昨日、雪ノ下の衝撃の言葉により7人の女子とデートすることになってしまった。幸い本物の俺ではないが、性格は俺のままだ。何かやらかしそうで凄く怖い。マジ怖い。信じるしかないが…。日曜日と言えど流石に一気に全員と、というわけにはいかない。俺が何人も居たら知らない人は絶叫ものだろう。信じられるか?これ生きてるんだぜ…。
─────偽八幡(鶴)─────
「おう、待ったかルミルミ。」
「大丈夫、八幡なら待ってても辛くない。あとルミルミはダメ。留美って呼んで。」
鶴見留美。去年林間学校で会った少女だ。色々あったが、どうやらなついてくれたらしい。俺は偽物ではあるらしいが、記憶はどうやら七夕以前のはあるが、その後の記憶はずっと家で読んでた本と夢の内容くらいだ。
「何をしたい?」
「公園…。」
公園、か。まだ中学生だしな。
「あのね八幡。去年の事なんだけど…。」
公園のブランコに揺られながら、留美は話し始める。
「私ね、あれで良かったのかなって最初は思った。だって、結局一人だったから。」
「…そうだな。あれはやり方がまずかったかもしれん。お前は戻りたかったんだろうからな。」
だが…それは結局一度壊れた関係を無理矢理くっつけるだけの見せかけの関係でしかない。…小学生には見せかけでも良かったのかもしれないが…。それでも俺は留美に偽物を与えたくはなかった。
「ううん。いいの。あの時の班のメンバーはもう違う中学校行ったし。だけど、同じクラスだった子はまだいて…また同じ事してた。標的は私じゃなかったけど、我慢出来なくてそいつらにもやられてた子にも怒鳴っちゃった。でもさ、やられてた子は私にお礼を言ってくれたの。それで八幡のやってくれた事にも意味があるってわかった。」
「意味…か。そんなのあるのかはわからんけど、今の留美は一人だけど独りじゃねえんだな。」
「うん。」
そう頷いた留美は林間学校で泣きそうになってた少女ではなかった。クリスマス、一人で辛そうに折り紙を折っていた留美でもない。そう思えるほどの笑顔だった。
「私ね、ずっと八幡に言いたかった。ありがとう。それで八幡とずっと話したかった。林間学校もクリスマスもありがとう。」
「…気にすんな。俺がそうしたのは仕事だからな。」
「ふふふ。八幡がそう言うのは照れてる時だって雪乃と結衣が言ってたよ。」
そう言われて俺は頭をガシガシかきながら返事を返す。
「雪ノ下と由比ヶ浜が…あいつら覚えとけよ…。」
何もしないけどね。出来ないし。怖いから。特に雪ノ下。氷の女王、いや氷の魔王?
「私がもう少し早く生まれてて、八幡の同級生だったら仲良くなれてたかな。」
「いやそれはねえだろ、俺たちお互いにぼっちだぞ。」
ぼっちは自分から仲良くしにいけないからぼっちなのだ。ぼっちとぼっちが会ったところで線が繋がる訳がない。
「そっか、そうだね。」
今日の留美はよく喋る。同じぼっちで、こうして関わったから、きっとわかるところもある。勿論、確実性はなく、あくまで空想でしかないが、それでも少しは俺と留美は共通するところもあるのだろう。留美はそれで俺に話すのだ。
「私は八幡と会えて良かった。あの時、林間学校に本当は行きたくなかったけど、行って良かった。色々わかったから。一人だからってなんにも困らない。八幡みたいな人も居るもんね。」
「うるせ。俺はプロぼっちだからな。留美よりも上手く一人が出来るんだよ。」
「またそれ、変なの。ふふふ。」
そのまま数時間、俺と留美はたわいもないことを話した。学校や、奉仕部のこと、ぼっちとは何たるか。くだらない話だったが不思議と心地いい。留美はその間よく微笑んだ。留美はこれからも一人で居ると言ったが、きっとそれはいつか終わるだろう。留美はもうあの時の顔をしていないから。
「さてと、そろそろ帰るか。送ってくぞ。」
「うん、ありがとう。行こう。」
少し歩いて電車に乗り、そして留美の家の前に着く。
留美はそこで少しさみしそうな顔をした。
「何かあったか?」
「ううん。今の八幡はさ、偽物なんだよね。消えちゃうの怖くないの?」
消える…。そういえば考えてなかった。本物が居る以上、俺は偽物であり、消える存在だ。怖くないと言うのは嘘だろう。だが…
「消えるのが俺の仕事なんだろう。消えたあとどうなるかはわからないが…きっと本物の俺はそうしないと困るだろうしな。いつまでも隠しておけることじゃねえからな。」
「…私と話した事とかも消えちゃうのかな。」
「さあな。だが、留美が覚えてればいいんじゃねえの?そうすりゃ消えないかもな。知らんけど。」
「…うん。あのね八幡。今日はありがとう、楽しかった。」
「話しただけだけどな。」
「うん。…それでも楽しかった。八幡。」
急に留美が真剣な顔になる。思わず姿勢を正してしまった。
「私は…鶴見留美は、八幡が好きです。私はまだ中学生だけど、この気持ちは伝えたいから。」
鶴見留美は笑った。頬を少し赤くして、照れくさそうに。
「返事はね、後でいいよ。記憶は無くなっちゃうかもしれないけれど、その時はもう一回、本物の八幡に伝えるから。…じゃあね。」
そう言って留美は再び笑う。俺は…その告白に返事をする事は出来なかった。
──────八幡──────
どうやら一人消えたらしい。 と言うのは、俺にその消えた偽物の記憶が残っていないからだ。由比ヶ浜から連絡があって、鶴見留美から消えたと聞いたと。
「方法は合ってたみたいだな。どんな方法かは知らんが、ルミルミがやったことは成功したらしいな。」
「ごみいちゃんが一人減って小町はさみしいような、悲しいような…。あ、今の小町的にポイント高い!」
「言っちゃったら、嘘っぽいだろ…。」
…偽物の俺はどんな気持ちだったのかね?
デート篇ルミルミver.でした。