サーヴァント達の家族になりたいだけの人生だった。   作:Fabulous

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家族になろうよ。


スカサハ 弟

「やれ、弟よ。どうした?」

 

 私の元に我が弟がやって来た。常に城住まいであり戦士としての才能は無く闘争とは無縁の非力な弟だ。だが人の心、特に女のそれを掴むことに関しては無自覚ながらも無類の才能を持っている。

 

「なに? 自分は私や弟子達のように強くないだと? それがどうした」

 

 弟はうつむきながらそんなことを私に相談してきた。

 

「男として情けない……ははっ。いやいやすまない。バカにしたわけではないぞ?」

 

 弟は少女のような純な顔を紅くさせ私に詰め寄ってきた。恐ろしさなど欠片もなく可愛らしいだけだと言ったら更に怒ってしまうだろうな。

 

「そうか。そうか。お前もそんなことを考えるのだな、弟よ。なに、気にするな。私も弟子達も好きでやっているのだ。」

 

 弟は渋々納得したが「けど」と付け加えてきた。

 

「弟子と閨を伴にするな? ふっ、なんだ弟よ。嫉妬か? 嫉妬しているのか?」

 

 弟は度々、私が気に入った弟子と交わる事を非難していた。最近は新しく弟子となったクー・フーリンにも弟は疑いの目を向けていた。

 

 私を心配していると、弟はよく私に言って聞かせるがその眼の奥には明らかな男の嫉妬が燃えていた。

 

クー・フーリン。弟はあやつに勝ちたいようだ。

 

だが悲しいかな弟では逆立ちしても弟子には敵わぬだろう。それを弟はちゃんと分かっているからこそ本心を隠しているのだ。

他人であればどうしようも無いやつと呆れるが血を分けた弟となれば話は別だ。不器用ながらも必死に取り繕う様など浅はかで実に可愛らしい。

 

我が姉妹のオイフェも弟を気に入っている。だが弟に色目を使うオイフェを何度も咎めるうちにいつしか殺し合いになってしまうのには辟易していた。むろんやめる気は無いが。

 

最近はクー・フーリンに目を向けている娘のウアタハも弟とは昔から仲がいい。何度か私が場を整えて弟と娘を引き合わせようとしたが弟が堅物すぎて失敗に終わってしまったことは多々ある。

 

「弟よ、私が好きでしていることだ。それに私から見れば皆子供。本気になどならぬさ。」

 

弟はまだ何か言いたげだったが自室へと引き返していった。

 

(やれやれ、困ったやつめ。久し振りに水浴びにでも誘ってやるか?)

 

 

 

 

 

 

 

 

それからしばらくしてクー・フーリンが影の国から去って行くと私の中から何かが消えて生まれた。

それはどんどん増殖していき私の心を蝕んでいった。

 

 

そんな私に弟が心配そうに駆け寄ってきた。

 

「なんだ弟か。大丈夫だ、これしきのことなんの問題でもない。…………クー・フーリン? あやつならば行ってしまったよ。もう二度とここには来ぬまい。」

 

己の言葉にその事実を突きつけられる。そう、もうあやつはいない。どこにも。

 

そのとき、弟が私の言葉を聞き複雑な表情でそっと肩に手を置いた。

 

「なんだ弟よ、慰めてくれるのか?よせ……私は生娘ではないのだ。この程度で精彩を欠きはしないさ。本当だ、本当だぞ?」

 

弟はそれでもじっと私を見つめていた。まるで私が子供であるかのような目で。

 

(やれやれ……バレていたか。信じられないことだが私はクー・フーリンの事を存外気に入っていたのだな。)

 

私は失恋の傷を弟を抱きよせ癒した。弟の体からは良い匂いがした。

 

 

 

 

 

深夜、私は弟の寝室に一糸纏わぬ姿で入室した。酒とこれからすることを想像してしたたかに上気した体を鎮めながら寝台を見ると弟が寝息をたて熟睡していた。

 

「姉が折角訪ねてきたのに素っ気ないな。起きよ弟」

 

弟を揺り起こすと弟は寝ぼけ眼を擦りながら私を見た。徐々に目が夜に慣れてくると私の姿を認識し小さな悲鳴を上げた。

 

