ラブライブ! ジードサンシャイン!!   作:ベンジャー

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第6話 『堕天使降臨』

とある人気のない場所にて・・・・・・。

 

そこでは1つのダンボールが置かれており、「ぼくをもらってください」という文字が書かれた紙が貼られていた。

 

そこへやってきたのはそのダンボールの中に「不思議な生き物がいる」という通報を受けたAIBのエージェントの3人、ゼナ、ザルド、美渡だった。

 

3人はそのダンボールの中を覗き込むとそこにはサメのような姿をした小さな怪獣、「海獣 サメクジラ」の幼体がいたのだ。

 

「これがサメクジラ? 可愛い!! 私、初めて見ました」

『まぁ、地球上には存在しない生物だからな』

 

ゼナはそう言うとサメクジラを優しく抱き上げる。

 

そこでゼナは様々な星でサメクジラはペットとして飼われていたそうなのだが、成長すると恐ろしい怪獣兵器になることが判明した為、廃棄が相次いでおり今問題になっているのだということを美渡とザルドに説明。

 

そしてこのサメクジラは恐らくそれらの過程で地球に漂着してしまったのだろうとゼナは美渡とザルドに説明し、美渡が「可哀想・・・・・・」と呟きながらサメクジラの頭を撫でようとする。

 

『触るな! 噛むぞ!!』

「ちょっと撫でるだけじゃないですか~! 敵意は無いんだからそんな心配しなくても大じょ・・・・・・」

 

そう言いながらザルドがサメクジラの頭を撫でようとした瞬間・・・・・・。

 

『ガブッ!!』

 

と思いっきりサメクジラはザルドの手に噛みついたのだった。

 

「うっぎゃあああああ!!!!?」

「ぷはっ!!」

『だから触るなと言っただろ?』

 

その光景に美渡は思わず吹き出し、ゼナは呆れた視線をザルドに向ける。

 

その時、美渡の持つAIB専用の端末機の音声が鳴り響き、彼女は端末機を取り出して画面を見るとメッセージで今度は「ルナー」と呼ばれる生物の目撃情報があったという報告を受ける。

 

「今度はルナー種の目撃情報があったそうです」

『ルナー種? サメクジラ同様宇宙に棄された生物だ。 7年前にエチオピアで捕獲に失敗したのと同じ個体かもしれん』

 

美渡はその「ルナー」という生物の画像を表示すると、そこに映っていたのはモコモコした小さく丸っこい生き物であり、そのルナー種を見て美渡は思わず「可愛い!!」と言い放つ。

 

「もう見た目に騙されないぞ! 絶対こいつも噛むだろ!!」

『サメクジラはお前の接し方が悪かっただけだ。 だが、ルナーも危険なのは変わりない。 子供達が接触する可能性もあるからな』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、あるマンションの一室・・・・・・。

 

そこでは頭のシニヨンが特徴的な少女、善子が黒い羽のついたゴスロリ風の衣装を身に纏ってロウソクを灯しカメラの前でポーズをつけながら動画の生配信を行っていた。

 

「感じます。 精霊結界の損壊により魔力高層が変化していくのが。 世界の数世が、天界議決により決していくのが。 かの約束の地に降臨した堕天使ヨハネの魔眼がそのすべてを見通すのです!! すべてのリトルデーモンに授ける!! 堕天の力を!!」

 

そうして厨二全開の台詞を言いながら、最後の締めにロウソクを消して放送を終了。

 

「・・・・・・フッ」

 

放送が終了した後、善子は不敵な笑みを浮かべると彼女は窓の方に行き、勢いよく締めていたカーテンを開けて叫ぶ。

 

「やってしまったぁ~!! 何よ堕天使って!! ヨハネってなに!!? リトルデーモン? サタン? いる訳ないでしょ!! そんなも~ん!!!!」

 

一通り彼女がそう叫んだ後、「モ、モコォ~!」という鳴き声が聞こえ、それにハッとなって善子が振り返るとそこにはゼナ達が探している「ルナー」と呼ばれるモコモコした白く丸っこい生物がいたのだった。

 

善子が叫んでいるのを見て何か怒っているのかと思ったのか、身体を振るわせて怯えた様子を見せ、それに善子は「ごめ~ん!!」と謝りながらルナーを抱きかかえる。

 

「ごめんねモコ? 別に私、あなたに怒ってる訳じゃないのよ? どちらかと言えば自分に怒ってるっていうか・・・・・・。 でも、怖がらせてごめんね?」

「モコォ~」

 

善子は「モコ」と自分が呼ぶルナーの頭を優しく撫で、鏡に映る自分を見つめながら、小さな溜め息を吐く。

 

「はぁ。 もう高校生でしょ、津島 善子! いい加減卒業するの! そう、この世界はもっとリアル、リアルこそ正義・・・・・・! リア充にぃ~! 私はなる!!」

「モコ!! モコ!!」

 

ガッツポーズを取りながらそう意気込む善子、そんな善子を応援するように鳴き声をあげるモコ。

 

『堕天使ヨハネと契約して、あなたも私のリトルデーモンに、なってみない?』

 

しかし即座に学校で自己紹介した時のことを思い出し、彼女は頭を抱えて悶え苦しむ。

 

「うわああ~!!!! なんであんなこと言ったのよ!! 学校行けないじゃな~い!!」

「モコォ~」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Aqoursの部室にて。

 

千歌達はノートパソコンを開いてネットを立ち上げ、自分達Aqoursのランクがあまり上がっていないことに悩んでいたのだった。

 

「今日も上がってない・・・・・・」

「昨日が4856位で今日が4768位・・・・・・」

「まぁ、落ちては無いけど」

 

梨子が昨日と今日の順位を言い、それに曜は昨日より少し上がったとは言え、やはりもう少し順位が早く上がってくれないかと思わずにはいられなかった。

 

『まぁ、だってまだ千歌ちゃん達はスクールアイドル始めたばかりだし、ライブも1回しかやってないし、これくらい普通な気もするけど・・・・・・』

 

無爪の影からそう小さくペガが呟き、ペガの言葉に無爪も「確かに」と同意して頷く。

 

「千歌ねえ達はまだ活動も少ないし、ほんの少しでも順位が上がって来てるなら今はこれで上出来だと僕は思うけどなぁ」

「うーん、でもなぁ・・・・・・」

 

それでもやはり新しく2人も加入したのだからもう少しペースが速くなっても良いかもしれないと曜は考え、またルビィも「ライブの歌は評判良いんですけど・・・・・・」と呟く。

 

「それに、新加入の2人も可愛いって!!」

「そうなんですか!?」

 

千歌が新加入の2人、つまり花丸とルビィのことを可愛いと書かれたコメントを読み上げるとルビィは嬉しそうな声をあげ、さらに曜が言うには特に花丸の人気が高いらしい。

 

「『花丸ちゃん応援してます』」

「『花丸ちゃんが歌ってるところ、早く見たいです!』」

「ねっ! ねっ! 大人気でしょ!?」

 

梨子と曜がそれぞれ2人で花丸に関してのコメントを読んでいき、千歌が花丸に「人気でしょ?」と言っていると、ふっと花丸が不思議そうにパソコンを見つめていることに千歌達が気付き、彼女等は首を傾げる。

 

「こ、これがパソコン・・・・・・?」

「気にするところそこなの?」

 

花丸は興味深そうにノートパソコンを見つめており、そんな彼女に気にするところそこなのかと無爪にツッコまれるが、彼女は聞いておらず、キラキラした視線を花丸はパソコンに送っていた。

 

「もしかして、これが知識の海に繋がってるというインターネット!」

「そ、そうね、知識の海に繋がってるかは兎も角として・・・・・・」

 

梨子の言葉を聞いて花丸は「お、おぉ~!!」と歓喜の声をあげ、千歌がルビィに花丸はもしかしてパソコン使ったことないのかと尋ねると・・・・・・ルビィ曰く、花丸の家は古いお寺であり、その関係で電化製品などが殆どないというのだ。

 

「そうなんだ」

「この前沼津行った時も・・・・・・」

 

 

 

 

 

数日前、沼津のどこかの女子トイレにて。

 

『こ、この蛇口、回すとこないずら』

 

トイレに行った時、花丸が自動的に流れる蛇口の下に向かって手を伸ばし、水が出た時は「お、おぉ~!!」と今、パソコンを見た時と同様に目を輝かせ・・・・・・。

 

また、その後ハンドドライヤーの所でも頭をあててドライヤー代わりにしていたりしていたらしい。

 

『未来ずら!! 未来ずらよ! ルビィちゃん!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

「って・・・・・・」

「現代機器に疎いって・・・・・・余計に花丸ちゃん人気上がりそうだね、それ」

 

ルビィの話を聞いて思わず苦笑いする無爪。

 

また花丸は千歌達に「パソコン触っても良いですか!?」と尋ね、千歌は「もちろん!」と返事を返すと花丸は嬉しそうに笑みを浮かべ、パソコンに触れようとするのだが・・・・・・。

 

「わぁ~! んっ?」

 

花丸はノートパソコンのキーボード右上にある光るボタンの存在に気付き、彼女は何気なくそのボタンを「ずら!」と言いながら押すと、パソコンの画面が消えてしまったのだった。

 

「うわっ!?」

「えっ、なに押したの!? いきなり!?」

「えっ、あ・・・・・・えへ? 一個だけ光るボタンがあるなーと思いまして・・・・・・」

 

直後、梨子と曜が素早い動きで花丸の横を通り抜けてノートパソコンの元に駆け寄り、急いでデータの確認をする2人。

 

「大丈夫!?」

「衣装のデータ保存してたかなぁ~!?」

 

それに対して花丸は何かやっていけないことをやってしまったのかとみるみると不安げな顔になって今にも泣きそうな表情になり、恐る恐る梨子と曜の方へと振り返る。

 

「ま・・・・・・マル、何か行けないことしました・・・・・・?」

「あははは、まぁ、大丈夫大丈夫・・・・・・」

「まぁ、機械に疎いって最初にルビィちゃんに聞いてたのに押しちゃダメなところ教えなかった僕達にも問題があったよ」

 

千歌と無爪は2人でそう言いながら花丸を慰めた後、一同はダンスの練習のため屋上へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、一同は練習の為に屋上へとやってきたのだが・・・・・・。

 

「おお! こんなに弘法大師、空海の情報が!」

「うん! ここで画面切り替わるからね?」

 

練習の前に曜が花丸にノートパソコンの操作方法を説明しており、それを受けて「凄いずら~」と花丸は歓喜の声をあげていた。

 

