今回はジョジョキャラ少な目でお送りします
苗木誠は普通の学生である。
人づきあいがうまく、誰とでもそつなく仲良くなることができるどこにでもいるような少年であった。
しかし、その事実は彼が中学二年生の時にほんの少し変わってしまった。
仲が良かった叔父といとこに招待されたイタリア旅行。その初日の夜に事件は起こった。
(ああ…、僕ここで死ぬのかな…?)
苗木誠は薄暗い路地に横たわってそんなことを考えていた。彼らは深夜、ちょっとした興味心からスラム街の近くまで見物に来ていた。しかし、その途中、突如として現れた男に襲われ男の手に持った『矢』に刺されてしまったのだ。
ふと横を見れば、そこにはもはや顔の原型をとどめていない叔父といとこが倒れ伏していた。彼らは『矢』に刺されるや否や、悲鳴を上げて苦しみだすとやがて顔面が崩れて言って動かなくなった。かくゆう苗木も、胸部を『矢』に貫かれ、血を流しながら高熱に襲われていた。
そんな苗木に、『矢』を持った男がおぼつかない足取りで近寄ってきて、焦点の定まっていない目でこちらを見て再び『矢』を振り下そうとする。
(父さん、母さん、葵……くそっ!こんなところで死ねるか!僕は絶対に帰るんだ!!)
迫り来る死から逃れようと必死にもがくが、出血と熱で指一本動かすことができない。それでもあきらめない苗木に、男は『矢』を突き立てる―
その時
「『スティッキー・フィンガーズ』!!!」
どこからともなく聞こえてきた叫びとともに、男の顎が何かの拳によって跳ね飛ばされる。その拳はなおも止まることなく男の顔面を殴り続ける。
『アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ!!!』
「アリーヴェ・デルチ(さよならだ)!!」
流暢なイタリア語を最後に、その拳が男を吹っ飛ばした。
その光景を最後に、苗木の意識は沈んでいった。
気が付いたとき、苗木は病院のベットに寝かされていた。医師の話によると、昨晩遅く彼の知り合いが自分をここまで搬送してきたらしく、自分の怪我の状態はひどかったが、どうにか一命を取り留めたらしい。しかし、叔父といとこに関しては手遅れだったとのことだ。
助けてくれた人物について聞いてみたものの、頑として教えてくれなかった。その代わり、その人物からのお見舞いとして贈られた花束を受け取った。
花束の中のカードには
「君の生きようとする黄金の覚悟に賞賛と情熱を」
と書かれていた。
数日後、苗木の負傷を聞いて飛んできた家族と共に苗木は帰国した。しかしそれからしばらくして、苗木は自身に宿ったとある力と向き合うこととなる。
物語はそれから一年後、苗木誠が高校一年生を迎えたある日より始まる。
「ここが希望ヶ峰学園…」
苗木は超名門校で有名な希望ヶ峰学園の門の前に立っていた。先日、自分あてに届いた入学証明書、何万人もの中から抽選で選ばれた「超高校級の幸運」としての指名に、家族は大いに喜び自分も嬉しかった。
だが、その手紙を見たときから苗木の心中に漠然とした不安が立ち込めていた。まるで、あのイタリアでの悲劇が起きる直前のように。
「まあ考えていてもしょうがないし、とりあえず中に入ろう」
未だに残る不安を押しこめ、苗木は校内へと足を踏み入れる。その瞬間
グラッ…
「な…!?」
突如として意識が混濁し薄れていく。
(や、やばい…。なんだか分からないけど……とにかく……『アイツ』を呼ばないと……)
抵抗しようとする苗木であったが、逆らうことはできずその意識は沈んでいった。
目が覚めたとき、苗木はどこかの部屋のベットに寝かされていた。
「ここは…どこだ…?」
起き上がって周囲を見渡す苗木は、自身の状況や部屋の内装からとりあえず危険は無いと判断する。
と、そこで机の上に置かれた入学案内書という書類に目をつける。
「入学案内…?うわ、きたない字…、しかもオマエラとか…。何々、『にゅうがくしきは8じから。たいいくかんにしゅうごう』…。体育館?八時って…?」
壁に掛けられた時計を見ると、すでに時計の針は八時を指している。
「!うわっ、まずい!」
急いで飛び起きると部屋を飛び出し体育館があると思しき廊下を急ぐ。
やがてそれらしき入口を見つけ、中に入るとそこには新入生らしき人たちが十数人立っていた。みな出で立ちは様々で、個性豊か、悪く言えば色物揃いの人ばかりであった。
「…苗木君?」
ふと声をかけられて振り向くと、そこには今や国民的アイドルである舞園さやかがいた。彼女とは中学で同じ学校であり、自分もその存在は知ってはいたがよもや自分を覚えているとは思わなかった。
「…え?舞園さん、僕のこと覚えているの?」
「もちろんですよ!ていうか、覚えてなかったんですか?あんなすごいことしておいて。ほら、去年の夏頃に…」
