化したことにより、彼の負っていた傷は瞬時に回復し、一気に生命力の戻った彼は突然パチリと目を覚まし、起き上がった。

 

「あ、あれ!? えっ!? なに!? ここは!?」

 

突然起き上がったレイジに看護師達は驚き、「きゃああ!?」と悲鳴をあげるが……そんなことは露知らず、レイジは自分の腕時計を見て「ヤバい!?」と言って病院を飛び出すのだが……。

 

「あれ? なんだこれ?」

 

その時、胸の内ポケットに違和感を感じたレイジは変わった形をしたメガネのようなアイテムを取り出すのだが……すぐに今はこんなことをしている場合ではないと考え、近くのタクシー乗り場へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

夕方、海辺にて……。

 

そこでは準備運動をしながら自分達スクールアイドルのグループ名のことを話し合っている千歌、梨子、曜の3人の姿があった。

 

「まさか忘れてたなんて……」

 

梨子が呆れた様子で言うが……。

 

「梨子ちゃんだって忘れてた癖に!」

 

と千歌も言い返す。

 

「兎に角、早くグループ名を決めなきゃ!」

「そうだよねぇ……。 どうせなら、学校の名前が入ってる方が良いよね? 『浦の星・スクールガールズ』とか?」

 

しかし、そのグループ名には「まんまじゃない!」が梨子がツッコミを入れて却下。

 

すると千歌は「じゃあ、それなら梨子ちゃんが決めてよ」と無茶ぶり気味なことを言われて梨子は「えっ!?」と一瞬戸惑う。

 

「そうだね! ほら、東京で最先端の言葉とか!」

「そうだよそうだよ!」

 

曜と千歌に言われて梨子は「えーっと」と呟きながら少し考え込む。

 

「じゃあ、3人海で知り合ったからスリーマーメイドとか……?」

 

少し自信なさげな様子で梨子はそうグループの名前の案を出すのだが……。

 

あまりにもあんまりなネーミングだったのがいけなかったのか、千歌と曜はスルーして準備運動に戻る。

 

「待って! 今の無し!!」

 

それから3人は体力作りのジョギングを行いながら話の続きをし、千歌は曜にもなにか良い名前が無いかと尋ねるのだが……。

 

「『制服少女隊』!! どう?」

 

曜はそう言いながら自信ありげに敬礼しながら提案するのだが、千歌と梨子からは「無いかな?」「そうね」と見事に却下され、却下された曜は「えぇー!?」と驚きの声をあげてショックを受ける。

 

それから3人は砂浜に木の棒で色々なグループ名を考えては書き込んで行くのだが、やはり良いのが無く、中々決まらなかった。

 

「ねぇ、無爪くんにも電話で聞いてみたら? ほら、無爪くんってヒーロー好きだからカッコイイ名前の案とか出るかも……」

 

梨子は無爪にもグループ名を考えるのを協力して貰ってはどうだろうかと言うのだが、それには曜も千歌も反対だった。

 

「無理無理、なっちゃんに頼んだらそれこそスクールアイドルとは思えない名前になるよ。 ドンシャインに因んで『爆裂アイドル戦記』とかいう名前になるよ絶対」

「うんうん、他にもなっちゃんが考えそうなのは超人機なんたらとか特警なんたらとかになるよ多分」

 

千歌と曜のその説明に梨子は「成程、確かにあり得るかも……」と納得し、結局無爪に頼む案も無くなってしまう。

 

「こういうのはやっぱり言い出しっぺがつけるべきよね?」

「賛成!!」

 

と梨子と曜が言いだし、千歌は「戻ってきた!?」と頭を抱える。

 

「じゃあ制服少女隊でも良いって言うの!?」

「スリーマーメイドよりは良いかな……?」

「それは無しって言ったでしょ!?」

「だってぇ~」

 

千歌と梨子がそんな会話をしていると不意に千歌はすぐ近くに書いてあった名前に気づいて視線を送り、それに釣られるように梨子と曜も千歌と同じ方向へと視線を向けるとそこには砂の上に「Aqours」と書かれた文字があったのだ。

 

「これ、なんて読むの? えーきゅー、あわーず?」

「アキュア……?」

「もしかして『アクア』?」

 

曜の言葉に梨子は「水ってこと?」と尋ねると彼女は「うん」と頷く。

 

「……水かぁ。 なんか、よくない? グループ名に!」

「これを!? 誰が書いたのか分からないのに……」

 

千歌の意見に梨子は少し不満げな様子を見せるが……千歌曰く「だから良いんだよ!!」とのこと。

 

「名前決めようとしている時にこの名前に出会った! それって、凄く大切なんじゃないかな!?」

 

「そうかもね!」

「このままじゃ決まりそうもないし」

 

そんな千歌の言葉に曜と梨子も納得し、彼女達のグループ名はスクールアイドル「Aqours」に決定するのだった。

 

「この出会いに感謝して……! 今から! 私達は……! 浦の星学院、スクールアイドル!! 『Aqours』!!」

 

また、そんな時のことである。

 

しょんぼりとした様子で海辺の近くを歩いて帰っていたレイジが近くにやってきたのは。

 

「はぁ~……」

 

何やら落ち込んだ様子で肩をガックリと落とすレイジに、レイジと同化したゼロが心配して話しかける。

 

『なんでショゲてんだ?』

「今日、東京からこっちの学校に転勤して明後日から早速教師として行くことになったんですけど、前の日に色々手続きなんかもあって……。 でも今日その手続きの約束の時間に遅刻しちゃったから『やる気があるのか』って怒られて……」

 

レイジはその場に蹲ってしょんぼりとした様子で自分が落ち込んでいる理由を話す。

 

『成程な。 でもまぁ、あのダークロプスゼロの騒ぎに巻き込まれたんだから遅刻するのはしょうがねえだろ』

「あっ、そっか! ちゃんとその辺説明してませんでした! 急いでたから忘れて……んっ?」

『んっ?』

 

そこでようやくレイジは自分が見えない誰かと話していることに気づき、彼は「えっ? えっ!?」と戸惑い、辺りを見回すが自分のすぐ周りに人はおらず、頭を抱えて半分パニックを起こす。

 

