「俺は…奉仕部に入ってからの1年半、凄く充実した高校生活を送った気がする。それは…ここにいるお前らや、小町、戸塚、葉山、三浦、平塚先生、海老名さん、戸部、材木座…はどうでもいいか。その他にも沢山のみんなに関わっていろんな体験をしたからだと思う。」
誰一人欠けても成り立たない。そんな体験。
「時にお前らを傷つけただろう。時に俺自身後悔したこともあっただろう。ぼっちじゃ絶対出来ない体験をお前達がさせてくれた。」
俺が話している間、誰もが静かに聞いてくれている。あの騒がしい折本すら。
「さっき留美は俺から色々教わった、と言ってくれたが、逆も然りだ。俺もみんなから沢山教わった。それは俺一人じゃ手に入れられないものだろう。」
他人を信じられなくなった俺が、再び信じようと思える気持ちになれた。
「折本には中学の頃に一度フラれた。だが、アレも必要な体験だったんだろう。折本とは仲良くなれそうだと今なら思える。」
きっと以前の事なんて忘れる日も来る。
「留美、お前にはぼっちはどんな強さも持ってるような言い方をしたが、間違いだ。ぼっちは強くない。強がってるだけだ。ソースは俺と雪ノ下だ。」
結局一人では二人とも何にも出来なかった。…自分を救うことすら。
「相模、あの時酷いこと言ってごめんな。でもああでもしなきゃ俺と一緒で捻くれてたお前は自分を取り戻せてなかったかもしれない。捻くれもの同士これからは仲良くなれるかもな。」
少しは素直になれているのか、俺自身にはわかりかねるが、きっと変われてる。
「川崎、まずは最初にパンツ見てすまなかった。」
「ちょ、あ、あんた…!」
「だがあれは事故だから許してくれ。川崎は最初は怖いヤツだと思ってたが本当は優しいヤツだった。文化祭の時に愛してるとか言っちまったが、ある意味じゃ間違って無かったと思うぜ。」
目茶苦茶恥ずかしいセリフだったが、きっと本心でもある。川崎真っ赤になったけど大丈夫か。
「一色、1つ謝る事がある。お前を言いくるめて生徒会長にしたのは奉仕部を守るためだった。あの時俺はお前の事はどうでもいいとか思ってたから。」
「酷いですよせんぱーいー!」
「だから悪かったって。今はお前も可愛い後輩だ。色々無責任な事も言ってしまったが、忘れてくれ。」
奉仕部を守りたかった。俺の居場所はあそこだけだと思ってたから。だが今は…。
「由比ヶ浜、雪ノ下。奉仕部は俺にとって、何よりも大事な、大切な場所になった。それはお前達が居てくれたからだ。奉仕部に入って良かったと思う。二人に出逢えて良かったと思う。由比ヶ浜、お前はアホだけど、」
「アホじゃないし!」
「いいから聞け!アホだと思ってたけど、俺よりも俺の事を、雪ノ下よりも雪ノ下の事を考えてくれる凄い奴だと思う。それはただのアホじゃ無理だ。お前は凄い力を持った───アホだ。」
「結局アホって言われたし⁉」
「雪ノ下、お前は最初凄い奴だと思ってた。」
「あら?今は違うのかしら?」
「そうだな。お前は、俺達と何にも変わらない。凄い奴じゃないよ。普通のちょっと色々出来ちゃうってだけの女の子だった。弱さもちゃんと持ってたし、由比ヶ浜に会ってからは優しい顔もしてた。」
由比ヶ浜も雪ノ下も優しさがあって、弱さもあって。きっと誰もがそうなのだろう。
「ずっと悩んで来たが、俺の選択が正しいのかわからない。だが、雪ノ下もさっき言ってくれたように、間違ってもいいのなら、俺は選ぶ。」
例え間違っていても後悔はしない選択をする。それがどんなに難しいことか俺は知っているが、今回は絶対に大丈夫だ。コイツらがいるんだから。
「俺は─お前が好きだ。雪ノ下。」
初めて奉仕部で会ったときにはもう惚れていたのかもしれない。窓からの光に照らされた少女の、雪ノ下の姿に。
