ラブライブ! ジードサンシャイン!!   作:ベンジャー

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第8話 『私は悪』

荒井の故郷、「ストルム星」。

 

この星では地球と同じように、ドンシャインのような「特撮ヒーロー」が放送されていた。

 

星は違えど、ヒーローが悪い怪人や怪獣を倒し、人々を守る。

 

そんなヒーロー達の姿に子供達が憧れ、一部の大人達からも愛されるのは地球でも同じだった。

 

だが、ごく希に、ヒーローではではなく、怪人や怪獣・・・・・・所謂「ヴィラン」達に憧れる者も少なからず存在する。

 

それは地球でも、ストルム星でも同じであり、ストルム星人荒井も、その1人だった。

 

彼は子供の頃からずっと特撮ヒーロー番組が好きだった。

 

しかし、彼が好きだったのはヒーローではなく、悪・・・・・・ヴィランだったのだ。

 

ヒーロー番組を見るのは好きだったが、何時もヒーロー達が最終的に勝ってしまうことだけは小さい頃から納得することができず、不満を持っていた。

 

時折、ヒーロー側が実質敗北するという終わりを迎える作品もあるにはあるものの、やはり基本はヒーローが最後は勝つシナリオの方が圧倒的に多い。

 

「悪が栄えた試しはない」と言う言葉があるが、現実の世界でもそうだ。

 

最後には必ず悪が滅びる。

 

最も、仮に悪が栄えたとしても、自分の故郷を支配されてディストピアなんかに変えられたりでもしたら自分としても困るが・・・・・・。

 

それが頭では分かっていても、自分はどうしても「悪」というものに惹かれて仕方がなかった。

 

そんな彼だからか、同い年くらいの子供達からは変わり者扱いされ、邪険に扱われ、仲間はずれにされずっと孤立していた。

 

「テレビの中の悪に憧れることがおかしいのか」、「悪の中にも、カッコイイキャラクターはいっぱいいるのに」と荒井は何時も不満を募らせていた。

 

その不満は大人になっても拭うことができず、なぜ最後の最後に悪が勝つというシナリオがみんなにあまり受け入れられないのか、荒井にはそれが全く理解できなかった。

 

しかし、ある時、荒井は「ウルトラマンベリアル」なる戦士の噂を耳にした。

 

光の国で唯一悪に墜ち、幽閉されていたウルトラマンが脱獄し、光の国をほぼ壊滅状態にしたという噂を。

 

その噂を聞いた瞬間、荒井はベリアルに激しく興味を持つようになり、気付けば、彼について色々と調べるようになっていた。

 

そしてベリアルのことを調べれば調べるほど、彼は「自分の理想の悪に最も相応しい人物」だと思うようになっていったのだ。

 

それはなぜか?

 

最終的に、「ウルトラマンゼロ」に負けはしたが、強力な武器であるギガバトルナイザーがあったとはいえウルトラマンとセブン、メビウス、レオ兄弟以外のウルトラ兄弟やパワード、グレート、マックスといった強豪をほぼまとめて倒し、さらにはウルトラの父すら倒し、光の国を壊滅状態に追い込んだから。

 

さらには死んでも尚、魂のみの状態でゼロに戦いを挑み、自分を倒したゼロの身体を乗っ取ることでウルティメイトフォース・ゼロの他のヒーロー達を一度は皆殺しにしたから。

 

最終的に負けてこそいるものの、それまでの過程で彼は何人ものヒーローを1度は倒している。

 

負けた回数よりもヒーローを倒した数の方が断然多い。

 

だから荒井はベリアルこそ、「自分の理想に最も近い悪」だと思ったのだ。

 

そんなベリアルに、荒井は何時しか憧れを抱き、荒井はベリアルに会ってみたい、彼の部下となり、彼の為に働いてみたいと思うようになっていった。

 

だが・・・・・・そんなある時、ある日悲劇は起こった。

 

緑豊かな美しい星だったストルム星は何らかの原因で勃発した争乱によって星は炎に包まれ、荒井は自分の星の文明が滅びていくのをただ見ていることしかできなかった。

 

既に逃げ場のない炎の中でただ呆然と立ち尽くし、既に文明が滅びるさまを見て生きる気力も無くした荒井はただ静かに、自分も炎に焼かれて死ぬのをただジッと待つことしか自分には出来なかった。

 

だが、そこへ・・・・・・。

 

生きることを諦めた自分を救ってくれたのが・・・・・・自身が憧れた悪、「ウルトラマンベリアル」だったのだ。

 

ベリアルに救われた荒井は必死になってベリアルに自分を部下にして欲しいと頼み込んだ。

 

ベリアル自身も、荒井の能力は役に立つかもしれないという考えから、彼を部下にすることを決め、荒井はベリアルに忠誠を誓うことになったのだ。

 

その後はベリアルの為に働き、ベリアルの指示の元暗躍を開始。

 

荒井が暗躍している間、その間にベリアルは「クライシス・インパクト」を発動し、キングの介入があったものの、クライシス・インパクトでの出来事を経て、ベリアルの忠誠心はますます向上していった。

 

なぜなら、光の国のウルトラマンが総動員しても、ベリアルの企みを食い止めることができなかったからだ。

 

しかも、ウルトラマン達が大切にしている地球の崩壊を一度はウルトラマン達に見せつけることができたのだから。

 

ある意味、これは荒井にとって事実上のベリアルの完全勝利だった。

 

これ以上気持ちの良いことがあるだろうか?

 

こんなこと、あのエンペラ星人ですら為し得なかったことだ。

 

さらに、これを切っ掛けにあのウルトラマンキングの動きすら封じてしまうのだから、やはりベリアルは凄いと自分の見る目は間違っていなかったと荒井はベリアルについて行って良かったと自分の選択に誇りを持つことができた。

 

そして、彼の部下となったことで、荒井は・・・・・・自分自身も「悪」になれたと心の底から、ベリアルに強く感謝していた。

 

これこそが、荒井が「悪」となった理由・・・・・・彼が「悪」となった、オリジンである。

 

「ベリアル様、あなたの部下になって良かった。 あなたのおかげで、私も『悪』となることができました。 あぁ、ベリアル様・・・・・・! かっこ良く、悪のカリスマであるあなた様に、絶対悪であるあなた様に仕えることができて・・・・・・!! あぁ~、私はなんと幸せなのだろう! 敬愛しております、愛しております、ベリアル様ぁ・・・・・・!!」

 

そして今現在、荒井は自分が暮らしているアパートの部屋で恍惚とした表情を浮かべながら床に寝そべって悶えており、その姿はハッキリ言って物凄く気持ち悪かった。

 

だが、突然ピタリと動きを止めると、彼は起き上がってテーブルの上に置いてあったノートパソコンを起動し、動画サイトに載っていたジード関連の動画を視聴する。

 

その関連動画には主にジードが何者なのかという考察をする者やジードの戦闘シーンなどが載っており、荒井はその中の1つ、ジードの戦闘シーンの動画を再生する。

 

スカルゴモラ、ドレンゲラン、ダークロプスゼロ、エレキング、マグマ星人、ジラース、そしてサンダーキラー。

 

それらの怪獣達と戦う映像を眺めながら、荒井は映像のジードに指先で触れ、ニヤリと不気味な笑みを浮かべる。

 

「あんまり強くなられても困るが少しずつ、強くなって行ってるなジード。 だが嬉しくも思う。 仕事とプライベートは別に分けたいところだが、それでも、君の存在を愛おしく思うよ。 君は、ベリアル様のための道具でもあると同時に、私の・・・・・・私だけの敵なのだから・・・・・・! 君のことも愛しているよ、ジード! そして・・・・・・憎くてたまらないよ、ジード・・・・・・!!」