「もう、これから練習なのに・・・・・・」

「でも、さっきみたいなこと起こらないようにしないとだし、多少は大目に見ようよ、梨子さん?」

「それは、そうかもだけど・・・・・・」

 

無爪にそう言われ、確かに一理あるかもしれないと考える梨子。

 

また千歌はそれよりもランキングをどうにかする方法を考えなくては・・・・・・と意見を出し、毎年スクールアイドルは増えているからと話すルビィ。

 

「僕が想像してたよりずっと人気だったんだね、スクールアイドル・・・・・・」

「そうだよ~! 悪いことじゃないんだけど、私達はこんな何もない場所の地味&地味&地味!! ってスクールアイドルだし・・・・・・」

 

無爪はスクールアイドルの人気っぷりを改めて確認し、千歌は海や空、そして自分を指差して地味と評して落ち込む。

 

「千歌ねえはそんなに地味じゃない気もするけど・・・・・・」

「えっ」

 

ボソッと呟いた無爪のその言葉を聞いて顔を赤らめる千歌。

 

それにハッとなった無爪は慌てて自分の口を塞ぐ。

 

「じ、じゃあなっちゃんは私のこと地味じゃなかったらどんな風に思ってるのかな~?」

 

少しニヤついた笑みで千歌が尋ねると・・・・・・無爪は「それよりもAqoursの人気をあげる方法でしょ!!」と話題を逸らそうとする。

 

「あっ、ちょっと話題を変え・・・・・・」

「やっぱり目立たないとダメなの?」

 

千歌は話題を逸らそうとする無爪に文句を言おうとするがそれよりも先に梨子がやはり目立たないとダメなのかと千歌に尋ね、それに千歌は「うーん」と腕を組んで悩む。

 

(梨子さんナイス!!)

「うん、人気は大切だよ」

 

また曜からも人気は大切だと言われ、千歌は何か目立つことがないかと考え込む。

 

「例えば、名前をもっともーっと奇抜なものに付け直してみるとか?」

 

そこで梨子は例えとして自分達のスクールアイドル名をもっともっと奇抜なものにしてはどうかと提案する。

 

「奇抜って、スリーマーメイド・・・・・・?」

「っ!?」

「あっ、ファイブだ!」

 

以前梨子が提案した「スリーマーメイド」の名前を出し、即座に今5人いるのでファイブと言い直す千歌。

 

それに梨子が耳まで真っ赤にして肩をワナワナ震わせる。

 

「ファイブマーメイド・・・・・・!」

 

それを聞いてルビィは気に入ったのか、嬉しそうにな顔を見せ、自分と千歌、梨子、曜、花丸が5人で人魚の格好をしたイメージを頭に思い浮かべる。

 

『私達は・・・・・・』

『『『『『ファイブマーメイドです!!』』』』』

 

尚、そのイメージの中なぜか花丸だけパソコンを弄っていたが。

 

(人魚姿のAqoursか・・・・・・。 ちょっと見たい・・・・・・!)

 

また無爪も人魚姿のAqoursを思い浮かべ、少し見てみたいと思うのだった。

 

「なんで蒸し返すの!?」

 

そして梨子はファイブマーメイドを蒸し返されたことを千歌に怒るのだが、彼女は話を聞いておらず、「ってそれじゃ踊れない!」と人魚では足が魚になっているので踊れないと嘆いた。

 

「あっ、じゃあみんなの応援があれば足になっちゃうとか!!」

 

ピョンピョン跳ねながらルビィが意見を出し、それに対して千歌も「なんか良い!! その設定!!」と気に入った様子だった。

 

「でも代わりに、声が無くなるという・・・・・・」

「ダメじゃん!」

「本末転倒じゃないか」

 

曜の言葉に千歌はダメじゃないかと頭を抱え、無爪も呆れた顔を見せる。

 

そして未だにマーメイドで弄って来る千歌に梨子は掴みかかって身体を大きく揺さぶる。

 

「だからその名前忘れってって言ってるでしょ!!?」

「おわあ~!」

「・・・・・・悲しい話だよねぇ、人魚姫」

 

そんな時、花丸が誰かの視線を感じ、階段の方へと顔を向けるとそこでは壁に隠れてこちらの様子をこっそり伺う今まで不登校だった善子の姿があり・・・・・・。

 

またそんな花丸の様子に気付いた無爪も彼女と同じ方向に目を向けると彼も善子の姿を発見する。

 

「なんでこんなところに先客が・・・・・・」

「アレ? あの娘は・・・・・・」

「善子ちゃん?」

 

それに対して善子も花丸と無爪の2人が自分の存在に気付いたことに気付く。

 

「ずら丸!? それに、アレは確かクラスメイトの男子・・・・・・!」

 

そのまま彼女は咄嗟に身を隠し、そのままどこかへと立ち去って行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

逃げた善子は誰にも見つからないようにと廊下に設置されている戸棚の中に隠れ、蹲っていた。

 

「うぅ、いきなり屋上から堕天してしまった。 うぅ、今すぐ帰ってモコに抱きつきたい・・・・・・それでモフモフしたい・・・・・・」

 

するとその時、戸棚が突然開かれ、ニヤッとした笑みを浮かべた花丸が現れ、それに善子は驚いて小さな悲鳴をあげる。

 

「学校来たずらか」

「全然学校に来ないから、みんな君のこと心配してたんだよ?」

 

ちなみに花丸の後ろには苦笑いしている無爪の姿もあり、彼は戸惑いつつも善子に「えっと、大丈夫?」と声をかける。

 

「わあぁ~!!?」

 

そしてそのことに驚いた善子はすぐさま戸棚の中から飛び出し、2人から距離を取ると彼女は尻餅をつく。

 

「き、来たって言うか、たまたま近くを通りかかったから寄ってみたって言うか・・・・・・」

「制服着てるのに?」

「たまたま?」

 

無爪と花丸が制服も着てるのにたまたま学校に寄っただけなのかと尋ねると善子は「どうでもいいでしょそんなこと!!」と怒鳴り、それよりも彼女は無爪と花丸にクラスのみんなが自分に何か言ってなかったかと2人に尋ね、それに無爪と花丸は顔を見合わせて「えっ?」と首を傾げる。

 

「私のことよ!! 変な娘だねーとか! ヨハネってなに~? とか!! リトルデーモンってなに? ぷふ! とか!!」

「「・・・・・・はぁ」」

「そのリアクション! やっぱり噂になってるのね~! そうよね、あんな変な事言ったんだもん。 終わった! ラグナロク・・・・・・まさにDead or Alive!!」

 

そのまま嘆く善子は再び戸棚の中に入って扉を閉め、閉じこもってしまう。

 

「それ生きるか死ぬかって意味だと思うずら」

「っていうか、そんなこと言う人ウチのクラスにはいないよ、善子ちゃん」

「でっしょ~? んっ? えっ?」

 

無爪の言葉を聞いて「えっ?」となる善子。

 

「それよりもみんなどうして来ないんだろうとか、悪いことしちゃったのかなって心配してて・・・・・・」

 

無爪に続いて花丸もクラスメイト達は善子のことをバカにするどころか心配してくれているということを伝え、それに善子は「ホント?」と扉を少しだけ開けて尋ねる。

 

「うん」

「ホントね? 天界堕天条例に誓って、嘘じゃないわよね?」

「てん・・・・・・えっ? なんて? まぁいいや、それに誓って嘘じゃないよ。 僕も心配だったし」

「ずら!」

 

無爪と花丸も誓って嘘ではないと善子に伝えると彼女は勢いよく「よし!」と戸棚から飛び出して立ち上がり、右腕を掲げる。

 

「まだ行ける! まだやれる! 今から普通の生徒でいければ・・・・・・!!」

 

そこで善子は自分が勢いよく飛び出した際に尻餅をついた花丸にずいっと顔を近づける。

 

「ずら丸! それとこの際だからそこのクラスメイトの男子!!」

「な、なんずら~!?」

「無爪です」

「じゃあ無爪くん!! 2人にヨハネたってのお願いがあるの・・・・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その翌日、善子は清楚でおしとやかな雰囲気を溢れさせながら学校に登校して歩いて来ており、その様子に同じクラスメイトらしき他の生徒達も驚いた様子を見せていた。

 

「誰だよ」

 

尚、遠目から無爪もその様子を伺っており、善子のことはあまり知らないのだが、なぜかそう言わずにはいられなかったのだった。

 

(フフ♪ 見てる見てる、花丸やあの無爪って人が言ってたようにみんな前のことは覚えてないようね。 よぉーし!)

 

そこで善子は一度立ち止まって生徒達に振り返り、朝の挨拶を行う。

 

「おはよう♪」

「「「お、おはよう」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、教室にて・・・・・・。

 

善子のことを心配した女子生徒達が彼女の周りを囲んでおり、花丸や無爪の言うように善子をバカにするような者は誰1人おらず、それどこから生徒達は気立て無く善子に話しかけていた。

 

「雰囲気変わってたから、ビックリしちゃった~」

「みんなで話してたんだよ。 どうして休んでるだろうって!」

「ふふ、ごめんね? でも今日からちゃんと来るからよろしく!」

 

善子は生徒達にそう笑みを浮かべて言葉を返す。

 

「こちらこそ! でも、津島さんって・・・・・・名前なんだっけ?」

 

すると、女子生徒の1人が申し訳無さそうに善子の下の名前が何だったのかを尋ね・・・・・・それに一瞬ビクッとする善子。

 

「酷いなぁ、アレだよ!」

「確かよ、よ・・・・・・ヨハ・・・・・・」

「善子!! 私は津島 善子よ!!」

 

自己紹介の時に行った「ヨハネ」という名前を生徒の1人が出そうとしたので慌てて善子は立ち上がって自分のフルネームを教え、それから善子と生徒達は互いに笑い合って打ち解け合うのだった。

 

それを見ていた無爪は善子がちゃんと他の生徒達と仲良く話せていることに安心し、また花丸と一緒にいるルビィも善子が学校に来ていることに驚いている様子だった。

 

「ずら! マルと無爪くんがお願い聞いたずら!」

「お願い?」

 

それは昨日のこと・・・・・・。

 

『監視?』

『そうなの。 私、気が緩むとどうしても堕天使が顔を出すの。 だから・・・・・・』

『堕天使が顔を出すとか言うパワーワード・・・・・・。 よく分かんないけど、自己紹介の時みたいなことをしないようにってことだよね?』

 

無爪が善子が自己紹介した時のことを言うと彼女は顔を真っ赤にして「アレは忘れなさい!!」と怒鳴られたが・・・・・・兎に角そういうことらしく、善子は無爪と花丸に堕天使が出ないように監視してくれと頼むのだった。

 

「危なくなったら止めてっと!」

「堕天使が出ちゃう・・・・・・?」

 

花丸の言葉に首を傾げるルビィ。

 

その時、クラスメイトの1人が善子に「趣味とかはないの?」と問いかけると善子は「趣味!?」と驚いた声をあげ、どう答えるべきか一瞬迷う。

 

「と、特に、なにも・・・・・・」

 

堕天使のことなど本人的には言える訳がないので趣味は特にはないと答えようとしたが、そこで善子はふっと「ちょっと待って!」と思い、ある考えが頭を過ぎった。

 

(いやこれは! クラスに溶け込むチャンス!! ここで上手く好感度を上げて・・・・・・!)

