夏休み。それは学生にとっての休息を取る日であり、何をしても自由な期間である。当然ながら、学校で普段から会っている奴らにも会わなくてもいいはずなのだ。無論学校に来るなどもってのほかだ。…だが、俺は何故か今校門の前に来ていた。
『先輩、明日暇ですか?暇ですよね?じゃあ明日朝8時に校門の前に集合してくださいね。でわ~!』
という、有無を言わせない電話が昨日一色からかかってきたのだ。一体何なんだ…。無視しようかとも思ったが、小町に怒られた。小町には言い訳の様に雪ノ下と付き合うことになったから、一色の誘いを受けるのはダメだろうと言ったのだが。
「え、お兄ちゃん遂に雪乃さんと付き合うことになったの⁉いや~それはおめでたい、じゃあ明日やっぱり行かなきゃだよ!小町も行くことになってるから。」
と、明らかに棒読みで言われた。絶対知ってたなアイツ。しかも雪ノ下も来るらしいし。…ちょっと気恥ずかしくてあれから会ってないんだよな~。電話はするけど、誘うのは出来てない。
「おや?比企谷じゃないか。君も呼ばれたのか?」
「お~、ヒキタニくんっしょ~。久しぶりだべ。」
「…葉山と戸部か。」
コイツらいつの間にか彼女作ってたんだよな~。三浦とか海老名さんとか。一応祝っておくか。
「お前ら彼女出来たんだってな。おめでとさん。」
「バレてたのか。…一応礼を言っとくべきなのかな?ありがとう。…翔も出来たのか?」
「え⁉なんで知ってんの、ヒキタニくん。俺、まだ誰にも言ってねえっしょ。ヒキタニくんパネエわ。」
「こないだ海老名さんと手を繋いでたの見たしな。由比ヶ浜も一色も知ってるぞ。」
「あちゃー、ハズいわ~。っべーわ、夏休み明けに言おうと思ってたのに、っべーわ~。」
相変わらずベーベーうるさい奴だな。
「そうか、姫菜と…良かったな。翔。」
「サンキューっしょ、隼人くん。」
「ぐ腐腐腐腐腐…朝からハヤハチキマシタワーーーーーー!」
「うるさい姫菜、自重しろし。隼人おはよー♪戸部も。アレ、ヒキオじゃんなんでいるの?」
いや、なんでいきなり存在否定みたいなこと言われてるんですかね。
「一色に呼ばれたんだよ、急に。」
「なに、あんたも呼ばれたの?いろはあんた好きすぎでしょ。」
「そういう訳じゃねえけどな。」
つーか呼ばれた理由大体わかったし。やべえ、帰りたい。ポンポン痛くなってきた。…すまん。
誰にとも無く謝っていると、後ろから声をかけられる。
「ひゃっはろー、隼人に比企谷君。それに優美子ちゃんと翔君と姫菜ちゃん。そーいえばカップルなんだねそこの4人は。いろはから聞いたよ~。オメデトー。」
「あざっす、雪ノ下さん。」
「ああ、ありがとう陽乃さん。」
「ありがとうございます、雪ノ下先輩。」
「…あんがと。」
「で、ジャジャーンこっちの彼が私の彼氏です!」
そう言われて出てきたのは、とても優しそうだが、意志も強そうな目をした青年だった。陽乃さんと同い年くらいか。
「どーも、はじめまして。陽乃さんとお付き合いさせてもらってる桐生竜也です。一応、陽乃さんと同い年だよ。」
話し方もきちんとしているが、ちゃんと優しさも滲み出ている。こういう人が陽乃さんには合っているのかもしれない。挨拶を一通りしたところで、陽乃さんから訊かれる。
「あ、そうそう、比企谷君。今日は彼女はどーしたのかな?」
いきなりの事で飲んでいたマッ缶を噴き出す。
「ゲホッゲホッ!…何すか急に…。」
「え⁉ヒキタニくん彼女出来たの?っべーわ、オメデトーっしょ。」
「マジ?誰だし。」
「へ~。比企谷君がね~。」
「それは興味深いな。誰なんだい?」
何なんだコイツら…!