 

荒井は愛憎入り交じった表情で、動画で戦うジードの姿を見つめ、1つの動画が終わると次にゼロがバーニング・ベムストラと戦った時の映像が流れる。

 

「君が来ることも予想していたが、やはり・・・・・・ウルトラマンゼロ。 君は邪魔だ。 私の描くシナリオに、君は必要ない・・・・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

 

移動販売で「久米 ハルヲ」という男性が店長を務めている駄菓子屋にして、無爪のバイト先でもある「銀河マーケット」にて。

 

そこでは今日はシフトが入っていた為に千歌達の部活の手伝いも出来ず、真っ直ぐ学校帰りに銀河マーケットへとやってきていた無爪がせっせと働いていたのだが・・・・・・。

 

「なんで・・・・・・なんで千歌ねえ達がここにいるのさ!?」

 

何故か千歌達は今は学校で活動しておらず、彼女達は店で買ったお菓子等の商品を店の表に出されていたテーブル席に座ってポリポリ食べながら、今後のスクールアイドル活動についてみんなで話し合っていたのだ。

 

ついでにモコとたまたま近くを通りかかったというレイジも来ていた。

 

「話し合いなら学校で良くない!?」

「なっちゃんが働いてるところって見たことないから、どんな風にしてるのかな~って気になっちゃって。 こうやって座って食べられるところもあるし、どうせだからみんなで行こうってなってね!!」

 

無爪のお姉ちゃん分としては彼がちゃんと働けているのか気になったこと、どうせ座って食べられる場所があるなら無爪の様子見ついでに今後の活動についてもそこで話し合えるだろうということで千歌はみんなを引き連れ、ここにやってきた訳なのだが・・・・・・。

 

正直、無爪としては単に冷やかしに来ただけではないのかと思わずにはいられなかった。

 

また、梨子などはそう語る千歌に対して「だから邪魔になるからやめようって言ったじゃない」とでも言いたげな呆れた視線を送っており、そのことには無爪も気付いたが・・・・・・恐らく千歌が強引にみんなを連れて来たのであろうことは想像に難くなかった。

 

「いや、別に冷やかしとかに来た訳じゃないからね!? なんでなっちゃんと梨子ちゃんそんな視線を私に送るの!?」

 

無爪と梨子の視線から2人が何を考えているのかなんとなく察した千歌は別に冷やかしとかに来た訳ではないと言い、単に彼女は無爪のことを応援しに来ただけだと説明する。

 

「あとは売り上げに貢献してあげようと思って! だからAqoursのみんなも連れて来たのだ!」

 

千歌は「えっへん!」と胸を張って無爪のためにAqoursのみんなも連れて銀河マーケットの売り上げに貢献するために来たのだと話し、それを受けて無爪は「それなら別に良いけどさ・・・・・・」と一応その説明で納得はするが・・・・・・。

 

「でも仕事の邪魔はしないでね千歌ねえ!」

「しないよ! する訳ないじゃん! 私のことなんだと思ってるのなっちゃん!?」

 

またそんな2人のやり取りを見ていた曜はどこかほっとしたような安堵の表情を見せており、そんな彼女に気付き、梨子は「どうしたの曜ちゃん?」となぜそんな安心したような顔を浮かべていたのかを尋ねる。

 

「んっ? いやさ、最近なっちゃん、元気が無かったみたいだったから・・・・・・」

 

曜はその理由を知らないが、ここ最近、無爪の元気が無かったのはサンダーキラーに一度目は敗北寸前にまで追い込まれたこととテレビでのジードへの批判意見を聞いたからだった。

 

しかし、今はすっかりと無爪も元気を取り戻し、千歌と何時もと同じようなやり取りを交わしていることに曜は安堵し、無爪が元気が無かった理由は分からないが、それでも彼が元気を取り戻して何時も通りに振る舞うようになれたのを彼女は自分のことのように嬉しく感じていた。

 

「なっちゃんは、私に取っても弟みたいなもんだからね」

 

だから自分に取っても嬉しいのだと梨子に説明していると・・・・・・その時、「NOoooooo!!!!!」という誰かの叫び声が聞こえ、無爪や千歌達はその叫び声に驚き、ビクリと肩を震わせて声のした方に視線を向けるとそこには膝を抱えて蹲るハルヲ店長の姿が。

 

「えっ、なにあの人・・・・・・? 誰?」

「ウチの店長」

 

頭にモコを乗せた善子の質問に無爪がすぐ傍で蹲ってどんよりとしたオーラを出しているのがこの店の店長であることを話すと彼女は「あれが!?」と驚きの声をあげる。

 

「ど、どうしてあんなに落ち込んでるんだろう・・・・・・?」

「店長、荒井っていう小説家のファンで、その小説家の特別講演会の抽選に外れたんだって」

 

ルビィがなんであんなにハルヲが落ち込んでいるのか無爪に尋ねると、無爪は荒井の特別講演会の抽選に外れたからであると説明し、それを聞いた瞬間、先ほどまで「美味しいずら~」とお菓子をご機嫌に食べていた花丸の目が見開き、目にも止まらぬ速さでハルヲの元に駆け寄ってきた。

 

「店長さんも荒井先生の小説読んでるんですか!!?」

「うおっ!? って君は・・・・・・もしかして、君もアライデスト!?」

 

「アライデストってなんだよ」とツッコミを入れる無爪だが、彼の声は2人にはまるで聞こえておらず、2人は荒井の小説の話題で大盛り上がり。

 

「私は先生の『星の恋人』って話が好きですね~!」

「俺は『悲しみの沼』かな。 あれ滅茶苦茶泣けるんだよなぁ!」

「分かるずら!!」

 

なんて話す2人はその後も「『怪獣使いと少年』は胸くそだけど考えさせられる話だよな」と話したり、「『わたしはだぁれ』はお腹抱えて笑いました!」など、周囲の人置いてけぼりの会話を繰り広げ、花丸の親友であるルビィですらぽかんとした顔をしていた。

 

「なんの話してるのかさっぱり分からない。 ネオマキシマとかメテオールとかって何よ・・・・・・」

「モコォ~」

 

ここにいる全員の考えを代弁するかのように、善子はそう呟き、モコも花丸とハルヲが何を話しているのか全く理解できず、頭からぷすぷすと煙を出していた。

 

「しかも花丸ちゃん、興奮のあまり『素』の状態で話しちゃってるわね」

 

梨子が言うように、何時も花丸は主に初対面の相手などに対し自分の「オラ」という一人称や語尾に「ずら」とつけて喋らないように気をつけているのだが・・・・・・今回は全くその素振りがなく、そのことから彼女がどれだけ荒井のファンであるか、どれだけ興奮しているかが分かった。

 

「あっ、そうだ。 ずっと花丸ちゃんに渡そうと思っていたの忘れてた」

 

そこで無爪はサンダーキラーとの戦いのいざこざのせいで花丸に渡しそびれていた荒井のサインを鞄から取り出し、それを花丸に対し「はい!」と手渡す。

 

「えっ? 無爪くん・・・・・・これって、荒井先生のサイン!!?」

「なにぃ!?」

 

それを見て花丸はすぐにそれが荒井のサイン色紙であることに気づき、それに対してハルヲを目を見開いてサインをマジマジと見つめる。

 

「この前歩いてたら偶然荒井先生に会ってね? 花丸ちゃん、その先生のファンだって以前聞いてたから折角だし、貰っておこうと思って」

「い、良いの無爪くん!?」

「うん、元々花丸ちゃんにあげようと思ってた物だし」

 