「えっ、なんですかこの声!? ままままま、まさか!! おばおばおば……!!」

『お化けじゃねえよ! 俺はゼロ、ウルトラマンゼロ。 お前の命を助けるにはこうするしかなかった』

 

レイジは取りあえず耳を塞いでみるが、耳を塞いでいてもゼロの声は聞こえ、レイジはますますパニックを起こす。

 

「耳塞いでも聞こえるんだけど!?」

『そうだよぉ~』

「なななな、なにこれ怖い!!? おばおば……! お化けさんごめんなさい!! マジですいません!! 何がいけなかったのか分からないけど兎に角すいませえええええええん!!!!」

 

パニックのせいでゼロの話があまり聞いていないレイジはその場で土下座して未だにお化けと勘違いしているゼロに対して必死に何度も頭を下げる。

 

さっき子供を助けようとした男の姿はどこに行ったんだと言いたくなるくらいのヘタレっぷりにゼロは少しばかり呆れるが……ゼロは「いいから黙って聞け!!」と大声で言い放ち、それに対してレイジもビビりながらも「は、はいぃー!!」と返事をして言われた通りしばらく黙ることに。

 

『えぇっと、じゃあ話を戻すけど……。 命を助けるにはこうするしかなかった。 身体を一体化させ、お前の身体の傷を癒やした。 一体化には俺にも利点がある。 前の戦闘で深いダメージを負い、まだ治ってない。 お前の身体の中に入らなければ俺は地球で長時間の活動ができないんだ』

 

またゼロは一応、人間態でもある「モロボシ・ラン」になることは出来るが、それでも身体のダメージを完全に無くすことは出来ないのだということも説明し、同化の方がダメージを人間態の時よりも最小限に抑えられるというのだ。

 

『だからそうだな~。 まぁ、つまり、Win-Winの関係だな。 説明終わり! 分かったか? あっ、喋って良いぞ』

「いや、何を言ってるのかやっぱりよく分からな……」

 

その時、「ちょっと何するんですか!!」という聞き覚えのある声が聞こえ、レイジが声のした方に顔を向けるとそこには海辺で練習していた千歌達に4人のチンピラがナンパしていたのだ。

 

「君たち可愛いね~! なにしてんの?」

「え、えっとスクールアイドルのダンスの練習を……」

 

チンピラの質問に素直に答える千歌に梨子は「こんな人達に答えなくて良いわ!」と注意するのだが、そんな梨子の腕をもう1人のチンピラが掴む。

 

「こんな人達なんて酷いね~! 俺達傷ついちゃう!」

「梨子ちゃんを離して!!」

 

すると今度は曜が梨子の腕を掴んでいるチンピラの腕を引き離すのだが、それでもチンピラ達は千歌達にべたべたと触って来ようとする。

 

「スクールアイドルって今流行のやつだっけ? そんなものよりさ~、もっと楽しいことしようよ!」

 

リーダー格のチンピラがそう言って千歌達3人をどこかに連れ去ろうとし、それを見ていたレイジは……。

 

「あわわわ! たたたた、大変だ!! 曜ちゃん達が! な、なんとか助けないと……!」

『随分下らねえことしてんな。 おい、ちょっと身体借りんぞ?』

「えっ? 借りるって……」

 

するとゼロはレイジの意識を乗っ取って文字通り身体を借りると彼は素早く千歌達の元へと駆け寄り、彼女達の腕を掴みチンピラ達の腕を素早く振り払う。

 

「っ、なんだテメェ!!?」

 

チンピラ達はレイジの人相の悪さに少しビビるが、それでも臆せず怒鳴り声をあげてチンピラAがレイジに殴りかかるがレイジはそれを片手で受け止めて右拳を振り上げるのだが……。

 

(んっ? ちょっと待てよ、教師が暴力沙汰ってまずいよな?)

 

と考え、拳を下ろすと今度は後ろから回り込んだもう1人のチンピラBが殴りかかる。

 

しかし、レイジは拳を掴んでいたチンピラを盾にし、盾にされたチンピラは仲間の拳を顔面に受けて軽く吹き飛ぶ。

 

さらに今度は別のチンピラCが背後から殴りかかるのだが、レイジはジャンプしてチンピラBの後ろに回り込み、今度はBを盾にしてCはBを殴ってしまう。

 

「ぐふ!?」

「コノヤロー!!」

 

すると今度はリーダーがレイジに襲いかかるのだがリーダーの攻撃を受け流しつつ、一瞬の隙を突いて額にデコピンを喰らわせる。

 

「げふ!?」

 

『さてと、それじゃちょっと失礼しようか』

「「「わわわ!?」」」

 

そう言ってレイジはチンピラのリーダーが倒れている隙に千歌、梨子、曜の3人を纏めて抱えるとそのままスタコラさっさとその場から逃げ出すのだった。

 

「いやぁ、ありがとうね? レイジお兄ちゃん!」

「えっ? あっ、うん……。 どういたしまして」

 

それから一定の距離まで逃げ切ったゼロは意識をレイジに返し、曜達からお礼を言われるのだが……助けたのは自分ではないので何とも微妙な気持ちだった。

 

「それにしても、これじゃ今日は海で練習はできないわね……」

「うん、取りあえず今日はここまでかな……」

 

千歌と梨子は残念そうにしつつも今日はお開きということになるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

それから千歌はレムから持たされた通信機でまだ無爪が星雲荘で休んでいるということを聞いて迎えに行こうと思い、無爪の元へと訪れる。

 

「なっちゃ~ん? もう大丈夫?」

『彼の名はウルトラマンジード、敵ではありません。 運命に逆らい、立ち上がる者です。 無爪、これで良いですか?』

「……なにしてんの?」

 

そこでは無爪が世間やゼロに対して自分は脅威ではないということを知らせるためにレムに文章を作らせており、そんな時に丁度千歌がやってきて彼女は不思議そうな表情を浮かべて首を傾げる。

 

「僕が世間に敵じゃないって知らせる為のメッセージをマスコミに送ろうと思って? それにゼロにも……」

「まぁ、確かに少しは効果があるかもしれないけど……『運命に逆らい、立ち上がる者』ってところはちょっとかっこ付けすぎじゃ無い?」

「えぇ~? そうかなぁ? まぁ、取りあえずこれで送るよ! レム、お願い」

 