 

それはここで堕天使のことは兎も角、自分の趣味のことを話せば少しでもクラスに馴染めるかというもので彼女はクラスメイト達に自分が占いを少し嗜んでいるということを話す。

 

「う、占いを、ちょっと・・・・・・」

「ホント!? 私占ってくれる!?」

 

占いとなれば気にならない女子は基本いない為、女子生徒の何名かが自分を占ってくれと頼み、善子はそれを快く承諾。

 

「良いよ!! えーっと、あっ! 今占ってあげるわね!」

 

そう言うと善子は鞄から黒い布を取り出し、さらには黒いロープを取り出して羽織り、頭のシニヨンに黒い羽を差し込む。

 

『・・・・・・えっ?』

「これでよし♪ はい、火をつけてくれる?」

 

その光景に生徒達は若干引いており、生徒の1人はその光景に戸惑いながらも火をつける。

 

「ちょっと、幾ら何でもこれ派手過ぎない? 占いってこんな大がかりだっけ?」

『ず、随分本格的(?)だね・・・・・・』

 

無爪や影の中のペガも引き攣った笑みを浮かべ、また生徒の1人は戸惑いながらも善子に言われた通りロウソクに火をつける。

 

「天界と魔界にはびこるあまねく精霊、憐獄に堕ちたる眷属たちに告げます。 ルシファー、アスモデウスの転生者、堕天使ヨハネとともに、堕天の時がきたのです!」

 

そう言いながら両手を広げて高らかに宣言する善子。

 

そこで善子はハッと自分がやってしまったということに気づき、周りを見ると全員引き攣った顔をしている。

 

(や、やってしまったぁー!!?)

 

そしてそんな善子に呆れた視線を送りながら花丸はふーっとロウソクに息をかけて消すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、Aqoursの部室にて・・・・・・。

 

「どうして止めてくれなかったのーーーーー!!!!」

 

善子はこの部室に逃げ込んで花丸や無爪が自分を止めてくれず、堕天使が出てしまったことに膝を抱えて嘆いていたのだった。

 

「ごめん、まさかあんなに本格的だとは思わなくて・・・・・・圧巻されて止められなかった」

「そうずら。 マルもまさかあんなものまで持ってるとは思わなかったずら」

 

無爪は両手を合わせて申し訳無さそうに謝り、花丸はじっとした視線を善子に送っていた。

 

「どういうこと?」

 

しかし、千歌達はイマイチにこの状況が飲み込めていならいらしく、曜が「どういうこと?」と尋ねると先ほど善子から話を聞いたと言うルビィが説明を行う。

 

「ルビィも、さっき聞いたんですけど・・・・・・。 善子ちゃん、中学時代はずっと自分は堕天使だと思い込んでいたらしくて・・・・・・」

 

例の1つとして、昔善子は中学時代、学校の屋上へと行って決めポーズを決めながら厨ニ全開の台詞を吐いていたのだと言う。

 

『天界より舞い降りしフォーリンエンジェル、堕天使ヨハネ。 みんな一緒に堕天しましょ? フフ♪』

 

とまぁ、こんな感じだったらしい。

 

「つまりは厨ニ病」

『多くの人が通る道だね』

 

ルビィの説明を無爪とペガがボソッとそう呟き、ルビィ曰く「まだその頃の癖が抜けきっていない」とのことである。

 

するとそこで善子が机の下からゆっくりと立ち上がって来た。

 

「・・・・・・分かってる。 私が堕天使の筈ないって・・・・・・。 そもそもそんなのいないんだし・・・・・・」

 

善子はみんなに背中を見せた状態で肩をぷるぷると震わせてそう語るのだが・・・・・・そこで梨子が「ならどうしてあんなもの学校に持って来たの?」と占いに使ったアイテムをどうして持って来たのかを尋ねる。

 

「それはまぁ、ヨハネのアイディンティーみたいなものでぇ~。 アレがなかったら私は私でいられないって言うか!!」

 

そう言い放ちながら善子はみんなの方へと振り返って厨ニ病的なポーズを思わず取ってしまい、そのことで善子はすぐに「またやってしまった」ということに気付いてハッとなる。

 

「なんか、心が複雑な状態にあるということは、よく分かった気がするわ」

「ですね。 実際今でもネットで占いやってますし」

 

そこでルビィがノートパソコンを開いて善子がやっている動画のページを開き、みんなで視聴。

 

『またヨハネと堕天しましょ?』

「わぁー!! やめて!!」

 

しかし、即座に恥ずかしくてたまらなかった善子がノートパソコンを閉じてみんなが自分の動画を視聴するのを阻止する。

 

「兎に角私は普通の高校生になりたいの!! なんとかして!!」

 

目をうるうるとさせながら花丸達に頼み込む善子。

 

しかし、なんとかしてと言われてもどうすれば良いのか分からず、困惑する一同・・・・・・。

 

だが、ただ1人だけ・・・・・・千歌だけは善子の動画を見て何かを閃いたのような表情を浮かべていた。

 

「・・・・・・可愛い」

『えっ?』

 

千歌の呟きに首を傾げる一同。

 

「これだ!! これだよ!! 津島 善子ちゃん!! いや、堕天使ヨハネちゃん!! スクールアイドル、やりませんか!?」

 

千歌は立ち上がってグイッと顔を善子に近づかせ、彼女は善子をスクールアイドルに勧誘するのだった。

 

「・・・・・・なに?」

 

 

 

 

 

 

 

 

それから、一同は高海家の旅館、十千万にやって来ると千歌の部屋で無爪を除く6人は黒のゴスロリ衣装を着ることに。

 

ちなみに善子の衣装は自前である。

 

尚、無爪も一緒にいるのは衣装の感想を聞く為である。

 

「こ、これで歌うの!? この前より短い・・・・・・。 これでダンスしたら、流石に見えるわ・・・・・・」

 

しかし、その衣装はやたらとスカートが短く、梨子はこれでは流石にスカートの中が見えてしまうと懸念。

 

そのこともあって無爪は座らせずに立たせている。

 

「大丈夫♪」

「っ!? げほっ!!? ごほっ!!?」

 

だが、梨子の隣に立つ千歌は下にジャージのズボンを履いているので平気でスカートをたくし上げ、ズボンを履いてるなんて知らなかった無爪は千歌のその行為を見てついつい咳き込んでしまう。

 

そしてすぐさま梨子は「そういうことしないの!!」と強く注意しながら千歌のスカートを元の位置に慌てて戻す。

 

「ほらもう無爪くん咳き込んじゃってるし!!」

「それで、どうかななっちゃん、衣装の感想は?」

 

そこで千歌は無爪に自分達の衣装の感想を求められ、無爪は一瞬戸惑う。

 

(良いと思います!! って凄い言いたい・・・・・・!! 言いたいけど、言ったら曜ねえ辺りに絶対からかわれるし!!)

「なっちゃん? おーい?」

「わ、悪くはないとは・・・・・・思うけど・・・・・・」

 

歯切れ悪く千歌の問いかけにそう応える無爪。

 

「なっちゃんが悪くないって言うなら、つまりは良いってことだね!」

(いや、でもなっちゃんのことだから下心ありそう)

 

千歌はツンデレの無爪が言うことなのできっと特に問題はないのだろうと判断するのだが、曜からはそんな風に思われる無爪だった。

 

「はぁ、良いのかな本当に・・・・・・」

 

こういう感じで大丈夫なのだろうかと小さく梨子

 

「調べたら堕天使アイドルっていなくて結構インパクトあると思うんだよね!!」

「確かに、昨日までこうだったのが・・・・・・」

 

曜はベッドに置かれた自分達のファーストライブの時に着ていた衣装を見た後、同じようにゴスロリ服を着た他のメンバーを見渡す。

 

「こう変わる・・・・・・」

「うゆ、なんか恥ずかしい・・・・・・」

「落ち着かないずら」

 

曜や千歌は結構ノリ気ではあるもののルビィや花丸も梨子と同様この衣装はなんだか恥ずかしいしあんまり・・・・・・という感じであり、梨子はこんな格好で本当に大丈夫なのかと千歌に問いかける。

 

「可愛いね~!!」

「そういう問題じゃない!」

 

千歌の的外れな解答にツッコミを入れつつ、善子も本当に良いのかと疑問を口にするが・・・・・・千歌は「これで良いんだよ!!」と応える。

 

「ステージ上で堕天使の魅力をみんなで思いっきり振りまくの!!」

「堕天使の・・・・・・魅力・・・・・・?」

 

そんな千歌の言葉に善子は惹かれるが・・・・・・すぐにハッとなって彼女は「ダメダメ!!」と両腕を交差して×を作る。

 

「そんなのドン引かれるに決まってるでしょ!?」

「大丈夫だよ~、きっと!」

 

それを受けて、善子は少しだけステージに立った自分の姿を想像してみる。

 

『天界からのドロップアウト、堕天使ヨハネ・・・・・・。 堕天降臨!!』

「大人気・・・・・・くく、ふふ・・・・・・」

 

膝を抱えて蹲りながら、歓声を浴びる自分の姿を想像して不気味に笑う善子。

 

「どうやら善子ちゃんもノリ気になったみたいだね」

「うん、協力・・・・・・してくれるみたい」

 

無爪とルビィが善子が協力してくれるようだと言うと、梨子も渋々「しょうがないわねぇ」と了承。

 

その後、梨子が一度部屋を出ることになったのだが・・・・・・。

 

梨子が部屋を出るとそこには犬のしいたけを可愛がっている美渡の姿があり、しいたけの姿を見ると梨子は徐々に引き攣った顔になっていく。

 

「あっ、来てたんだ」

「・・・・・・っ」

 

次の瞬間・・・・・・。

 

「いいいやああああ!!!!?」

 

梨子はしいたけに追い回され、美渡は必死に梨子を追いかけ回すしいたけを止めようとする。

 

しかし、しいたけは一向に止まらず梨子を追いかけ回す。

 

