ラブライブ! ジードサンシャイン!!   作:ベンジャー

7 / 13
第7話 『守るべきもの』

突如として出現した「ベリアル融合獣 サンダーキラー」。

 

街で暴れるサンダーキラーを止める為、無爪は「ウルトラマンジード プリミティブ」に変身し、サンダーキラーに立ち向かう。

 

一方、星雲荘ではジードとサンダーキラーの戦いの様子をレムが球体型偵察機「ユートム」を使ってその様子を星雲荘のモニターに映しており、ペガや星雲荘にやってきていた千歌がその光景を見つめていた。

 

また、それと同時にレムの調べでこの辺りの住民の避難は完了しているとのことで近くにリトルスターの反応なども全くないとのことだった。

 

『じゃああの怪獣はリトルスターを狙って現れた訳じゃないってこと?』

『恐らくは』

「じゃあ、あの怪獣はなんの目的で・・・・・・」

 

ペガの問いかけにレムはそう応え、千歌はサンダーキラーがなんの目的で現れたのか首を傾げる。

 

またジードはサンダーキラーに向かって膝蹴りを繰り出し、それによってサンダーキラーが怯むとジードはサンダーキラーの顎を左手で掴みあげる。

 

「キイイイイイ!!!!」

 

しかし、サンダーキラーは電撃を纏わせた左腕の鉤爪でジードの身体を斬りつけ、引き離すと黒い三日月型のカッターを口から吐き出し、ジードに直撃させる。

 

『ウグアアア!!?』

 

サンダーキラーは続けざまに口からカッターを放つが、ジードはジャンプして飛び上がることで攻撃を回避し、サンダーキラーの頭に向かってチョップを叩きこむ。

 

しかし、サンダーキラーの頭部は非情に硬く、逆にチョップを繰り出したジードの腕にダメージがいってしまい、ジードは思わず飛び退いてしまう。

 

『ウグアア!!? いってぇ~!! 硬い奴が相手なら!!』

 

そう言うとジードのインナースペース内で無爪はジードライザーを構え、セブンカプセルを起動させる。

 

『融合!』

 

するとカプセルの中から赤い戦士の「ウルトラセブン」が出現する。

 

『アイ、ゴー!』

 

さらに無爪は赤き獅子の戦士「ウルトラマンレオ」のカプセルを起動させるとカプセルからレオが現れる。

 

『ヒア、ウィー、ゴー!!』

『フュージョンライズ!』

『燃やすぜ、勇気!!』

 

そしてジードライザーを掲げて胸の前でスイッチを押すとセブンとレオの姿が重なり合い、赤い鎧を纏ったような姿……「ウルトラマンジード ソリッドバーニング」へと変身を完了させる。

 

『はああ!! はぁ!! ジイィーーーード!!!!』

『ウルトラセブン! ウルトラマンレオ! ウルトラマンジード!! ソリッドバーニング!!』

 

ソリッドバーニングとなったジードはサンダーキラーに向かって跳び蹴りを放ち、サンダーキラーはそれを左腕を振るって受け流すが・・・・・・。

 

ジードは素早く頭部に装着された「ジードスラッガー」を右足に装着し、加速させた回し蹴りを放つ「ブーストスラッガーキック」をサンダーキラーの顔に向かって叩きこむ。

 

『ブーストスラッガーキック!!』

「キイイイイ!!!?」

 

ジードの攻撃を受けて後退するサンダーキラーだが、サンダーキラーはお返しとばかりにジードの頭を左手で鷲掴みにし、ジードに電撃を流し込む。

 

『ウアアア!!? こんの・・・・・・離せぇ!!』

 

だが、防御力の高いソリッドバーニングにはあまり電撃は効いておらず、ジードは即座に反撃しようとするのだがそれよりも早くサンダーキラーはジードの腹部を力強く蹴りつけて少しだけ自分から引き離すと素早く左腕の鉤爪でジードを斬りつける。

 

『ウアアア!!?』

 

攻撃を受けながらもジードはなんとかジードスラッガーを今度は右腕に装着し、装甲を展開した右手首の発射口にエネルギーを集中させ、炎をまとった爆熱光線を正拳突きの姿勢で放つ「ストライクブースト」をサンダーキラーに繰り出す。

 

『ストライクブーストォ!!!!』

 

しかし、サンダーキラーはジードの光線を吸収し、そのままジードのストライクブーストを跳ね返してしまったのだ。

 

『なっ!? うわああああああ!!!!?』

 

そのままジードは跳ね返ってきた光線の直撃を受けて吹き飛ばされ倒れ込んでしまう。

 

さらに、倒れ込んだジードに素早くサンダーキラーは接近すると、立ち上がろうとするジードを力強く踏みつけ、ジードが立ち上がるのを阻止する。

 

『ぐっ、この!!』

 

だが、パワーならこっちが上だとジードはサンダーキラーの足を掴んで無理矢理押し退かそうとするが、サンダーキラーは三日月型のカッターを口から吐き出し、ジードの顔面に何発も攻撃を浴びせる。

 

『グアアアアアア!!!!?』

 

幾ら防御力の高いソリッドバーニングでも、顔面に近距離攻撃を浴びせられてはノーダメージという訳にも行かず、ジードは苦痛の声をあげるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃、自分の暮らすアパートで学校に行く準備をしながらテレビのニュースでジードとサンダーキラーが戦う様子を観ていたレイジは・・・・・・。

 

「あっ、ジードが・・・・・・!!」

『レイジ!! ちょっと身体借りるぜ!』

「えっ、でも僕これから学校が・・・・・・」

 

ゼロはレイジに身体を貸すように頼むが、レイジ自身臆病な性格なこともあり、学校に行かないといけないことを理由に断ろうとするが、レイジは自分の意思とは関係なく、服の内ポケットから「ウルトラゼロアイNEO」を取り出してしまう。

 

「えっ、ちょっ、待ってくださいゼロさん!! ゼロさん? 聞いてますかゼロさん!!?」

『このままじゃジードがヤバイんだ! 腹をくくれレイジ!! お前ならできる!!』

 

そのままゼロに成されるがままレイジはウルトラゼロアイを目に装着し、スイッチを押すとレイジは「ウルトラマンゼロ」へと変身を完了させるのだった。

 

ちなみに、ベムストラやエレキングが出現した時もこんな感じでほぼ強制的にレイジはゼロに変身したとか・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてゼロはサンダーキラーを自身の操る頭部に装着された2本のブーメラン、「ゼロスラッガー」を投げてサンダーキラーを斬りつけてジードから引き離し、そのままゼロはゼロスラッガーを頭部に戻してサンダーキラーとジードの間に割って入るかのように現れ、ファイティングポーズを構えてサンダーキラーと戦おうとする。

 

『俺はゼロ、ウルトラマンゼロだ!!』

『・・・・・・ゼロ?』

 

しかし、サンダーキラーはゼロの姿を見ると突如としてその姿を消し去り、それにゼロは驚き、周囲を見渡すが・・・・・・やはりどこにもサンダーキラーの姿は見当たらなかった。

 

『っ!? 消えた・・・・・・?』

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

その後、変身を解除した無爪はサンダーキラーの攻撃によってボロボロになっており、同じく変身を解いたレイジと迎えに来た千歌に抱えられ、3人は星雲荘にやってきたのだった。

 

ただ、星雲荘に初めて来るレイジは「えっ、なにここ!?」と当然ながら驚きを隠せず、またレイジはペガの姿を見ると「宇宙人!!?」と驚きの声をあげていた。

 

「なっちゃん、大丈夫?」

『無爪! 救急箱用意してあるから傷の手当てを』

 

無爪はペガと千歌の2人によって椅子に座らされ、ペガは救急箱を持って来て無爪の傷の手当てを行うことに。

 

「っていうか千歌ちゃんもなんで・・・・・・一体どうなってるの!? もう訳が分からないよ!!」

『レイジは少し黙ってろ、ややこしいから』

 

何がなんだか分からず、騒ぎ立てるレイジを黙らす為にゼロはレイジと自分の人格を入れ替えてレイジがかけていたメガネを外す。

 

しかし、そうは言っても色々と聞きたいことだらけであり、再び人格がレイジに戻ると「えぇ、でも・・・・・・」と黙っていることはできないという風だった。

 

「それよりも!! レイジさんがウルトラマンゼロだったの!? 私、全然知らなかったよ! ビックリしちゃった~」

 

また以前ゼロから直接説明を受けていた無爪は兎も角、千歌はレイジがゼロであることをたった今初めて知った為、彼女もまた驚きを隠せず、ゼロも詳しい事情を説明する必要があると思い、またゼロが自分とレイジの人格を入れ替えて表に出て来る。

 

『俺がこの地球で暮らす為にはだな・・・・・・』

「いやちょっと待って!! なんかもう訳分かんないから!! レム、これなんとかならない!?」

 

さっきから人格入れ替えってばっかりで色々とややこしさを感じた千歌はレムにこの状況をどうにかできないかと尋ね、レムは「分かりました」と彼女の頼みを聞くとレムはある機械を用意する。

 

その機械をレイジの頭に取り付けると星雲荘の空中に映像が投影され、その映像の中にはゼロの姿が映る。

 

これによって映像に映るゼロとの会話が可能となり、ムが言うにはこの状態ならば人格を入れ替える必要は無くなるとのことだった。

 

『まぁ、そんな訳でしばらくこんな感じで行こうってことになったんだ。 つまりその、Win-Winの関係だな』

 

それからゼロは一通りの事情を千歌達に説明し、それによって千歌やペガは「なるほど~」と納得。

 

一方で傷の手当てをすませた無爪は休みがてらソファに寝転びながら星雲荘に設置されたテレビを見ており、先ほどの戦いがニュースとして取り上げられていた。

 

『苦戦するジードのピンチを救ったのは、もう1人のウルトラマンでした!』

 

またジードのピンチに駆けつけたゼロのこともニュースで取り上げられており、取材でゼロのことをどう思うかと町の住民達に聞いてみたところ、ある1人の女性は「単純にかっこよかったですね、やっぱり見た目大事ですよ」と言ったり、子供達は「かっこいいー!!」という純粋な意見を言ったりとジードに比べて好意的な意見が多かった。

 

『ジードってのは面構えが気に入らねえ。 あいつはベリアルにそっくり・・・・・・』

「っ・・・・・・」

 