無爪の言葉にレムは「了解しました」と返事をし、先ほどの文章をマスコミ宛てにメッセージを送るのだった。

 

「ところであのゼロって、僕の父さん……やっぱりベリアルと何かあったのかな?」

 

そこで無爪はフッと疑問におもったことを口にする。

 

「あぁ~。 そう言えば、クライシス・インパクトってベリアルと色んなウルトラマン達が戦ったって噂もあるし、その中にゼロもいたのかな?」

『はい、この宇宙はその影響で崩壊寸前にまで陥りました』

 

千歌と無爪が疑問に思ったことに対してレムがそう解答し、2人は「成程……」と納得する。

 

するとその時、パソコンを弄っていたペガがネットで何かを発見し、2人を呼んでパソコンの画面を見せる。

 

『ねえ! これ見て!』

 

無爪と千歌はパソコンの画面を覗き込むとそこには1人のまだ小学生くらいの少年が映し出されており、少年の頭上から瓦礫が振ってくるのだが……。

 

その瓦礫は少年の頭上に突然現れた光のバリアによって防がれ、少年は無傷だった。

 

『不思議な力……。 これってもしかして梨子ちゃんの時と同じあの不思議な力じゃ?』

「確か、リトルスター……。 早く探さないと……」

「ここってもしかして、今日行った沼津駅の近くじゃない?」

 

千歌の言う通り、動画が投稿された日が今日であることやこんな災害があった場所なんてダークロプスゼロが現れた辺りしかない。

 

それに明日もここでチラシを配る予定なので、その時に探そうということになるのだった。

 

「明日が学校じゃなければもっと早く探しに行けるんだけどなぁ……」

「しかも私は明日は町内放送で梨子ちゃんと曜ちゃんと一緒に宣伝しないといけないからなぁ……。 なっちゃんは先に行っといて貰える?」

 

千歌の言葉に無爪は「うん、分かった」と頷く。

 

 

 

 

 

そしてその翌日、千歌たちは町内放送でライブの宣伝をしていた。

 

「「「浦の星女学院スクールアイドル、Aqoursです!!」」」

「待って! でもまだ学校の承認もらってないんじゃ?」

 

しかしそこで梨子があることに気づき、彼女に指摘され、千歌は「だぁー!?」と頭を抱える。

 

「じゃあ、えーっと……。 浦の星学院非公認アイドル! Aquaです!! 今度の土曜、14時から浦の星学院体育館にてライブを……!」

 

千歌は一応訂正を入れつつもライブの開催場所と時間を伝えようとする。

 

「非公認というのはちょっと……」

 

しかし、そこで梨子が「非公認」というのはいかがなものかとと言ってきたため、千歌は困り果てた表情を浮かべる。

 

「じゃあ、なんて言えば良いの~!!」

 

そして彼女の叫びは駅に向かって歩いていた無爪にも聞こえ無爪は呆れたような顔をしていた。

 

「はぁ、なにしてんだかバカ千歌ねえは……」

 

ちなみにペガは星雲荘で待機している。

 

 

 

 

同じ頃……とある喫茶店のとある席にて……。

 

そこではスカルゴモラに変身したり、ドレンゲランを呼び出したりした中性的な顔立ちの黒いスーツを着込んだ人物……「荒井」が椅子に座ってコーヒーを飲んでおり、彼は小説家としても活動しているため、今はその小説の編集者と打合せ中だった。

 

「先生、重版決まりました! おめでとうございます!」

「……そうですか」

「編集長も喜んでました!」

 

嬉しそうにそう荒井に対して語る編集者だったが、編集者は荒井がどこか暗い雰囲気を出していたことに気づき、何か嫌なことでもあったのかと問いかける。

 

「……気の合わない相手と、久しぶりに会うかもしれないのです。 あなたにもいるでしょう? そういう人が……?」

「は、はぁ……?」

 

すると荒井は窓の外を見つめ、その先には少し離れた場所から光の柱のようなものが立っていたのだが……それは荒井にしか見えなかった。

 

「気分次第でついたり消えたり……」

 

 

 

 

 

無爪が沼津に到着してから数十分後、彼はペガと一緒にあの動画に映っていた少年を捜し回っていたのだが……中々発見することができないでいた。

 

そんな時、チラシ配りを終えた千歌も合流し、一緒に探すことになるのだった。

 

「って千歌ねえ、曜ねえと梨子さんはどうしたの?」

「えーっと、『なっちゃんと一緒に寄るところがあるから先帰ってて良いよ』って言って先に帰らせたよ」

 

それに対して無爪は「ふーん、そっか」とだけ返すのだが……気のせいか、千歌の顔が少し赤かった。

 

「千歌ねえ? なんか顔赤いけど大丈夫?」

「へっ!? あ、イヤ、大丈夫大丈夫!!」

 

千歌は笑って誤魔化し、彼女は梨子と曜と別れる際に言われた言葉を思い出していた。

 

『無爪くんと一緒に寄るところ……。 それって……』

『デートだね』

『デートね』

『ち、違うよぉ!』

 

なんて2人にからかわれ気味に言われたものだから千歌は変に無爪を意識してしまい、彼女はまたも顔を赤くしてしまい、無爪に心配されるのだった。

 

(うぅ~。 もう~! 2人が変なこと言うからぁ~!)

 

すると・・・・・・。

 

2人が河原の辺りを歩いていると無爪が突然「あっ!」と声をあげ、隣を歩いていた千歌は「どうしたの?」と尋ねると無爪はある場所を指差す。

 

そこにはあの動画に映っていた少年が積み重ねた石をジッと見つめて立っていたのだ。

 

そして少年は右手に光を宿して石に向かって振り下ろすと石は見事に真っ二つに割れ、それを目撃した無爪と千歌は間違いなくあの少年がリトルスターの保有者であることを確信する。

 

「見つけた!!」

「行こうなっちゃん!!」

 

千歌の言葉に頷き、無爪と千歌の2人はすぐさま少年の元へと駆け寄る。

 

「探したぞ少年! ってん? あぁ!?」

 

すると無爪は少年の背負っていたランドセルについていたドンシャインのキーホルダーを発見し、彼は思わず大きな声を出して隣にいた千歌は思わず肩をビクリと振るわせてしまう。

 