「やめて来ないでえええええ!!!!?」

「梨子ちゃん!? 大丈夫! しいたけはおとなし・・・・・・」

 

千歌がそこまで言いかけた時、梨子は咄嗟に千歌の部屋の隣の部屋に逃げ込み、そのまま襖が千歌の方に倒れて下敷きになり、その際巻き添えで無爪軽く吹き飛ばされ、そのまま彼は真っ直ぐ曜の胸の辺りに顔を埋めるような形でダイブ。

 

「がふっ・・・・・・!?」

「おぉ!?」

「ご、ごめ・・・・・・!!」

 

それに曜も驚いた様子を見せるが、特に恥ずかしがる様子もなく咄嗟に無爪は曜から離れようとするが逃がすまいと曜は無爪を抱きしめて彼の頭を撫で始める。

 

「ちょっ、何してんの曜ねえ!?」

「いやぁ、久しぶりになっちゃん可愛がりたくなっちゃって~」

 

2人がそうこうしている間に梨子は真っ直ぐ千歌の部屋の開いている窓からジャンプし、身体をくるくる回転させながらそのまま自分の部屋のベランダに尻餅をつきながらも着地するのだった。

 

「とおおりゃああああ!!!!」

 

その光景を見た一同は「おぉ~、飛んだ」と感心の声をあげながら拍手喝采。

 

そんな千歌達に梨子はすぐ立ち上がり、文句を言おうとするのだが・・・・・・。

 

「お帰り・・・・・・」

「っ!? ただいま・・・・・・」

 

梨子の部屋には彼女の母親が掃除をしており、彼女は恥ずかしさからかその場にへたり込んでしまうのだった。

 

「っていうか、曜ねえはいつまで僕を抱きしめてるつもりなんだ・・・・・・! 早く離して恥ずかしいから!!」

「私だってたまには弟を可愛がりたいから無理」

 

また曜達に気付いた千歌が「あっ!」と声をあげ、千歌は曜と無爪を引き離そうとする。

 

「だからなっちゃんは私の弟だってば~!!」

「千歌ちゃんは何時でもなっちゃん可愛がれるでしょ!?」

 

そんな風に千歌と曜による無爪の取り合いを見て、善子はボソッと一言呟いた。

 

「なにあのリア充・・・・・・」

 

 

 

 

 

「じゃあ衣装、よろしくね?」

「ヨーソロー!!」

 

千歌、梨子、無爪はバス停まで曜、善子を見送り、またそこで花丸とルビィも無爪達に別れの挨拶をして2人は家に帰り、今日はみんな解散することに。

 

「あいたた・・・・・・」

 

ルビィと花丸と別れた後、梨子は尻餅をついた衝撃で未だに痛む自分のお尻を撫で、それに千歌は思わず笑ってしまう。

 

「笑い事じゃないわよ! 今度から絶対繋いでおいでよ!」

「梨子さんが無駄にしいたけを怖がりすぎてるだけな気もするけど」

「そんなことないわよ!」

 

無爪と未だに笑ってる千歌に対して梨子はムスッとした顔を浮かべ、「人が困ってるのがそんなに楽しい?」と不機嫌そうに梨子は千歌に尋ね、千歌は「違う違う」と首を横に振って否定。

 

「みんな色々個性があるんだなーって」

「えっ?」

「ほら、私達始めたは良いけどやっぱり、地味で普通なんだなーって思ってた!」

 

千歌のその言葉を聞き、梨子は「そんなこと思ってたの?」と問いかけると千歌は「そりゃ思うよ!」と頷く。

 

「一応、言い出しっぺだから責任はあるし! かと言って、今の私にみんなを引っ張って行く力は無いし・・・・・・」

 

どこか暗い表情を浮かべ、そう語る千歌に梨子と無爪はなんと声をかけて良いか分からず、困惑。

 

「でも、みんなと話してて少しずつみんなのこと知って、全然地味じゃないって思ったの! それぞれ特徴があって、魅力的で・・・・・・だから、大丈夫じゃないかなって!」

 

しかし、すぐに笑みを浮かべながらそう語り出す千歌に梨子も釣られるように笑みを見せ、「やっぱり、変な人ね」と呟き、それに千歌が「えぇー!?」と驚きの声をあげる。

 

「初めて会った時から思ってたけど」

「それね、僕もずっと思ってた」

「なに!? なっちゃんまで! 褒めてるの貶してるの!? ってかなっちゃんにだけは変って言われたくないよね! 特オタだし!」

 

そんな千歌に梨子は「どっちも?」と褒めて貶してるかもと意地悪く返し、それに同調するように無爪もコクコクと頷く。

 

「兎に角、頑張って行こうってこと! 地味で普通のみんなが集まって、なにができるか・・・・・・ねっ?」

 

そう言いながら梨子は千歌の肩を軽くポンッと叩き、そのまま彼女は自分の家に向かって歩き出す。

 

「よく分かんないけど・・・・・・まっ、いっか」

「ウチまで競争~!!」

 

すると梨子が突然その場から「競争!」と言い出して走り出し、それを千歌は慌てて追いかける。

 

「えっ!? あっ、ちょっとズルい~!!」

 

それに千歌も慌てて梨子の後を追いかけるのだった。

 

『無爪は競争しないの?』

「加減しても、僕の方が早い可能性あるからね。 なんか邪魔しちゃいけない気もするし」

 

ペガとそんな会話をして、走る千歌と梨子の背中を見つめながら、彼女等の後を歩いて追いかける無爪だった。

 

 

 

 

 

 

 

善子の住んでいるアパートにて。

 

「ただいま~」

「モコォ~!」

 

自分の部屋に入るや否や、留守番をしていたモコが善子に飛びつき、それに善子が両手で受け止め、モコの頭を撫でる。

 

「ただいまモコ、良い子にしてた?」

「モコ!」

 

尻尾を振るうようにして返事をするモコ。

 

善子は一度モコを机の上に置き、帰りにコンビニで買って来たパンを袋から取り出し、それをモコに差し出す。

 

するとモコは大きな口を開けてパンを吸い込むようにして食べ、その様子に善子は思わず苦笑いしてしまう。

 

(モコって普段可愛いけどご飯食べる時だけは怖いわね・・・・・・)

「モコ! モコ!」

 

パンを食べ終えるとモコは何やら窓の外を見ながら何かを訴えている様子を見せ、それに善子は「あぁ、外に行きたいのか」とモコが何を言いたいのかを理解し、ロングコートを着てサングラスとマスクを装着した善子はモコをコートの内側に入れ、こっそりと家を出るのだった。

 

(このアパート、ペット禁止だからね。 誰にも見つからないようにこっそり外に出なきゃ)

 

こっそり外に出るならその格好は逆に目立つ気もするが。

 

 

 

 

 

 

 

 

その翌日、学校の屋上にて。

 

「はぁ~い? 水のビーチから登場した待望のニューカマー、ヨハネよ!! みんなで一緒にぃ~、堕天しない?」

『しない?』

 

屋上で善子を中心に、堕天使スタイルのAqoursがポーズを取りながらの撮影を行っていたのだった。

 

その後、一同は元の制服に戻って動画編集した後、動画サイトに投稿。

 

「やってしまった・・・・・・」

 

ただ梨子だけは若干の後悔があり、軽めに頭を壁にぶつけていた。

 

「どう?」

「待って、今は・・・・・・」

 

千歌と曜の2人がそんな会話をしていると昨日まで4768位だった自分達のランクが953位となっており、それに千歌は「嘘!?」と驚きの声をあげる。

 

「堕天使効果凄いね・・・・・・」

「コメントも沢山!!」

 

無爪はまさかここまで凄まじくランキングを彼女等が上げたことに驚き、またルビィも複数のコメントが送られていることに気付く。

 

「『ルビィちゃんと一緒に堕天する!』」

「『ルビィちゃん最高!』」

「『ルビィちゃんのミニスカートがとても良いです』・・・・・・」

「『ルビィちゃんの笑顔』・・・・・・が・・・・・・」

 

ただ、そのコメントの大半はルビィに関することばかりであり、それにルビィや「いやぁ、そんなぁ~」と照れるのだった。

 

ちなみにメンバー全員が堕天使スタイルで個別に自己紹介する映像も撮っているのだが・・・・・・その中のルビィの自己紹介映像が・・・・・・。

 

『ヨハネ様のリトルデーモン、4号。 く、黒澤 ルビィです。 1番小さい悪魔・・・・・・可愛がってね!』

 

モジモジして恥ずかしそうにしながらもなんとか自己紹介を行い、決めポーズを取るルビィ。

 

その映像を見た無爪とペガは心の中で一言。

 

((何これあざとい!!))

 

無論、良い意味でだが。

 

 

 

 

 

 

「Oh! プリティーボンバーハート!」

 

一方、生徒会室ではダイヤと鞠莉も動画を視聴しており、鞠莉はルビィの動画を見てプリティーと評する一方、ダイヤはワナワナと肩を震わせていた。

 

「プリティー? どこがですの・・・・・・!! こういうものは破廉恥と言うのですわ!!」

 

という訳で、千歌達はダイヤに呼び出されてお説教を受けることになり・・・・・・。

 

「なんで僕まで!?」

『止めなかったからじゃない?』

 

無論、無爪も一緒に。

 

「い、いやぁ~、あれはそういう衣装というか・・・・・・」

「キャラと言うか・・・・・・」

 

千歌と曜が怒るダイヤに対し、そう言い訳をし、梨子は「だから私は『良いの?』って言ったのに・・・・・・」と呆れた視線を送りながら千歌に呟く。

 

「そもそも! わたくしがルビィにスクールアイドル活動を許可したのは節度を持って自分の意思でやりたいと言ったからです!! こんな格好をして注目を浴びようなど・・・・・・!!」

「ごめんなさい・・・・・・! お姉ちゃん・・・・・・」

 

そこでルビィが前に出てダイヤに謝罪し、彼女から謝られ、少し黙り込むダイヤ。

 

「・・・・・・兎に角、キャラが立ってないとか個性がないと人気が出ないとか、そういう狙いでこんなことをするのは頂けませんわ!!」

「努力する方向性、間違えたな、千歌ねえ達・・・・・・」

「うっ、でも・・・・・・一応、順位は上がってるし・・・・・・」

 

曜の言うように、堕天使スタイルのおかげでAqoursの順位が急激に上がったのは事実。

 

しかし、ダイヤ曰く「そんなものは一時的なもの」らしく、彼女は自分の傍にあったノートパソコンを曜に渡してサイトを開かせる。

 

すると、そこには確かにダイヤの言う通り・・・・・・先ほどまで953位だったのが1526位にまで下がっていたのだった。

 