さらにある老人がゼロに比べジードについてどう思うかという質問をしたところ、そんな意見があり、それを聞いた無爪はどこかショックを受けたかのような暗い表情を浮かべる。

 

そんな老人の言葉に、憤りを感じずにはいられずにいられなかった千歌はムスッとした表情を浮かべてテレビの電源を切る。

 

「なにあの言い方! 面構えが気に入らないって酷いよ!! 人を見た目で判断するなんて!!」

「千歌ねえ・・・・・・」

 

千歌が自分のことに怒ってくれたことに少し嬉しさを感じる無爪だったが、すぐにまたゼロばかりみんなが持ち上げていたことを思い出し、無爪はまた暗い表情を浮かべてしまう。

 

そんな無爪を励まそうとレイジは無爪の肩に手を置き、「気持ちは分かるよ」と励ましの言葉を送る。

 

「僕も、見た目はこんなんだから、外見のことで色んな人に怖がられちゃうし、通報も何度かされかけたから・・・・・・」

 

レイジはそう言って「あはははは!!」と笑い飛ばすが、ゼロも無爪も千歌もペガも「笑えないよ・・・・・・」とツッコまずにはいられなかった。

 

「でも、やっぱり・・・・・・なんかズルいよ、ゼロは。 最後の方に出てきてほぼ立ってただけなのに・・・・・・」

『あっ? いや、それはお前がやられてたから助けに・・・・・・』

 

そう言うゼロの言葉を遮り、「やられてない!!」と反論する無爪。

 

「ちょっと休んでただけだし、あんな怪獣僕1人でも・・・・・・!!」

『いや、お前はあの時防戦一方だったじゃねえか』

「っ・・・・・・!!」

 

無爪はゼロの言葉に上手く反論することができず、言葉を詰まらせて悔しそうに拳を握りしめ、千歌はそんな無爪を心配そうに見つめるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、浦の星学院では強張った表情のダイヤが突然理事長室に押しかけるかのように現れて椅子に座る鞠莉の元まで行くとダイヤは力強く机を叩き、学校に送られて来た「あるメール」の件について彼女は鞠莉に問いただす。

 

「鞠莉さん!! あのメールはなんですの!?」

「なにって、書いてある通りデース・・・・・・」

「そんな・・・・・・」

 

鞠莉からの返事を聞いて、今よりもさらに驚愕しかのような表情を浮かべ、拳を力強く握りしめるダイヤ。

 

「嘘でしょ・・・・・・?」

「沼津の高校と統合して浦の星学院は廃校になる。 分かっていたことでしょ?」

 

何時も通りおちゃらけた雰囲気を最初こそ出していた鞠莉だったが、徐々に彼女は真剣な口調で沼津の高校と統合するに当たってこの浦の星学院が廃校になることを告げ、そのことを告げられたダイヤもその可能性については前々から気付いてはいたことなのだが・・・・・・。

 

「それは、そうですけど・・・・・・」

 

だが、できることならばそうならないことをダイヤは願っていた。

 

ただし、鞠莉曰くまだ確定した訳ではないらしく、まだ待って欲しいと彼女自身が強く頼んだことで今はまだ猶予を貰っている状態だとのことで少なくともすぐに統廃合ということは無いらしい

 

「鞠莉さんが?」

「なんの為に私が戻って来たと思っているの? この学校を無くさない、私にとって・・・・・・どこよりも、大事な場所なの・・・・・・」

 

そう語る鞠莉はどこか儚げな様子で、静かだが確かな強い意志を持ってダイヤにそう言い放つ鞠莉。

 

「・・・・・・方法はあるんですの? 入学者はこの2年、どんどん減っているんですよ?」

「だからスクールアイドルが必要なの。 あの時も言ったでしょ? 私は諦めないと。 今でも決して終わったとは思っていない。 ジーッとしてても、ドーにもならないってね?」

 

鞠莉は無爪の口癖を借りながらダイヤに握手を求めるかのように手を差し出し、ダイヤは「なんですのそれ?」と怪訝な表情を浮かべながら先ほどの言葉のことを尋ねる。

 

「無爪くんの口癖らしいわ。 まさに今の状況のピッタリの言葉でしょ? ねっ? ダイヤ?」

「・・・・・・わたくしは、わたくしのやり方で廃校を阻止しますわ」

 

しかしダイヤはそう言い残して鞠莉の差し出された手を取らずに理事長室を後にし、鞠莉はそんな去って行くダイヤの後ろ姿を見て寂しそうな表情を浮かべるのだった。

 

「ホント、ダイヤは大好きなのね。 果南が・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その翌日、モコは無事に学校で飼うこととなり、堕天使キャラも続けることを決めた善子は今日はしっかりと学校に来ていたのだが・・・・・・。

 

やはりまだ表立って堕天使キャラを披露するには抵抗があるらしく、彼女はなるべく可能な限り堕天使を抑えつつ、クラスメイトの女子達と談笑していた。

 

「そ、そうだよねー。 マジムカつくよね~? よねー・・・・・・」

「だよねー」

 

そのまま会話を終えると、クラスメイトの女子達は「じゃーねー」と善子と別れの挨拶をし、善子の方も苦笑しつつも「またねー」と手を振りながら別れの挨拶を返す。

 

その際、クラスメイトの1人が「善子ちゃんって面白いよね~」と好意的に言っていたので、特に以前の占いの時のような失敗は犯していないようだった。

 

「はぁ、疲れた~」

 

クラスメイトと話し終えた善子は机に突っ伏してしまう。

 

「普通って難しい・・・・・・」

「無理に普通にならなくても良いと思うずら~よっ!」

 

そう言いながら花丸はどこからか黒い羽根を取り出し、それを善子のシニヨンに突き刺すと彼女は「ギラリン!」と目を光らせて勢いよく立ち上がる。

 

「深淵の深き闇からヨハネ堕天!!」

 

善子はついつい決めポーズを決めながら堕天使キャラになってしまい、そのことに「はっ!?」となり、「またやってしまった」とでも言いたげな彼女。

 

「そのシニヨンと羽根何かのスイッチなの? でも、そうだよね、花丸ちゃんの言うように無理することないと思うよ。 堕天使やってもここのクラスのみんななら受け入れてくれそうだし・・・・・・」

 

さらに花丸に同意するように、無爪も善子は堕天使やってもきっと問題は無いだろうと主張。

 

しかし、善子はスクールアイドルの活動でなら「アイドルだからそういうキャラ」と説明できるし、事情を知っている千歌達の前なら遠慮はいらないが、それ以外のことを善子はそう簡単には割り切れないようだった。

 

「絶対大丈夫だよ。 面構えが気に入らないってだけで嫌われるジードに比べれば、善子ちゃんのキャラみんなから好かれそうだし」

 

そんな風にジードに比べれば好意的に受け止めてくれる人は多いと思うと自虐的に言う無爪に善子と花丸は首を傾げ、無爪はなんだか元気がないようでそんな彼を心配した善子は「具合でも悪いの?」と尋ねる。

 

「それと善子じゃなくてヨハネ!」

 

ちゃんと自分の呼び方を訂正するように言うのも善子は忘れずに。

 

「あっ、いや・・・・・・具合が悪いとかじゃないんだ。 心配かけてごめん」

「別になんともないのなら良いんだけど・・・・・・」

「無理はダメずらよ、無爪くん?」

 

善子と花丸は無爪にそう言い、そんな彼女等の気遣いに無爪は「ありがとう」と笑みを浮かべてお礼を言い、そこでふっと善子は先ほど無爪が言っていた言葉を思い出し、「えっ、ってか普通にかっこよくない?」と彼女は無爪にそう言って声をかけた。

 

「えっ?」

「いや、面構えが気に入らないって昨日ニュースに出てたお爺さんのやつでしょ? 私的には、むしろカッコいいと思うんだけど・・・・・・あの悪そうな目つきとか特に!! ダークヒーローみたいでカッコイイじゃない!! モコのことも助けて貰ったしね」

 

まさかの善子からの意外な言葉・・・・・・。

 

彼女曰く、むしろジードはあの悪そうな面構えが逆にカッコイイと思っているらしく、善子は特にアクロスマッシャーのジードが気に入っているらしく、「青い悪魔みたいで好き」とのこと。

 

「青い悪魔ってアボラスかよ・・・・・・。 アボラスってなんだっけ?」

「知らないわよ」

 

正直、最後の評価は微妙な気がするが、それでも1人でもこんな風に好意的なことを言ってくれるのは無爪は素直に嬉しく、少しだけ感性ズレているような気がしないでもないが、それでも無爪はそんな善子に対し笑みを浮かべ、「ありがとう」とお礼を述べるのだった。

 

「なんで無爪くんがお礼を言うのよ」

「いや、なんとなくだよ」

「・・・・・・あれ? この作品のヒロインって善子ちゃんだったっけ?」

 

花丸がそんな風にメタいことを言っていると、突然教室の扉が勢いよく開き、そこから息を切らし、慌てた様子のルビィがやってきたのだ。

 

そんな彼女の頭の上には無事に学校で飼うことになったモコが乗っかっており、どうやら善子のことを迎えに来たようだった。

 

尚、学校で飼っていると言っても誰かと一緒という条件ではあるものの基本的にモコは自由に学校内を移動することが可能となっており、夜などは学校の用務員などが餌などを与えて世話をしてくれているそうだ。

 

「モコォ~!」

 

モコは善子の姿を確認するとモコはぴょんっと跳ねるように善子の方へと飛び、善子はそれを見事に両手でキャッチする。

 

「モコ! 迎えに来てくれたの?」

「モコ!!」

 

善子はモコを優しく抱きかかえ、それにモコは嬉しそうに尻尾を振る。

 

「ってルビィちゃんは一体どうしたずら?」

 

そこで花丸が息の上がっているルビィに一体どうしたのだと尋ね、ルビィは少しだけ息を整えた後、無爪達に大事なことを伝える。

 

「はぁ、はぁ・・・・・・大変!! 大変だよ!! はぁ、はぁ、大変!! 学校が!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『統廃合!!?』

 

部室にて、そこに集まったAqours6人+無爪はルビィによってこのままでは学校が統廃合になってしまうという話を聞かされ、なんでもルビィが言うには沼津の学校と合併して浦の星学院は無くなってしまうかもしれないのだという。

 

「そんなぁ!!」

「いつ!?」

 