花丸はニヤケ顔になるのを必死に堪えつつ、プルプルとした手で無爪から荒井のサイン色紙を受け取ると彼女はそれを抱きしめるように持ちながら「やった~!」とピョンピョン跳ねて喜ぶ。

 

「ってなんで花丸ちゃんだけ!? どうせなら俺の分も貰って来なかったんだよ無爪!?」

「いや、だって店長が荒井先生のファンだって知る前の出来事だったんで・・・・・・」

 

ハルヲはなんだったら自分の分のサインも貰って来て欲しかったと無爪に文句を言うが、時系列的にここで働き始める前なので無理言わないでくれと無爪は主張し、それにハルヲはガックリと肩を落とすのだった。

 

また、サインを花丸にプレゼントする無爪に対し、千歌はぷくっと頬を膨らませながらジーッと無爪の見つめており、不機嫌そうな顔を浮かべていた。

 

「なっちゃんってさ、前々から思ってたけど、ちょっと花丸ちゃんに甘くない?」

「えっ? そうかなぁ?」

 

無爪としては単に友達が喜ぶと思ったからという至極真っ当な理由で荒井にサインを貰った訳で、ハルヲと出会うのがもう少し早ければ彼の分のサインも頼んでいたので、別に花丸が特別という訳では無い。

 

なので無爪は千歌がなぜ不機嫌そうになっているのかが分からず、もしかして千歌も荒井のファンだったのだろうかと思ったが・・・・・・だとしたら千歌の性格的に先ほどの荒井や花丸との会話の中にも入って行っていたであろうことは想像に難くなかったので無爪はその考えを否定。

 

そうじゃないなら何故こんなにも不機嫌そうなのか、それが分からず無爪は首を傾げるのだった。

 

(・・・・・・はっ! もしかして胸!? 花丸ちゃんの胸が私よりも大きいから!? だからなっちゃん花丸ちゃんに甘いのかな!?)

 

また千歌は花丸と自分の胸を交互に見比べて、無爪は巨乳好きのムッツリ野郎だから花丸に対してなんだか甘いのかと考えるが・・・・・・無爪が荒井のサインを花丸にあげたのは下心など一切ないただの善意で行ったことなのでそれは誤解である。

 

と言っても無爪が巨乳好きのムッツリ野郎なのは間違ってないのでそういう誤解をされても仕方ないところもあるが。

 

そんな2人を見て、曜は「お互いに鈍いと大変だね」なんて言いながら苦笑していた。

 

「オラも特別講演会外れてたけど、これで元気出たずら!」

「良いなぁ~、羨ましいなぁ~」

 

ハルヲがサイン色紙を大事に抱きしめている花丸を見つめながら羨ましがっていると「こんにちわ」と挨拶をしながら銀河マーケットにスーツに身を包んだ荒井が現れたのだ。

 

「こんにちわ・・・・・・ってえぇ!?」

「あ、あ、あ、荒井先生!!? えっ、嘘!? 本物!?」

 

噂をしていればなんとやら・・・・・・まさかのご本人登場には花丸やハルヲは勿論、無爪や千歌達も驚きを隠せず、ハルヲは「バン!」と無爪の肩を叩く。

 

「痛!?」

「夢じゃない、荒井先生だ・・・・・・」

「いや、僕を叩いて夢かどうか確かめないで貰えます店長!?」

「講演会、応募してくれたんですね?」

 

荒井は花丸達に笑みを向け、彼の言葉に花丸とハルヲは「はい!!」と元気よく頷き、返事を返す。

 

「でも、不覚にも講演会、外れてしまいましたぁ・・・・・・!」

「お、オラ・・・・・・じゃない、私もです・・・・・・!」

 

ハルヲと花丸は荒井のファンであるにも関わらず、講演会に外れてしまったことを申し訳無さそうにし、「でしたら・・・・・・」と荒井が呟くと、彼はここにいる一同にある提案をする。

 

「どうでしょう? ここにいる皆さんを私の講演会にご招待させて頂くと言うのは・・・・・・」

 

なんと荒井は自分から花丸やハルヲだけでなく、無爪や千歌達を自分の講演会に招待し、それに花丸やハルヲはパアァっと顔を明るくするが、レイジは「い、良いんですか?」と戸惑いながらこんな見ず知らずの自分達まで招待してくれるのか、そんないきなり迷惑ではないかと不安そうに尋ねる。

 

「構いませんよ。 人との出会いは、宇宙が司る壮大な計画の一部ですから」

「計画・・・・・・?」

「『運命』ということです」

 

荒井は「それでは」とだけ言い残すと、彼はその場を去って行くのだが・・・・・・その時、彼は一瞬怪しい笑みを浮かべ・・・・・・それに唯一気付いた千歌は彼の笑みを見て背筋がビクリと震えるのを感じ、どこか顔を青ざめさせた千歌に気付いた無爪は「どうしたの千歌ねえ?」と心配そうに声をかける。

 

「えっ? いや、なんでもないよ!」

 

それに千歌は笑って誤魔化し、そこから立ち去って行く荒井の背中をジッと見つめる。

 

(最後、先生が一瞬なんだか凄く怖く見えたけど・・・・・・きっと気のせいだよね)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、千歌や無爪の自宅である十千万の、無爪の部屋にて。

 

そこではペガが造花づくりの内職に精を出しており、無爪と千歌はその手伝いをしているところだった。

 

『はぁ~あ、ペガも小説書けたらなぁ。 造花より儲かるのに・・・・・・』

「まぁ、ペガくんって地球人に擬態できないもんね・・・・・・」

 

ペガも無爪のように出来れば表立ってバイトしたいのだが、地球人に擬態できない以上、こうした造花のような内職くらいしか自分に出来るバイトは存在しない。

 

だからペガは同じように姿を見せなくても小説の方が売れ方次第ではあるものの、少なくとも今よりも稼げるのにと嘆いていたのだ。

 

最も、ペガ自身そんな才能があまり無いことは自覚しているので半ば小説を書くのは諦めモードだったが。

 

「あっ、だったら今度荒井先生にこっそりと触れてみなよ。 もしかしたら才能あやかれるかもよ?」

 

そこで無爪がペガに今度の講演会の時にこっそりと荒井に触れてみてはどうかと提案し、それを受けてペガも「じゃあ先生に触れられたら試しに何か書いてみるよ!」とノリ気となるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レイジが暮らしているアパートにて。

 

「講演会かぁ。 僕SFってピンッと来ないんですよね」

 

あの後、レイジや無爪、千歌達は「折角先生が講演会に招待してくれたんだから1冊だけでも」という理由で花丸やハルヲから荒井の書いた小説の幾つかを強制的に借りさせられ、レイジは椅子に座りながら花丸から借りた荒井の代表作「コズモクロニクル」を手に持ちながらゼロに「SFってリアリティ感じます?」と質問していた。

 

『今、絶賛SF中みたいな奴が言うことか』

「そうかもですけど、だって小説のあらすじも『炎の盗賊団』とか『鏡の勇者』とか」

 

レイジはさらに今度はハルヲから貸して貰った「歌の戦姫と銀河」「軍艦の力を宿す少女達と未知の超人」といった小説を手に取り、パラパラとページを捲る。

 

「しかもなんですか、これ。 歌いながら戦う女の子とか、軍艦の力を持った少女達ととか、なんかぶっ飛んでるし。 特に前者」

『なに!?』

 

小説をテーブルに置いたレイジは椅子から立ち上がろうとするが、その時、ゼロがレイジの右手のコントロールを奪って本を手離さないようにし、「おい、今すぐこれを読むんだ!!」と言って強引にレイジに小説を読ませようとする。