そして少年はというと何も言わずにいきなり逃げだそうとし、慌てて千歌は少年の手を掴む。

 

「待って!! って熱!?」

 

千歌が手を握った少年は梨子の時と同じく熱かった。

 

少年は千歌の手を振り払って逃げようとするが無爪は素早く回り込んで少年の肩を掴んで引き止める。

 

「ちょっと待って!! 少年! そのキーホルダー、どこで買ったの!? 教えてお願い!!」

 

無爪は頭を下げて少年にドンシャインのキーホルダーをどこで買ったか聞こうとし、そんな無爪に千歌は呆れた表情を浮かべる。

 

「なっちゃん、今それどころじゃ……」

「それどころだよ!! ドンシャインだよ!?」

 

 

 

 

 

また、同じ頃……別の場所では。

 

『今日は学校とやらには行かなくて良いのか?』

「えぇ、出勤は明日からなんで……」

 

レイジは外を歩きながらゼロとそんな会話をしており、ゼロはレイジの身体の中から街の辺りを見回す。

 

『この街にはもうスッカリ破壊のあとは見当たらないな』

「……破壊?」

 

なにやら物騒な言葉が出てきたことにレイジは驚きつつも、どういうことかと尋ねてみるとゼロはかつてこの地球でクライシス・インパクトがあった時のことを説明する。

 

『この宇宙はかつて崩壊寸前の状態まで追い込まれていたんだ。 それを救ったのが、『ウルトラマンキング』の爺さんだ』

 

ゼロが言うにはこの宇宙は今のレイジと同じようにもう少しで死ぬところだったらしく、彼等ウルトラマンは身体を一体化させることで相手の傷を癒やすことができる。

 

それの応用とも言える形でキングはこの宇宙と一体化したというのだ。

 

『しかし、宇宙は幾ら何でもデカ過ぎた。 宇宙の崩壊は間逃れたが、キングの爺さんは宇宙全体に拡散し、呼びかけても返事がない』

「……知らなかった……。 あっ! それじゃ、テレビで言ってたベリアルのことっても?」

『全部本当だ。 だが、まだ終わっていない。 騒動の最中、光の国で開発された強力なアイテムが何者かに盗まれて行方不明だ。 俺はそれを探しに来た』

 

そこでレイジは「あるもの? それって……?」と尋ねる。

 

『戦況を覆し得る、究極の力。 無限の可能性……。 それは、『ウルトラカプセル』だ』

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃、さらに別の場所では……。

 

人気のない場所に荒井は立っており、1つの「怪獣カプセル」を取り出し、それを起動させる。

 

「ダークロプスゼロ」

 

それを装填ナックルに入れ、ライザーでスキャンさせた後、ライザーを空に向けて掲げるとそこから紫の光が放たれる。

 

「エンドマークを打ってこい!」

『ダークロプスゼロ!』

 

やがてその光は昨日ゼロに倒されたのと同じ、「ダークロプスゼロ」となって街中に出現したのだ。

 

 

 

 

 

 

場所は無爪達のところへと戻り……。

 

ダークロプスゼロは無爪達からも近い場所に出現しており、無爪と千歌は昨日倒された筈のダークロプスゼロがまた現れたことに驚きを隠せないでいた。

 

「あれって昨日ゼロが倒したのに!?」

「それより今は! 少年! 君は狙われてる! 早く逃げろ!!」

 

無爪はすぐに少年に逃げるように言うのだが、少年は「イヤだ!」と言って言うことを聞かなかった。

 

「この力でみんなを守るんだ!!」

 

そう言いながら少年はダークロプスゼロに向かって走って行ってしまう。

 

「あっ! ちょっと!? もう! 子供って面倒だね!?」

「千歌ねえ、ブーメランって知ってる? 取りあえず千歌ねえはあの子をお願い! その間に僕は!!」

 

無爪の言葉に千歌は頷いて少年を追いかけ、無爪はジードライザーを取り出す。

 

「ジーッとしてても、ドーにもならねえ!!」

 

無爪はそう言い放つと腰のカプセルホルダーの始まりの巨人「初代ウルトラマン」のカプセルを取り出し、スイッチを押して起動させるとそこからそのウルトラマンが出現する。

 

「融合!!」

 

ウルトラマンのカプセルをナックルに装填させた後、さらにそれとは別に最凶最悪のウルトラマンと呼ばれた「ウルトラマンベリアル」のカプセルを取り出し起動させると今度はそこからベリアルが出現。

 

「アイ、ゴー!!」

 

同じくベリアルのカプセルをナックルに装填し、ジードライザーで装填したカプセルをスキャンする。

 

「ヒア、ウィー、ゴー!!」

『フュージョンライズ!』

「決めるぜ、覚悟!!」

 

そしてジードライザーを掲げて胸の前でスイッチを押すとウルトラマンとベリアルの姿が重なり合い、無爪は2人のウルトラマンの力を合わせた「ウルトラマンジード プリミティブ」へと変身を完了させたのだ。

 

「はああ!! ジイィーーーード!!!!」

『ウルトラマン! ウルトラマンベリアル! ウルトラマンジード!! プリミティブ!!』

 

「あれは……!」

 

また、ジードの出現にあの少年は立ち止まって嬉しそうな表情を浮かべ、それと同時に千歌も少年に追いつく。

 

(……なっちゃん……)

 

ジードは出現と同時に跳び蹴りをダークロプスゼロへと放つのだが……。

 

ダークロプスゼロは両手を交差してそれを防ぎ、逆にその身体の硬さ故に逆にジードの方が弾き飛ばされてしまう。

 

『ウワアア!!?』

 

空中でバク転し、どうにか着地するジード。

 

『今度こそ僕が勝つ!!』

 

ジードはそう言いながらダークロプスゼロに向かって行き、ダークロプスゼロの胸部を殴りつけるのだが「カーン!」という音が聞こえ、逆に自分の方がダメージを受けてしまう。

 

『っ~~!!』

「うわぁ、やっぱり痛そう……」

 

そしてそれを見て千歌は小さくそう呟く。

 

『こんのぉ!!』

 

ジードはさらにダークロプスゼロを殴りつけようとするのだが、ダークロプスゼロはその手を掴み上げてジードの顔面を殴りつける。

 