曜はそれは一体いつ統廃合になってしまうのかとルビィに尋ねるのだが、ルビィもまだそこまでは分かっておらず、どうやら今はまだ可能性が高いというだけの話のようだ。

 

「一応、来年の入学希望者の数を見てどうするか決めるらしいんですけど・・・・・・」

 

だが、このまま何もしないのならば統廃合になるのはほぼ間違いないようで、ルビィの話を聞いてショックを受けたのか、千歌は先ほどからずっと顔を俯かせたままだった。

 

「千歌ねえ?」

 

そんな千歌の様子のおかしさに真っ先に無爪が気付き、もしかして学校が統廃合になってしまうことが余程ショックなのだろうかと心配になり、無爪は彼女に声をかけるのだが・・・・・・。

 

その瞬間、千歌はバッと勢いよく顔をあげ、その表情は落ち込んでいるどころかむしろ「統廃合? 来た!!」とまるで嬉しそうにしており、それに目をまん丸とする無爪。

 

「はっ?」

「遂に来た!! 統廃合ってことはつまり廃校ってことだよね!? 学校のピンチってことだよね!?」

 

なぜかはしゃぎ出す千歌に「こいつ何言ってんだ」とでも言いたげな視線を無爪は送るのだが、千歌はそれに気付かず、そんな千歌に対して梨子や曜も動揺する。

 

「まぁ、そうだけど・・・・・・」

「千歌ちゃん? なんだか、心なしか嬉しそうに見えるけど?」

 

曜はなんでそんな嬉しそうにしているのか、千歌に尋ねると彼女は勢いよく部室の扉を開いて外に出て部室の周りを突然駆け出す。

 

「だって、廃校だよ~! 音ノ木坂と、一緒だよぉ~!!!」

 

部室の周りを一周すると、出て行った方向とは反対側の部室の扉を開いて再び部室に入り、「これで舞台が整ったよ!!」と言いながら善子の両手を握り、それに善子は驚いて目を見開く。

 

「私達が学校を救うんだよ!! そして輝くの!! あの、μ'sのように!!」

「そんな簡単にできると思ってるの?」

 

千歌は左腕で善子を抱きかかえるようにして右手の一差し指を天に向け、そう高らかに宣言するのだが・・・・・・。

 

梨子はそんな彼女に呆れ顔を見せ、無爪にはなんのことを言っているのか分からず、こっそりとペガに彼女がなんのことを言っているのかを問いかける。

 

『あのね、そもそもμ'sが生まれた切っ掛けは学校が廃校になるかもしれないってなったからなんだ。 それで、μ'sは見事に人気が出て、学校を救うことに成功したんだよ』

「あぁ、成程。 つまり、好きなものと同じシチュエーションが来て喜んでいると・・・・・・」

 

ペガからの説明を受けて、無爪はなんとなくではあるが、千歌の気持ちが分かった。

 

自分が初めてウルトラマンジードになった時、レムから自分には怪獣と戦う力があると聞いて「ドンシャインのようなヒーローになれるかもしれない」と、少なからず喜ぶ自分がいた。

 

勿論、それ以上にそれはみんなを守りたいという強い想いがあったからだが。

 

なので「好きなものと同じ状況」になるという気持ち自体はなんとなく共感することはできる。

 

その為、何時もなら何かしらのツッコミを入れるところだが、彼女の気持ちは少なからず分かるので敢えて黙っていることにする無爪。

 

だが、それと同時に無爪は蓋を開けてみれば別に悪いことしてないのにベリアルに酷似した見た目のせいでみんなからは賛否両論の嵐が未だに巻き起こっていることを思い出し・・・・・・。

 

そんなことまで思い出してしまった無爪はどんどん表情が暗くなっていき、それに気付いた千歌は「どうしたの?」と意気消沈していく無爪に心配そうに声をかける。

 

「えっ!? あ、いや、なんでもないから・・・・・・」

 

無爪は無理に笑みを作って誤魔化すが、千歌はなんとなく、無爪がそんな顔をすることに思い当たる節があるため、もしかして昨日のニュースの件で落ち込んでいるのだろうかと首を傾げる。

 

「私は信じるよ、なっちゃんのこと」

 

千歌の小さな呟きに、「えっ?」と首を傾げる無爪。

 

「花丸ちゃんはどう思う?」

 

無爪は千歌に先ほどなんと自分に言ったのか聞こうとしたが、それよりも前にルビィが喋ったことで遮られ、彼女は統廃合について花丸はどう思うかと問いかけたのだ。

 

「統廃合・・・・・・!?」

「こっちも!?」

 

尚、花丸の方もなぜか統廃合について嬉しそうにしていた。

 

「合併ということは沼津の高校になるずらね!? あの街に通えるずらよね!?」

「ま、まぁ・・・・・・」

「うわぁ~♪」

 

そんな花丸の様子を見て、善子は「相変わらずね、ずら丸」と呟き、彼女が言うには昔から花丸はあんな感じなのだそうだ。

 

「そうなの?」

「そうよ、幼稚園の頃なんて・・・・・・」

 

幼稚園児の頃、花丸が自動点灯するライトの下に、足をゆっくり滑り込ませ、範囲に入ると、ライトが点灯。

 

それを受けて彼女は両手を挙げて「未来ずら~!!」と言いながら興奮していたらしい。

 

「そうだったんだ」

「善子ちゃんはどう思う?」

 

するとルビィは今度は善子に統廃合についてどう思うかを尋ね、それに対して善子も統廃合には賛成派だった。

 

「そりゃ統合した方が良いに決まってるわ! 私みたいな、流行に敏感な生徒が集まってるだろうし!!」

「良かったずらね~、中学の頃の友達に会えるずら!」

 

しかし花丸のその指摘を受けて、善子は「うっ」と苦い顔を浮かべる。

 

「あぁ、そう言えば善子ちゃん中学時代に・・・・・・」

「わー!! 統廃合絶対反対ーーーーー!!!!」

「モコ!」

 

中学の時、堕天使キャラのせいで色々とやらかしてしまった為、善子は中学の同級生に会いたくないということで即座に手の平を返して統廃合反対を主張し、彼女の頭の上に乗っているモコも同意するように鳴く。

 

「ってかこの子が噂のモコちゃん? 可愛い~!」

 

そこで曜がモコの存在に触れ、善子の頭の上に乗っているモコの頭を撫でると、モコは「モコォ~」と鳴きながら嬉しそうに尻尾を振り、梨子もなんだか触りたそうにしている。

 

「あれ? 梨子さん犬苦手なんじゃ・・・・・・」

「この子犬なの? いや、でも・・・・・・なんかこの子は凄く、見てると触りたくなる衝動が・・・・・・モフモフが・・・・・・」

 

無爪はてっきり、犬が苦手な梨子のことなのでモコのことも苦手がると思ったのだが、どうやらモコのモフモフはそれほどまでの魔力を持っているらしい。

 

「何事も例外ってあるものよ」

「際ですか・・・・・・」

 

なんにせよ、これを切っ掛けに犬が苦手なのも治ってくれるかもしれないと無爪は思い、梨子は恐る恐る善子の頭の上に乗っているモコの頭を撫でるとそのモフモフっぷりに梨子の顔はとろけそうになってしまう。

 

「っていうか!! 今はモコちゃんじゃなくて!!」

 

するとそこで千歌が部室の机を「バン!!」と叩き、みんなが自分に注目するようにする。

 

「兎に角、廃校の危機が学校に迫っていると分かった以上、Aqoursは学校を救う為・・・・・・行動します!!」

 

千歌はそう言い放ってこれからのAqoursの活動方針について高らかに笑顔で宣言し、それに曜や梨子も同意するかのように笑みを浮かべ、曜は「ヨーソロー!!」と言いながら敬礼する。

 

「スクールアイドルだもんね!!」

「でも、行動って何するつもり?」

 

そこで梨子が千歌に行動するにしても何をするつもりかを尋ねるのだが・・・・・・。

 

「・・・・・・へっ?」

『えっ?』

 

どうやら何も考えていなかたっらしい。

 

「そんなこったろうと思ったよ、バカ千歌ねえ・・・・・・」

 

無爪は頭を抱えてそんな千歌の無計画さに呆れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、千歌達は屋上に行って準備体操をしながら今後のことを話し合うことになり・・・・・・。

 

ちなみに無爪は千歌と曜によって強制連行され、ほぼ強引に話し合いに参加させられたりしていた。

 

「結局μ'sがやったのはスクールアイドルとしてランキングに登録して・・・・・・」

 

尚、モコも善子の傍にいたいようだったのでモコもついてきている。

 

次に、千歌達は体力作りの為のランニングとして淡島神社に行き・・・・・・。

 

「ラブライブに出て有名になって・・・・・・」

 

ランニングを終えた一同は最後に砂浜に行ってみんなで寝そべりながら廃校阻止の為、スクールアイドル活動をどう生かすかの話をすることになるのだった。

 

「生徒を集める・・・・・・」

「それだけなの!?」

「みたい・・・・・・」

 

つまり、今まで千歌が言ったことを一言で纏めるとμ'sがやったのはスクールアイドルとしてランキングに登録し、ラブライブに出場して有名になったということだった。

 

正確に言えば廃校阻止自体はラブライブに出場する前に達成しており、μ'sがラブライブに出場したのは第2回の方である。

 

第1回ラブライブの時もμ'sは大会に出場することを目指していたが、文化祭の時にちょっとしたトラブルが発生したことでランキングを除外することとなり、彼女達は大会を辞退した為、それが理由でμ'sは第1回ラブライブには出場していないのだ。

 

「それだけって言うけどさ、多分そんな簡単なことじゃないと思うよ。 スクールアイドルのことをよく知らない僕でもそれだけは分かる」

 

無爪に指摘され、「それだけなの?」と言った本人である曜は苦い顔を浮かべ、無爪の言葉に千歌達も「確かに言うだけなら簡単だよね」と納得するのだった。

 

『あっ、そうだ』

 

すると影の中からみんなにバレないようにこっそりと何かを思いついたかのような様子のペガが千歌の耳元にこっそりと耳打ち。

 

『取りあえず、μ'sの活動記録を参考にしてみたら? ほら、μ'sって確かPVとか作ってたでしょ?』

 

ペガからの意見を聞いて、ハッと目を見開く千歌。

 

それを受けて勢いよく起き上がった千歌は「成程!」と納得し、みんなの方へと顔を向ける。

 

「そうだよ、PVを先ずは作ってみよう!!」

「「PV?」」

 