 

「えっ、ゼロさん?」

『良いから読むんだ!! 今すぐ読め!!』

「あぁ、ちょっと!?」

 

そのままレイジは勢い余ってすっ転んでしまい、ゼロがあまりにもしつこかった為、レイジは渋々荒井の小説を読むことになるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから、講演会当日・・・・・・。

 

無爪、ハルヲ、千歌、レイジ、梨子、曜、善子、花丸、ルビィ、そして無爪の影の中に隠れてやってきたペガの10人は講演会の会場へと訪れ、受付けを全員済ませるのだが・・・・・・。

 

ハルヲは講演会に来れたことがよっぽど嬉しかったのか、受付の女性に「ちょっとお尋ねしますが・・・・・・」と声をかける。

 

「2万年早いぜ!! あっ、今のはね、人気の敵キャラ、『ゾーラ』の台詞でね・・・・・・」

「店長、それ受付の人にやることじゃないでしょ」

 

他にも受付待ってる人いるのだからそういうのは他のファンとの交流でやれと無爪から注意を受け、ハルヲは「はい」と渋々その場から去って行く。

 

「こ、こんなに人がいっぱいいるなんて・・・・・・やっぱり花丸ちゃんが言ってた通り、凄い人なんだね、荒井先生」

「そりゃ勿論ずらよ! ルビィちゃん!!」

 

人見知りが激しい性格故か、会場の予想以上の人混みの多さのせいでルビィは肩を小動物のように震わせながらついつい花丸の後ろに隠れつつ、改めて荒井の人気の高さを知り、それに花丸は自分のことのようにどこか誇らしげな表情を浮かべる。

 

「というかルビィちゃん大丈夫? 人も多いし、あんまり無理しなくても・・・・・・」

 

だが、それと同時に花丸は人混みの多さのせいで緊張しているルビィに気を使い、別に無理して来なくても良いと言うのだが、彼女は首をブンブンと横に振り、「大丈夫!」と言葉を返す。

 

「私は平気だよ! 折角先生に招待して貰ったし、それに、花丸ちゃんから貸して貰った荒井先生の本も面白かったし!」

 

そう言いながらどこからか「地球生まれの宇宙怪獣」と書かれた本を取り出し、それを花丸に返すと、彼女も「ルビィちゃんが楽しめたのなら良かったずら」と自分が貸した荒井の小説を面白いと言ってくれたことを喜び、2人でお互いに微笑んでいると・・・・・・。

 

そこへ怪訝そうな顔を浮かべた善子がズイズイと花丸に向かって何か言いたげな様子で向かって来る。

 

「ちょっと!! ずら丸が貸してくれたこの本なんなのよ!? めっちゃ怖いんだけど!!? ってか出て来る怪物がもれなくグロい!!」

 

善子は花丸から借りた「Nexus」と書かれた小説を見せつけながら彼女は小説の内容に文句を言って来るのだが・・・・・・花丸的には何時も堕天使堕天使言ってる善子のことなので、そういう感じのホラー系なやつとか好きかと思い、彼女の好みに合わせたジャンルを選んだつもりだったのだが・・・・・・。

 

どうやらあまり好みには合わなかったらしい。

 

「特にネズミの怪物が凄くヤバかったわ・・・・・・。 というか、ずら丸ってこういうの読んでたんだって言うのが何よりも怖いんだけど!? アンタこういう作品読むキャラだっけ!?」

 

どうにも「Nexus」という作品は登場する怪物が字面だけでも分かるくらいとてつもなくグロいのが多い上に、やたらとその怪物達が人を襲う描写がリアルで、主要人物も読者も精神的に追い詰めるような展開が多く、そのため善子は花丸の性格的に彼女がこんなホラーチックな作品を読むことに驚きを隠せなかったのだ。

 

「いや、マルだって平気だった訳じゃないずらよ!? でも先生の作品だったから・・・・・・それに、そのNexusシリーズは一度読んだらもう続きが気になって気になって仕方ない作品だったし・・・・・・」

「確かにこれ、怖いのに滅茶苦茶引き込まれたわ。 しかもこれ、怖いだけじゃなくて要所要所熱い展開があるのよね。 最終話とか凄く熱かったわ。 その過程で幾つかトラウマ植え付けられたけどね!」

 

とはいえ、面白かったのは事実なようで、ルビィもそのシリーズが少し気になったようだったが、それは花丸と善子が全力で阻止した。

 

そんなやり取りを花丸達がやっていると、荒井がやってきて彼の存在に気付いた無爪達は改めて今回講演会に招いてくれたことに対してお礼を言うため、彼の元へと駆け寄る。

 

「あ、荒井先生! ほ、本日はおお、おまなき頂き、ありがとうぞんじたてまつります!」

「店長、緊張のあまり言動が支離滅裂なものになってるから落ち着こう!」

 

無爪はどうどうとハルヲを落ち着かせ、そんなハルヲを見て「あはは」と荒井の方も思わず笑うと「今日は最後まで楽しんでください」とだけ無爪達に言うと、彼はそのままスタッフ達との打ち合せに向かうのだった。

 

『さて、それじゃこっそりと・・・・・・今だ!』

 

そこでペガがこっそりと荒井の影の中から現れると、彼は荒井の才能をあやかるため、彼にそーっと触れようとするのだが・・・・・・その時、ペガは荒井がジッとこちらを見ていることに気付き、その凍てつくような視線を受け、ペガは「うわぁ!?」と小さな悲鳴をあげる。

 

そのまま彼はペガに向けて不気味に笑うと、その場を去って行き、その一部始終を見ていたゼロは人格をレイジと交代し、メガネを外してペガの元へと駆け寄る。

 

『おい! アイツ今、お前に気付いてなかったか!?』

『あの人なんか怖い・・・・・・、僕先に家に帰ってるね』

『あっ、おい!』

 

すっかり荒井に対し、恐怖心を覚えてしまったペガは影の中へと引っ込んでしまい、それに気付いた無爪や千歌が「ペガ帰ったの?」と彼の元へと駆け寄る。

 

「ってあれ? メガネ外して目つきが鋭くなってるってことは・・・・・・今はゼロになってる?」

「えっ? 元々レイジさんって目つき鋭かったような・・・・・・だから何時も伊達メガネかけてるんでしょ?」

「いやあれ伊達メガネだったの!?」

 

千歌が言うには少しでも自分の強面さを和らげるためにレイジは何時も伊達メガネをかけていたようで、その新事実に無爪は驚きを隠せなかった。

 

最も、メガネをかけたとしてもそれでもレイジの強面っぷりは余りあるものがある為、何度もそのスジの人と勘違いされ、通報されかけているので効果があるのかは微妙なところだが。

 

『って今はそんな話はどうでも良いんだよ!』

『僕にとっては死活問題なんですけど・・・・・・』

『それよりも、あの荒井とか言う小説家・・・・・・恐らくはこの星の人間じゃない』

 

そう言いながらゼロが懐から荒井の小説の一冊、そう言いながらゼロは懐から「コズモクロニクルⅠ 闇よ輝け!」と書かれた一冊の小説を取り出し二人に見せると千歌は首を傾げながら「それがどうかしたの?」とゼロに問いかける。

 

『この本に書かれているのは、俺の戦いだ』

「ゼロの?」

『始めは偶然かと思ったんだが、表紙の絵。 これはベリアルが『アークベリアル』ってのになった時の姿だ』

 

そこに描かれているイラストはかつてゼロが初めて「ウルティメイトゼロ」となり、アークベリアルへとパワーアップを遂げたベリアルと決着をつける時の光景と非常に酷似しており、さらにはこの本の内容も台詞も自分とベリアルの戦いを見たとしか思えないほど似通っているというのだ。

