「えっと、ね。」
城廻先輩はようやく話し始める。優しい先輩だからこそ、こういう状況に戸惑っているんだろう。雪ノ下の様に撃沈させるわけでもなく、由比ヶ浜の様に周りに三浦の様な絶対強者がいるわけでもなく、一色の様に男を手玉に取るような事も出来ない。自分ではどうしようもないのだ。
「その先輩とは一度しか話はしてないの。だけどそれから色々付きまとわれて、やんわり断ったけど、ダメで…。…どうする事も出来なくて。それでちょっとだけ去年の事思い出したの。奉仕部は雪ノ下さんや比企谷くん、由比ヶ浜さんがいるからこの3人ならもしかしてって。」
それは買いかぶりすぎだろう。俺達は単なる高校生だ。雪ノ下は確かに優秀だし色々出来るが、今回のケースは本来雪ノ下ではどうしようもない案件だ。由比ヶ浜も本来人に強く言ったりも出来ない。俺に至っては話が拗れるだけだろう。
「今日もね、こんなのがメールで来たんだ。メールアドレス教えてないのに…。」
『めぐりちゃん、昨日の男、誰かな?高校生くらいっぽかったけど…まさか浮気?あんな暗そうなヤツと何を話してたんだ?俺がいるんだから他のヤツと話したらダメだろ~?』
…俺の事だな。見られていたか。
「うわ、きもっ。酷すぎですね…。」
一色の感想はもっともだろう。こんなメール不快以外のなんでもない。
「…確認ですが、城廻先輩は付き合ってる訳ではないのですよね。」
「うん…。話したのも一度だし、それ以来近くに行ったこともないよ…。」
「ゆきのん、これ結構ヤバイヤツだよ、何とかしないとヒッキーも城廻先輩も危険かも。」
最近はストーカー殺人等の事件も多い。その可能性もあるだろう。
「ええ。…わかりました、城廻先輩。承ります。その人に会いに行きましょうか。」
…うちの氷の女王は何を考えてるんだ。メールで相手を呼び出したがこれは相当ヤバイ。相手に好意を持ってると思われる事もあり得る。因みに小町と一色は生徒会あるから来ていない。手伝えないのが悔しそうだったが、奉仕部員じゃないししゃーないだろ。
「…城廻先輩、どれが『それ』なのかしら。」
大学生をそれ呼ばわり…こわい。あとこわい。
「えっと…あそこの髪が長い青いTシャツの人…。」
「ゆきのんどうするの?」
「叩きのめすわ。」
ニッコリ笑って何て事言ってんのこの女王様は!
「おい雪ノ下。何か策はあるのか?」
「正面から潰すわ。それだけよ?」
マジかコイツ。雪ノ下らしくないんだけど。
「策無しってお前の身もヤバイだろ。もうちょっと冷静に…。」
「あら?私が行くわけではないわ。比企谷くんあなたが行くのよ?」
「…は?」
「比企谷くんごめん…私のせいで…。」
いやいやいや。俺の事はどうでも良いのかよ。いえ良かったですね、はい。…雪ノ下が酷すぎる。
「冗談よ。ふふ。」
「おい。」
「今回は助っ人を呼んでいるから。大丈夫よ。」
「助っ人?」
葉山…じゃねえよな。雪ノ下が葉山を頼ることはない。未だに雪ノ下は葉山を許してないからな。…誰だ?
「うーん、めぐり、ヤバイねーあれは。」
「うおっ!雪ノ下さん⁉」
「はるさん⁉」
「ひゃっはろーみんなー。」
この人か…!!!いや確かにこの人なら。つーかこの人今も世紀末みたいな挨拶だな。
「姉さん、大丈夫そう?」
「うん、まあアイツなら大丈夫だよ。一度だけ私も会ったことあるし。うちのサークル仲間の後輩でさ、一回だけ呼ばれて飲み会に来てからストーカーチックになったんだけど、思いっきり泣かせた。」
…マジかよ。この人やっぱ雪ノ下の上位互換なだけあるわ。もう赤いモビルスーツ纏ってんじゃないかってレベル。
「じゃあめぐり行こっか。」
…あの後、城廻先輩が色々言っても全然話にならなかったが、陽乃さんが行って、私の後輩なんだけど。って言ってちょこっと話したら相手は引き下がった。つーか涙目で謝り始めた。…こええ…。
「終わったよー。」
「はるさんありがとうございます!みんなもありがとう!」
「いや俺は何もしてねっすよ。」
「あ、あたしも何もしてない…。」
「私はただ姉さんを呼んだだけです。」
「そんな事ないよ!私一人だったらどうしようもなかったけど、比企谷くんから雪ノ下さんに、雪ノ下さんからはるさんに、話が行ってくれたからだよ!由比ヶ浜さんもいっぱい勇気づけてくれたし。」
やっぱめぐりんパワーヤバイ。癒し効果高くて悟りひらけそう。
「ところで城廻先輩。ちょっとお話が…。」
何かヒソヒソと雪ノ下が話している。
「えっ⁉そ、そんな事してないよ⁉」
「そう、ですか。それならいいんですが。」
何の話かわからんけど、最近雪ノ下も色んな人とゆりゆりしてるなぁ…。
「みんな本当にありがとう。これで安心出来るよ。またね!」
「…うっす。」
「ええ、さようなら。」
「城廻先輩また!」
何とかなって良かった。本当に俺一人だったら答えを間違えていただろう。もしかしたら俺も城廻先輩も由比ヶ浜が言ってた様にヤバかったかもしれない。…相談して良かったかもな。
「…サンキューな。」
「…?何か言ったかしら?」
「いや。何でもねえよ。」
「そう。じゃあ比企谷くんも由比ヶ浜さんもまた明日。」
「おう。」
「うん!」
雪ノ下は雪ノ下でもはるさんでした。
八幡も相談すると言う成長を出来た事が今回のお話でした。勿論めぐりんもヒロインではありませんでした。ラノベの話だとそっちルートは薄そうなので。
多分めぐりんは話の中にもあった様に誰にでも優しかったってだけなんでしょう。