「ぐ腐腐腐腐…今日もさいはちキマシタワーーーーーー!!!」
「姫菜自重しろし!」
スパーン!
いつものようにテニスコートにいる比企谷君と戸塚君を見かけて801妄想をしてると優美子に叩かれた。だけどこれはこれで私と優美子の関係。優美子は怖がられているけど、実は誰よりも優しくて、泣き虫で、仲間思いで、隼人君が好きな普通の女の子なのだ。
「もう~痛いよ優美子~。」
「姫菜が欲望をさらけ出すからだから。あんたいい加減自重しなきゃ大学に行ったらどうすんの?」
「うーん…多分変わらないと思うよ?」
私は私だしね。誰かの目を気にするならこんな事はやってないし。
「海老名さんはそれが一番っしょ~。」
戸部っちの事は嫌いじゃないし、仲間だと思ってもいるけど、それは好きとかじゃない。だから私は去年比企谷君に頼んで、戸部っちの好意を避けて貰った。それで私達は大丈夫だったけど、比企谷君には悪いことをしちゃった。
「優美子だって姫菜が変わらない方が良いだろう?」
「そうだけどさ。あ、隼人~、今日一緒に帰ろ。」
「ああ、構わないよ。」
優美子は隼人君が好きだったから、今年の始めに告白した。結果フラれたけど、その後も変わらずに居続けて、関係が壊れることもなかった。その後も優美子はあきらめなくて、5回目の告白で隼人君も優美子の強い意志に根負けして付き合ってるみたい。
「あたしも部室行かなきゃ!じゃあねみんな!」
結衣も頑張ってるみたい。比企谷君と同じ大学に行きたいらしい。その為に雪ノ下さんに勉強を教えてもらっていて、最近は隼人君の次にこのグループの中でテストの成績が良い。私も負けてられないかな?
「私にも好きな人出来るのかな~?」
そんな事は絶対無いなって思いながら、そんな事を口にする。戸部っちの好意は嬉しいけど、私はそんな気分にはなれない。私と戸部っちが合うわけないから。
「ま、そんな事あるわけないか。」
廊下から窓の外を見る。あ、あの野球少年、隣の男の子と仲良さげ…ぐ腐腐腐腐…。良いですなぁ~。
「うわ…。」
聞いた声に振り向く。比企谷君だ。
「何かな、比企谷君。」
「いや、戸塚の後輩の特訓の後に通りかかったら海老名さんがまた…。」
「ぐ腐腐…さいはち良いですね~。」
比企谷君は結構ひいている。それが普通の反応だろう。私はいわゆる腐女子だけど、一般人には理解し難い趣味だ。ましてや男子なら尚更だ。だからこそ私は私を好きな人に対して、好意が向く前に避けてきたのだから。
「ま、まあ一人で妄想するのは自由だしな。戸塚なら気にもならんし。」
「おやおや?私が好きだったのでは?」
意地悪な質問だ。比企谷君は戸部っちの告白を回避してグループの関係を壊さないようにするために嘘の告白をしただけだ。
「あれはもう忘れて下さいよ…。んじゃ部室行くんで。」
「ん。またね比企谷君。」
後ろ向きに手を上げて比企谷君は戻っていった。…比企谷君なら私を理解出来るのだろうか。私と合うだろうか。…いや、やっぱり合わないだろうな。比企谷君には多分今好きな女子がいるだろうから。
まだボーッと廊下から窓の外を見ていた。そろそろ帰ろっかな。
「あんれー、海老名さん?」
「戸部っち?まだいたんだね。」
「いろはがさー、扱き使って来るんよー。酷くね?」
ズキッ。何故か胸がちょっとだけ痛む。…何だろう?
「戸部っちが甘やかすからだよきっと。」
あれ?何だろ。自分の言いたかった事よりもずっとキツい一言になってしまった。
「海老名さん辛辣っしょ~。まあそうだろうけどね~。」
戸部っちはそう言って私に微笑む。何か心地いい。そう思ってしまう。
「じゃあ私帰るね。じゃね戸部っち。」
ズキズキ胸が痛むし、何か調子が悪い。早く帰りたい。
「あ、ちょっと待って。俺も今から帰っから、送ってくっしょ。」
「そんな、悪いよ。」
「いいからいいから。結構遅いし。」
言われて気づいたがもう7時をまわるみたいだ。…何でこんな時間までいたんだろ。
「…うん、じゃあ駅までで良いから送って貰おっかな。」
「任せてよ~。海老名さん絶対守っからさ。」
私と戸部っちは何を話すでもなくただ駅に向かって横を歩いているだけだった。でも全然気まずくない。不愉快でもない。むしろ安心感があった。
「あ、駅着いたね。ありがと戸部っち。」
「任せて欲しいっしょ。海老名さんがよかったらいつでも送ってくから。」
「うん、またお願いするかも。」
そう言うと戸部っちは凄く嬉しそうに頷く。
「勿論!じゃあね海老名さん。」
「うん。ばいばい。」
電車に揺られながら窓を見て、自分がニヤけてる事に気づいた。何で笑ってんだろう私。
恋を知らない女子、海老名さん。海老名さんの本当の恋はいつ来るのかな?