 

さらにまた別にゼロは2冊の小説を取り出し、それを無爪と千歌に見せる。

 

『それに、この『歌の戦姫と銀河』『軍艦の力を宿し少女達と未知の超人』。 これは俺の後輩達、ギンガ、ビクトリー、エックスとその仲間であるシンフォギア奏者と艦娘達の話だった』

「それってただのウルトラマン達のファンなんじゃないの? ゼロの仲間のウルトラマン達も、色んな星で平和を守ってるんでしょ?」

 

千歌はだったら荒井はウルトラマン達のファンで、彼等が好きだからゼロ達の話を題材にした話を書いているのではないかと思ったのだが、ゼロはそんな千歌の考えを首を横に振って否定した。

 

『このコズモクロニクル、この話の中で・・・・・・俺は悪役だ。 しかも、悪役にされてるのは俺だけだった。 俺のことを挑発してるとしか思えない』

 

それに荒井はあきらかにペガの方を見ていたにも関わらず、彼は特に驚いた様子を見せなかった。

 

そのことからも、ゼロは無爪や千歌に荒井に対してハッキリと事が分かるまで警戒を怠らないように忠告するが・・・・・・。

 

「地球人じゃないから敵なんて、そんなの決めつけだよ!」

「そうだよ、ゼロ! それに、ゼロが悪役なのも敢えてそういう風にしてるって可能性もあるじゃん!」

 

無爪はジードがベリアルに似てるという理由だけのせいで人々から賛否両論な評価をされている身だからか、地球人じゃないから敵というゼロの言い分に納得することができず、それは見た目のせいで辛い思いをしたりしている無爪を見てきた千歌も同じで、ゼロが言うことは偏見だと反論する。

 

『決めつけでも偏見でもない! 戦士の勘ってやつだ』

「そうかな? 僕は、信じたい・・・・・・」

「私もなっちゃんと同じだよ、ゼロ。 私も・・・・・・ッ!」

 

だが、次の瞬間、千歌は脳裏に見た荒井の、背筋が凍り付くような不気味な笑みを思い出し、言葉を詰まらせてしまうが・・・・・・。

 

それでもやはり、先ずは信じてみるべきだと彼女もゼロに強く主張する。

 

「私も、先ずは兎に角信じるよ。 私達のこともこうして招いてくれたし!」

 

その時、講演会が間も無く開始される合図のブザーが鳴り響く。

 

「3人ともそんなところで何やってるの!? もうすぐ講演会始まるよー!」

 

そこへ曜がこちらに手を振りながら無爪、レイジ、千歌に講演会が始まることを伝え、無爪と千歌は「今行くよ!」と返事をすると、2人はそのまま会場へと向かい、ゼロもメガネをかけて人格をレイジと入れ替えるのだった。

 

「ゼロさん・・・・・・だ、大丈夫なんでしょうか? 僕、なんだか不安になってきました・・・・・・」

『仕方ない、いざとなったら俺が出る。 行くぞ』

 

不安を口にするレイジに対し、ゼロは安心させるようにそう言うと、レイジは「はい!」と頷いて彼も会場へと向かうのだった。

 

「ゼロさんがそう言ってくれるなら、安心ですね。 ゼロさんと一緒なら、怖い物なしです」

『嬉しいこと言ってくれるじゃねえか。 だが、レイジも油断はするなよ』

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

「正義の名の元に、輝きの騎士団を操り、宇宙の全てを支配したバルグ王に主人公である勇者アガムは戦いを挑みます。 しかし返り討ちにあってしまい、反逆者として追放される。 これが私のデビュー作『コスモクロニクル 闇よ輝け』のオープニングです」

 

講演会では壇上に立って荒井が自分の作品のあらすじを語り、それを聞いていたゼロはそれがベリアルの都合の良いように物語が書き換えられていることに憤りを感じずにはいられなかった。

 

つまり分かりやすく言うとコズモクロニクルは『ウルトラマンベリアル THE MOVIE 超最強! ベリアル銀河帝国』ということである。

 

『ベリアルの都合の良いように書き換えやがって』

「あっ、そうなんですか?」

 

それを聞いて思わず声を出してしまったレイジは左右に座る花丸と曜に「シー!」と注意され、両手で自分の口を慌てて塞ぐ。

 

「ところで、初期三部作の中で人気の高いキャラクターと言えば、誰でしょう?」

「「はい!! 『輝きの騎士、ゾーラ』!!」」

 

荒井の言葉に我先にと花丸とハルヲが手をあげ、そのことに周りから笑みが零れるのも構わず荒井に「正解です」と言われると2人はガッツポーズをしてとても嬉しそうにする。

 

「そうですね。 最初こそ、ゾーラはそのヤンキーっぽい性格から賛否両論のあるキャラでしたが、話が進むに連れて今ではすっかりと悪役にも関わらず、人気のキャラクターとなりました」

『ゾーラってのは俺のことか。 チッ、ヤンキーっぽい性格で悪かったな』

 

ゼロは荒井にヤンキー呼ばわりされて不機嫌となるが、そんなゼロの声は当然聞こえておらず、荒井はそのまま話を続ける。

 

「輝きの騎士、ゾーラは勇者アガムと幾度も激しい戦いを繰り広げます。 ところが、ゾーラはコズモクロニクル3作目、『闇よ美しく』で死んでしまいます」

『「えっ、死ぬの!?」』

「先生、シーッずら!」

「そうだよ、レイジお兄ちゃん、静かに!」

 

左右から花丸と曜に注意され、申し訳無さそうにするレイジ。

 

「そこで本日は、ゾーラに代わる新しい輝きの騎士を考えてみたいと思います。 そして、次の作品に登場させましょう」

 

荒井のその提案に会場が一気にどよつき、会場に来ていた人々はその発表に拍手を送る。

 

「では、皆さんの中からどなたか1人、舞台に来て頂けますか? その方をモデルに輝きの騎士を、作ってみたいと思います」

 

それを受け、花丸やハルヲを始め、多くの人々が「自分こそが!」と手を挙げる中・・・・・・荒井は何故か特に手を挙げた訳でもないレイジに視線を向け、「そちらの方」とレイジに手を伸ばす。

 

「えっ、えっ、僕!?」

「そうです。 是非こちらに・・・・・・」

「え、えっと、でも、僕・・・・・・」

『上等じゃねえか。 レイジ、身体借りるぜ』

 

レイジは荒井の招きに戸惑っていたが、ゼロの方は敢えて受けてやるとレイジと人格を交代し、メガネを外して荒井の元へと歩いて行く。

 

「羨ましいずらぁ・・・・・・レイジ先生」

「頑張ってレイジお兄ちゃん!」

 

花丸の羨ましがる声と、曜の応援を背に受けながらゼロは荒井の元へと辿り着くと荒井は来てくれたことに「ありがとうございます」と笑みを向けながらお礼を述べる。

 

「あなたのお名前を伺っても?」

『渡辺 レイジだ』

「ではレイジさん、先ず・・・・・・握手を」

 

そう言いながら荒井はゼロに手を差し伸べて握手を求め、ゼロは警戒しながらも荒井の手を掴み、握手をする。

 

「私は何時もこうして想像します! 目の前の人の手の感触、匂い、息づかい、そこからどんなキャラクターが生まれるか・・・・・・失礼」

 

荒井はそう言うとゼロに小声であることを耳打ちする。

 

「やぁっと会えましたねぇ、ウルトラマンゼロ」

『っ、お前やっぱり・・・・・・!』

「おっと、動かないでください。 このまま・・・・・・」

『お前、一体何者だ?』

「これからあることが起こります。 あなたは決して動いてはいけない。 私に従ってください、良いですね?」

 

荒井はゼロに決して動かないように忠告した後、ゼロから離れる。

 

「うーん、成程、あなたは浦の星学院で教師をなされていますね? そこにはあなたの従妹も通っていてお友達とスクールアイドルをやっている。 そして、自分は気の弱い性格だけど顔が怖いせいで何時も苦労していると・・・・・・」

(こいつ、レイジのこと徹底して調べてやがるのか?)