「あっ・・・・・・!」

「本気で目指すのならどうすれば良いか、もう1度考えることですね!」

「は、はい・・・・・・」

 

またその時の善子は、この中で誰よりも暗い表情を浮かべていたのだった。

 

 

 

 

 

「失敗したなぁー」

 

Aqoursと無爪のみんなは防波堤の上で座り、千歌は膝を抱えてしょんぼりした様子を見せていた。

 

「確かにダイヤさんの言う通りだね。 こんなことでμ'sになりたいなんて失礼だよね」

「千歌さんが悪い訳じゃないです!」

 

落ち込む千歌にルビィがそう声をかけると善子も「そうよ」と呟き、その言葉に全員の視線が善子に行く。

 

「いけなかったのは、堕天使・・・・・・」

「えっ?」

「やっぱり、高校生にもなって通じないよ・・・・・・!」

 

そう言葉を続ける善子に、千歌は「それは!!」となにか声をかけようとするが・・・・・・善子はそれを遮るように立ち上がり、両手を広げる。

 

「なんかスッキリしたぁ! 明日から今度こそ普通の高校生になれそう!!」

「じゃあ、スクールアイドルは!?」

 

ルビィの問いかけに対し、善子は腕を組んで少しだけ考え込む。

 

「うーん、やめとく。 なんか、迷惑かけそうだし」

 

そう言って善子は「じゃあ」とだけ別れの言葉を告げ、そのまま帰ろうとするのだが・・・・・・一度だけピタリと止まり、振り返る。

 

「少しの間だけど、堕天使に付き合ってくれてありがとうね? 楽しかったよ!」

 

善子はみんなに笑みを浮かべお礼を述べるのだが・・・・・・その顔はどこか悲しそうであり、みんなはそんな善子に何も言えず、ただただ彼女が帰るのを見送ることしかできないのだった。

 

「・・・・・・なんで堕天使だったんだろ?」

 

善子が帰った後、ふっとそこで梨子が気になったことを呟いた。

 

「マル、分かる気がします」

 

そこで幼稚園と一緒だったこともあってか、花丸が梨子の疑問に応えるように話だす。

 

「ずっと、普通だったんだと思います。 私達と同じで、あまり目立たなくて・・・・・・そういう時、思いませんか? これがホントの自分なのかなぁって? 元々は、天使みたいにキラキラしてて何かの弾みでこうなっちゃってるんじゃないかって」

「そっかぁ」

「確かにそういう気持ち、あった気がする」

「そういうことなら、善子ちゃんの気持ちも少し分かるかも・・・・・・」

 

ルビィや梨子、無爪は花丸の言葉に納得し、また黙り込んだままではあったが曜や千歌もみんなと同じような気持ちだった。

 

「幼稚園の頃の善子ちゃん、いつも言ってたんです」

 

それはずっと昔、花丸や善子が幼稚園児だった頃・・・・・・。

 

『私、本当は天使なの!! いつか背中に羽が生えて、天に帰るんだ!!』

 

善子は滑り台の上に乗って、右手の一差し指を天に向けそう言い放ち、滑り台の下では花丸が目を輝かせながらそんな善子の姿を『ず~ら~!!』と言いながら見つめていた。

 

「って・・・・・・」

「・・・・・・」

 

 

 

 

 

それから、千歌と無爪、ペガは今日はみんなと別れ、3人は何となく星雲荘に来ていた。

 

善子のことをどうすれば良いか、このまま黙って彼女が堕天使をやめるのを見過ごすか、それに自分達がどうすれば良いのか落ち着いて考える為に、3人は静かな場所で考えようと思ったのだ。

 

「ねえ、なっちゃん・・・・・・善子ちゃんのこと、どうすれば良いのかな・・・・・・」

「そんなの、僕にも分からないよ。 最後に決めるのは、善子ちゃん自身だもの・・・・・・」

 

無爪はそんな風に、千歌に言葉を返すのだが・・・・・・。

 

「でも、自分の好きなものを、ワザワザやめる必要ってあるのかな?」

「・・・・・・えっ?」

「見た感じ、善子ちゃんは堕天使のことが好きなんじゃないかな? それなのに、ワザワザやめる必要ってあるのかな・・・・・・」

 

無爪は善子を見ていて彼女は別に堕天使のことを嫌っている訳ではないのだから、無理にやめる必要があるのかと思い、疑問を口にし・・・・・・。

 

それに千歌はどう返せば良いか分からず、黙り込んだまま・・・・・・。

 

『無爪! 千歌! ペガ! テレビをつけて観てください!』

 

そんな時・・・・・・突然、レムが無爪達の名を呼び、彼女が星雲荘にあらかじめ設置されてあったテレビをつけるように言い、慌ててペガがテレビをつける。

 

「一体どうしたのレム?」

『無爪! これ・・・・・・!』

 

テレビの画面にはニュースで「噂のあの人を直撃」というコーナーが放送されており、その番組の女性キャスターはなんでもどんな傷でも治せるという少女について取材してきて紹介していたのだ。

 

『今日は今噂の『ヒーリング堕天使』について取材をしてきました。 なんと彼女は、ありとあらゆる傷を治すことができるそうなのです!』

「「『ヒーリング・・・・・・堕天使?』」」

 

そのニュースを観て無爪、千歌、ペガはなんだか最近物凄く聞いたようなワードが出てきて首を傾げ、次の瞬間、テレビの場面は代わり、その「ヒーリング堕天使」と思われる少女が映し出される。

 

「なんか・・・・・・見覚えのあるシニオンが頭にあるんだけど・・・・・・羽差してるし」

 

その少女はロングコートを着てサングラスとマスクを装着しているがどう見ても善子その人であり、「一体なにやってるんだ・・・・・・」と思わずにはいられない無爪達。

 

「あれ、でも善子ちゃん堕天使やめるって・・・・・・」

「数日前の映像なんじゃない?」

 

千歌は先ほど善子は堕天使をやめると言っていたのになぜまた堕天使を名乗っているのか疑問に思うが、それは無爪の言うように、これは数日前に撮影された映像なので特に矛盾はない。

 

『フフフ・・・・・・、今こそ見せてあげましょう! 我が堕天の力・・・・・・、堕天使ヨハネの力を!!』

 

そう言うと善子は自分のいる公園に来ていた怪我をしていた人々を1人ずつ、胸を光らせて右手をかざすとそこから光が溢れ出し、怪我人の傷を次々に治して行ったのだ。

 

「えっ!? アレって・・・・・・リトルスター!!?」

「でも、善子ちゃんそんな素振り全然・・・・・・!」

 

当然、それに無爪達は驚き、無爪は善子がリトルスターを発症しているにも関わらず、全然そんな素振りが無かったことを疑問に思う。

 

『能力を使いこなしてるって・・・・・・ことなのかな? 梨子ちゃんやルビィちゃんはいきなり能力が発現してる感じだったし・・・・・・、ダークロプスゼロの時の子供は自分の意思で能力を使ってたみたいだし・・・・・・』

「かもしれない。 でも、リトルスターを発症してるなら身体が熱くなる筈だけど・・・・・・」

「取りあえず善子ちゃん探してみよう! 善子ちゃんを狙って怪獣が現れるかも!!」

 

千歌の言う通り、善子がリトルスターを発症しているのだとすればこれまでの例からしてまた怪獣が現れ、リトルスターの保持者を狙うかもしれないと思い、3人は急いで善子を探しに行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃・・・・・・とある公園では・・・・・・。

 

そこでは不審者スタイルの善子がテレビに映っていた時と同様、スーツを着た男性の怪我をした腕を治しており、腕が治った男性は嬉しそうに「ありがとう!!」と頭を下げてお礼を述べ、財布を取り出してお金を支払おうとする。

 

「ちょ、ちょっと!! お金なんていらないわよ!!」

「えっ、でも・・・・・・腕の怪我を治して貰ったのにタダって訳には・・・・・・」

「い、良いから!! 私、元々お金が欲しくてこんなことやってた訳じゃないし!!」

 

善子はそう言って男性から代金を受け取るのを拒否し、今日はもう怪我を治して欲しい人もいないので彼女は逃げるようにしてその場から走り去る。

 

「それにしても、堕天使やめると言っても・・・・・・ヒーリング堕天使の方はどうしようかしらね。 調子に乗ってテレビの取材なんか受けなきゃ良かった・・・・・・」

 

人気のない場所まで行くよ善子は頭を抱えて「やってしまった」とテレビの取材に応じたことを後悔していると、胸ポケットにしまっていたモコが顔を除かせ、鳴き声をあげて来たのだ。

 

実は、人の傷を治すのは善子の能力ではない。

 

それはこのモコの能力であり、善子はモコの存在を秘密にしながらモコの力を借りて人々の傷を癒やしていたのだ。

 

「モコォ~?」

「モコ? どうしたの? お腹空いたの?」

 

善子は右左を見て、誰も人がいないのを確認すると彼女は傍にあった置物の後ろに隠れ、パンを取り出してそれをモコに差し出す。

 

「モコォ~!」

「んっ? お腹が空いてるんじゃないの?」

「モコ!」

 

そんな時のことである。

 

「すいません!!」

「ひゃあ!!?」

 

当然声をかけられ、善子は慌ててモコを隠す。

 

「あれ? あなた・・・・・・この前、家に来てた・・・・・・」

「あっ、あなた・・・・・・あの千歌って人の、お姉さん?」

 

善子に声をかけたのはペットキャリーを担いだ美渡であり、その後ろからひょいっとザルドが顔を出す。

 

「んっ? なんだお前等知り合いなの?」

「まぁ、妹の友達。 えーっと、善子ちゃんだっけ? 実はさ、私・・・・・・保健所の人で・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

その後、美渡とザルドはなんとかAIBに関することは伝えず、善子に納得して貰う形でモコを回収。

 

そのことを美渡とザルドがゼナに通信機で連絡を入れ、報告するのだが・・・・・・。

 

「えっ? 傷を癒やす力はない?」

『特殊な事例かもしれない。 兎に角地球に1体しかいない貴重な種だ。 速やかに本部へ届けろ』

 

モコ・・・・・・ルナー種には本来、傷を癒やす力は存在しない。

 

そのため、連絡を受けたゼナは「なにか特殊な個体なのでは」と考え、美渡とザルドに本部の帰還を促し、それに2人は「了解!」と返事をして本部へとモコを届けに行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃・・・・・・。

 

モコを美渡とザルドに連れられ、モコと離ればなれになってしょんぼりした様子で顔を俯かせて家に向かって歩く善子。

 