「…比企谷くん…。う、嬉しいのだけれど、どうして、わ…私なのかしら…。こんなに…こんなに面倒な性格で…強くないのに強がって…何度も比企谷くんを、からかって…何故…なの?」
雪ノ下は目に涙を浮かべてそう尋ねてくる。
「俺も同じだからだ。俺とお前は違うようで同じなんだ。強くないのに強がるし、人をからかうのも嫌いじゃない。それに雪ノ下のからかいは、今は逆に居心地がいい。いつも冷静なのにたまにパニクって、由比ヶ浜よりポンコツになっちまうところが好きだ。」
誰よりも弱く、誰よりも強い、そんな少女を知っているから。
「由比ヶ浜も好きだった。他のみんなだって好きなんだとは思う。だが、一人を選ぶなら俺は雪ノ下を選ぶ。お前達に劣ってるところなんて一つだってないと思う。むしろ雪ノ下の方が、俺には弱く見えた。お前達の誰よりも。…守ってやりたい、そう思った。」
「ヒッキー…。うん。知ってる。ゆきのんは本当はあたしよりも弱さを持った可愛い女の子だもん。あたしは意外と大丈夫だったけど、ゆきのんはフラれてたら…。それにしても…あ~あ、やっぱりゆきのんだったか~。ずっとわかってたけどね。」
「すまん。」
「謝っちゃダメ!後悔はしないんでしょ?いいよ、あたし達の関係に変わりがあるわけじゃないし。ゆきのんもヒッキーも変わらず友達だよ。」
「ありがとう、由比ヶ浜さん。」
「私達も、ね。比企谷~こんなに可愛い彼女出来るなんてやるじゃん!…やっぱり勿体なかったな~。中学の時に告白受けてれば~。」
「比企谷、たまにでいいからけーちゃんと遊んであげてよ。私の事はいいからさ。…雪ノ下さんと、さ。」
「私とも遊んでね、八幡。…雪乃も。」
「おう、いいぞ。」
「…ええ。私も。」
「うちも彼氏ゲット出来るかな…うちショボいし…。」
「お前だって容姿は良いんだし、大丈夫だろ。…性格は直せよ?」
「なに~!」
「悪い悪い。冗談だ、今は相模もいい奴だと思う。」
「先輩。」
「ん?なんだ一色。」
「雪ノ下先輩が、先輩の選んだ『本物』なんですね?」
「…ああ。」
「…それでも絶対わたしは諦めませんからね~!雪ノ下先輩に飽きたらいつでも来ていいんですよ?」
「あざといあざとい!上目遣いで見るな…ってイテテテテ、何すんだ雪ノ下!」
「鼻の下が伸びてるわ、エロヶ谷くん。」
「伸びてねえよ!」
「ヒッキーあたしも、まだ諦めないから!ゆきのんからきっと振り向かせて見せるから!」
「だから由比ヶ浜はくっつくな、胸が当たるんだよ!」
「ヒッキーのエッチ!」
「理不尽だろ!だからいてえって雪ノ下!」
騒々しくも心地いい空間。1年の時には知り得なかった予想も出来なかった光景だ。
「さてと、じゃあゆきのん、ヒッキー。恋人になったんだから、恋人の証明を見せて!」
「な、何だよ。」
「きまってるじゃないですか~♪キ・ス・ですよ~♪」
「お前ら…!」
「ひ、比企谷くん…。」
「なん…」
横を向くと雪ノ下が目を閉じて待っていた。
「~~~!!」
俺は頭をガシガシと掻き、そして─
「イエーイ、比企谷やるじゃーん!」
「き、キス…。」
「ちょっと川崎さん大丈夫⁉」
「沙希、乙女過ぎ。」
「おめでとう、ヒッキー、ゆきのん!」
「これからも雪ノ下先輩と仲良くしてくださいね、せーんぱい♪」
ゆっくりと唇を雪ノ下の唇から離す。俺も雪ノ下も真っ赤になって俯いた。周りにからかわれながら。
「…よろしくね、比企谷くん。」
…やはり俺の青春ラブコメは間違っている。
以上で完結です。色々ご意見はあると思いますが、こういうエンドにしました。最後までお付き合い頂きありがとうございました。
物語はここで終わりですが、エピローグでその後の話も書きますので良かったら見てください。