学戦都市アスタリスク 本物を求めて   作:ライライ3

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今回はちょっと早く完成しました。
戦闘シーンはやっぱり難しい。ちゃんと書けているか少し不安です。
誤字、脱字、感想等あれば、よろしくお願いします。



第八話 激闘

 雪ノ下陽乃 界龍第七学院 高校一年生

 中学二年の時にアスタリスクに渡り界龍第七学院中等部に入学。

 気さくな性格で面倒目もよく、本人の見目の良さも相まって学園の生徒から慕われている。

 

 入学初日に万有天羅に勝負を挑むも敗北。その後、万有天羅の弟子となる。

 優れた才能と豊富な星辰力を併せ持ち、万有天羅の元その才能を開花させる。

 

 合気道と界龍の武術を混ぜた近距離、魔女の能力を用いた中距離と遠距離、補助に星仙術を使用するなど、どれをとっても隙がなくアスタリスクの中でも有数の実力者だ。

 

 

 

 

 

 真剣な眼差しで星辰力と闘気を放つ雪ノ下陽乃と、無表情で星辰力と殺気を放つ比企谷八幡。

 二人はお互いに対峙して膨大な星辰力が放出している。その星辰力が二人の中間地点でぶつかり合い、お互いの闘気と殺気が混じり合い空気が圧力へと変貌していく。鶴見留美は見ているだけなのに押しつぶされそうな感じさえした。

 

 そんな極限状態の中、雪ノ下陽乃が動く。

 

「……行くよ」

 

 呟きと同時に陽乃の姿が消える。近くで見ていた鶴見留美にはそう見えた。一瞬の間に八幡の懐に飛び込んだ陽乃が先制の一撃を放つ。

 

「はっっ!!」

 

 その一撃に八幡は反応出来ない。無防備のままその一撃をその身に受ける。

 

「!!」

 

 だが八幡には届かない。彼の身に纏う闇が壁となり拳を受け止めていた。

 拳は闇を拒絶すかのように侵入を許さない。

 

「それなら!」

 

 一撃でダメなら連続でと言わんばかりに陽乃が攻勢を強める。左右の拳に蹴りを加え、流れるように連撃を放ち続ける。

 だが闇の障壁はそれらを全て防ぐ。攻撃した箇所に闇が集中し侵入を許すことがない。

 

「まだまだ!」

 

 しかし陽乃の攻撃が止まらない。連撃のスピードが段々速くなり、同時に八幡が後方へと徐々に押し流されていく。だがそれでも八幡には届かない。押しているのは陽乃だが闇の能力を突破できず有効打を与える事が出来ていない。

 

「はぁぁああ!!」

 

 陽乃の雄たけびと共に星辰力がさらに上昇する。上昇した星辰力を両腕に行きわたらせ八幡に向かって突貫。再び強烈な一撃が八幡を襲う。今まで以上に星辰力を集中した一撃。

 その一撃に本能で危険を感じ取ったのか八幡が後方へバックステップ。陽乃から距離を取る。そんな八幡に対して陽乃は追撃を……かけない。その場に立ち止まり攻撃的な笑みを浮かべる。

 

「なるほど……一気にいくわよ!」

 

 先程の反応から彼の防御を突破できると確信できた。なら後は攻撃あるのみ。

 再び陽乃が攻撃を仕掛けようと走り出したその直後―――

 

 

 前方から複数の黒い棘が襲い掛かってきた。

 

 

 

 

 

 

 目の前の相手が星辰力を上昇させ、猛スピードでこちらに接近しようとしている。

 現状の星辰力では不足と判断しこちらも星辰力を上昇させる。

 

 同時に能力を発動。闇を媒体に十本の棘を生成。前方の目標を視認。

 腕を振るい闇の棘を射出する。

 

 最初の五本が一直線へと突き進み目標手前の地面へと突き刺さる。こちらへの直進ルートの進路を妨害する。目標の動きが急停止。そして棘を避けるようにサイドへと進行ルートを変更する。

 その動きに合わせ闇の棘四本が左右から襲い掛かる。

 

 が、命中せず。こちらの動きが読まれていたのか、駆け寄りながら回避される。しかし、目標も体勢を崩しスピードを落とした。

 

 その隙を逃さず、直上から残り一本の棘が猛スピードで強襲した。

 だが、視線をこちらに向けたまま紙一重で回避される。

 

 目標はこちらの星辰力の動きが読めると判断する。この数では捉えられない。

 

「―――――――!」

 

 目標が何かを言っている。だがその言葉は聞こえない。聞こえていても何も感じなかっただろう。

 

 闇の棘を先程の倍の二十本生成する。全て同時に射出。上下左右あらゆる方向から目標へと向かわせる。

 

 しかし先程までの動きより数段速いため捉えきれない。特に拳に込められた星辰力の量が尋常ではない。腕を振るうたびに闇の棘を弾き飛ばし直撃を許さない。

 

 素早い動きをする目標を視線で捉える。アレは今までで二番目に強いと感じた。そこでふと思う。一番目とは誰だったかと。

 

 だがすぐにどうでもいいと思った。一番目が誰だとか、目の前のアレが誰かなどどうでもよかった。

 

 今はこの衝動の赴くままに全てを壊し、破壊尽くせばそれだけでいい!