「はぁ・・・・・・。 堕天使も卒業して、モコもいなくなって・・・・・・これから寂しくなるな。 悪いようにはしないって言ってたから多分モコのことは任せて大丈夫なんだろうけど・・・・・・」

 

何より、あのザルドという人物のことは知らないが、美渡は自分によくしてくれり、気を使ってくれた千歌と無爪の姉なのだ。

 

ならば信じても問題はないだろうと善子は考えるが・・・・・・やはり寂しいものは寂しい。

 

その為、彼女は大きな溜息を吐きながら歩く。

 

そのせいで未だにサングラスとマスクは装着しているので不審者スタイルに磨きがかかってしまっており、周囲の人達がヒソヒソ話し始めているが善子は気付かない。

 

そんな時・・・・・・。

 

「あの! すいません!! 今噂になってるヒーリング堕天使の人ですよね!!?」

「はい・・・・・・?」

 

後ろから声をかけられ、善子は振り返るとそこには強面の顔面が・・・・・・。

 

そう、なにを隠そうそれは強面フェイスのレイジである。

 

「きゃあ!!? ヤクザ!!?」

 

レイジの顔を見て善子は驚きのあまり尻餅を突いて転んでしまう。

 

『お前はいい加減後ろから登場するのやめろよ』

「うぅ、今度からそうします・・・・・・。 ってそれよりも!! あ、あの!! 僕はヤクザじゃないですよ!! こんな顔で勘違いされやすいですけど!!」

 

レイジは尻餅をついた善子に手を差し伸べ、それに善子は「ここで差し伸べられた手を拒めば殺られる!!」と思い、彼女はすぐさまその手を掴み、レイジに引っ張られて立ち上がる。

 

「え、えっと・・・・・・す、すいません・・・・・・。 それで、私に何の用でしょうか・・・・・・?」

「あ、あの! どうか治して欲しいんです!! 僕の中の人!!」

「はっ? 中の人・・・・・・?」

 

善子はレイジの言っている意味が分からず、首を傾げる。

 

というか、傷を癒やす能力を持っていたモコは美渡とザルドに連れて行かれてしまった為、どっちにしても彼女にはもう誰かの傷を治すことはできない。

 

しかし、ここで断ってしまえば・・・・・・。

 

『あぁ!? テメェ、テレビでやってたのはインチキだったのかゴルァ!!?』

 

とレイジにキレられてしまうのではないだろうかと思い、善子はサングラスの中で目尻に涙を溜め、冷や汗を流しながらなんと言い訳すれば良いかを必死に考える。

 

(どうしようどうしよう!! なんて言って誤魔化そう・・・・・・!!)

 

そこに・・・・・・。

 

「いたー!! 善子ちゃん!!」

 

千歌と無爪が駆けつけて来たのだ。

 

「アレ? レイジさん?」

「無爪くん!! 千歌ちゃん!!」

 

そのまま千歌は善子、無爪はレイジの元に駆け寄り、無爪は先ほどチラッと聞こえたことをレイジに尋ねる。

 

「さっき中の人を治してって言ってたよね? もしかしてゼロのこと!? 怪我してるの!?」

 

するとレイジはメガネを外して人格をゼロと交代。

 

『バラすんじゃねえ! 色々あるんだ!! シーッ!』

 

ゼロはそう言って無爪に口止めし、無爪も戸惑いつつ「は、はい!」と頷く。

 

また千歌は善子の手を触れてみるとやはり善子からはリトルスター保持者特有の体温の熱さは感じず、今度は千歌は咄嗟に善子の胸部辺りをまさぐる。

 

無論、その時無爪は目を見開いて凝視していた。

 

「ひゃあ!!? ちょっ、なにすんのよ!?」

「あっ、ごめんね善子ちゃん!?」

 

咄嗟に手を引っ込めて頭を下げて謝る千歌。

 

「それより、善子ちゃんに聞きたいことがあるんだけど・・・・・・」

「・・・・・・えっ?」

 

頭を振って余計な考えを振り払い、無爪は善子に「あの胸の光はなに?」と人々の傷を癒やしていたあの光はなんなのかを尋ねる。

 

「えっ、な、なに・・・・・・? もしかしてあなた達もモコのこと探して・・・・・・」

「「「モコ?」」」

 

ついモコの名前を口走り、ハッとなって咄嗟に口を両手で塞ぐ善子。

 

「・・・・・・話してくれるかな? そのモコについて・・・・・・」

 

無爪はそのモコという存在について話してくれないかと善子に頼むが、善子はどうすべきかと悩み、顔をしかめる。

 

「お願い、善子ちゃん!」

 

千歌にも頼まれ、善子は渋々モコについて話し始めることに・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

数日前。

 

その日善子は沼津で買い物を終え、帰宅している時のことだった。

 

突然といった感じに急に天気が曇り始め、激しい雨が降り始めたのだ。

 

『もぉー!! なんでいっつもこんな目に~!!』

 

今日の天気予報は晴れだと言っていた為、傘も持たず善子は出かけてしまっていたので、当然ずぶ濡れになってしまい、さらにはその途中足を滑らせて転んでしまい、右膝を擦りむいてしまったのだ。

 

『うぅ、ツイてないわね・・・・・・ホント・・・・・・』

 

その為、彼女は帰る途中にある公園で擦りむいた傷を水で洗うために立ち寄ることにしたのだが・・・・・・。

 

『モコ!!』

『んっ?』

 

そこで善子はモコと出会ったのだ。

 

公園の屋根のある場所で雨宿りしているらしきモコの姿に善子は気づき、彼女は興味本位から恐る恐るモコに近づいてしゃがみ、彼女は首を傾げる。

 

『なに? この動物? 犬・・・・・・じゃないわよね?』

『モコォ~!』

 

するとモコが突然善子の左の方の膝の上に乗るとモコから眩い光が放たれ、善子の擦りむいて怪我をしていたた右膝があっという間に完治したのだ。

 

『えっ、嘘!? 傷が・・・・・・! あなたが治してくれたの・・・・・・?』

『モコ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

善子曰く、「そのお礼としてモコを内緒でウチで飼うことにした」とのことで彼女を話を聞き、無爪達は「そういうことか」と納得したのだった。

 

「でも、リトルスターがまさか動物にまで発生するなんて驚いた」

「えっと、それでその動物に治療させて金儲けを・・・・・・?」

「金儲けだなんて人聞き悪いわね!! 私は一切お金なんて受け取ってないわよ!! ただ、モコがそういう人達を助けたかったみたいだから、私はそれを手伝っただけよ!!」

 

レイジは人々の傷を治しているなんて凄い能力を持っているので、てっきりお金を貰っているものなのだと思ったのだが・・・・・・どうやら早とちりだったようだ。

 

「す、すいません・・・・・・」

「それで、そのモコはどうしたの?」

 

そのモコという動物が今、善子の元にはいないようなので彼女にどこへ行ったのか尋ねると彼女は美渡とその同僚っぽい人・・・・・・つまりザルドがモコを保護したということを話す。

 

「美渡ねえが? えっ? でも美渡ねぇって生命保険の人じゃ・・・・・・」

「取りあえず、美渡ねえを探そう! 早くしないと怪獣が現れちゃうかも!!」

 

兎に角、今はモコを保護しているという美渡とザルドを探しに向かおうとする千歌と無爪。

 

「えっ!? なに!? 怪獣!?」

 

千歌の言葉に善子は「怪獣ってどういうこと!?」と尋ねようとするのだが・・・・・・その時・・・・・・。

 

突如として地響きが鳴り、地中から襟巻きをした恐竜のような怪獣・・・・・・「エリ巻き恐竜 ジラース」が出現したのだ。

 

「グルアアアアアアアア!!!!!!!!」

「わああ!!? やっぱり出てきた!?」

「やっぱりあの怪獣もモコって動物を狙って・・・・・・」

 

善子は千歌や無爪の会話の内容を聞き、2人の話はよく分からなかったが・・・・・・。

 

兎に角善子はモコが怪獣に狙われてると聞いたらいても立ってもいられず、彼女は無意識の内に身体が動き・・・・・・モコの名を叫びながら全力で走り出したのだ。

 

「モコーーーーーーー!!!!」

「善子ちゃん!?」

「危ないよ!!」

 

無爪と千歌が呼び止めるが、善子の耳には全く入っていなかったのだった。

 

 

 

 

 

 

出現したジラースは真っ直ぐモコを保護しているザルドと美渡の方に向かって歩いて来ており、ザルドと美渡は「なんで追いかけてきてるんだー!!?」と叫びながら逃げ惑っていた。

 

「ちょっと!! アンタ巨大化してあいつと戦って来なさいよ!!」

「無理無理!! 俺巨大化できない個体だし!! 大体そんなことしたらAIBの存在がバレる可能性だってあるし!!」

 

その時、美渡は自分が抱きかかえていたペットキャリーの中が光り出し、美渡とザルドはそれに慌ててキャリーの中を覗き込む。

 

するとそこにはモコがリトルスターの輝きを放っており、それを見てザルドと美渡は「まさか・・・・・・」と同時に呟く。

 

「「リトルスター!!?」」

 

「グルアアアアア!!!!」

 

気付けば、ジラースは目の前にまで迫ってきており、それに驚いた美渡は驚いて転んでしまい、その拍子にキャリーを落としてしまう。

 

「きゃああ!?」

 

その衝撃でキャリーの扉が開き、モコはコロコロとどこかに転んで行ってしまうのだった。

 

「大丈夫か美渡!?」

「それよりもルナーが・・・・・・って怪獣が!!?」

 

ジラースは美渡達のすぐそこに立っており、後一歩踏み出せば自分達は踏み潰されてしまう・・・・・・。

 

そんな時・・・・・・。

 

「ジーッとしてても、ドーにもならねえ!!」

 

無爪はジードライザーを構え、腰のカプセルホルダーから「初代ウルトラマン」のカプセルを取り出し、スイッチを押して起動させるとそこからそのウルトラマンが出現。

 

「融合!!」

 

ウルトラマンのカプセルを装填ナックルに装填させた後、さらにそれとは別に「ウルトラマンベリアル」のカプセルを取り出し起動させると今度はそこからベリアルが出現。

 

「アイ、ゴー!!」

 

同じくベリアルのカプセルをナックルに装填し、ジードライザーで装填したカプセルをスキャンする。

 

「ヒア、ウィー、ゴー!!」

『フュージョンライズ!』

「決めるぜ、覚悟!!」

 

そしてジードライザーを掲げて胸の前でスイッチを押すとウルトラマンとベリアルの姿が重なり合い、無爪は2人のウルトラマンの力を合わせた「ウルトラマンジード プリミティブ」へと変身を完了させたのだ。