千歌のその発言に、不思議そうに梨子と無爪は首を傾げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、生徒会室では・・・・・・。

 

ダイヤがノートパソコンを開き、なぜ浦の星が廃校になりかけているのかを調べており、その1つとして分かったことはそもそも浦の星を受ける受験生が減っているというものがあった。

 

「そもそも受験生が減っているんですのね」

 

それに何か打つ手はないかと考えるダイヤだったが、その時、生徒会室の扉から誰かがノックする音が聞こえ、パソコンを閉じて「はい」と応えると、扉を開けて妹のルビィがオドオドとした様子で入って来たのだ。

 

「お姉ちゃん?」

「どうしたんですの?」

「実は、今日もちょっと遅くなるかもって・・・・・・」

 

ルビィはこれからみんなでPVの撮影を行う為、それのせいで帰るのが遅くなるかもしれないというのをダイヤに伝えに来たのだ。

 

「今日も?」

「うん、千歌ちゃんが入学希望者を増やす為にPV作るんだって言ってて」

「・・・・・・」

 

少しの間だけ沈黙が続くが、ダイヤは「分かりましたわ」と頷き、それに嬉しそうな顔を浮かべるルビィ。

 

「お父様とお母様には私から言っておきますわ」

「良いの? ホントに!?」

「ただし、日が暮れる前には戻って来なさい」

 

ダイヤは優しい口調でそう言うとルビィは「うん!! じゃあ行ってくる!!」と頷き、千歌達の元へと戻ろうとするのだが・・・・・・。

 

その時、不意にダイヤから呼び止められる。

 

「どう? スクールアイドルは?」

 

それにルビィは慌てて立ち止まり、ダイヤの問いかけに少し驚いた様子を見せつつも、彼女は応える。

 

「大変だけど、楽しいよ」

「・・・・・・そう」

「他の生徒会の人は?」

 

今度はルビィがダイヤに今、ここにはダイヤしかいないのかと尋ねると、彼女曰く、他のメンバーは他の部と兼部で忙しいからいないというのだ。

 

「そう・・・・・・」

 

ルビィは何か言いたそうにその場に佇んでおり、彼女は何か意を決したようにダイヤに何かを言おうとするのだが・・・・・・それは先に出たダイヤの言葉に遮られてしまう。

 

「おねえ・・・・・・!」

「早く行きなさい!!」

「っ・・・・・・」

「遅くなりますわよ?」

 

ダイヤに力強くそう言われ、ルビィは口を閉じて黙ったままその場を去って行き、彼女は千歌達の元へと戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

それから、ルビィは千歌達と合流し、仕事を一通り終わらせ、手伝いたいと言うレイジと一緒に彼女達は今、PVの撮影をする為に外に出ていた。

 

ちなみにレイジと初対面の花丸や・・・・・・特にルビィは彼の強面顔にビビって尻餅をついていたりした。

 

まぁ、最も、そこはすかさず曜がレイジが見た目に反して気弱な先生であると2人に教えてフォローしてくれたりしたが。

 

「それでPVってどんなことするの?」

「千歌ねえ曰く、内浦の良いところを撮影したい・・・・・・だそうです」

 

一応、PV撮影をするということ自体は曜から聞いてはいたのだが、具体的になにをするかまでは聞いていなかった為、それに無爪は応える形で教え、レイジは「成程」と納得する。

 

「内浦の良いところを動画にして色んな人に知って貰って、それで生徒を集めようって言う感じ?」

「その通りだよ、レイジさん!!」

 

レイジの言葉に千歌がビシッと一差し指を彼に指しながら、言い放ち、彼女は両腕を広げてさらに詳しくPVの説明を行う。

 

「東京と違って外の人はこの街のこと知らないでしょ? だから先ずこの町の良いところを伝えなきゃって!」

「それでPVを?」

「うん、μ'sもやってたみたいだし、これをネットで公開してみんなに知って貰う!」

 

先人達のことを参考にし、浦の星の受験生を増やす為に町の良いところを紹介するというのは確かに理に叶っているとレイジや彼と同化しているゼロも感心し、さらにゼロに関しては「これが本格的に動き出したスクールアイドルの活動か」なんて興味深そうに呟いていたりもした。

 

「ゼロさんはスクールアイドルのこと知ってるんですか?」

 

以前にレイジが千歌達と一緒にチラシ配りを手伝ったことやファーストライブを観に行ったりはしていた為、彼と一体化しているゼロも少なからずスクールアイドルのことについて多少なり知る機会はあっただろうとは思うものの・・・・・・。

 

だが、それだけであんな言葉が出て来ることにレイジはなんとなく違和感を感じ、もしかしてゼロは以前からスクールアイドルのことを知っていたのだろうかと気になってレイジはゼロに尋ねる。

 

『ある程度はな。 μ'sのことも。 とある俺の後輩のウルトラマンがその辺詳しくてな。 光の国に訪れた際に、アイツちょっと広めて行ったんだよ。 おかげでちょっとプチ流行したぞ』

「へぇー、ウルトラマンの中にもスクールアイドルが好きな人いるんですねぇ」

「レイジお兄ちゃん、さっきから何ブツブツ言ってんの?」

 

ゼロの声は基本レイジ以外には聞こえない為、先ほどから1人で何かブツブツ言っているレイジに背後から怪訝そうな顔を浮かべた曜が現れ、それにレイジは「ぴゃっ!?」と驚いて思わず飛び退いてしまう。

 

「そんなに驚かなくても・・・・・・」

「あっ、ご、ごめんね曜ちゃん? なんでもないから、なんでも・・・・・・」

「なら良いんだけど・・・・・・」

 

レイジは両手をぶんぶん振って慌ててゼロと会話していたことを誤魔化す。

 

そこでそれよりもと千歌は早速曜にカメラを持たせて内浦の良いところを伝えようと高らかに宣言し、PV制作について「知識の海ずら~」と感心していた花丸に「1つよろしく!」と千歌が言うと、曜はカメラを花丸に近づけ、それに花丸はビクッと肩を震わせる。

 

「あっ、いや、ま、マルには無理ず・・・・・・! いや、無理・・・・・・!」

 

次に曜はルビィにカメラを向けるのだが、それにルビィも花丸同様にビクッと肩を震わせ、彼女は恥ずかしがってどこかに行ってしまい、姿を見失ってしまう。

 

「んっ? あれ?」

 

曜が首を傾げながら辺りを見回しても、ルビィの姿は発見できず・・・・・・。

 

「見える!! あそこ~っよ!!」

 

そこで善子はルビィがいそうということで大きな木の上を指差すのだが、全然別のところから「違います~!!」と言いながらルビィが出て来る。

 

しかし、どちらにせよそれでルビィの姿が見つかったので曜はすぐさまビデオカメラをルビィに向けるのだが、それに驚いた彼女は「ピィ!?」という小さな悲鳴をあげながらまたどこかに逃げ去ってしまう。

 

「おぉ~、なんだかレベルアップしてる!?」

「えっ? いや、むしろレベルダウンしてない?」

 

そんなルビィに感心の声をあげる千歌だが、むしろ逃げ足が速くなっているのはレベルダウンなのではとツッコミを入れる無爪。

 

「ってそんなこと言ってる場合!?」

 

そこで梨子に注意されて花丸やルビィには少し街の紹介などはハードルが高いということで街を紹介する係は主に千歌が担当することとなり、一同は移動して先ずは富士山の見える場所へと向かう。

 

花丸がカチンコを鳴らすと、早速千歌が両手を広げて富士山の存在をアピール。

 

「どうですか~? この雄大な富士山!!」

 

次に海がよく見える場所に行き、今度は梨子はカチンコを鳴らして今度はそこでの撮影がスタート。

 

「それに、この綺麗な海!」

 

さらにまた別の場所に移動し、ルビィがカチンコを鳴らすとみかんが大量に溢れた箱を手に持った千歌が現れる。

 

「さらに! みかんがどっさり!!」

 

そこからさらに移動して、次の内浦の良いところを紹介しようとするのだが・・・・・・。

 

「そして街には・・・・・・!! 街には・・・・・・特に何もないです!!」

 

と笑顔でサムズアップする千歌だが、それを言ってしまってはおしまいである。

 

「それ言っちゃダメ・・・・・・」

「うーん、それじゃ・・・・・・」

 

そこから一同は今度は都会の方まで行き、今度は曜が街のことを紹介。

 

「バスでちょっと行くと、そこは大都会!! お店もたーくさんあるよ!」

 

さらに再び一同は場所を移動し、千歌達は自転車に乗って伊豆長岡の商店街を目指すのだが・・・・・・そこに行くにはそこそこ長めの坂を登ることになり、辿り着く頃には無爪以外全員息切れを起こし、大量の汗をかいていた。

 

「そして・・・・・・ちょっと・・・・・・!」

「自転車で、坂を越えると、そこには・・・・・・伊豆長岡の商店街が・・・・・・!」

 

花丸とルビィも既に体力の限界で、坂をどうにかこうにかみんなと登り切って息を切らしながら2人は息を切らしながら背中合わせになってその場に座り込んでしまう。

 

「全然、ちょっとじゃない」

「沼津に行くのだって、バスで500円以上かかるし・・・・・・」

「行き帰りで、合計1000円するのは・・・・・・確かに高い、かも・・・・・・」

 

ゼロと一体化していても、人格をゼロと入れ替える時以外、基本人格や身体能力は元のレイジのままなので、レイジ自身も坂を自転車で登った際には息切れを起こしてその場にへたり込んでいた。

 

尚、無爪は自転車などは一切使わず、普通に走って坂を登ってきたのだが・・・・・・それでもやはり超人的な体力を持つ無爪は顔色1つ変わっておらず、千歌と曜はジトっとした恨めしそうな視線を向けていた。

 

ちなみにモコは最初、善子の自転車の籠の中に入ろうとしていたが、流石に危ないということで無爪に抱きかかえられている。

 

「な、なに? そんなに見つめて・・・・・・」

「相変わらず体力お化けだよねぇ、なっちゃん」

「その身体能力の高さ、羨ましいよ、なっちゃん」

 

千歌と曜にそう言われ、どこか複雑そうな顔をする無爪。

 

それに気付いた千歌は「あっ」と声をあげ、今の無爪の気持ちを考えると、嫌味に聞こえたかもしれないと思い、慌てて千歌は「ご、ごめんね!」と無爪に謝罪する。

 

