彼も彼女たちも偽物を欲しない   作:風来のアスカ

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デート篇さがみんver.始まりです。


26章・さがみんの泣く頃に

今日は相模とのデートだ。去年の文化祭での一件を引き摺っていた相模は今俺以上に一人でいることが多い。クラスで仲良くしていた奴も今は相模に対して距離をおいているし、相模自身も近づかない。ま、俺の方がぼっち歴長いから。先輩だから。

─────偽八幡(相)─────

待ち合わせた千葉駅に着くと、相模がこちらに気付き、少し微笑みながら歩いてくる。…一応こいつも見た目は可愛い方なんだよな。

「悪い、待たせたか?」

「ううん。うちも今来たし。比企谷ってさ、普段何処いってんの?」

「普段?…家だな。」

「そういうことじゃないから!いきなり家でデ、デートなんて出来るわけないじゃん!」

デート…そう聞いて顔を真っ赤にして反射的にお互いに顔を逸らしてしまう。そ、そうか…デートだった…。

「比企谷は…あの時うちにムカついた?」

ららぽーとに向かいながら歩く道すがら相模がそんな事を聞いてくる。

「…おう、ムカついたぞ。ムカつきすぎて魔女化してしまうくらいだ。」

「ぷっ、何それ。あんた男じゃん。」

おいおい、魔法少女まど○☆マギ○を知らないのか…⁉くっ…話を繋げられるのか!

「あんたってやっぱアニメとか見るんでしょ?今のもアニメでしょ。でもやっぱムカついたんだ…。」

さっきまで笑っていたが急に俯きがちになる。コイツ…何か守ってやりたくなるだろ、やめろよそういうの。お兄ちゃんスキル発動しちゃうだろ。

「ちょ…何してんの⁉」

あ、しまった。小町にいつもやってるみたいに頭を撫でてた。

「あ、すまん…嫌だったか。ついいつも妹にやってるみたいにやっちまった。」

「嫌…じゃないけど。か、勝手にすれば。」

そう言って俺とは反対に顔を向けてしまった。

「エヘヘ…ラッキー…。」

相模は何かボソッと言ったが周りの喧騒にその声は飲み込まれてしまった。

「ゲームセンターかぁ…ま、比企谷だしこんなとこだよね。」

「悪かったな、デートなんてしたことねえから、どういうとこが良いかわからないんだよ。」

「悪いなんて言ってないじゃん。比企谷らしいよ。」

今日はよく笑うな。クラスじゃ最近誰かと話しているとこすら見ないのに。

「あー、これ欲しい。比企谷これ取ってよ。」

相模はUFOキャッチャーの景品のぬいぐるみを指差す。どうやらウサギのぬいぐるみのようだ。こ、コイツ…戸塚と同じ動物が好き…だと…。

「ああ…まあいいけど。」

そう言って相模に手を向けるが、不思議そうに首を傾げている。

「何?」

「いや何って…金。」

「えっ⁉デートなんだよ?取ってくれないの?」

マジか。デートするとこういう景品は男が自腹切って取ってあげるのか。カップル最低だな。

「マジかよ…仕方ねーな…。」

「比企谷頑張れー。」

応援がムカつく。このアマ反省したら今度はわがまま放題かよ。本物の俺に聞いて知ってるんだぞ。

7回チャレンジしてようやっと取れた。

「…ホラよ。」

「やった、比企谷ありがと。ごめんね。」

これで許しちゃうんだから俺も大概甘い。だって一時腹立ったとはいえ、やっぱ可愛いんだもんコイツ。

「次これやろ!ほら比企谷早く!」

5時間位付き合わされた。ゲーセンで5時間も居たせいで金もやべえ。何がヤバイってマジやばい。俺の語彙力が無くなるくらいにヤバイ。

「おい、さすがに金ねえよ…。」

「わかった。あ、気付かなかったけどお昼過ぎてたんだね。ご飯食べよっか。」

「いや、だから金…」

相模はいそいそと持ってきていた手提げかばんからランチボックスを出す。

「どっか座って食べよ。」

コイツ…意外と女子力たけえ。

「今日はせっかくだから作ってきたんだ。うちの特製サンドイッチ。ほら比企谷の分もあるから。」

「お、おう。」

サンドイッチを1つ、貰って食べる。

「おお…旨い。」

「でしょ?うち一人っ子で両親も普段共働きでいないから料理してて得意なんだよね。今日は簡単なのだけど、いつかちゃんとしたの作ったげる。」

いつかって…何で約束みたいになってるんだよ。…俺は今日で消えるかも知れないのに。

「比企谷って何が好きなの?」

「あー…甘いものかな。」

「あ、やっぱり。MAXコーヒー飲んでるもんね。あれうちは甘すぎて無理。でも、はい。」

相模が不意にこっちに何かを渡してきた。それは…俺が好きな千葉のソウルドリンク、通称マッ缶だった。

「おうサンキュ。」

マッ缶は旨いなー。人生は苦いからね、マッ缶位は甘くていいよね。

今日は相模の意外な一面を沢山見れた。ゲーセンでは子供みたいにはしゃぐし、お昼ご飯は料理の腕前に驚かされた。由比ヶ浜にもこのくらいの腕があれば…。

「比企谷今日はありがと。それでさ、うちを家まで送ってくれる?」

「ああ、まあそのくらいなら。俺を消す方法もあるしな。」

「うん…。」

相模を送って相模の家の前に着く。相模は家の前で俺の方を向いてモジモジしている。

「比企谷あの…さ。去年の文化祭の時あるでしょ?アレは比企谷にとってもうちにとっても最悪だったし、最低だったよね。」

「…。」

相模は何かを言おうとしているのだ。ここで茶化すのは違うだろう。

「でもね、うちにとってはアレは良かったって思うんだ。比企谷には迷惑沢山かけておいて何がだよって感じだけど…。」

相模の目にはうっすらと涙が滲んでいる。

「うちがグズでミスっちゃって、パニクって、屋上に隠れてさ…。そしたら比企谷が見つけてくれて怒鳴ってくれてさ…。比企谷の癖に!って思ってやる気だして…。うちって…どうしようもないよね。」

違う。そう言おうとして、だが相模の涙が頬を伝ってるのを見て思わず止まってしまう。

「比企谷、見つけてくれてありがとね。そしてごめんなさい。やっぱアレはうちのミスだから。だからごめん。それでさ…その…うちは…相模南は比企谷が好き、です。ヘヘヘ…今の比企谷は偽物だから、いつかまた本物にちゃんと言うから。だから…またね。」

相模の頬には涙が何本も流れていたが、顔は確かに微笑んでいた。




デート篇さがみんver.終了です。次はかおりんこと折本かおりです。アニメの折本は強烈でしたね。
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