 

「はああ!! はぁ!! ジイィーーーード!!!!」

『ウルトラマン! ウルトラマンベリアル! ウルトラマンジード!! プリミティブ!!』

 

無爪は「ウルトラマンジード プリミティブ」に変身を完了させ、ジラースに向かってドロップキックを炸裂させる。

 

「グルアアア!!!?」

 

蹴り飛ばされたジラースは大きく美渡達から引き離され、ジードは大地に降り立つ。

 

「アレは・・・・・・」

「ジード・・・・・・すまん、助かった」

 

美渡はジードの登場に驚き、ザルドはジードに礼を言うとジードは頷き、立ち上がって来たジラースに向かって駈け出して行く。

 

『シュア!!』

 

ジードは先ず、勢いをつけて膝蹴りをジラースに叩き込み、ジラースが怯んだところにジードはさらに掴みかかるのだが・・・・・・ジラースは身体を大きく左右に揺らして振り払う。

 

「ガアアアアア!!!!」

 

振り払ったジードに向かってジラースは尻尾を振るって攻撃し、それをジードはしゃがみ込んで躱すが続けざまにで口から放つ熱線を放ってジードに直撃させ、吹き飛ばす。

 

『ウアアアア!!!!?』

 

吹き飛ばされ倒れ込んだジード。

 

ジラースはジードが倒れ込んだところを狙い、ジードに向かって突進。

 

『ぐっ! 燃やすぜ、勇気!!』

『ソリッドバーニング!!』

 

しかしジードは「ウルトラセブン」と「ウルトラマンレオ」の力を使う「ソリッドバーニング」へとチェンジすると両手でジラースの突進を受け止める。

 

そのままジードはジラースを押し返し、腕のブースターを使ったパンチをジラースの顔面に叩きこんで怯ませる。

 

『ハアア!!』

「グアアア!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方でモコはというと・・・・・・。

 

ジラースから逃げている途中、モコは勢い余って漁船の網に絡まってしまい、身動きが取れないでいたのだ。

 

「モコォ~」

「モコーーーーー!!!!」

 

そこへモコを探していた善子がモコを発見。

 

彼女は網に絡まっているモコを見るとすぐさまモコを助けようとモコに絡まった網を解こうとする。

 

さらにそこに少しばかり遅れて善子を追いかけていた千歌とレイジも合流。

 

「あ、危ないよ君!! 早く逃げないと・・・・・・」

「モコを置いて逃げられる訳ないでしょ!!? モコは、私が落ち込んだ時ずっと励ましてくれてた!! そんな優しい子を、放っておける訳がないじゃない!!」

「モコォ~」

 

レイジの言葉に善子は噛みつくようにそう言い返し、それを受けてか千歌も「そうだね」と頷き、一緒にモコに絡まった網を解こうとする。

 

『いざとなれば、俺も行く。 レイジも手伝って来い!』

「わ、分かりましたよ・・・・・・。 僕だって、これくらいの勇気!」

 

ゼロにもそう言われ、レイジはジラースの存在にビクビクしながらも千歌と善子を手伝い、3人でどうにかこうにかモコに絡まった網を解き始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃、互いに向き合ったジード ソリッドバーニングとジラースは同時に走り出し、2体同時にジャンプすると空中で僅かな時間だが凄まじい殴り合いを行い、最終的にジードがジラースを地面に叩き落とすことに成功。

 

「グアアアア!!!」

 

それでも膝を突きながらもジラースは熱線をジードに向けて発射。

 

それをジードは両腕を交差してなんとかジラースの熱線の直撃を耐えきり、真っ直ぐジラースに向かって駈け出す。

 

対してジラースはエネルギーをチャージし、先ほどよりも強力な熱線を発射・・・・・・ジードはもう1度両腕を交差し、直撃を耐えようとするのだが・・・・・・。

 

先ほどよりもより強力な威力である為、ジードは空中に投げ出されるように吹き飛ばされてしまうのだった。

 

『ウアアアア!!!!?』

 

しかし、ジードは空中に吹き飛ばされながらも「ウルトラマンオーブ エメリウムスラッガー」と「ウルトラマンベリアル」のカプセルを使い、「トライスラッガー」にチェンジし、空中で体勢を立て直す。

 

『トライスラッガー!』

『シェア!!』

 

ジードはそのままジラースに向かって急降下キックを繰り出し、蹴りを受け、怯むジラース。

 

その隙にジードは背後に回り込んでジラースの尻尾を掴み、ジャイアントスイングで投げ飛ばす。

 

『ハアアア、シュア!!』

「グアアアア!!!?」

『今だ!!』

 

そしてジードは今がチャンスだと思い、両腕をL字にして放つ「デススラッガーショット」を放とうとするのだが・・・・・・。

 

『待ってください無爪! その怪獣の後ろにガスタンクがあります。 今光線を撃てばタンクが爆発し、大きな被害が出ることが予想できます』

 

不意にレムからの通信が入り、それによって光線を放つのを中断するジード。

 

『くっ、投げ飛ばす場所ミスった・・・・・・!! どうにかしてあいつをガスタンクから遠ざけないと・・・・・・!』

 

しかし、ジラースをガスタンクから離れさせる方法を考えている間に立ち上がったジラースは熱線を放ってジードに直撃させ、ジードは地面に倒れてしまう。

 

『グアアアアア!!!!?』

 

その際、その衝撃で今まで耐えていたがバランスを崩した千歌と善子が倒れそうになり、それを慌ててレイジが咄嗟に両手で背中を支えるように受け止める。

 

「危ない!!」

「あっ、解けた!!」

 

だが、それと同時にモコに絡まっていた網が解けるのだが・・・・・・。

 

「グルル・・・・・・!!」

 

その光景を睨むようにジラースが見つめており、それに驚いた千歌と善子は「ひっ!?」と怯えた声を漏らす。

 

「モコォ~・・・・・・」

 

そんな2人の怯えた様子を見て、モコはジードに振り返ってジードを見つめる。

 

「モコォ~!! モコ~~~!!!!」

 

すると、モコは身体を輝かせ、その光はモコから分離し、光はジードのカラータイマーの中へ。

 

そしてジードの中の無爪はホルダーから新たなカプセル、「慈愛の勇者」と呼ばれる青き巨人、「ウルトラマンコスモス」が描かれたカプセルが起動する。

 

『コスモスカプセルの起動を確認しました。 ヒカリとのフュージョンライズが可能です』

『よし、分かった!! 融合!!』

 

レムの言葉に無爪が頷くと無爪はジードライザーを構え、最初に青い姿の光の国の科学者、「ウルトラマンヒカリ」のカプセルを起動させる。

 

『アイ、ゴー!!』

 

続いて無爪は先ほど手に入れたコスモスカプセルを起動させ、ナックルに装填。

 

そこからジードライザーで装填ナックルをスキャンし、トリガーを引いてライザーを掲げる。

 

『ヒア、ウィー、ゴー!!』

『フュージョンライズ!!』

『見せるぜ、衝撃!!』

 

そしてジードはトライスラッガーからウルトラマンヒカリ、ウルトラマンコスモスの力を融合させた青い姿、「ウルトラマンジード アクロスマッシャー」に姿を変える。

 

『はああああ、はぁ!! ジィィーーード!!!!』

『ウルトラマンヒカリ! ウルトラマンコスモス! ウルトラマンジード! アクロスマッシャー!!』

 

戦闘BGM「ウルトラマンジードアクロスマッシャー」

 

「青い、ジード・・・・・・?」

 

千歌が姿の変わったジードに向かってそう呟き、ジードはジラースをタンクから離れさせる為に両腕を回しながらエネルギーを貯め、左手を右腕の関節に乗せて十字を組み、大気を収束させた青い光輪状の波動光線「アトモスインパクト」を放つ。

 

『アトモス・・・・・・インパクト!!』

 

それを受けたジラースは空中に浮かび上がり、ガスタンクから遠ざけられ地上に落下して叩き落とされる。

 

『シェア!!』

 

それによってジードも大きくジャンプしてジラースの元まで行き、立ち上がったジラースは唸り声を上げながらジードに向かって突進。

 

『ハアア!!』

 

しかし、ジードはそれをひらりと躱し、後ろに回り込むと同時にジラースの首元に肘打ちを喰らわせる。

 

「グル!!? グルアアアアア!!!!」

 

一瞬、ジードの攻撃を受けてフラつくジラースだが、すぐさま振り返りざまに左手でジードに殴りかかって来るがジードはそれを両手で受け止め、そのままジラースの右腕を両腕で掴むとジラースの足に自分の足を引っかけ、足払いをして投げ飛ばす。

 

『シェア!!』

「ガアア!!?」

 

それによって地面を転がるジラースだが、転がりながらも熱線をジードに向かって吐き出し、攻撃を仕掛ける。

 

『スマッシュビームブレード!!』

 

それをジードは右手から光の剣を形成、「スマッシュビームブレード」を出現させ、熱線を縦一線に切り裂く。

 

『アレは・・・・・・ウルトラマンヒカリの技か!?』

 

またその戦いの様子を見ていたゼロも今度はジードがヒカリの力を使ったことに驚きの様子を見せていた。

 

『ハアア!!』

 

起き上がったジラースはさらに強力な熱線を放とうとエネルギーをチャージし始めるが・・・・・・。

 

『ハアア、スマッシュムーンヒーリング!!』

 

ジードは両手から興奮抑制効果のある光線「スマッシュムーンヒーリング」を放ち、それを受けたジラースはエネルギーチャージを中断。

 

ジラースは大人しくなり、ジードに向かって背を向けるとそのまま地面に潜り始め、やがて姿を消すのだった。

 

「怪獣を、大人しくさせた・・・・・・?」

 

その光景を見て千歌は小さくそう呟き・・・・・・。

 

『成程、コスモスの力か・・・・・・らしいな』

 

またレイジの中のゼロは感心したようにそう呟くとレイジは「こ、コスモスってなんですか?」と尋ねてくる。

 

『それは後で説明する』

 

 

 

 

 

 

 

 

それからジードの活躍もあり、善子もモコも怪我もなく、善子は手の平にモコを乗せてほっとした笑みを浮かべていた。

 

「モコォ~」

「もうこの子に、傷を癒やす力は無いんだね」

「これじゃ、ヒーリング堕天使も、無理・・・・・・かな?」

 

リトルスターをモコはジードに譲渡してしまった為、もうモコは傷を癒やす能力は使えない。

 

しかし、善子はそんなことなど気にした様子は無い。

 

「良いのよ、モコが無事なら」

「アレ? なっちゃんに千歌?」

 

すると丁度そこへモコを探していた美渡とザルドが現れたのだ。

 

「あっ、保健所の・・・・・・」

「んっ? 保健所? 美渡ねえがやってるのって保険のやつじゃ・・・・・・」

 

善子の言葉に疑問に感じた無爪はそのことについて美渡とザルドに尋ねるのだが、美渡は冷や汗流しながら必死に誤魔化すように「そ、そうよ!」と応える。

 

「だだだ、だから保険の仕事じゃない? ほら、両方にほほほ、『保険』ってあるしな?」

(ザルド、アンタキョドりすぎ!!)