 

「―――――――!!」

 

 目標が何かを叫びながらこちらに走りよる姿を視認。目標を迎撃する。闇の棘をさらに増やし襲い掛からせる。

 

 しかし目標の星辰力がさらに上昇する。同時にそのスピードも上がる。闇の棘を射出するも能力を置き去りにしてこちらに急速接近。近接戦闘域に間合いを侵入され再び攻撃を加えられる。それに対し右手に闇を集中。障壁を形成する。

 

 凄まじい衝撃を受け一メートルほど後退する。その勢いで更に後退しようとするも目標がそれを許さない。こちらにへばりつくかのように距離を詰めたままだ。

 

 このままでは押し負ける。

 

 

 ―――ならどうする?

 

 囁くように誰かの声がした。そのぶっきらぼうな声が誰なのかはすぐに分かった。

 

 ―――簡単な事だ。

 

 その問いに答える。その答えはひどく単純な事だから。

 

 

 

 ―――星辰力と能力を強くすればいい。

 

 

 

 そう思った瞬間、目の前の風景が切り替わる。

 

 周りの風景が一面の闇へと変化し、真っ黒に染まった扉が目の前に佇む。その扉は以前と違い少しだけ開いていた。その様子を見て勿体ないと思った。これを開ければ更なる力が手に入るというのに。扉に手を触れる。触れた瞬間すぐに分かった。この扉は簡単に開くと。

 

 ―――本当にいいのか?

 

 そこで再び声が聞こえてきた。それは最後通告だった。これを超えれば戻れなくなるという警告の意味を込めての問いかけだ。

 

 ―――関係ない。

 

 心の赴くままに応える。そう、関係ないのだ。自分が誰で今どんな状況なのかも。目の前の相手が誰で何故闘っているのかも。全てが関係ない。

 

 ―――そうだな、なら好きにすればいい。

 

 そうだ。皆が好き勝手にやってきたんだ。両親も、妹も、クラスのやつらも……誰の事だ?それに奉仕部のあいつらも……あいつらって誰だ?あの時も、その時も、全て俺が面倒事に対処してきた。その結果がどうなった?俺が、俺が、俺だけが!!

 

 ―――俺だって好き勝手やってもいいじゃないか?そうじゃないか………俺。

 ―――そうだ、好きに暴れろ!!

 

 

 扉が音を立てて開かれていく。

 

 扉の奥に見えるのは完全なる闇。

 

 ゆっくりと、ゆっくりと扉が開かれていき―――

 

 

 その途中で扉の動きが急に止まった。

 

 

 扉をよく見ると黒の鎖が数本残っている。それらが辛うじて扉の動きを止めているようだ。だが鎖はボロボロでいつ千切れるか分からない。

 

 現状、扉は完全には開かれず六割ほどの状態だが―――

 

 ―――充分だ。

 

 扉の奥から猛烈な闇が飛び出してきた!

 

 

 

 

 

 

 八幡の身体から今までとは比べ物にならないほど強烈な星辰力が放出される。そして星辰力に触発されたかのように闇もまた動く。以前よりも暗く、黒く、全てを塗りつぶすかのように闇が溢れだす。それは彼自身にも制御できないのか周辺へと広がりを始める。

 

 雪ノ下陽乃は動きを止めその様子を見つめていた。目の前の相手が星辰力と能力が強めているが、無防備の状態を晒している。攻撃をするには絶好の機会だ。しかしそれでも攻撃を仕掛ける気にはなれなかった。

 

「……比企谷くん……そこまで……辛かったの?」

 

 魔術師や魔女は星辰力を用いて能力を使用する。だがその能力は千差万別である。それは能力が使用者により異なるからだ。能力とは使用者のイメージを具現化するもので、使用者本人の心を表すものと表現してもおかしくはない。

 

 それゆえに……

 

 

 その闇は全てを拒み、否定し、拒絶しているように見えた。

 

 その闇は嘆きであり、悲鳴でもあり、慟哭のようにも感じた。

 

 

 自身がその原因の一部でもある事も自覚していた。

 

 そしてその自覚が彼女の動きを止め……

 

 