 

自分のこと、正確にはレイジのことなど一切荒井に話していないにも関わらず、レイジが浦の星で教師をやっていること、従妹の曜のこと、その彼女がスクールアイドルをやっていること、強面に悩まされていることなどを荒井は言い当て、ゼロは荒井を睨み付ける。

 

「あれ? レイジお兄ちゃんって荒井先生と全然話したことないのに、よくあんなにレイジお兄ちゃんのこと知ってるね」

 

また荒井がレイジの周囲のことなどを知っていることに曜も違和感を感じ、あらかじめ打ち合せでもしてたのだろうかと思ったが・・・・・・先ほどのレイジは荒井に自分が選ばれたことに戸惑っていた為、その可能性は薄く・・・・・・。

 

ならば何故、と首を傾げる頭に疑問符を浮かべる曜。

 

「さっき小声で何か話してたみたいだからその時、レイジ先生が色々話したんじゃないかな?」

 

そんな疑問を解消するように花丸が先ほど小声で話していた時に、レイジが自分のことを話したのではないかと言うのだが、それにしては少々話す時間が短かったようにも曜には感じてならなかった。

 

「では、新しい登場人物は普通の先生ということにしましょう。 彼は何が切っ掛けで輝きの騎士になるのか。 何か、アイディアはありませんか?」

 

荒井はにっこりと笑いかけながらゼロに何かアイディアは無いかと尋ねるが、ゼロは何も応えない。

 

「ハハ、まぁ、いきなり聞かれても困りますよね。 ではこうしましょうか? 私は、あなたの敵役です。 そしてあなたをこう脅す。 『動くな。 動けばこの建物ごと集まった人間を吹き飛ばす。 お前の従妹と、その友人達も一緒だ』」

『っ』

 

周りの人達から見れば、それは荒井の演技だと思うだろう。

 

だがゼロは違う。

 

この荒井の台詞は演技でもなく、紛れもない事実。

 

下手に動けば本当にこの建物ごとここにいる人々を吹き飛ばしかねない。

 

そのことを瞬時に理解したゼロは目を見開き、動くに動けない。

 

「跡形もなく、焼き尽くしてやる・・・・・・」

『お前はどうなる?』

「迫真の演技良いですね~! 勿論、私は無事です」

 

荒井はノリが良いとレイジに軽い拍手を送り、ゼロは荒井に「目的なんだ!?」と尋ねる。

 

「目的は、お前だ・・・・・・」

 

荒井はそう言いながらゼロを指差す。

 

「お前の中にはゾーラの魂が宿っている。 その魂を、肉体ごと滅ぼしてやる・・・・・・!!」

 

荒井は拳を握りしめ、その様子を見ていたハルヲは「絶対絶命のピンチじゃないか!」と思わず興奮して立ち上がる。

 

「えっ? どっちが? これどっちがピンチなの?」

 

曜はどちからと言えばレイジの方がピンチのように見える為、一体どっちが今ピンチなのかが分からず、彼女は軽く混乱してしまう。

 

「ね、ねぇ、なっちゃん、なんか様子がおかしくない? 今、レイジさんゼロと人格を交代してるよね?」

「確かに・・・・・・なんか変、かも・・・・・・」

 

また千歌や無爪もレイジがメガネを外していることからゼロがレイジと人格を交代し、ゼロや荒井の様子がおかしいことに気づき始めていた。

 

「ですが皆さんご安心を。 逆転の一手を用意しています」

 

そんな時、荒井は白い機械竜のようなロボットが描かれた1つの怪獣カプセルを取り出し、ウルトラカプセルにも似たそれを見たゼロ、無爪、千歌は目を見開き、驚愕の表情を浮かべる。

 

「これは、次の作品に出すアイテムの模型です。 これを使うことで、平凡な教師は輝きの騎士に変身ができるのです」

「あれって、ウルトラカプセル!? じゃあ、もしかして荒井先生もウルトラマン・・・・・・?」

「いや、違う。 あれに描かれてるのは怪獣だ!」

 

千歌は遠目なこともあって荒井が手に持っているのが無爪が持っているのと同じウルトラカプセルかと思い、それを持っているということは荒井もウルトラマンなのかと思ったが・・・・・・。

 

無爪はカプセルに描かれているのがウルトラマンではなく、怪獣だったことから即座に似て非なるものだと見抜き、荒井はニヤリと笑うとカプセルのスイッチを起動させ、腰に装着してあった装填ナックルに差し込む。

 

そして装填ナックルを取り外すと、無爪と同じ「ライザー」を取り出し、そのスイッチを押してナックルに装填したカプセルをライザーに読み込ませる。

 

「さぁ、新しい騎士の・・・・・・誕生です」

『やめろぉ!!』

 

ゼロは荒井にやめるように叫び、席を立ち上がった無爪も荒井を止めようと急いで駆け寄ろうとするが・・・・・・間に合わず、荒井はもう1度ライザーのスイッチを押すと会場の外に向かってそれをかざす。

 

『ギャラクトロン!』

 

そして会場一帯が緑色の光に包まれ、それが収まった時・・・・・・無爪の持つ装填ナックルを通してレムから通信が入る。

 

『無爪、あなた達がいる会場の付近に怪獣が現れました』

「えっ!?」

 

レムが言った通り、会場の少し離れた場所で突如空に魔法陣のようなものが現れ、そこから白い機械竜とも言える巨大なロボット、「シビルジャッジメンター ギャラクトロン」が出現し、大地へと降り立ったのだ。

 

ギャラクトロンは胸部から放つ赤い閃光光線を放って街を破壊し、またギャラクトロンの出現で無爪達のいる会場も怪獣出現のアナウンスが流れ、警報が鳴り響き、人々は半ばパニック状態になりながら外に出ようと逃げ惑う。

 

「怪獣だぁ!!」

「早く逃げろぉー!!」

「千歌ねえは曜ねえ達を避難させて!!」

 

無爪は一度千歌の元まで戻って耳打ちして曜達を避難させてくれと頼むと、彼女は「分かった」と頷き、曜達を急いで避難させようとする。

 

「曜ちゃん! みんな! 早く外に!」

「えっ、でも無爪くんはって・・・・・・ひゃああ!!?」

「あっ、梨子ちゃん!?」

 

梨子は無爪が逃げようとしないことに気付いて、彼はどうするのだろうかと千歌に尋ねようとしたが、彼女は逃げ惑う人々の波に押され、そのまま出入り口の方へと行ってしまい、よく見ればハルヲや曜達も同じように人々の波に飲まれ、彼女等も出入り口へと向かうこととなった。

 

「むしろ結果オーライってうわああ!!? 私も!?」

「千歌ねえ気をつけてね!!」

 

無爪は千歌に怪我だけはしないように言うと、彼はゼロの元へと駆け寄る。

 

「怪獣はこっちに向かって来るかもしれない、落ち着いて! 落ち着いて避難してください皆さん!」

『てんめぇ・・・・・・!』

 

ゼロは荒井を睨み付けるが、荒井は「おっと動くな」とゼロを制止し、親指をクイッと後ろの方に向け、ゼロや無爪が荒井の指差したところを見るとそこには監視カメラが。

 