「えっ、なんで千歌ねえ急に謝るのさ?」

「そ、それは・・・・・・その・・・・・・」

 

どう言って良いのか、分からず千歌が困っていると・・・・・・。

 

その時、少し遅れてやってきた善子がガシャンっと音を立てて倒れ、それに驚いて「大丈夫!?」と無爪がモコと一緒に善子の元に駆け寄る。

 

「うぅ、いい加減にしてよ・・・・・・」

「モコォ~」

「もうちょっと、なんか良いのないかな、千歌ねえ?」

「うぅん、じゃあ・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

善子に注意され、無爪にもう少し何か良い感じのものはないかと言われた千歌は今度は善子に街のことを紹介して貰ってみようということになったのだが・・・・・・。

 

「フフフ、ウフフ、リトルデーモンのあなた。 堕天使ヨハネです。 今日は、このヨハネが墜ちて来た地上を紹介してあげましょう。 先ず! これが・・・・・・土!! アーハッハッハッハ!!」

 

堕天使スタイルの衣装に着替えた善子が、土で出来た小さな山を手で指して高笑いしながら紹介するのだが・・・・・・なぜそんなものを紹介しようと思ったのかと首を傾げる無爪。

 

「やっぱり善子ちゃんはこうでないと~」

「モコ!」

「いや、でも千歌ねえの『街に何も無い』って言うのと同じくらいダメでしょ、これ」

 

花丸はそんな善子に彼女らしいと評するが、正直PVにはあんまり使えそうにないということで、曜はこれはもう根本的に考え直さないとダメだなと呟く。

 

「そう? 面白くない?」

「「面白くてどうするの!?」」

 

梨子と無爪の双方からツッコまれ、取りあえずもう少しだけ話し合おうということで無爪達はとある喫茶店へと向かうことになるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、一同は喫茶店で再びみんなで話し合うことになったのだが、モコを頭に乗せた善子が怪訝な顔を浮かべながら「どうして喫茶店なの?」となぜ喫茶店に来たのか分からず、千歌達に尋ねる。

 

「もしかして、この前騒いで家族の人に怒られたり・・・・・・」

 

なぜ今日は千歌の旅館ではなく喫茶店での話し合いなのか、それは以前、Aqoursの堕天使スタイルの件の時、騒いだせいではないかとルビィは気に病むが・・・・・・なんでもそういう訳ではないらしい。

 

「ううん、違うの。 梨子ちゃんはしいたけいるなら来ないって・・・・・・」

「っ、行かないとは言ってないわ! ちゃんと繋いでおいてって言ってるだけ!」

「モコは平気みたいなのにね」

 

善子が頭の上に乗っているモコをテーブルの上に降ろして注文したお菓子を手に取ってモコに差し出すと、モコは鋭い牙を見せながら口を大きく開き、吸い込むように食べる。

 

「えっ、モコちゃんってそんな風にご飯食べるの!?」

 

例外があると言っていた梨子も、流石にこれには驚いていたが・・・・・・それでもやはりモコに対してだけはそんなに苦手意識を持つことはできず、梨子もお菓子を差し出してそれをモコに食べさせる。

 

「ホント、梨子さんモコは平気なのになんで犬だけ・・・・・・」

「ここら辺じゃ、家の中だと放し飼いの人の方が多いかも」

 

曜がこの辺りでは家の中だけとはいえ放し飼いしている人が多いと聞いて、梨子は「そんなぁ・・・・・・」と溜め息を吐くが・・・・・・その直後、「ワン!」という声が背後から聞こえ、それにビクッと肩を震わせた梨子は恐る恐る後ろを振り向く。

 

そこには小さな黒い子犬がおり、それにルビィ達は「可愛い!!」と目を輝かせるが・・・・・・梨子は顔を引き攣らせて「ひい!?」と悲鳴をあげる。

 

「こんなに小さいのに!?」

「モコとそんなに変わんないよ大きさ?」

 

まさかこんな小さな子犬にまで恐怖を感じるとは思わず、無爪や千歌は驚きの声をあげる。

 

「大きさは関係ないわ! その牙! そんなの噛まれたら・・・・・・死!?」

「そうそう死ぬことはないと思うけど」

「そうだよ、噛まないよ~」

 

千歌は子犬を抱きかかえ、無爪はその子犬の頭を撫でる。

 

「あ、危ないわよ!? そんな顔を近づけたら・・・・・・」

「あっ、そうだ! ワタちゃんで少し慣れると良いよ!」

 

どうやら、この子犬の名前は「ワタアメ」こと「ワタ」というらしく、千歌はワタで少しは犬に慣れて見てはどうかと梨子の目の前にまでワタを近づけると・・・・・・ワタはペロリと梨子の鼻先を舐める。

 

「あっ・・・・・・あっ・・・・・・! うううううう!!!!」

 

しかし、梨子はそのまま逃げるようにしてトイレに駆け込み、避難してしまう。

 

「ダメだこれ」

「梨子ちゃーん?」

「話は聞いてるから、早く進めて!!」

 

千歌はそんな梨子に「しょうがないなぁ」と呆れたように言いつつ、ノートパソコンで編集をしている善子にPVの出来具合はどうかと尋ねると、丁度彼女は編集を終わらせたようなのだが・・・・・・。

 

「簡単に編集しただけだけど、お世辞にも、魅力的とは・・・・・・言えないわね」

「モコォ~」

 

両手でやれやれといったポーズを取りながら、そう報告する善子。

 

「やっぱりここだけじゃ難しいんですかね・・・・・・」

 

ルビィがそう呟くと、千歌はワタを抱きかかえたまま「うーん」と唸る。

 

「じゃあ沼津の賑やかな映像を混ぜて~」

 

千歌は「これが私達の街です!!」と賑やかな街のイメージを浮かべるが・・・・・・。

 

「そんなの詐欺でしょ!?」

「なんで分かったの!?」

 

トイレの中から即座にツッコミを梨子から入れられてしまい、思考を読まれたことに驚く千歌。

 

「梨子さんも千歌ねえの行動パターン、だんだん読めて来たね」

「んっ?」

 

その時、曜は窓から見えるバス停に、終バスが来たことに気付き、「うわ!? 終バス来たよ!?」とこれに乗り遅れたら帰れなくなるので曜と善子は慌てて会計を済ませてみんなに別れの挨拶を済ませる。

 

「モコのこと、学校まで返しておいてね!」

「あっ、うん」

「モコォ~」

 

善子は千歌にモコを預け、モコは寂しそうにしつつも両耳を左右にピコピコ動かすことで「バイバイ」と善子と曜に伝え、その動作が可愛くてついつい見とれそうになるが、本当にもうバスが出発しそうだったので2人はすぐさまその場を後にするのだった。

 

「フフ、じゃあまた」

「ヨーシコー!!」

「むっ、もう!」

 

自分の名前を弄られ、善子は文句を言いながらバスの方まで走った曜を追いかけながら自分も急いでバスに向かって行くのだった。

 

「結局何も決まらなかったなぁ」

「なあああ!!? こんな時間!? 失礼しまーす!!」

 

モコとワタを抱きかかえつつ、千歌がそう呟くと突然ルビィが叫ぶようにして立ち上がり、彼女は時計を見てもうじき家の門限の時間が近づいていることに気付き、彼女は未だにデザートのお菓子を食べている花丸の首根っこを掴んで会計を済ませるとルビィと花丸の2人は別れの挨拶を千歌達に済ませ、急いで帰宅するのだった。

 

「・・・・・・意外と難しいんだなぁ。 良いところを伝えるのって」

 

家に帰宅するルビィと花丸を見送りながら、千歌がそう言うと、トイレの方からそんな千歌に対し、梨子が話しかける。

 

「住めば都。 住んでみないと分からない要素も沢山あると思うし」

「うん。 でも、学校が無くなったらこういう毎日がなくなっちゃうんだよね」

 

どこか悲しげな口調で、そう語る千歌に梨子は「そうね・・・・・・」と小さく頷く。

 

「スクールアイドル、頑張らなきゃ」

「今更?」

 

千歌はモコをテーブルの上に置き、ワタを床に降ろしつつ、改めてスクールアイドルとして頑張ることを宣言。

 

「だよね。 でも、今・・・・・・気がついた。 無くなっちゃダメだって! 私、この学校好きなんだ・・・・・・」

「あっ・・・・・・うん」

 

そう言い放つ千歌に、梨子はトイレの扉を開いて顔だけを覗かせながら、千歌に同意するように頷き、そんな風に言える千歌を無爪は少しだけ羨ましさを感じてしまう。

 

「強いよね、千歌ねえは・・・・・・」

「無爪くん?」

 

誰にも聞こえないくらいの声で、そう小さく呟く無爪だったが、無爪のすぐ隣の席に座っていたレイジにはハッキリと聞こえており、元気が無さそうな無爪の様子に、レイジは首を傾げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、小原家の鞠莉の部屋にて・・・・・・。

 

そこにダイビングスーツを着たままの、水浸し状態の果南が静かに部屋に入ってきたのだ。

 

せめて着替えるかスーツを乾かしてから来い。

 

「来るなら来ると先に言ってよ。 勝手に入って来ると家の者が激おこぷんぷん丸だよ?」

 

しかし、水浸しで部屋に入ってきた果南に鞠莉は特に怒ることもなく、むしろ彼女はどこかうれしそうな様子を見せていたが・・・・・・。

 

「・・・・・・廃校になるの?」

 

果南が鞠莉の部屋に訪れたのは、学校が廃校になるかもしれないという話を聞いたからであり、そのことを鞠莉に問いかけるのだが、彼女は首を横に振って否定する。

 

「ならないわ。 でも、それには力が必要なの」

 

そう言って鞠莉は部屋にある机の上に置かれた「復学届」と書かれた紙を果南に見せる。

 

「もう1度、果南の力が欲しい」

「・・・・・・本気?」

 

怪訝そうな顔で、果南がそう問いかけると、鞠莉はうっすらと笑みを浮かべてみせる。

 

「私は果南の、ストーカーだから」

「・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その翌日、学校の理事長室にて・・・・・・。

 

昨日作ったAqoursのPVの出来映えを確認するために、鞠莉に動画を見せに理事長室まで来た千歌達。

 

無爪やレイジもPVの出来の感想が気になったのでこの2人も理事長室に訪れており、鞠莉は目を細めながらジッとノートパソコンに映るAqoursのPV動画を見つめ、視聴していた。