 闇の直撃を許す結果となった。

 

 

「陽乃さん!!」

 

 鶴見留美が悲鳴をあげる。闇の棘が次々と降り注ぎ雪ノ下陽乃を蹂躙していく。

 

「八幡……やめて……」

 

 その声を無視しさらに闇が降り注いでいく。十本、二十本、百本とその数と勢いは衰えない。八幡が拳を握りしめる。すると降り注いだ闇が圧縮しドーム状に姿を変えていく。やがて闇が陽乃の姿を覆い隠し完全に閉じ込める。

 

 そして……

 

 膨大な星辰力を感じた。留美が視線を八幡に向けるとその手に闇が収縮していくのが見て取れた。闇の棘とは比べ物にならないほどの星辰力量だ。

 

 闇が姿を変え巨大な一本の槍の形状を取る。八幡がその槍を手にし振りかぶった。

 その槍をどうするか?そんなものは言うまでもなく一目瞭然だ。

 

「だめぇぇぇえぇぇ!!!」

 

 彼女の叫びに応えるかのように、放たれた槍が闇のドームに突き刺さった。

 

「あ……あぁ……はる……の…さん……」

 

 呆然自失の状態で陽乃の名を呼ぶ留美。巨大な槍は闇のドームへと突き刺さり、その中がどうなっているか留美は想像したくもなかった。

 

 比企谷八幡は静かに闇のドームを見つめていた。しかし僅かな時間が経過した後に八幡が追撃のため動く。再び右手に闇を収束。闇と星辰力が槍を形成していく。次が止めの一撃なのだろう。先程よりも巨大なのが一目で分かった。

 

 そして鶴見留美がそれに気付く。

 

「だめ!だめだよ、八幡!」

 

 留美が目の前にある結界を叩く。しかし陽乃が頑丈に作ったと言った結界だ。びくともしない。しかし諦めずに叩き続ける留美。

 

「だめ!だめ!だめだめ!」

 

 巨大な槍が完成した。それに込められた星辰力がどのぐらいなのか、留美には想像すらできなかった。分かるのは、これが放たれたら自分だったら間違いなく死んでしまうことだけだ。そんな物を撃たせるわけにはいかない。

 

「八幡!お願い!お願いだから止めて!!」

 

 泣き叫びながら結界を叩き続ける。その結果が無意味だと頭で分かっていてもなお続ける。八幡が槍を手にし再び振りかぶる。

 

「陽乃さん!!」

 

 留美が悲痛の叫びを上げると同時に槍が放たれる。槍が持ち主の意志に沿い轟音をあげ突き進む。

 

 もう駄目だと留美は思ってしまった……だが

 

「大丈夫よ」

 

 前方からその声が聞こえた。同時に闇のドームと突き刺さっていた槍が全て内から吹き飛ばされる。

 中から現れたのは勿論 雪ノ下陽乃だ。迫りくる巨大な槍に対して素手で合気の構えを取り、巨大な槍を受け流すように進行方向を上へとずらし流すように動く。

 

「ふっっっ!」

 

 そして巨大な槍は進路を変え建物の天井を突き抜け、同じ上空の闇へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

「陽乃さん!」

 

 陽乃の姿を確認し留美は喜びの声をあげる。

 

「よかった……私……もう駄目だと思って」

「ごめんね心配かけて。でも大丈夫。この通り元気よ」

 

 視線を八幡に向けたまま陽乃が答える。彼女の言う通り外傷などは見受けられない。

 

「留美ちゃん。もう少しだけ我慢してね」

「え、あのそれはどういう?」

 

 陽乃の言葉の意味が分からず問いかける留美。それに対して陽乃は軽く答える。

 

 

「終わらせてくるから」

 

 

 そして再び比企谷八幡と対面する。

 

「比企谷くん。今のは良かったよ。相手を拘束してからの強烈な一撃。基本ではあるけれどそれ故に躱しにくい。中々いい攻撃だったよ」

 

 陽乃は八幡を手放しに称賛した。アスタリスク内においても、あれだけの一撃は中々見る事はできないからだ。

 

「……このままじゃ駄目か」

 

 陽乃は周りを見渡し何かを確認すると懐から呪符を取り出す。それを両手から投げて言葉を紡ぐ。

 

「急急如律令、勅!」

 

 その言葉により結界が発動する。発動した場所は呪符が投げられた場所、気絶した強盗達と事務所へと通じる扉だ。それらを守る様に結界が展開された。

 

 これで準備は整った。

 

「さて、これでよしと……比企谷くん、認めるよ。今の君は強い。星辰力の量も、能力の強さも、現時点ですら冒頭の十二人に確実になれるほどだよ」

 