「去年の夏……あ!もしかしてあの時…見ていたの!?」
舞園がいう出来事とは昨年の夏休み中のこと、補習中の学校に大怪我をした犬が迷い込んで来た時、大勢の生徒が気になって集中できずにいたが、犬が木陰に倒れこんだかと思うとしばらくして突如として元気いっぱいに走り出していったのである。多くの生徒がこの変化に不思議がっていたが、やがて見た目ほど大した怪我じゃなかったとして忘れていった。
しかし、この時教室にいなかった者、サボり組や仕事から戻ってきた舞園は見ていたのである。犬が倒れこんだ木陰の中で犬を介抱していた苗木の姿を。彼らは苗木が触れた途端犬が元気になったのを見て、苗木が何かしらやったのだと思い、苗木を問い詰めたのだが当の苗木は逃げるようにしてこの話題から避けて回っていた。なので校内の一部では、『苗木誠は超能力者だ』などという根も葉もない…実際は的を得ているのだがそんな噂が広まっていた。
「参ったな……舞園さんまであの中に居ただなんて…。逃げるのに必死で気づかなかったよ」
「うふふ、また同じ学校になったから、いつかきっと教えてもらうからね」
「馴れ合いはそこまでにしろ。今はそれどころではないはずだ」
そう言ってウインクする舞園に困ったような仕草をとっていると、横から高飛車そうな少年、超一流財閥である十神グループの御曹司、十神白夜が声をかける。
「…えっと、それってどういう……そういえば僕ら以外の人ってどこにいるの?」
「誰もいない。僕らがここに来た時も、来てからも僕ら以外の人の出入りは無い。どう考えても異常だ。誰かの仕業なのだとしたら、それは誰だ?」
十神の答えに苗木は驚く。今日は仮にも入学式だというのに、父兄どころか教員の一人も見当たらないというのは確かに変だ。ふと周りを見ると、神経質そうな少女やいかにもギャル風な格好をした少女が現状に対して不平や不安を口にしている。
そんな中、突如としてマイクの反響が響くと、次いでアナウンスが聞こえてくる。
『あーあー。マイクテス、マイクテス。大丈夫?聞こえてるよね?』
スピーカーを通して聞こえてくる若干の親しみを感じる声が彼らに告げる。
『えー、新入生の皆さん。今から、入学式を執り行いたいと思います。』
「ほうれ。これが希望ヶ峰学園流の歓迎だべ」
声が伝えた内容に、笑って話す爆裂頭の青年、葉隠康比呂を始め新入生の面々にもわずかな安堵の表情が浮かぶ。そんな中で、手袋をした切れ長な瞳の少女、霧切響子と十神白夜、それに苗木だけが依然険しい表情を浮かべていた。
そんな彼らの眼前で、前方にあったステージから何かが飛び上がってきた。ステージ上の台の上に落ちたそれは、左右で白黒に分かれ黒い方がやけに悪趣味な柄をした熊のぬいぐるみであった。
「……ぬいぐるみ?」
『ぬいぐるみじゃないよ、僕はモノクマだよ!お前らのこの学園の学園長なのだ!よろしくね』
突如として動き、話し出したモノクマと名乗るそれに、一同は驚きを隠せない。
そんな彼らに、モノクマは茶目っ気たっぷりに、しかしとても聞き流せるような内容ではないことを話し出す。
これから自分たちだけでこの学園で共同生活をしてもらうこと。
その期限は無期限、実質一生だということ。
学園は既に外部とは完全に遮断されており、外からの助けは無いということ。
モノクマの言葉に、一同は当然のごとく反論する。そんな彼らにモノクマは咳払いをすると再び話し出す。
『おほん。ここでそんな学園から出たいという人の為に、あるルールを設けます。殺し方は問いません。誰か殺した生徒だけが、ここから出られる。それだけの簡単なルールなのです』
ステージから飛び降りたモノクマは、『殺す』というワードで膠着する一同の間を嬉々として歩いていく。無論反論をする人もいたが、モノクマのどこか狂気じみた言葉に気おされて押し込められていた。苗木はそんなやり取りを見ながら、表面上は平静を保っていながらも内心は激情を押しとどめていた。今すぐモノクマをブッ飛ばすことは簡単ではあるが、そんなことをして脱出への手がかりを十分に聞き出せなくなってしまっては元も子もない。死を間近に垣間見た苗木だからこそこの状況において冷静に判断できていた。
しかしそうでないものも居るのだった。
「殺し合いをしろだぁ?テメエの悪ふざけは度が過ぎんぞ!!」
『悪ふざけ?それって君の髪型の事?』
どこからどう見ても一昔前の不良そのものな格好と髪型をした少年、大和田紋土がモノクマにつっかかった。当のモノクマは一向にペースを崩さず大和田の特徴的な髪型…所轄リーゼントをからかうが、それが大和田の逆鱗に触れた。
「んだっとコラァ!ラジコンだかぬいぐるみだか知らねえがバッキバキにブッ壊してやるよ!!」
モノクマを締め上げる大和田に、モノクマは悲鳴を上げる。
