この戦いは永遠だ。
走り出したら最後、果て無きゴールに向かうのみ。
暗闇の先にある訳が無い光に向かい、ただひたすらに。ひたむきに。
それでも、私たちはこの戦いに命をかける。
ある者は願望を。
ある者は名誉を。
ある者は復讐を。
ある者は日常を。
ある者は異常を。
ある者は根源を。
ある者は永遠を。
七人が胸に秘める事は違った。
だが、我らの運命は交わってしまう。
聖杯戦争。
その極大の軌跡に吸い寄せられるように。
まるで、街灯の蛾の様だと誰かが笑った。
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「はぁ!」
「たぁ!」
剣と槍が火花散らし、いともかんたんにヘリポートを融解させた。
だからといって彼らの連撃は止まらない。
剣を横嬲る鎧のセイバー。
それを体を反らして回避、そのまま二転三転とバク宙で距離を取る少年のアーチャー。
どちらにも傷はなく、どちらも戦士の誇りに頬を緩ませていた。
「流石だアーチャー。君の槍使いはかの太陽の化身にも匹敵する」
「それはお互い様だ、セイバー。貴様のその剣に迷いはないのは揺るぎのない信念のたわもの。お見逸れする」
互いを褒め称え、されど刃は向けたまま。
これこそ戦士の本懐。これこそ戦いの醍醐味だと、過去に生きて今を駆ける勇者達は笑い合い、駆け出した。
いくら人目の付かないビルの上だからといい、これはやりすぎては無いのか。
地面は剥げ、鉄骨は露出し、ヘリポートはヘリポートの原型をなくした。
それほどの嵐でも寧ろ勢いを増し、セイバーはアーチャーを。アーチャーはセイバーを。
必ず殺す。頭蓋を砕き、四肢を裂き、心の臓を突き、必ずや殺す。
それのみを目的とし、彼らは打ち合い続けた。
「いやはや、立っているだけで精一杯だね。流石は英霊」
隣で立ちながら静観する白衣の男。
奇妙な能面のせいで表情はわからないが、声の震え方でこの戦いの異常性に恐怖か、感涙を覚えているのがわかった。
僕もそれには同感だと頷きながら、奇妙な状況に首を傾げる。
なにせ、僕はアーチャーのマスターで、彼はセイバーのマスターなのだから。
でも、彼は僕を殺そうとはしないし、僕にもその力はない。
襲ってこないならそれでいい。
立つ瀬は無い方がいい。
「ん〜、でも、そろそろ飽きてきたなぁ〜。よしっ!」
能面の彼は一歩踏み出すとセイバーに向かい、叫んだ。
「おーい、セイバー。宝具の開帳を許可するよー! ズバーン!ズババッ!とやっつけちゃぇ!」
その発言に驚愕する。
宝具とは英霊の切り札にし、弱点を晒す可能性がある諸刃の剣。
それをいとも簡単に、冷蔵庫にあるオヤツ食べていいよー的な軽い感覚で、許可した!?
目を見開いていると、男はこちらに振り向き「君は?」と目で言ってきた。
少し迷ったが、宝具には宝具しかない。
それしかないのなら仕方ない。
「あ、アーチャー! 僕も宝具を許可するから! その、頑張れ!」
運動会ではないんだからあまりにも子供らしい応援で顔が熱くなるが、それ以上に大気の圧が上がり、すぐに体の芯から冷え渡った。
「という訳だ、セイバー。我が誇りと我が願い、そして貴様への敬意をこの一突にかけて放とう!」
「無論だアーチャー。俺は運がいい。出向く先で生前得れなかった宿敵を多くえられる。この幸福に全身全霊、我が刃で答えよう!」
魔力が渦を巻く。
左右は拮抗し、魔力の渦は視認出来るほど濃く、厚くなってゆく。
アーチャーは赤い槍を後ろに引き、セイバーは宝玉の剣を高らかに掲げる。
「羅刹王すら屈した不滅の刃ーーーー」
「世界は今洛陽に至るーーー」
宝具。ノーブルファンタズムと呼ばれる科学で言うオーバーテクノロジー。
人類で宝具を扱える者は数える程に居るか、居ないか。
古ければ古い程に神秘は増し、魔力の質も高くなる。
この場合どちらも古く偉大な英雄だった為、嵐というより台風が二つ、コマのように身をぶつけ合ってる様だ。
呼応する魔力の臨界点は振り切れ、そしてーーーー
宝具、開放。
「受けてみよ! 『羅刹断つ不滅』!!!」
「撃ち落とす…『幻想大剣・天魔失墜』!!!」
不滅の一閃を黄昏の光が迎え撃つ。
空気が悲鳴を上げる。
大気が奇声を叫ぶ。
空間が割れる音がした。
空が喚く声がした。
この場に居合わせた自らの運命を今、僕は後悔する。
そしてこの後に続く運命を僕はまだ知らずに、帰りたいと一途に願っていた。