 

『以上、がんばルビィ! こと、黒澤 ルビィがお伝えしました!』

 

動画から聞こえる台詞から、動画が終了したことが分かった千歌は鞠莉に緊張した様子で「どうでしょうか?」と恐る恐る尋ねる。

 

しかし・・・・・・。

 

「・・・・・・ZZZzzz・・・・・・」

 

鞠莉はいつの間にか眠ってしまっており、「さっきまで起きてたでしょうが!!」と無爪がツッコミを入れると、それに気付いた鞠莉は「ハッ!」と目を覚まし、それにずっこける善子以外のメンバー達。

 

「もう! 本気なのに! ちゃんと観てください!!」

「本気ぃ?」

「はい!!」

 

鞠莉の問いかけに力強く応える千歌だったが、鞠莉はそっとノートパソコンを閉じ、呆れたような視線を千歌達に向ける。

 

「それがこのテイタラァ~クですか?」

「テイタラーク?」

「為体って言いたいのね」

「えっ、流石にそんな言い方・・・・・・」

 

若干発音がおかしかったので、無爪が訂正するとすかさずレイジが流石にそんな言い方はないのではないかと抗議する。

 

それに同意するように、曜や梨子も鞠莉の言い草に意見する。

 

「そうだよ! それは流石に酷いんじゃ・・・・・・?」

「そうです! これを作るのにどれだけ大変だったと思ってる・・・・・・!」

 

すると、鞠莉は梨子の言葉を遮るように机の上に両手を「バン!」と叩き、身を乗り出して梨子達に反論する。

 

「努力の量と結果は比例しません! 大切なのはこのタウンやスクールの魅力を、ちゃぁーんと理解してるかでーす!」

『確かに。 彼女の言うことは一理あるぜ』

 

鞠莉の話を聞いていたゼロも、彼女の意見に一理あるとして頷き、それにレイジは「ゼロさんまで!?」と心の中で驚きの声をあげる。

 

「それってつまり・・・・・・」

「私達が理解してないということですか?」

「じゃあ理事長は、魅力は分かってるってこと?」

 

善子が鞠莉にそう尋ねると、鞠莉は「当然」とでも言うような表情を浮かべる。

 

「少なくとも、あなた達よりは・・・・・・。 聞きたいですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、結論から言えば・・・・・・千歌は鞠莉からの話を聞かなかった。

 

鞠莉の話を終えた後、千歌達は昇降口にて一同は靴を履き替えつつ、梨子がなぜ先ほど鞠莉の話を聞かないことにしたのかと千歌に尋ねる。

 

「なんか、聞いちゃダメな気がしたから」

「なに意地張ってるのよ?」

「モコ!」

 

モコを頭に乗せた善子がそう言うと、千歌は「意地じゃないよ!」と言葉を返し、それに善子は不思議そうにモコと一緒に首を傾げる。

 

「それって大切なことだもん。 自分で気づけなきゃPV作る資格ないよ」

 

鞠莉から街の良さなどを教えて貰うのは簡単だろう。

 

だが、それは楽して逃げているだけだ。

 

だからこそ、千歌はあそこで鞠莉から話を聞かなかった。

 

自分達で街の魅力に気付いてこそ、意味があるのだと千歌は感じたのだ。

 

「・・・・・・そうかもね」

 

それに梨子も千歌の言葉に共感して頷いたのだ。

 

「ヨーソロー!! じゃあ今日は千歌ちゃん家で作戦会議だ! 喫茶店だって、タダじゃないんだから、梨子ちゃんも頑張ルビィして!」

 

曜はジト目で隣にいる梨子に視線を移し、それにムッとした顔を浮かべる梨子。

 

そんな梨子達のやり取りを見て「フフ」と思わず笑みを零し、笑い出す千歌。

 

「ふふ、あははは! よぉーし!!」

 

千歌はそう言い放ちながら、右拳を突き上げるようなポーズを取るのだが・・・・・・。

 

「あっ、忘れ物した」

 

気合いを入れた直後にこれである。

 

これによって一気に力が抜けて、ずっこけそうになる梨子達。

 

「締まらないなぁ、千歌ちゃん」

 

どうにも締まらない千歌にレイジが苦笑し、千歌は「ちょっと部室見て来る~!!」と言い残して彼女は部室へと向かって行くのだった。

 

そんな風に去って行く千歌の背中を見つめながら、また暗い表情を浮かべる無爪。

 

「無爪くん? どうしたの?」

 

そのことに気付いたレイジが、無爪に声をかけると、無爪はビクッと肩を震わせつつも、頬をぽりぽりと掻きながら先ほどの千歌を見て思ったことをレイジに話し出す。

 

「いえ、やっぱり、千歌ねえは強い娘だなって思ったんです。 あんな風に厳しく言われても、へこたれないで自分で道を切り拓こうとしてる姿を見ると・・・・・・。 自分なら鞠莉さんに街の良さを聞いてたかもしれないし」

「無爪くん・・・・・・」

 

レイジは、もしかしてサンダーキラーが現れた時のことを気にしているのだろうかと思い、レイジは何か、無爪に励ましの言葉をかけようとしたのだが、上手い言葉が見つからず、口ごもってしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、忘れ物を取りに行く為に部室のある体育館へと戻って来た千歌はというと・・・・・・。

 

体育館の中に入ると、そこでは壇上で舞をただ1人披露しているダイヤの姿があり、それを目撃した千歌そんなダイヤの舞の美しさに見惚れ、彼女は思わずダイヤに向かって拍手を送る。

 

「凄い! 私・・・・・・感動しました!」

「な、なんですの!?」

 

ダイヤの方も千歌の存在に気付いたようで舞を見られていたことに恥ずかしそうに頬を赤くする。

 

「ダイヤさんがスクールアイドル嫌いなの分かってます! でも、私達も学校続いて欲しいって・・・・・・無くなって欲しくないって思ってるんです! 一緒にやりませんか!? スクールアイドル!」

 

ダイヤが自分達と同じように生徒会の方で学校を存続させる為に行動していることは小耳に挟んだ程度ではあったが聞いていた。

 

だからこそ、彼女は目的は同じならばと、千歌はダイヤをここでスクールアイドルに誘ったのだ。

 

そんな彼女達の様子をこっそりついてきた無爪達が体育館の入り口から覗き込んでおり、ルビィはダイヤの方に視線を向けながら複雑そうな心境で「お姉ちゃん・・・・・・」と小さく呟く。

 

「・・・・・・残念ですけど」

 

しかし、ダイヤは千歌の誘いをそう言って断り、壇上を降りてその場から立ち去ろうとする。

 

「ただ、あなた達の気持ちは嬉しく思いますわ。 お互い頑張りましょう?」

 

ダイヤはそれだけを言い残し、彼女は口元に笑みを浮かべながらそれだけを言い残してその場を去って行くのだった。

 

「ルビィちゃん、生徒会長って前は・・・・・・スクールアイドルが・・・・・・」

「はい。 ルビィよりも大好きでした」

 

曜の問いかけにルビィはそう応え、千歌はダイヤが壇上に降りる際に落とした1枚のプリントらしきものを拾いあげるとそこには「署名のお願い」と書かれており、それは学校を存続させる為、署名運動に使うプリントだったのだろう。

 

「っ・・・・・・!」

 

また千歌はルビィの「前はルビィよりもスクールアイドルが大好きだった」という話を聞き、ダイヤの方へと振り返って何か言葉をかけようとするのだが・・・・・・それを遮るようにルビィが声をあげたのだ。

 

「今は言わないで!!」

「ルビィちゃん・・・・・・」

「ごめんなさい・・・・・・」

 

言葉を遮ったことに、謝罪するルビィだが・・・・・・ルビィがなぜそんな行動に出たのか、そんなのは言われなくてもなんとなく分かった千歌は特に追求するようなこともせず、黙り込むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

体育館を出て昔、自分と果南と鞠莉の3人でスクールアイドルをやっていた日のことを思い出しながらどこか暗い表情でダイヤが歩いていると・・・・・・。

 

「ダイヤ。 逃げていても、何も変わりはしないよ?」

 

不意に、鞠莉に声をかけられてダイヤは思わず立ち止まってしまった。

 

「・・・・・・」

「進むしかない。 そう思わない?」

「逃げてる訳じゃありませんわ。 あの時だって・・・・・・」

 

ダイヤはそれだけを言い残し、彼女は再び歩き出してその場から去るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

千歌の家の旅館にやって来た曜達。

 

今彼女達は千歌の部屋に集まってPVのことについて話し合うことになっていたのだが・・・・・・梨子だけは千歌の部屋に入らず、障子からしいたけがいないか警戒しながらこっそり確認しており、部屋の様子を伺っていたのだ。

 

「梨子さん幾らなんでもビビりすぎだって」

「そうだよ、しいたけいないよ? ねっ? 千歌ちゃん?」

 

そんな梨子に無爪は苦笑しながら部屋にしいたけがいないことを教え、曜もしいたけのことをなぜかベッドの上で布団を被っている千歌に尋ねると彼女は布団の中でモゴモゴしながらもしいたけがいないことを伝える。

 

「それよりもPVだよ! どうすんの?」

「確かに何も思いついてないずらー」

「それはそうだけど・・・・・・」

 

その時、みんなが話し合っていると「あら、いらっしゃい?」とそこにお茶を持って来た志満が現れたことで流石にずっと廊下にいる訳にもいかない梨子はやむなく千歌の部屋に入りベッドに腰かける。

 

「あら、レイジくんお久しぶりね~!」

「あっ、はい! ご無沙汰しております志満さん!」

 

また志満はレイジの存在にも気付いたようで、何気なく挨拶を交わす2人。

 

「ところで、みんなで相談?」

「あっ、はい」

「いいけど、明日はみんな早いんだから今日はあんまり遅くなっちゃダメよ?」

 

志満にそう言われて「はーい!」と返事をする一同の言葉を聞いて志満は部屋を出て行くのだが、梨子は明日一体なにがあるのか分からず、曜に明日何があるのかを尋ねるのだが・・・・・・曜は「なんだったっけ?」と彼女も明日何があるのか忘れている様子だった。

 

「現地民でしょうが曜ねえ」

「あー、明日アレだよねぇ。 もうそんな時期かぁ。 懐かしいな」

 