「やっはろー、みんな!…どうしたのみんな?変な顔して。」
「「「「結衣⁉」」」」
お、シンクロした。
「な、何⁉」
「結衣、あんたヒキオと付き合ってんの?」
「え、あ、アハハ…それは違うかな。」
「じゃあ誰だし!つーかヒキオ結衣フッたん⁉」
「いや、フラれたけど別に大丈夫っていうか…。」
おいおい、何か不穏な空気なんだけど。陽乃さんは相変わらずか…。
「ごめんねー、比企谷君。」
いや、全然反省してないよこの顔。目茶苦茶笑顔じゃん。そうこうしてると校舎から一色がテトテト駆けてくる。
「先輩、いつになったら校舎に入ってくるんですか~。メール送ったの見てないんですか~?アレ?みなさんも来てたんですね?」
「ちょっといろは、あんたがヒキオの彼女なん⁉」
何でそんなにグイグイ行くのこの女王様。
「えー、違いますよー。わたしもフラれましたしー。三浦先輩怖いですよー。と、とりあえず、奉仕部の部室に来てください。」
全員で奉仕部に行くと、中には戸塚、材木座、相模、折本、川崎、留美、小町。そして、俺の彼女である雪ノ下が、何故か白いウェディングドレスを着ていた。…やべえ、俺の彼女スペック高すぎる。一部を除い…これ以上はやめておこう。一緒に来たみんながそれぞれ感嘆の声をあげている。
「おはよう、比企谷くん。」
「あ、ああ。おはよう雪ノ下…。」
心臓が大きく波打つ。…生きてきた中で一番ドキドキしてる。
「何でウェディングドレスを着てるんだ?」
「本当の時にみんなが来れるかわからないからですよ~。先輩友達いないですし。それに先輩ヘタレだから生きてる間に結婚式するかわからないですし?雪ノ下先輩可哀相じゃないですか~。さ、先輩もこれに着替えて来てください。」
「…マジか。」
ただバラされるだけだと思ってたのに。
着替えて戻って来ると正面に平塚先生が立っていた。みんなは通路を作るように二手に分かれて座っている。俺はその通路を歩いていき、雪ノ下の隣に立つ。
「まったく君らは…。私にケンカを売っているのかね?こんな役をやらせて…。しかしまあ嬉しいのも事実だ。君が雪ノ下とこんなことになるとはな。青春は大事だからな。」
「そっすね。」
青春を色々台無しにしてきた人の言葉は重みがあるなー。
「さてと。では、雪ノ下雪乃。君は病めるときも~(中略)~比企谷八幡を愛することを誓うかね?」
「ち、誓います。」
やべえ、ハズい。
「うむ。では比企谷八幡。君は病めるときも~(中略)~雪ノ下雪乃を愛することを誓うかね?」
「…誓います。」
「よろしい。ならば、誓いのキスをしたまえ。」
俺は雪ノ下の顔にかかったベールをずらし、雪ノ下と唇を再び重ねる。部屋のそこかしこで歓声があがり、どうやら祝われているようだ。
「…ありがとう、好きよ比企谷くん。」
「…ありがとな、好きだ雪ノ下。」
「コラコラ、私の前でいちゃつくんじゃない。」
その後、4組のカップルを祝うために2次会の会場へ移動した。それぞれがあるいは騒ぎ、あるいは静かに笑って話をする。…平塚先生酔って号泣してるんだけど。彼氏欲しい、旦那が欲しいって。…ともかく、きっとこれが俺の欲しかった『本物』なのだと思う。少しすると葉山が隣に来た。
「君が雪乃ちゃんを選ぶとはな。」
「お前だって三浦を選ぶとは思わなかったよ。」
「…そうでもないさ、俺は優美子が好きだからな。」
「…そうだな。俺も雪ノ下が好きだ。お前は嫌いだけどな。」
「はは、俺もだよ。…なあ比企谷。雪乃ちゃんを頼む。俺は雪乃ちゃんを救えなかった。お前にしか頼めない。」
「…それは依頼か?」
「…ああ。」
「…仕方ねーな。任せろ。」
雪ノ下がこっちを向いて微笑む。…いつかまたこのメンバーと、親達を呼んで本物の式を挙げたいと俺は願った。きっと叶う。願い事は叶うと証明されたのだから。
完
エピローグなのに今までで一番長くなってしまいました。すいません。
1ヶ月ちょっとの短い間でしたが、書くのはとても楽しかったです。プロットも何にも書かず、思い付いたら書くという適当さでしたが、いかがでしたでしょうか?誰かの心を少しでも揺らせれば幸いです。それでは、ご愛読ありがとうございました。