『ウグッ!? シェアアア!!!!』

 

一度距離を取ってから勢いをつけてジードは走り出し、ドロップキックをダークロプスゼロに放つのだが……ダークロプスゼロはジードの両足を掴み取り、フルスイングして投げ飛ばす。

 

『シュアア!!?』

 

投げ飛ばされたジードはビルに激突し、崩れたビルの瓦礫に埋もれてしまう。

 

それでもどうにか立ち上がり、ダークロプスゼロに向かって行くジード。

 

「ウルトラマンゼロ、どこに隠れている! そちらが出ないのであれば、こうするまでだ!」

 

また荒井は新たな2つのカプセルを1つずつ起動させ、1つずつスキャンしてライザーを掲げる。

 

「お前達もエンドマークを打ってこい!」

『ダークロプスゼロ!』

『ダークロプスゼロ!』

 

それによってジードの周りに新たなダークロプスゼロが2体出現し、ジードは「増えた!?」と驚きの声をあげる。

 

『残存していた試作機か、もしくは量産された個体と推測されます』

 

レムへの説明を受けて、それで昨日倒されたダークロプスゼロが今日もまた新しく出現したのかとジードは納得したのだが……。

 

『って今は納得とかしてる場合じゃないか!』

 

3体のダークロプスゼロは一斉にジードへと向かって行き、1体は拳をジードに叩き込み、さらにもう1体はジードに鋭い蹴りを喰らわせ、さらに最後の1体が回し蹴りをジードへと喰らわせ……ジードは身体から火花を散らして倒れ込む。

 

『ウグゥ……!?』

 

また別の場所から戦いの様子を見ていたレイジとゼロはというと……。

 

「ひぃ~! なんか凄いことになってる!? ってアレ? ゼロさんは……その、行かないんですか……?」

 

少しレイジは恐る恐るゼロに尋ねるとゼロ曰く今は「様子見」だそうだ。

 

それを聞いてレイジはホッとした表情を浮かべる。

 

『古傷のせいで俺への変身時間は限られている。 それに、アイツを見極めたい』

 

そしてジードはというと……。

 

ダークロプスゼロが自身の単目から放つ破壊光線「ダークロプスメイザー」を3方向から同時に喰らい、大ダメージを受けてジードは倒れ込んでしまう。

 

『グウウウ……!?』

 

さらに倒れ込んだジードをダークロプスゼロの1体が首を締め上げながら持ち上げる。

 

「このままじゃ……ジードが負けちゃう……!」

 

千歌は不安そうな顔を浮かべながらそう呟くが……。

 

「そんなことない!! 僕は知ってるんだ!! ウルトラマンは、必ず勝つって!!」

 

そんな千歌の言葉を否定するように、少年はそう叫んだのだ。

 

「頑張れ……頑張れ!! ウルトラマンジード!! 頑張れー!!」

 

少年は必死に恐らく昨日のテレビのニュースの放送で知ったであろうジードの名を呼びながら彼を応援する。

 

一方でレムは通信でジードに撤退を提案するのだが……。

 

『ぐぅ……! 待って! 聞こえる……! 僕を、呼んでる!!』

 

ジードはダークロプスゼロに首を締め上げられながらも視線を少年の方へと向ける。

 

「頑張れええええ!!!! ウルトラマンジード!! 頑張れえええええ!!!!」

『名前だ……! 僕の名前を呼んでる!!』

 

すると少年の胸から光が溢れ、それは少年と分離してジードのカラータイマーの中へと入ると無爪の元へと行き、『ウルトラセブンカプセル』として起動したのだ。

 

『ジェアアアア!!!!』

 

ジードは力を振り絞って両足を振り上げ、ダークロプスゼロの腹部を蹴りつけてどうにか相手を引き離す。

 

『ウルトラセブンカプセルの起動を確認しました。 無爪、カプセルの交換を』

「……よし!! ジーッとしてても、ドーにもならねえ!!」

 

そして無爪はジードライザーを構え、セブンカプセルを起動させる。

 

『融合!』

 

するとカプセルの中から赤い戦士の「ウルトラセブン」が出現する。

 

『アイ、ゴー!』

 

さらに無爪は赤き獅子の戦士「ウルトラマンレオ」のカプセルを起動させるとカプセルからレオが現れる。

 

『ヒア、ウィー、ゴー!!』

『フュージョンライズ!』

『燃やすぜ、勇気!!』

 

そしてジードライザーを掲げて胸の前でスイッチを押すとセブンとレオの姿が重なり合い、赤い鎧を纏ったような姿……「ウルトラマンジード ソリッドバーニング」へと変身を完了させる。

 

『はああ!! はぁ!! ジイィーーーード!!!!』

『ウルトラセブン! ウルトラマンレオ! ウルトラマンジード!! ソリッドバーニング!!』

 

戦闘BGM「ウルトラマンジード ソリッドバーニング」

 

「おぉ! 赤くてめっちゃ強そう!!」

『これなら行けるかも!』

 

千歌と星雲荘にいるペガはソリッドバーニングを見て興奮した様子でそう言い、またソリッドバーニングとなったジードを見てゼロも思わずレイジの意識を交換してメガネを外し、驚きの声をあげた。

 

『あの姿は親父と師匠!? やはり、アイツがカプセルを持ってるのか!』

『シェア!!』

 

ダークロプスゼロの1体がジードに向かって駆け出し、右の拳を振るって殴りかかる。

 

それと同時にジードも駆け出して右腕を振り上げて腕部のブースターによる加速を加えたパンチを放ち、2人の拳は激突するが……ダークロプスゼロの腕はジードの放った拳によって破壊される。

 

『ダアアア!!!!』

 

さらにジードは連続で拳を何発も叩き込み、ダークロプスゼロを殴り飛ばし、吹き飛ばされたダークロプスゼロは地面に倒れ込む。

 

『全然痛くない! 鎧を着てるみたいだ!』

 

すると今度は別のダークロプスゼロが胸部を開いてそこにある「ディメンションコア」を展開して放つ光線「ディメンジョンストーム」を放つ。

 

それに対してジードは胸部のプロテクターから発射する光線「ソーラーブースト」を発射。

 

『ハアアア!! ソーラーブースト!!』

 