無爪とレイジは明日何があるか覚えているようでそこで丁度障子の方からひょっこりと千歌が顔を現し、梨子に明日何があるのかを教える。

 

「海開きだよ!」

「あれ!? 千歌ちゃん!?」

 

海開き・・・・・・つまり、海水浴場を開設する為に明日は街のみんなで海のゴミ拾いなどをしなくてはいけない日であり、志満が遅くならないようにと言っていたのは海開きは朝早くから行われる為。

 

それを聞いて梨子は「成程」と納得したのだが・・・・・・1つだけ疑問が。

 

それはベッドの上にいる筈の千歌がなぜか目の前にいること。

 

「じゃあ・・・・・・」

 

ならばベッドの中にいるのは一体誰なのか・・・・・・。

 

薄々、ベッドの中にいる誰かに物凄く心当たりのある梨子は顔を引き攣らせ、その時ベッドの布団が膨れあがると・・・・・・。

 

ガバッとその中からしいたけが姿を現したのだ。

 

「あ・・・・・・あ・・・・・・!」

「なんかホラー映画みたいな演出になってるね・・・・・・」

 

そんな梨子の様子を見て、まるでホラー映画を観ているようだと呟くレイジだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その翌日の、午前4時半頃。

 

梨子はタイマーをセットしていた時計が鳴ると音を止め、彼女は未だ残る眠気をなんとか振り払いながら起き上がり、学校のジャージに着替えて海の方へと向かう。

 

「おーい! 梨子ちゃーん!!」

「おはヨーソロー!!」

「おはよう、梨子さん」

「おはよう」

 

そこでは梨子と同じくジャージを着て提灯やゴミ袋を持った千歌や曜、無爪が既に海辺に来ており、4人はそれぞれ朝の挨拶を交わす。

 

「梨子ちゃんの分もあるよ?」

「こっちの端から海の方まで向かって拾っていってね!」

 

千歌は梨子にゴミ袋を差し出し、曜はどこからどこまでのゴミを拾えば良いのかを教えるのだが・・・・・・その時、梨子はふっと海辺に集まった人々を見て少しだけ疑問に感じたことを曜に尋ねる。

 

「曜ちゃん」

「なに?」

「毎年、海開きってこんな感じなの?」

 

梨子は不思議そうに海辺に集まった多くの人達の姿を見つめ、曜も「うん!」と梨子の問いかけに応えると彼女曰く「町中の人がここに集まって来ている」とのことだった。

 

「町中の人が来てるよ! 学校のみんなも!!」

 

確かに町の住民達だけでなく、自分と同じ学校のジャージを着ている人もチラホラ見え、花丸に善子、ルビィ、ダイヤや果南、鞠莉にレイジの姿も確認でき、そんな風に町のみんなが一致団結している姿を見て、梨子は感心したように「そうなんだ」と呟く。

 

「・・・・・・これなんじゃないかな?」

 

その様子を見て、梨子はハッと何かに気付き、自分達が探していたのはこれなのではないかと感じたのだ。

 

「この町や、学校の良いところって・・・・・・」

 

梨子の言葉を聞いた瞬間、千歌は「そうだ!!」と言って何かを閃いたらしく、彼女は道路沿いにある階段の方へ行き、彼女は声をあげてみんなに呼びかける。

 

「あの! みなさーん!! 私達、浦の星学院でスクールアイドルをやっているAqoursです!! 私達は、学校を残すために、ここに生徒をたくさん集めるために、皆さんに協力してほしいことがあります! みんなの気持ちを、形にするために!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千歌のお願い、それは・・・・・・町の人達みんなに協力を呼びかけ、PVのライブシーンで使う『スカイランタン』の製作を手伝ってもらうことだったのだ。

 

町の人達は千歌の頼みを快く引き受け、結果数多くのスカイランタンが完成し、千歌達は屋上でライブシーンの撮影を行うことに。

 

そのライブで使う曲は・・・・・・「夢で夜空を照らしたい」

 

その曲はサビに入る瞬間、空がふっと暗くなり、そんな夜空を照らすかのようにスカイランタンが町の人々の手によって浮かび上がり、その光景をビデオカメラを持って撮影していた無爪や後ろの方で念のために待機していたレイジ、影の中から見ていたペガは圧巻され、感動を覚えていた。

 

『凄く、凄く綺麗だね、無爪・・・・・・』

「うん。 とっても・・・・・・」

 

曲が終わると、ペガと無爪はその感動を互いに共感し合い、そこにレイジが静かに無爪の隣に立つ。

 

「ねえ、無爪くん」

「レイジさん?」

「最近、無爪くん元気なかったよね? それって、やっぱりこの前のことを気にしてるから・・・・・・なんだよね?」

 

レイジの言葉に、無爪は戸惑いつつも「はい」と頷く。

 

「君は千歌ちゃんが強い娘だって言ってたけど、僕からしたら無爪くんだって強いと思う。 だって、僕なんて怪獣が出たら今でも怖くて、臆病なのに・・・・・・無爪くんは何時も臆さないで立ち向かって行くじゃない?」

「それは・・・・・・」

「それは君に、どうしても守らないといけないものがあるからじゃないのかな?」

 

レイジにそう言われて、「えっ?」と不思議そうにレイジの顔を見つめながら目を見開く無爪。

 

「確かにこの町の人達の何人かはジードに警戒している人も多いと思う。 でもね、だからと言ってこの町の人達のこの『温かさ』が無くなる訳じゃない。 もしかしたらだけど、君はそういう人の中にある『温かさ』を守りたかったんじゃないのかな?」

「っ・・・・・・人の中の、温かさ・・・・・・」

「でも、君の場合はこの町の人達だけじゃないよね。 世界中の人達の温かさを守りたい、きっとそう思ってる筈だ」

 

レイジに指摘され、無爪は初めてジードに変身し、スカルゴモラと戦った時のことを思い出す。

 

確かにあの時、無爪は「みんなを守りたい」と思った。

 

でも本当にそれだけだったのだろうか?

 

人を助けるのに理由なんていらないとはよく言うし、実際その通りだとは思う。

 

だが、自分には守る理由があった気がずっとしていた。

 

でもそれが何かは分からず、梨子がこの街の良さに気づいて、レイジが指摘してくれるまで、気づけないでいた。

 

梨子やレイジが気付いてくれたおかげで、ようやく自分も気付くことができたのだ。

 

あの時、戦おうと決心したのは・・・・・・。

 

ただ単純にみんなを守るだけじゃ無い、世界中の人々の中にある「温かさ」を守りたいのだと。

 

「私、心の中でずっと叫んでた。 助けてって・・・・・・ここには何もないって。 でも違ったんだ!」

 

学校の屋上で夜空を見上げながら千歌はそう言い放つ。

 

「追いかけて見せるよ。 ずっと、ずっと! この場所から始めよう! できるんだ・・・・・・!!」

「千歌ねえ・・・・・・」

 

千歌は自分がジードだと知って、ベリアルの息子だと知っても以前と変わらず、接してくれた、信じてくれた。

 

そうだ、彼女のような人が持つ、温かさを守る為に、自分は今まで戦ってきたのだ。

 

その時、千歌は自分の方へと視線を向けている無爪に気づき、彼女は彼の元に駆け寄って来て彼女は無爪に笑みを向ける。

 

「なっちゃん、きっと何時かはこの町の人達はジードのことを受け入れてくれる。 そしてそこからどんどんジードのことを受け入れてくれる人達が増えていくと思う。 根拠はないけど、そう思うんだ。 だって、この街の人達は・・・・・・こんなにも、温かいんだもん。 だからね・・・・・・」

 

千歌は優しく無爪の手を握りしめ、それに戸惑う無爪。

 

「みんながジードのことを受け入れてくれるまで大変かもしれない。 ニュースとかでまたジードのことを悪く言われるかもしれない。 でも、そんなの気にしないでなっちゃん。 だってなっちゃんは何も悪いことなんてしてないんだもん! みんなに教えてあげよう、どれだけ時間がかかったとしてもウルトラマンジードは・・・・・・みんなの味方、ヒーローだって!」

「千歌・・・・・・ねえ・・・・・・うっ、く・・・・・・」

 

千歌にそんな言葉をかけられ、思わず涙ぐんでしまう無爪。

 

2人の話の内容は聞こえなかったものの、そんな2人の様子を今までニヤニヤした顔で見ていた曜は「あっ、なっちゃん泣かした!」と千歌を指差し、それに彼女は「えぇ!?」と驚きの声をあげる。

 

「ちょっ、曜ちゃん私別になっちゃんを泣かした訳じゃ・・・・・・!」

「そ、そうだよ、別に泣いてないし・・・・・・!!」

 

だが、そんな瞬間をブチ壊すかのように・・・・・・。

 

「キュイイイイイイ!!!!!」

 

学校から離れてはいるものの、屋上からでも見える位置に「ベリアル融合獣 サンダーキラー」が突如として出現したのだ。

 

突然現れたサンダーキラーに「ピギャア!?」と驚いて尻餅をついてしまうルビィ。

 

「る、ルビィちゃん大丈夫ずら!?」

「う、うん・・・・・・」

「ってか唐突に現れたわね、あの怪獣・・・・・・」

 

いきなり現れたサンダーキラーに善子は疑問を覚えつつ、そこでレイジがみんなに避難するように呼びかける。

 

「みんな!! 早く避難して!! 無爪くんは学校の中に取り残された生徒達を避難させて欲しい!」

「っ!」

 

レイジは無爪が怪獣の元に行けるように建前を作り出し、それに気付いた無爪はレイジに向かって「分かりました!」と頷くとすぐにその場から立ち去ろうとする。

 

「なっちゃん!!」

 

だが、その際、千歌が無爪を呼び止め、思わず立ち止まった無爪は千歌の方へと振り返る。

 

「私は、なっちゃんを今も昔もこれからも、ずっと信じてるから」

「・・・・・・うんっ」

 

無爪は千歌の言葉を受けて、笑みを浮かべると校内に戻って人気のない場所に行くとジードライザーを取り出す。

 

「ジーッとしてても、ドーにもならねえ!!」

 

腰のカプセルホルダーから「初代ウルトラマン」のカプセルを取り出し、スイッチを押して起動させるとそこからそのウルトラマンが出現。

 

「融合!!」

 

ウルトラマンのカプセルを装填ナックルに装填させた後、さらにそれとは別に「ウルトラマンベリアル」のカプセルを取り出し起動させると今度はそこからベリアルが出現。

 