「何を驚いているのだ。最愛の姉が目の前にいるのだぞ?」

 

弟は意味が分からないと言った。まあ当然だろう。だからこれから分からせてやるのだ。

 

「お前のお陰だ。お前の言葉で私は新たな幸せを手に入れられる。そう......お前だ弟よ。」

 

私は寝台に膝を乗せ弟に覆い被さった。

弟は顔を真っ赤にさせながら何かを喚いているがしっかりと視線は私の体を捉えて離してはいなかった。

 

「気づいたのだ。外からやって来る男は良い男達だが結局皆私の手から離れていってしまう。だが弟よ、お前は別だ。お前はいつも如何なる時も私を待っていてくれる。私が誰を抱こうが抱かれようがな。お前こそ私の最愛なのだ。喜べ。お前は弟子達とは違う、クー・フーリンともな」

 

弟は私の言っている意味がようやく分かってきたのか戸惑いの表情が徐々に期待に変わっていくのを私は見逃さなかった。

しかし随分青い顔をしているな。今一つ弟は行動に移せていない。

 

「……あぁ、そう言えばお前は女を知らなかったな。興味はあるくせに妙な意地を張りおって、私に言ってくれれば幾らでも世話をしたと言うのに軟弱な。と、言いたいところだが今となってはそれは僥倖だ。女を知らぬ弟に姉である私がしっかりと手解きをしてやれるのだからな。ここまで来て逃げる気か? まぁいいさ。私はお前を抱くぞ。それに変わりは無い。ずっとお前が思い描いていた瞬間だ、予習は万全だろう?」

 

私の言葉に弟は驚愕の表情を向けた。

 

「ははっ、気付かないとでも思ったのか? お前が夜な夜な私やオイフェや娘を思い浮かべ捌け口にしていたことはしっかりと知っていたし見ていたさ」

 

弟はとうとう泣き出してしまった。流石にやりすぎたか......。

 

「泣くな泣くな。ほら、慰めてやろう。姉の胸を貸そう。どうした、やけに目が邪な想いで満ちているな?私をどうしたいのだ? 言ってみろ、怒らないから……な?」

 

「ん?聴こえないぞ。さぁもっと大きい声で言え。」

 

「……ふ…ふふふ……そうかそうか。我が弟はその様なことを私にしたいのか。良くぞ言ってくれたな。偉いぞ。だが我が娘やオイフェには荷が重かろう。ならば弟の願い、叶えるのが姉の役目。さぁ弟よ、来い。男として私を屈伏させてみろ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま...まさか弟よ......お主がこれほど此方の才能が有ったとはな、流石の私も予想外だぞ……。ここまで私を乱れさせた弟子はクー・フーリンくらいだが…………おっと、すまんすまんこのような時に他の男の話は厳禁だな、許せ。…んっ…く…ぅ……これこれ、急にムキになりおって。だからすまぬと言ったであろう。悪かった、悪かった。ここまでの男はお主以外居らんぞ、胸を張れ。」

 

弟の新たなる一面を知り多少の驚きがあったが良きことなので良いとしよう。

 

「むっ…ん……全く、また沢山出たな。いったいその細身にどれだけ溜まっているのだ。まったくもって始めと勢いが変わらんぞ。いや、それどころか増しておる。そうだ……いづれは娘も抱いてやれ。私と似ている娘だからな、あの娘はお前に惚れている。なんだ。気付いていなかったのか?……お前も罪作りだな」

 

すると弟の邪心が僅かに震えた。気づいていないようだったがまだまだ子供だな。

 

「……こらっ、女の私は分かるのだぞ弟よ。娘の名を出した瞬間に随分元気になるのだな? むっつりめ。まぁよい。何はともあれ私は嬉しいぞ。これならお主との子も直ぐに出来るだろうからな。そうかそうか。お主も嬉しいか」

 

私はいつの間にか組み敷かれていた上体を起こし弟に口づけする。

 

弟は今まで見たこともない程幸せな表情を浮かべていた。それを見て私も幸せだった。失った心を埋めていくように。肉体だけではない、心も満たされていった。

 

 

 

「いやはや、まったく家族とは良いものだな。」

 




ピュアなハッピーエンド
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