2人の光線はぶつかり合うが……ダークロプスゼロの光線はあっさりとかき消され、ジードのソーラーブーストがダークロプスゼロに直撃し爆発して倒された。

 

そして今度はもう1体のダークロプスゼロが頭部にある2本のブーメラン「ダークロプスゼロスラッガー」を両手に持ち、ジードに向かって突っ込んでいく。

 

『シュア!!』

 

それに対し、ジードは自身の頭部にあるブーメラン「ジードスラッガー」をダークロプスゼロに投げ飛ばすがダークロプスゼロダークロプスゼロスラッガーで弾き、ジードスラッガーは宙を舞う。

 

『タアア!!』

 

しかしジードは空中に飛んだジードスラッガーをジャンプして掴み、そのまますれ違いざまにダークロプスゼロを斬りつける。

 

腹部に傷を受けるものの負けじとダークロプスゼロはジードに振り返って向かって行き、ダークロプスゼロスラッガーを振るう。

 

それにジードもジードスラッガーを振るってダークロプスゼロの攻撃を防ぎ、ダークロプスゼロスラッガーを弾き飛ばした後、ジードスラッガーを足に装着し、回し蹴りを放つ「ブーストスラッガーキック」をダークロプスゼロに炸裂させる。

 

『ブーストスラッガーキィーック!!』

 

身体を斬りつけられたダークロプスゼロは爆発、ジードはジードスラッガーを頭部に戻す。

 

今度は最後に残ったダークロプスゼロがジードへと襲いかかるがジードはその攻撃を全て受け流す。

 

そしてジードは両肩にチョップを叩き込み、身体中のブースターを使いながら素早く後方へと下がり、装甲を展開した右手にエネルギーを集中させ、炎を纏った爆熱光線を正拳突きの姿勢で放つ「ストライクブースト」を放つ。

 

『ストライクブーストォ!!』

 

直撃を受けたダークロプスゼロは直撃を受け、攻撃に耐えきれず爆発するのだった。

 

『やったぁ!! 勝ったぁ!!』

「「勝ったぁ!! やったー!!」」

 

星雲荘にいるペガやあの少年や千歌もジードの勝利を飛び跳ねるように喜び、少年は千歌の方へと顔を向ける。

 

「ヒーローはね、必ず勝つんだよ!」

「……彼は、ヒーローだと思う?」

 

千歌は笑みを浮かべながら、少年にそう問いかけると少年は元気よく「うん!!」と頷くのだった。

 

「私も! そう思うよ!」

 

一方で戦いの光景を見ていた荒井は……。

 

「また新たにカプセルを起動したか……。 あと……」

 

 

 

 

 

 

その翌日……千歌達の教室にて。

 

「「……アレ?」」

「ほ、本日より、この学校で働くことになり、副担任となることになった……わ、渡辺……レイジです! よろしくお願いします!」

 

今日この日、レイジが副担任となって千歌達の教室へとやってきたのだった。

 

「「えぇ!?」」

 

そのことに千歌と曜は驚きの声をあげ、また梨子は「転勤してきたのね……」とボソっと呟くのだった。

 

ちなみにレイジはビクビクとした性格とは正反対に顔が怖いため、周りの生徒達は「副担任? ヤクザじゃなくて?」「顔怖っ!」と呟かれていたりしたが。

 

そして休み時間、曜はレイジに詰め寄って話を一切聞いていなかった曜は副担任とは一体どういうことなのかと問い詰めていた。

 

「レイジお兄ちゃんどういうこと!? 私、全然聞いてないんだけど!?」

「い、いやぁ~ごめんね? 曜ちゃん達を驚かせたくって」

 

レイジは照れ臭そうにしつつこのことを黙っていたのを謝罪。

 

「それよりもさ、折角曜ちゃんがいるこの学校で働くことになったんだから、僕も手伝わせてくれないかな? スクールアイドルって前々から少し興味もあったし!」

 

それを聞いて千歌と曜は「ホント!?」っと目を輝かせ、レイジは笑みを浮かべて「うん」と頷くのだった。

 

そして今日からレイジを加えて無爪、千歌、梨子、曜の5人は放課後からまた沼津でチラシ配りをすることになったのだが……。

 

『アイツ……』

 

レイジが無爪と会った際、彼の中にいるゼロが何かを感じ取ったらしく、レイジは「どうしたんですか?」と尋ねるのだが、ゼロは「いや、なんでもない」とだけ答えるのだった。

 

尚、千歌と無爪は何時も通りではあったが、最初恥ずかしかっていた梨子も今では普通にチラシを配れており、また曜はそのコミュ力の高さを遺憾なく発揮してチラシ配りついでに大勢と写真を撮ったりしていた。

 

「じゃあせーの! 全速ぜんしーん!」

『ヨーソロー!!』

 

と全員が曜と合わせて同じポーズを取っていることからも彼女の人気っぷりが伺える。

 

「流石曜ちゃん、人気者~」

「あはは……」

「やはり、コミュ力お化けだ曜ねえは……」

 

と曜の方を千歌、梨子、無爪の3人が見て呟く。

 

一方でレイジはというと……。

 

「あ、あの……」

「はい? ひぃ!?」

 

道行く女子高生にチラシを渡そうとするレイジだったが、その時顔が厳ついこともあって凄んでるようにしか見えず、旗から見たら怪しい勧誘しているようにしか見えなかった。

 

「あ、あの良かったらこの娘達のライブ……」

「ひ、ひい~!?」

 

そしてそのせいで女子高生は悲鳴をあげながらレイジから逃げ出すように走り去って行くのだった。

 

『お前、このままやると警察沙汰になりそうだな』

「うぅ……僕ってそんなに顔怖いですか?」

『まぁ、ヤクザレベルだな』

 

ゼロにそう言われレイジは「トホホ……」と落ち込むのだった。

 

 

 

 

 

 

その後は千歌の家で色んなことを打ち合わせることになり、無爪、千歌、曜、梨子の4人は千歌の部屋で色々と相談していたのだが……。

 

「千歌ちゃん! ここどう思う?」

 

ダンスの振り付けについて千歌に質問しようとした梨子だったのだが、千歌は疲れ果てたのか机の上に突っ伏した状態で寝てしまっており、それを見た梨子は思わず笑みを浮かべてしまう。

 