「下手なことはしない方が良いですよぉ? ウルトラマンゼロ。 音声こそ切ってはいますが、今ここで私を殺す、もしくは暴行を加えて大人しくさせる、そうすればあの怪獣は止まるかもしれない。 しかしそうなればあなたは著名な小説家を殺害した人殺し、殺さなくても暴行を加えれば傷害罪として訴えられる」

『チッ・・・・・・』

 

そんな風に、自分達が迂闊に手出しできない状況であることにゼロは舌打ちし、それと同時に、荒井は右手で自分の顔を覆うと、彼は「ククク・・・・・・」と小刻みに突如笑い出す。

 

「あぁ~、待ちましたよ、この時を・・・・・・。 ようやくだ、ようやくこうしてあなた達の前に『本当の私』として現れることが出来た。 ヒーローを追い込む為に私が考えたこのシナリオ、最高だ。 これほどまでに楽しいとは思いませんでしたよ」

『何を言っている?』

 

そして荒井は両腕をバッと大きく広げ、高らかに笑い出したのだ。

 

「フハ、アハハハハ!! だってそうでしょう!? 今まさに私は、さいっこうに『悪』って感じがするじゃないですかァ!! 今まで本来の自分をなるべく抑えていただけの甲斐があるというものです!!」

『あぁ?』

 

 

 

 

 

それと同じ頃、千歌達は外に出ようと出入り口の前に出ていたのだが、何故か扉が開くことができず、そのことから人々はパニックに陥ってしまっていた。

 

「そんな、なんで扉が開かないの!?」

 

 

 

 

 

 

 

場所は戻り、無爪はゼロに一緒にギャラクトロンを倒すため、戦いに行こうと言うのだが・・・・・・。

 

「っ・・・・・・」

 

何故か、ゼロは動こうとはしなかった。

 

「ゼロ?」

「ハハハハ、どうやら戦士の勘がささやくのでしょう。 あの怪獣は強い、今の彼の力では勝てる訳がないと」

「そんなこと、そんなことない! 外にいる怪獣は、僕が倒してみせる!」

 

そう言って無爪は監視カメラのない場所を目指して走ってそこで変身を試みようとするのだが・・・・・・。

 

「栗本 無爪くん!!」

 

突然、荒井に名前を呼ばれ、無爪は思わず足を止め、荒井の方へと顔を向ける。

 

「改めて自己紹介しよう。 私の名は『荒井』。 感謝するよ、君がヒーローになる道を選んでくれて。 だから、覚えておいてくれ。 君がヒーローなら・・・・・・私は、ヴィランだ」

「っ」

 

無爪は一瞬、荒井を睨み付けた後、監視カメラが映していない場所を見つけてそこの窓からガラスを割って飛び出し、外に出ると彼はジードライザーを取り出す。

 

「ジーッとしてても、ドーにもならねえ!!」

 

腰のカプセルホルダーから「初代ウルトラマン」のカプセルを取り出し、スイッチを押して起動させるとそこからウルトラマンが出現。

 

「融合!!」

 

ウルトラマンのカプセルを装填ナックルに装填させた後、さらにそれとは別に「ウルトラマンベリアル」のカプセルを取り出し起動させると今度はそこからベリアルが出現。

 

「アイ、ゴー!!」

 

同じくベリアルのカプセルをナックルに装填し、ジードライザーで装填したカプセルをスキャンする。

 

「ヒア、ウィー、ゴー!!」

『フュージョンライズ!』

「決めるぜ、覚悟!!」 

 

そしてジードライザーを掲げて胸の前でスイッチを押すとウルトラマンとベリアルの姿が重なり合い、無爪は2人のウルトラマンの力を合わせた「ウルトラマンジード プリミティブ」へと変身を完了させる。

 

「はあああ、はあ!!」

『ウルトラマン! ウルトラマンベリアル! ウルトラマンジード!! プリミティブ!!』

『シュア!!』

 

すると、ジードの姿を確認したギャラクトロンはジードの身体をスキャン。

 

それに戸惑うジードだったが、構わずギャラクトロンに飛びかかってジードはニーキックを繰り出す。

 

しかし、ギャラクトロンは全く怯まず、逆にその巨大な爪のついた右腕を振るってジードを殴り飛ばしてしまった。

 

『ウアッ!?』

 

殴られたジードはそのまま前のめりに倒れ込み、ギャラクトロンはジードを踏みつけようと足を振り上げるが、身体を転がすことで攻撃を回避し、ジードは立ち上がる。

 

『タアア!!』

 

今度はジードは跳び蹴りをギャラクトロンに繰り出すが、ギャラクトロンは右腕で受け流し、ジードの背後に回り込むと左腕の回転式の大剣「ギャラクトロンブレード」を展開し、ジードの背中を斬りつける。

 

『ウアア!!?』

 

さらにギャラクトロンは右手でジードを殴りつけると、軽く空中へとジードは吹き飛ばされてしまう。

 

『グウウ!!?』

 

だが、ジードは空中で身体を捻ってなんとか地面に着地し、オーブ・エメリウムスラッガーとベリアルの力を融合させた姿、「トライスラッガー」に今度はフュージョンライズして姿を変える。

 

『トライスラッガー!』

『ジードクロー!!』

 

そこから二又のかぎ爪型の武器、「ジードクロー」を構え、ジードは頭部に装着された3本の宇宙ブーメラン、「アイスラッガー」をウルトラ念力を使い、ギャラクトロンに向けて飛ばして攻撃。

 

同時にジードもギャラクトロンに真っ直ぐ突っ込んでいき、自分は前、右、左、後ろから自身が操るアイスラッガーでギャラクトロンを斬りつけようとするのだが・・・・・・。

 

ギャラクトロンはジードクローによる攻撃は敢えて正面から受け、残りの3つのアイスラッガーは魔法陣のバリアを張り巡らせて防ぐと、ギャラクトロンは胸部から放つ破壊光線「ギャラクトロンスパーク」を近距離からジードに向かって放ち、直撃を受けたジードは大ダメージを受けながら吹っ飛ばされる。

 

『グアアアアア!!!!?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お前が怪獣を操っているのか?』

 

一方、講演会の会場では未だにゼロと荒井が対峙しており、荒井は「その通り」とだけ淡々とした様子で応える。

 

『お前は俺に何をさせたい?』

「話が早くて助かりますよ、ゼロ。 あなたにして頂きたいこと、それはあの怪獣の放つ熱線の直撃を受けて欲しい。 ただ・・・・・・それだけです」

 

荒井は不気味に笑みを浮かべながら、ゼロにそう言うと、当然ゼロは険しい表情となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃、ジードは未だにギャラクトロンと戦闘を行っており、ジードは「ロボットって言ったら関節が弱い筈!!」という考えから、アイスラッガーの1本を左手に持ち、ジードクローを右手に持ちながらギャラクトロンの右の懐になんとか潜り込むと肘関節を狙ってアイスラッガーを振るうが・・・・・・。

 

ギャラクトロンはそれを読んでピンポイントにバリアを張って防ぎ、眼から放つ閃光光線をジードに撃ち込み、自身から引き離す。

 

『グウウ!!?』

 

さらにギャラクトロンが右腕をジードに向けると、右腕をロケットパンチの如く発射。

 

『ロケットパンチ!?』

 

ギャラクトロンは飛ばした右腕を自由自在に操り、ジードを翻弄した後、空中で一時停止するとそこから光線を発射。

 

同時に、ジードが自身の右腕に気を取られ、後ろを見せた隙を突いてジードの背中に眼と胸部から放つ閃光光線を放つ。

 