 そして陽乃は気付いていた。今この瞬間にも八幡の星辰力が上昇し続けていることに。このまま時間が経てば何処まで強くなるか分からない。

 

「だから……」

 

 陽乃は八幡を見据えて言う。

 

 

 

「本気でいくね」

 

 

 

 次の瞬間、陽乃の星辰力が爆発的に高まる。膨大な星辰力が渦となり彼女の周辺を漂い風が衝撃波となり周辺に広がる。そして陽乃の闘気も格段に跳ね上がり重圧となって八幡を襲った。

 

 その重圧を本能で感じ取ったのか八幡が陽乃から距離を取る。下がると同時に能力発動。闇の棘が陽乃に迫る。その数、およそ五十本。

 

だが……

 

「炎よ」

 

 陽乃の一言により両者の間に紅い炎の壁が発生。闇の棘がその壁に衝突するも突破できない。炎に焼かれ溶けるように消え去っていく。

 

「無駄だね。その程度では突破できないよ」

 

 淡々と言い放つ。現状の星辰力は陽乃の方が遥かに上となっている。いくら八幡の能力が強くても、星辰力の差がある限り簡単には打ち崩せない。

 

 炎の壁を解除し八幡に向かってゆっくりと歩き始める。そんな彼女に闇の棘が再び迫る。幾重もの数が陽乃を捉えんとばかりに襲い掛かる。

 

 それに対し、陽乃はその場で立ち止まり拳を握りしめ炎を纏わせる。

 

 

 そして一閃

 

 

 拳の一振りで全ての闇の棘を吹き飛ばす。

 

 

「能力の制御がまだ甘いよ。初心者だから無理もないけど……界龍に来たら鍛えてあげるからね」

 

 陽乃が能力をさらに開放していく。彼女の手から出現した紅い炎が彼女自身の身体を包み込みその強さを増す。既に非星脈世代では近づけないほどの温度にまでなっているが、まだ止まらない。何よりも熱く、高く、激しく、そんなイメージを持って陽乃は能力を高め続ける。

 

 そして鶴見留美はある変化をその目にし、その言葉を口から溢した。

 

「……黒い……炎?」

 

 

 

 学戦都市アスタリスクには二つ名で呼ばれる人達が存在する。

 

 主に各学園の在名祭祀書 72名に入る学生に名付けられるそれは、本人の特徴で表現される事が多い。特に魔術師や魔女はそれが顕著だ。

 

 歌を媒介にすることでイメージを様々に変化させ、あらゆる事象をコントロールすることができる、クインヴェールが誇る世界の歌姫。

 

 戦律の魔女(シグルドリーヴァ) シルヴィア・リューネハイム

 

 

 無尽蔵かと思われる星辰力と瘴気を操り、前回の王竜星武祭で他者を寄せ付けず圧倒的な強さで優勝した、アスタリスク史上最強の魔女とも呼ばれる少女。

 

 孤毒の魔女(エレンシュキーガル) オーフェリア・ランドルーフェン

 

 

 任意の対象のみを切断する白濾の魔剣(レイ=グレムス)を操り、獅鷲星武祭(グリプス)二連覇を果たした若き騎士。

 

 聖騎士(ペンドラゴン) アーネスト・フェアクロフ

 

 

 様々な武術者、様々な能力者がそれぞれ異なる二つ名で呼ばれている。二つ名は強者としての証、一種のステータスのようなものだ。勿論、二つ名を持たぬ未知の強豪も存在している。

 

 

 そして……

 

 

 

 

 彼女が本気になった時、紅き炎は漆黒へと変化する。

 

 その黒き炎を目撃したら相対する者は全て焼き尽くされ、決して無事では済まないとされる。

 

 その圧倒的な強さと能力を持って、彼女はこう名付けられた。

 

 

 雪ノ下 陽乃 界龍第七学院 序列第3位

 

 

『 黒炎の魔王 』

 

 

 

「さあ、ここからが本番だよ」

 

 

 漆黒の炎を身に纏い、雪ノ下陽乃は再び駆け出した。

 

 

 




第八話 激闘 いかがでしたでしょうか?

思ったより戦闘シーンが長引いたので次話まで伸びてしまいました。
次回で決着予定です。

二つ名については少し悩みました。単純に魔王だけでも良かった気がしますが、それでは芸がない。せっかくですから魔女の能力を合わせて黒炎の魔王となりました。
……自分でも安直だと思いましたが、いい名前が思いつかなかったです。

しかし、シリアスな話をずっと書いているとほのぼのな話も書きたくなってきます。だけど俺ガイル編はシリアスばかりで、ほのぼのなんて入る余地すらない。まだしばらく我慢ですね。

では、次回もよろしくお願いします。
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