「最近は色々と忙しいから疲れたんだな千歌ねえ?」

 

無爪は千歌の肩を軽くポンっと叩くと彼は「でもベッドで寝ないと風邪引くぞ」と言いながら彼女を抱きかかえ、そっとベッドの上に降ろして布団をかける。

 

「おぉ~、なっちゃん意外と大胆な……」

「ほ、ホントにね……。 でも、千歌ちゃんがこれじゃ今日はもうおしまいね?」

 

梨子の言葉に曜も「うん」と頷くのだが、時計を見ると既にバスに乗れる時間はとっくに過ぎており、それを聞いた無爪は「志満さんに曜ねえを車で家まで送って欲しいって頼んでくる」と言って彼女の元へと行くのだった。

 

 

 

 

 

 

それから曜は志満に車で家まで送って貰うことになり、そのことを車の中で親に連絡。

 

連絡を終えると志満は「大丈夫だった?」と曜に尋ねる。

 

「はい! いい加減にしなさいって怒られちゃったけど」

「ホント、夢中よね? 千歌ちゃんがここまでのめり込むなんて思わなかった」

 

そんな志満の言葉に曜は「そうですか?」と不思議そうに首を傾げる。

 

「ほら、あの娘ああ見えて飽きっぽいところあるでしょ?」

「飽きっぽいんじゃなくて中途半端が嫌いなんですよ。 やる時はちゃんとやらないと気がすまないって言うか!!」

 

志満の言葉に曜はそう言葉を返し、志満はそれに対し「そっか……」と答えるのだった。

 

「流石曜ちゃん!」

「えへへ♪」

「それで、上手くいきそうなの? ライブは?」

 

志満のその質問に曜は不安な表情を浮かべ、彼女は自信なさげに「上手くいくといいけど……」と呟く。

 

「人、少ないですからねここら辺……」

「……大丈夫よ!」

「えっ?」

「みんな、暖かいから!」

 

そんな志満の言葉に曜は思わず笑みを浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 

そしてライブ当日。

 

この日は雨が降っていたが、特に大した雨でもないので千歌達はアイドル衣装に着替え、体育館の裏側で待機しており、無爪も彼女達の様子を見る為にそこに来ていた。

 

「やっぱり慣れないわ、本当にこんなに短くて大丈夫なの?」

 

梨子は自分達の衣装のスカート丈が少し短くないかと不安になるが、それを千歌は「大丈夫だって!」と言いながらμ'sの最初のライブ時に彼女達が着ていた衣装の写真をスマホに表示させ、梨子に見せる。

 

(・・・・・・μ'sの人達も千歌ねえ達も露出度高いな・・・・・・)

 

尚、無爪は千歌のスマホを覗き込んでそんなことを思い、また梨子はこんなことならスクールアイドルなんてやめておけば良かったかなと少しだけ後悔した。

 

「でもまぁ、みんな似合ってますし、可愛いと思いますし・・・・・・その辺は自信持って良いと思いますよ梨子さん?」

「うん、ありがとう・・・・・・」

「あれ? もしかしてなっちゃん珍しく私のことも褒めた?」

 

無爪の「みんな似合って可愛い」という言葉に千歌が少し嬉しそうにするが、素直じゃない無爪は「そ、そんなこと言ってない!!」と顔を赤くして否定するが・・・・・・。

 

「いや言ったよ。 もう、なっちゃんってばホントにツンデレなんだから~」

「でもそこがなっちゃんは可愛いとは思うけどね~」

 

千歌と曜はニヤニヤしながら無爪の頬をツンツン弄り、「う、うるさい!」と2人の手を振り払ってすぐさま離れる。

 

「もう!! 兎に角、僕はもう表に出てライブ始まるの待ってるから!!」

 

無爪は顔を赤くしたままそう言ってその場を立ち去ろうとするのだが、途中でピタッと急に立ち止まり、千歌達は首を傾げる。

 

「そ、その・・・・・・頑張って・・・・・・」

 

千歌達に背中を見せたまま、エールの言葉を贈った無爪はそのまま急いでその場から今度こそ去って行き、そんな無爪に千歌は小さな声で「ありがとう・・・・・・」と呟くのだった。

 

「そろそろだね! えっと~、それからどうするんだっけ?」

「確かこうやって手を重ねて・・・・・・」

 

曜の言うように千歌、梨子、曜の3人はライブに気合いを入れる為にそれぞれ手を重ね合わせるのだが・・・・・・。

 

「繋ごうか」

「「えっ?」」

「こうやって互いに手を繋いで・・・・・・ねっ? 暖かくて好き・・・・・・」

 

千歌の言うように3人はそれぞれ互いに手を繋ぎ、曜も「ホントだ」と千歌の言葉に同意して頷く。

 

「・・・・・・雨、だね」

「みんな来てくれるかな?」

 

彼女達はまだ会場にどのくらいの人達が来ているのかを知らない、そのため梨子は「もし来てくれなかったら・・・・・・」なんて不安を口にするが、それに千歌は「じゃあやめて終わりにする?」と尋ねる。

 

「「「・・・・・・」」」

 

少しの間の沈黙が流れた後、3人はなぜか急におかしくなって笑い出す。

 

「フフ、さあ行こう!! 今全力で輝こう!!」

 

千歌の言葉に梨子と曜は頷き、3人はかけ声をあげる。

 

「「「Aqours、サンシャイン!!!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

そして体育館の幕が上がり、目を瞑って手を繋ぎ合った3人が目を開けるとそこには確かに観客が来ていた。

 

しかし、そこにいたのは無爪や鞠莉や花丸、ルビィにレイジ、変装した善子、体育館の入り口辺りにいるダイヤや外で傘を差して様子を見に来ていた果南に他数人の生徒だけで・・・・・・体育館を満員にするには程遠い人数だった。

 

「千歌ねえ・・・・・・あんなに頑張ったのに・・・・・・たったこれだけ」

『でも、μ'sファーストライブよりは多いんだけどね』

「でもそんなのなんの気休めにもならないな・・・・・・」

 

無爪と、無爪の影の中にいるペガがそんな会話をする中、この光景に千歌、梨子、曜は人があまり来なかったことに悲しそうな表情を浮かべるが・・・・・・。

 