「んっ? 保険のセールスってこんなことまでやるの?」

 

ザルドと美渡はどうやって誤魔化そうかと必死に悩むが・・・・・・どう考えても2人とも上手く応えられないので美渡は強引に自分達の仕事を全うすることにした。

 

「い、色々あるのよ保健所には! それよりも、その子!! ごめんね、これも仕事だから・・・・・・」

 

美渡は申し訳無さそうにしつつも善子からモコを自分の手に取り、それに善子は「あっ」と物凄く悲しげな顔を浮かべる。

 

「えっ、ちょっとそれは酷いんじゃない美渡ねえ!?」

「そうだよ!! 酷いよ美渡ねえ!!」

 

千歌と無爪にそう言われ、「うっ・・・・・・」と罪悪感に蝕まれる美渡。

 

「このままこの動物持って帰ったら、完全に俺達悪者になるぞ」

「で、でも・・・・・・」

「・・・・・・はぁ、仕方がない。 俺に1つだけ提案がある」

 

 

 

 

 

 

 

 

結果的に言えば、モコは善子が引き続き飼うことになった。

 

しかし、善子の住んでいるマンションはペット禁止で何時までも隠しておく訳にもいかないので浦の星で飼うことに。

 

勿論、鞠莉の許可も貰っており、またザルドが必死にゼナに対して頭を下げて頼んだこともあり、定期的にAIBの監視付きという条件で学校で飼うことになったのだった。

 

ただ色々と飼う為の道具なども必要になってくる為、準備ができるまではAIBが保護することに。

 

 

 

 

 

 

 

そして、その翌々日。

 

前々日は怪獣騒動もあり、昨日は昨日でモコの問題などでバタバタしていた為、彼女はAIBにモコを一時預かって貰っている間、自分の持っていた堕天使アイテムを処分するためにそれらをダンボール箱に入れており、一通り入れ終えると彼女は「これでよし」と言ってダンボールの箱を閉じる。

 

彼女はダンボールをいつでもゴミに出せるように玄関に一度置くと、何気なく外に出てみることに。

 

そんな時だった。

 

「堕天使ヨハネちゃん!!」

 

不意にそう呼ばれ、声のした方に顔を向けるとそこには千歌をはじめ、あの堕天使衣装を着ていたAqoursのメンバーがいたのだった。

 

「「「「「スクールアイドルに入りませんか!!!!」」」」」

 

5人は声を合わせて善子にそう言い放つ。

 

「・・・・・・はぁ?」

 

それに善子は何がなんだか分からず、首を傾げる。

 

「ううん、入ってください!! Aqoursに!! 堕天使ヨハネとして!!」

「・・・・・・なに言ってるの? この前話したでしょ?」

「良いんだよ!! 堕天使で!! 自分が好きならそれで!!」

 

千歌は力強く、真剣な眼差しで善子にそう訴えかけるのだが・・・・・・。

 

しかし、善子は小さく「ダメよ・・・・・・」と呟き、千歌達に背を向けて逃げ出したのだ。

 

「あ、待って!!」

「生徒会長にも怒られたでしょ!?」

「うん、それは私達が悪かったんだよ!! 善子ちゃんは良いんだよ!! そのまんまで!!」

 

千歌達は善子を追いかけながら、言葉を投げかけるのだが・・・・・・善子はなんとか一度建物の影に隠れて身を潜める。

 

「千歌ねえの言ってること、分からない?」

「おわぁ!? あなた・・・・・・無爪くん!?」

 

しかし、いつの間にか彼女の後ろに無爪が立っており、先ほど千歌達と一緒にいなかったが無爪もまた自分を捕まえようとしているのかと思い、逃げようとするが・・・・・・無爪はそんな善子に慌てて待ったをかけた。

 

「僕は捕まえるつもりはないよ。 それはきっと、千歌ねえ達がやるべきことだから」

「・・・・・・」

「僕さ、爆裂戦記 ドンシャインって特撮ヒーローが大好きなんだ!」

「・・・・・・なによ、突然」

 

いきなり無爪はドンシャインが好きだと言う話を善子にし始め、なんで今そんな話をしてるんだと怪訝な顔になるが、無爪は話を続ける。

 

「特撮ヒーローってさ、子供向けに一応は作られてる訳じゃない? それを高校生にもなってってたまにバカにされることがある。 幼稚だとかなんとかって・・・・・・腹立つし、悲しいよね、そういうのって。 高校生が観ても面白いのいっぱいあるのに。 よく知りもしないのにさ。 なんでそういうこと言えるかな」

「それがなに・・・・・・? 愚痴言いに来たの?」

「違う、そうじゃない。 僕が言いたいのはそれでも僕はドンシャインが好きであることをやめない。 だって本当に好きなんだから。 何かを『好き』だという気持ちに、嘘はつけないんだよ。 そして誰にもそれを否定する権利なんてないんだ。 僕が言いたかったのはそれだけ」

 

無爪は笑みを浮かべて「それじゃ、後は千歌ねえ達に任せようかな」とだけ言い残すと彼はその場を歩き去って行き、善子は「なんなのよ・・・・・・」と不満げな顔を見せるが・・・・・・。

 

そこへ無爪と入れ替わるように「見つけたぁー!!」という千歌の声が聞こえ、善子は慌ててまた逃げ出す。

 

「しつこーい!!」

「私ね、どうしてμ'sが伝説を作れたのか! どうしてスクールアイドルがそこまで繋がって来たのか、考えてみて分かったんだ!!」

 

やがて体力の限界が来たのか、善子の足は徐々に遅くなり、遂に立ち止まる。

 

「はぁ、はぁ・・・・・・。 ステージの上で自分の『好き』を迷わずに見せることなんだよ!!」

 

荒くなる息を整えつつ、千歌は必死に自分の考えを口にして善子に伝える。

 

「お客さんにどう思われるか、人気がどうとかじゃない! 自分が1番好きな姿を、輝いている姿を見せることなんだよ!! だから善子ちゃんは捨てきゃダメなんだよ!! 自分が堕天使を好きな限り!!」

『何かを『好き』だという気持ちに、嘘はつけないんだよ』

「・・・・・・っ」

 

千歌にそう言われ、善子は無爪に言われた言葉を思い出しつつ、彼女は戸惑いながらも千歌達の方へと振り返る。

 

「・・・・・・良いの? 変なこと言うわよ?」

「良いよ!」

 

善子の問いかけに、曜が応える。

 

「時々、儀式とか始めるかもよ?」

「それくらい、我慢するわ?」

 

善子の言葉に今度は梨子が応える。

 

「リトルデーモンになれって言うかも!」

「それは・・・・・・。 でも、ヤだったらヤだって言う!」

 

一瞬苦笑いする千歌だったが、すぐにそう言葉を返し、千歌は善子の元に踏み寄ると黒い羽を彼女に差し出す。

 

「っ・・・・・・!」

「だから・・・・・・!」

 

すると、善子はそっと千歌の手に触れ・・・・・・それは、「Aqoursに加入する」という善子の答えであり、千歌と善子は互いに笑みを浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

善子と別れ、きっと千歌が上手く彼女を勧誘することに成功しているだろうことを信じて無爪は自宅に帰っている途中・・・・・・彼はある男性とすれ違い、不意に立ち止まった。

 

その男性に見覚えがあったからだ。

 

「アレって・・・・・・あの! すいません!!」

 

無爪が呼び止めた人物・・・・・・それは荒井であり、無爪は荒井の元に歩み寄ると内ポケットからメモ帳を取り出す。

 

「いきなりすいません。 実は、友達があなたのファンなんです! サインして貰えないですか?」

 

尚、無爪の言う友達と言うのは花丸のことであり、彼女が荒井の書いている小説を愛読していることを少し前に知った為、無爪は荒井にサインを頼んだのだ。

 

そして無爪が荒井にそう頼むと彼は笑みを浮かべ、「良いですよ」と快くメモ帳にサインを書き上げ、それを無爪に渡す。

 

「ありがとうございます!」

 

無爪は頭を下げて荒井にお礼を言うと振り返ってそのまま歩き去って行き・・・・・・そんな彼の姿を荒井はニヤリとした笑みを浮かべて怪しく見つめた後、無爪とは反対の方向に歩いて行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

荒井は無爪と別れた後、人気のない物陰に隠れ、ライザーを取り出す。

 

「今のお前の力を試してやろう。 ウルトラマンジード・・・・・・! 少しは私も楽しまなければなぁ?」

 

荒井はそう呟くと2つのカプセルを起動させる。

 

「エレキング!」

 

1つは「宇宙怪獣 エレキング」のカプセルでそれを装填ナックルに装填。

 

「エースキラー!」

 

次に起動したのは「異次元超人 エースキラー」というロボット怪獣のカプセル。

 

それも起動し、ナックルにカプセルを装填。

 

そしてライザーでナックルをスキャンし、ライザーのトリガーを引く。

 

「これでエンドマークだ!!」

『フュージョンライズ!!』

 

すると荒井の姿が「ウルトラマンベリアル」の姿へと変わり、ベリアルの前にエレキングとエースキラーが現れ、2体は粒子のようになってベリアルの口の中へと吸い込まれるとエレキングとエースキラーが融合した「ベリアル融合獣 サンダーキラー」へと荒井は変身を完了させる。

 

『エレキング! エースキラー! ウルトラマンベリアル! サンダーキラー!』

「キイイイィィィ!!!!!」

 

街中にサンダーキラーが現れるとサンダーキラーはビルを腕を振るって破壊し、そのまま街を蹂躙する為に歩き出す。

 

「・・・・・・怪獣!」

 

怪獣の出現に気付いた無爪はすぐさま怪獣の元に向かって駈け出しながらジードライザーを取り出す。

 

「ジーッとしてても、ドーにもならねえ!!」

『ウルトラマンジード! プリミティブ!』

 

無爪は「ウルトラマンジード プリミティブ」に変身し、サンダーキラーの前に立ち塞がり、戦いを挑むのだった。

 

『行くぞ!!』

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