『なに!?』

 

前後から放たれたギャラクトロンの光線に、ジードは躱すことも防ぐこともできず、直撃を受けて身体中から火花を散らし、その際にジードクローを落とし、ジードは悲痛な声をあげて力無く倒れ込んでしまう。

 

『ウアアアアア!!!!?』

「なっ・・・・・・ジード・・・・・・!」

 

またジードとギャラクトロンの戦いは千歌達が外に出ようとした出入り口からもガラス越しに見えており、先ほどから手も足もでないジードの姿を見て、思わず「なっちゃん」と言ってしまいそうになるのを堪えながら心配そうに彼女はジードを見つめていた。

 

『ぐぅ、こいつ・・・・・・なんで僕の動きをさっきから読んで・・・・・・』

『恐らく、最初にジードの身体をスキャンした時に無爪の戦い方をあの怪獣がインプットしたからでしょう。 そのため、怪獣はジードの動きを先読みすることが可能になっていると思われます』

 

レムから通信でどうしてギャラクトロンには自分の攻撃がことごとく通用しないのか、予想ではあるもののその理由を聞かされ、それを受けたジードはだったら今まで使ったことのないフュージョンライズなら対抗できるのではないかと思いつくが・・・・・・。

 

『理には叶っています。 ですが残念ながら、今持っているカプセルで新しいフュージョンライズすることは不可能です』

『だよね・・・・・・! なら、どうすれば・・・・・・!』

 

 

 

 

 

 

 

 

「悩む時間はありません、時間を遅らせればジードは死ぬ!」

『ゼロさん、僕達はどうすれば・・・・・・!』

 

未だに荒井と対峙するゼロ。

 

しかし、荒井の要求について考えている時間はない。

 

そのため、ゼロが出した答えは・・・・・・。

 

『・・・・・・受けてやるよ』

「フフフ」

 

そんなゼロの返答に荒井は笑みを浮かべると、指をパチンと鳴らし、人々が逃げた場所とはまた別のところの扉が開き、荒井はそこからゼロにギャラクトロンのところに行くように指示を出す。

 

「誰もがウルトラマンジードの戦いを見ています。 あなたの死を見届ける者はいない。 1人寂しく・・・・・・逝くが良い」

『っ・・・・・・』

 

ゼロは胸ポケットからウルトラゼロアイNEOを取り出し、それを握りしめると荒井の言う通り彼が開けた扉に向かって駈け出し、外へと出てギャラクトロンと戦うジードの元へと辿り着く。

 

『・・・・・・レイジ、震えてんのか? そりゃそうだよな』

 

ゼロアイを握るの手はぷるぷると震えており、それは彼と一体化しているレイジが怯えているからであり、ゼロはレイジを絶対に死なせはしないから安心しろと声をかける。

 

『レイジ、お前も、千歌達も、無爪も、みんな俺が死なせない!』

 

一方、ギャラクトロンは後頭部から伸びる大きな鉤爪の付いた「ギャラクトロンシャフト」で倒れ込んだジードの身体を掴み、持ち上げるとギャラクトロンはブレードを構え、それをジードへと突き刺そうとする。

 

『おい!! オーブから聞いてんぞこのクソコテロボ!! お前の攻撃を受けに来てやったぜ・・・・・・』

 

ゼロの呼びかけに気付いたギャラクトロンは視線をゼロへと向ける。

 

『ゼロ! レイジさん・・・・・・! 無爪! 2人が危ないよ!』

 

星雲荘で待機していたペガはユートムを通してそこからジードの戦う様子を確認しており、通信でジードにレイジとゼロが危ないことを伝え、ジードはレイジとゼロを助けようと必死にもがき、シャフトを何度も殴るがビクともしない。

 

そして、ギャラクトロンは右手をゼロに向けると・・・・・・そこから破壊光線を発射。

 

『っ、フン!!』

 

しかし、ゼロはゼロアイを構えてギャラクトロンの光線を防ぐ。

 

『グウウウ、ウウウウウ!!!!!?』

 

やがてゼロアイから「ウルトラマンゼロ」本人が出現し、ゼロはギャラクトロンの攻撃を全て自分が一手に引き受け、レイジに光線が当たらないように必死に自分が身体全体で受け止める。

 

『レイジ、よく、耐えてくれたな・・・・・・』

「っ、ゼロさん・・・・・・!? ゼロさん!!!!」

 

次の瞬間、レイジは光線によって弾き飛ばされ、身体を地面に強く打ち付けはしたもののゼロが全力で庇ってくれたおかげで特に怪我をすることはなかった。

 

しかし、レイジの手から離れ、同じように地面に「コツン」と落ちたウルトラゼロアイは石となってしまうのだった。

 

「ゼロ・・・・・・さん・・・・・・? ゼロさん!?」

 

それを見たレイジは慌ててゼロアイを拾いあげ、何度もゼロアイに向かってゼロの名を呼ぶのだが・・・・・・レイジにはゼロの声が全く聞こえず、同時に、その光景を見たジードもまた悲痛な声をあげる。

 

『ゼロ・・・・・・!? うあああああああ!!!!』

『ソリッドバーニング!』

 

ジードは「ウルトラセブン」と「ウルトラマンレオ」のカプセルを使い、「ソリッドバーニング」に姿を変えるとそのパワーでシャフトを両手で掴み、シャフトの左右を引っ張ってなんとかギャラクトロンの拘束から脱出することに成功。

 

そのまま素早く先ほど弾き飛ばされたジードクローを回収し、それを構える。

 

『だったらまだ使ってない技だ!!』

 

現状、新しいフュージョンライズが不可能ならばまだ使用していない技を使えば良いとジードは判断し、ジードクローのトリガーを2回引いてボタンを押し、ジードの全身にオレンジ色の炎のエネルギーを身に纏い、ジードクローを切っ先にして回転しながら敵に突っ込む「コースクリュージャミング」をギャラクトロンに繰り出す。

 

『コースクリュー・・・・・・ジャミング!!!!』

 

だが、ジードが初めて見せる技にも関わらず、ギャラクトロンは前方にバリアを張り巡らせて攻撃を防いでしまう。

 

しかし、それでも今、初めて使用する技ということもあり、コースクリュージャミングはギャラクトロンの予想を上回る攻撃力を発揮し、バリアはジードに砕かれ、次の瞬間ジードとギャラクトロンの間に爆発が起きる。

 

『ウアアッ!!?』

 

それによってジードは弾き飛ばされるが・・・・・・ギャラクトロンも左手を破壊され、ギャラクトロンブレードを失うこととなった。

 

既にジードのカラータイマーも点滅しており、ジード自身の肉体へのダメージも相当で立つこともままならない状態だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、荒井は・・・・・・。

 

「フフフ、ヒハハ、ヒハハハハハ!!!! いやっっったああああああ!!!!!!」

 

ゼロをギャラクトロンによって消し飛ばすことが出来た。

 

その事実に、荒井は歓喜し、ハイテンションにガッツポーズをしながらそのことに喜ぶのだった。

 

「やりましたよ、ベリアル様!! ウルトラマンゼロを、始末致しましたァ!! これで私も、ヒーローを、殺せたぁ・・・・・・!!」

 

 

 

 

 

 

 

ヒーローの条件ってなんだろう。

 

僕にはまだ、分からない。 

 

ただ、幾つか言えることはある。 

 

華麗に戦い、かっこよく勝つこと。 

 

大切な人を守るため、命を懸けられること。 

 

この時の僕には、まだどちらも出来ていなかった・・・・・・。

 

『なんで・・・・・・なんでだよおおお!!!!』

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