すぐに3人は気が引き締まった表情を浮かべ、千歌が前に出て叫ぶ。

 

「私達は!! スクールアイドル!! せぇーの!!」

「「「Aqoursです!!」」」

 

千歌に合わせ、梨子と曜の3人が自分達のグループ名の名乗りをあげる。

 

「私達はその輝きと!!」

「諦めない気持ちと!!」

「信じる力に憧れ、スクールアイドルを始めました! 目標は・・・・・・スクールアイドル、μ'sです!! 聞いてください!!」

 

千歌はそう大きな声で宣伝し、そして始まる千歌達スクールアイドル、Aqoursのファーストライブ・・・・・・曲は「ダイスキだったらダイジョウブ!」

 

しかし、曲がサビに入ろうとしたその時だった。

 

外の電線に雷が落ちて切れてしまい、ステージのライトの光が消えてしまったのだ。

 

「えっ!? なに!? 一体なにが・・・・・・!」

『恐らく、雷かなんかで電線が切れたんだろうよ。 しっかし、このままじゃ・・・・・・』

 

レイジが停電に驚いている中、ゼロがそうレイジに説明し、ゼロは「発電機とかないのかよ?」と尋ねるとレイジは少しだけ考え込んだ後、「あるかどうか探してきます!!」と答えて外へと飛び出し、発電機を探しに行く。

 

その途中、ダイヤが体育館の近くにあった外の倉庫に向かって走って行くのが目に止まり、レイジは首を傾げる。

 

「あれって、生徒会長の黒澤さん?」

『もしかして・・・・・・おいレイジ! あいつを追いかけろ!! 多分、あの娘も考えてることは同じかもしれないぜ?』

「わ、分かりました!」

 

ゼロに言われるままレイジはダイヤを追いかけて行き、一方停電によってダンスが中断になってしまった千歌達はどうすればいいのか分からず困惑してしまう。

 

「どうすれば・・・・・・!」

「一体、どうしたら・・・・・・」

 

それでも、ここで諦めたくない千歌は「歌」の続きを不安な顔を浮かべながらも口ずさみ、それに曜も続いて歌を口ずさみ、それに梨子も続いて歌を歌う。

 

だが、やがて千歌は自身が口ずさんでいる歌詞の内容とは裏腹に、どんどん元気を無くしていき、彼女は顔を俯かせ、泣きそうな顔を見せる。

 

それを見た無爪は唇を噛み締める。

 

(千歌ねえの泣き顔なんて・・・・・・見たくない!! だから・・・・・・!!)

 

千歌の泣き顔をを見たくない、だからこそ、無爪は叫んだ。

 

「ジーッとしてても、ドーにもならないだろうが千歌ねえ!! だから!! 頑張れええええええええええ!!!!!」

「っ!?」

 

大きな声で精一杯の声援を無爪が送り、その声に反応して千歌が顔をあげると次の瞬間、止まっていた電気の光が再びついたのだ。

 

「へっ?」

「バカチカー!!」

 

それと同時に体育館の扉が開き、千歌の姉の美渡や、他にも町中の人達が体育館にやってきたのだ。

 

「アンタ開始時間間違えたでしょー!!?」

「えっ?」

 

美渡の言葉を聞いた無爪が慌ててライブのチラシを取り出して見ると確かに彼女の言う通りライブの開始時間が間違っており、無爪は頭を抱え、同時にちょっとした怒りも覚えた。

 

「こんの・・・・・・! バカ千歌ねえーーーーー!!!!! なんか恥ずかしいことしちゃっただろうがーーーーー!!!!」

 

その無爪の文句に千歌も思わず「ご、ごめーん!」と苦笑いしながら謝り、そして町の人達によって満員になった体育館を見て千歌達は元気を取り戻す。

 

「ホントだ私、バカ千歌だ・・・・・・」

 

また、体育館の近くにあった倉庫・・・・・・。

 

そこではレイジとダイヤが協力して発電機を使い、体育館の電気を復活させており、レイジは「会長さんありがとう」と笑みを浮かべてお礼を述べるのだが・・・・・・。

 

「別に、このまま終わられるのも気持ちが悪いだけですわ!」

 

とそっぽを向くダイヤだったが、それを見てレイジもゼロも「素直じゃないな」と思うのだった。

 

そして場所は体育館へと戻り・・・・・・。

 

元気を取り戻した千歌はキッとした顔となり、ライブを再開させる。

 

やがてライブは今度は何事もなく無事に終了し、観客達は彼女達に拍手喝采。

 

千歌達も達成感に満ちた表情を浮かべており、それを見て無爪もライブが成功して内心ほっとするのだった。

 

「その、ありがとう。 美渡姉さん」

「んっ? なにがなっちゃん?」

 

無爪は自分の隣に立つ美渡にお礼を突然言うのだが、美渡はなんのことか分からず首を傾げる。

 

「結局千歌ねえのお願い聞いてくれたんだよね? この前こっそり幾つかの宣伝用のチラシ千歌ねえの部屋から持って行くの見たよ?」

「あはは・・・・・・。 バレてた? 先輩にチラシ貼りすぎだって怒られたけどね」

 

そして舞台に立つ千歌達は互いが互いに頷き合う。

 

「彼女達は言いました!!」

「スクールアイドルはこれからも広がって行く!! どこまでだって行ける!! どんな夢だって叶えられると!!」

 

曜と梨子の2人がそれぞれ言葉を言い放ち、2人に続いて千歌が続きを言おうとするのだが・・・・・・。

 

「これは今までのスクールアイドルの努力と街の人達の善意があっての成功ですわ!! 勘違いしないように!!」

 

そこへダイヤが前に出てきて厳しめな口調で千歌達に言うのだが、それに対し千歌は「分かっています!!」と言葉を返し、それにダイヤは少し驚く様子を見せる。

 

「でも、でもただ見てるだけじゃ始まらないって!! 上手く言えないけど・・・・・・今しかない、瞬間だから!!」

 

 

そして千歌は左右に立つ梨子と曜と手をつなぎ合わせる。

 

「だから!!」

「「「輝きたい!!!!」」」

 

千歌、梨子、曜の3人が言い放つとそれに大きな拍手を送る観客達。

 

それを見て千歌は満面の笑顔を浮かべるのだった。

 

 


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