「アイ、ゴー!!」

 

同じくベリアルのカプセルをナックルに装填し、ジードライザーで装填したカプセルをスキャンする。

 

「ヒア、ウィー、ゴー!!」

『フュージョンライズ!』

「決めるぜ、覚悟!!」 

 

そしてジードライザーを掲げて胸の前でスイッチを押すとウルトラマンとベリアルの姿が重なり合い、無爪は2人のウルトラマンの力を合わせた「ウルトラマンジード プリミティブ」へと変身を完了させたのだ。 

 

「はああ!! はぁ!! ジイィーーーード!!!!」

『ウルトラマン! ウルトラマンベリアル! ウルトラマンジード!! プリミティブ!!』

 

ジードはサンダーキラーの前に降り立ち、ジードはファイティングポーズを取って構える。

 

『僕の名はジード、ウルトラマンジードだ!!』

 

サンダーキラーは右手で「クイクイ」とジードを挑発すると、敢えて乗ってやるとばかりにジードは飛び膝蹴りを繰り出すが、サンダーキラーは左手の爪で受け流すと右手の拳でジードを殴りつける。

 

『ウアッ!?』

 

さらにサンダーキラーは三日月型カッターを口から放ち、ジードを攻撃するがジードはそれを腕を振るって弾き飛ばし、サンダーキラーの頭部を掴んで屈ませるとその顎に膝蹴りを叩きこむ。

 

『ヘアッ!!』

「キュイイイ!!」

 

サンダーキラーはその攻撃によって怯むものの左手の爪でジードの腹部を斬りつけ、さらに右拳ででジードの胸部を殴りつけ、続けざまに電撃を纏わせた尻尾による連続攻撃を喰らい、ジードは吹き飛ばされて地面に倒れ込む。

 

『グアアッ!?』

 

さらに倒れ込んだジードに向かって容赦なく三日月型のカッターを放ち、ダメージを受け続けるジード。

 

『ウアアアアッ!!?』

「ジード!!」

 

避難するために学校のグランドにまで出た千歌達は丁度そこからジードがサンダーキラーに苦戦する様子が見え、それを見て千歌はジードの名を呼びながら悲痛の声をあげる。

 

そしてサンダーキラーは片膝を突きながら立ち上がろうとするジードを容赦なく蹴り飛ばし、地面に背中を打ち付けるジード。

 

『グッ、ウゥ・・・・・・!』

 

倒れ込んだジードの首をサンダーキラーは右手で掴みあげて無理矢理起き上がらせる。

 

「っ、頑張れジードオオオオオオオ!!!!」

『っ!?』

 

その時、ジードが応援する声が聞こえ・・・・・・声のした方にジードが視線を向けると、そこに自分に向かって「頑張れ」と応援する曜の姿があったのだ。

 

「曜ちゃん・・・・・・」

「頑張れ、ジード!!」

 

それに千歌も驚いて目を見開くが、すぐに彼女もジードに精一杯の声援を送ることに。

 

「頑張れジード!! 頑張れええええええ!!!!」

「頑張ルビィだよ!! ジードさん!!」

「頑張るずら!! ウルトラマン!!!!」

「ボディ狙いなさい!! ボディを!!」

「モコォ~!」

 

曜や千歌に続いて梨子やルビィ、花丸、善子に避難する時一緒について来させたモコもジードに精一杯の声援を送り、他にも全生徒でないにしてもジードを応援する一部の生徒達がチラホラと見えていた。

 

「みんな!! 早く避難を・・・・・・」

 

レイジは応援よりも早くみんな避難するように注意を促そうとしたが、すぐに思い留まり、レイジも声を張り上げてジードに応援の言葉を送る。

 

「頑張れ、ジード!! 負けるなああああああ!!!!」

『千歌ねえだけじゃない。 曜ねえ達が僕を・・・・・・応援してくれてる・・・・・・! そうだ、こんなところで立ち止まってなんていられない!!』

 

千歌達の声援の声を受け、ジードは自分の首を掴むサンダーキラーの右腕を両手で掴みあげる。

 

『僕は・・・・・・みんなを守るんだ!! みんなの中にある、『温かさ』を!!』

 

そう言い放つとジードはサンダーキラーの腹部を蹴りつけて無理矢理サンダーキラーの右手を自身から引き離し、距離を取るとインナースペース内の無爪は右手を掲げる。

 

『ジードクロー!!!!』

 

すると、二又のかぎ爪型「ジードクロー」がインナースペース内の無爪とジードの手に握られ、ジードは新たな武器を構える。

 

『機は熟した。 そういうことですね』

 

星雲荘で戦いの様子を見守っていたレムが1人、そんな言葉を呟く。

 

挿入歌「スリリング・ワンウェイ」

 

『今の自分を飛び越える!!』

 

無爪はトリガーを1回引いてボタンを押すとジードはジードクローの刃先から赤黒いカッター光線を放つ「クローカッティング」を放ち、サンダーキラーはそれを胸部で受け止めて吸収しようとするが・・・・・・吸収し切ることができず、ダメージを受ける。

 

『クローカッティング!!』

「キュイイイ!!?」

『よし、効いてる! 行けるぞ!』

 

インナースペース内の無爪はヒカリカプセルを起動させ、ナックルに装填。

 

『融合!』

 

続いて無爪はコスモスカプセルを起動させ、ナックルに装填。

 

『アイ、ゴー!』

 

そこからジードライザーで装填ナックルをスキャンし、トリガーを引いてライザーを掲げる。

 

『ヒア、ウィー、ゴー!!』

『フュージョンライズ!!』

『見せるぜ、衝撃!!』

 

そしてジードはウルトラマンヒカリ、ウルトラマンコスモスの力を融合させた青い姿、「ウルトラマンジード アクロスマッシャー」に姿を変えるのだった。

 

『はああああ、はぁ!! ジィィーーード!!!!』

『ウルトラマンヒカリ! ウルトラマンコスモス! ウルトラマンジード! アクロスマッシャー!!』

 

サンダーキラーはジードに向かって三日月型のカッターを連射して放つがジードは素早い動きと共にジードクローを振るって弾き飛ばし、すれ違いざまにサンダーキラーをジードクローで斬りつける。

 

「キュイイイ!!?」

 

さらにそこから目で追えないレベルの素早さでジードは動き回り、気付けばジードクローで気付けばジードクローでサンダーキラーは身体中を斬りつけられており、サンダーキラーは身体中から火花を散らす。

 

『ショア!!』

 

続けてジードはもう1度高速でサンダーキラーに突っ込み、一撃を喰らわせようとするがなんとかサンダーキラーはジードの動きに反応し、左手の爪で攻撃を防ぐ。

 

『スマッシュビームブレード!!』

 

だがジードは本来は右手だが、今ジードクローを右手に持っていることもあり、応用として左手に光の剣「スマッシュビームブレード」を出現させることでサンダーキラーの腹部に刃を突き立ててダメージを与えることに成功し、さらに素早くスマッシュビームブレードとジードクローをX字に振るって切り裂き、火花を散らすサンダーキラー。

 

「キイイイイイ!!!!?」

 

そしてジードはブレードを仕舞い、無爪がジードクローの片側の刃をジードライザーでリードした後クローの中心を押してクローを展開、トリガーを3回引いてボタンを押すとジードはジードクローから無数に分散させた光線を相手の頭上に向けて放つ「ディフュージョンシャワー」をサンダーキラーに繰り出す。

 

『シフトイントゥマキシマム!』

『ハアアア、ディフュージョンシャワー!!!!』

 

それを受けて耐えきれなくなったサンダーキラーは身体中から火花を散らし、爆発。

 

サンダーキラーはこうしてジードに倒されたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あの怪獣の目的は、あなただったのかもしれません』

 

翌日、星雲荘に訪れていた無爪、ペガ、千歌は先日再び現れたサンダーキラーが現れた理由についてレムから説明がなされていた。

 

最も、説明と言ってもあくまで予想でしかないのだが、ゼロが現れた途端に消えたことや再び現れ、ジードと対峙した際にはジードを挑発するかのような動作をしていたことからレムはサンダーキラーはジードと戦うこと自体が目的だったのではないかと予想したのだ。

 

『でもどうして?』

『ジードの活躍を快く思わない人物の仕業かもしれません』

 

ペガがレムになぜそんなことをと尋ねると、彼女は誰かがジードを邪魔だと感じた、だからジードを倒そうとしたのかもしれないと話す。

 

「なっちゃん・・・・・・」

 

レムの話を聞いて、心配そうに無爪の方へと顔を向ける千歌。

 

「大丈夫。 これから先、もっと予測のつかないことや自分に危険なこととか起こるかもしれないけど、それでも僕は戦うよ。 みんなの心の温かさを守る為に・・・・・・」

 

武器を使うには使う人間にもそれ相応の器がいると誰かが言っていた。

 

あの武器が自分に与えられたのはほんの少しかもしれないが自分が成長したからかもしれない。

 

自分が守りたいものの為にも、新しい武器・・・・・・ジードクローもより使いこなせるように無爪はレムに用意して貰った木刀を持ってレムの手ほどきの指示の元、彼は自分を少しでも鍛える為、それを振るうのだった。

 

「頑張ってね、なっちゃん」

「うん」

 

そんな風に、みんなの為に戦う無爪の姿を見つめながら、千歌は笑みを浮かべて彼を見守る。

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、とある薄暗い空間にて・・・・・・。

 

「全ては順調です。 我が主、ベリアル様・・・・・・!」

 

不気味な笑みを浮かべながら、そう語る荒井の目の前には・・・・・・。

 

ジードの父親にして、光の国で悪の道に墜ちた巨人、「ウルトラマンベリアル」が立っていた。

 

ベリアルは自身のカラータイマーから紫色のエネルギーのようなものを荒井に与え、荒井はそれを両腕を広げて受け止める。

 

「あなたがお与えになったこの力で、私はまた・・・・・・フュージョンライズできる! さて、そろそろ邪魔者には退場して貰いましょうか」

 

目を赤く光らせながら、荒井はそう呟くのだった。




花丸ちゃんに渡そうと思ってた荒井のサイン普通に無爪、忘れてます。
原作だとリクが守るべきものを探すという感じの話でしたが、こちらではあの町に住んでたら逆に守るべきものが何か気付くって感じになりそうって感じの話になりました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。