『ぎゃぁぁぁ!学園長への暴力は、校則違反だよ!』
その言葉とともに、モノクマの左目が点滅しけたたましいアラームが鳴り響く。怪訝な顔でそれを見る大和田に、危険をいち早く悟った霧切と苗木が同時に警告する。
「「危ない!投げて!」」
「あぁ?」
「「いいから早く!」」
「…チィ!!」
急かされた大和田がモノクマを上空へ放り投げてすぐ、モノクマは轟音を上げて爆発した。至近距離にいた大和田は両手で爆風から身を守る。やがて熱と煙が引くと、大和田は構えを解く。
「…ば、爆発しやがった…。!お、おいお前ら無事……どうしたんだお前ら?」
爆発のショックから覚めた大和田が後ろの無事を確認しようと振り向くと、動揺した表情を浮かべていた彼らが突然鳩が豆鉄砲を喰らったかのような顔をする。中には若干笑いをこらえているものも居る。そして彼らの視線は、いずれも自分の頭上に集まっている。
「おい何だってんだよ、俺の頭になにか…………は?」
不思議に思って自分の頭に手を当てる。と、そこに本来あるべきものはなく、手に触れたのは何やら枯葉のような感触。そして手ついたものはは真っ黒いチリチリの糸状の物。
鏡を見るまでもなく、大和田は自身の状態を把握する。
「お、俺の髪がぁー!?」
そう、大和田自慢のリーゼントは爆風によって半ばから焼き消されてしまったのである。
「……ま、まあよかったじゃないか。命は無事で…」
「いいわけあるかクソが!あのぬいぐるみ野郎がぁ~!」
苗木の慰めを一蹴し、大和田はこの場にいない自分の髪型の仇に怒りの炎を燃やす。
「で、でもあのぬいぐるみって死んだのかな…?」
『ぬいぐるみじゃなくて、モノクマ!』
遠慮がちに話す一見小学生にしか見えない不二咲千尋の言葉を否定するかの如く聞こえた声に、大和田の髪を笑っていた面々も思わず蒼白となる。そして再びステージより何かが飛び出したかと思うと、それは先ほど爆発四散したものとまったく同じ姿のモノクマであった。
『今のは最初の一回だしそれはそれで面白いから警告ということで許すけど、校則違反者を発見した場合、今みたいなグレートな体罰を発動しちゃうからね!』
くすくす笑いながら話すモノクマの言葉に、先ほどの爆発を思い出した一同は恐怖を感じて押し黙る。
だが実質被害を被って、なおかつ笑いものにされて激高した大和田は収まらない。
「んだとコラァ!!上等だ、今度はんな真似できないようボッコボコにしてやる!」
「ち、ちょっと!」
なおも食って掛かる大和田を苗木が羽交い絞めして制止する。
「離せテメエ!あのクマ野郎俺の髪こんなんにしやがって、一発ぶん殴らねえと気が済まねえ!」
「落ち着いてよ!またあんな爆発をされたら今度は髪だけじゃ済まないよ!」
「だからって…」
「それに…
・・・・・・・・・・・・・・・・・
君の髪は何にもなってないじゃないか」
はぁ?という表情で思わず自分の髪に触れると、そこには先ほどの不快な手触りは無く元の自分の髪がそのままの形で戻っていた。驚きの表情で前を見ると、モノクマも何やら驚いたような表情をしている。後ろを振り返ると、先ほどの苗木の発言に怪訝な顔をしていた面々がモノクマと同じように目を点にしてこちらを見ている。
ふと苗木を見ると、その表情は先ほどの人が好さそうな顔つきから一変して、まるで親の仇でも見るかのような厳しい視線でモノクマを睨んでいる。
そして見える人がいれば見えていたであろう。
彼の隣に立つ、テントウムシを何匹も体にはっつけたような姿の金色の人物が。
その人物が大和田の髪に触れた途端、彼の髪が異常な速度で伸び、それを手早くセットしていた姿が。
「テメエ…一体…」
「お前、『覚悟』できている奴なんだろうな…」
大和田の言葉をかき消すかのように、先ほどとは打って変わってドスの利いた声で苗木はモノクマに話しかける。
「人を殺させようとするっていうことはそれ相応の報いを受ける『覚悟』ができているんだよな…」
『………うぷぷぷぷ。いいねいいね、やっぱりそれぐらいのイレギュラーがあった方がおもしろいからね』
苗木の問いかけに、モノクマは笑いながら答える。
『いいよ苗木君。僕が気に入らないなら、僕を捕まえてごらんよ。君が僕のところまで辿りつけるか、楽しみにしているよ』
そういって再びステージ下に消えるモノクマ。その跡を見つめながら苗木は呟く。
「ああ、絶対に捕まえてやる。僕と、皆と、そして…」
苗木は後ろの面々、そして隣に立つ存在(スタンド・バイ・ミー)を見て言う。
「この『ゴールド・エクスペリエンス』で…!」
ダンガンロンパ if
ダンガンロンパ~黄金の言霊~ 近日公開…?
*没ネタ
『悪ふざけ?それって君の髪型のこと?』
プッツーン!
「おいテメエ…、今俺のこの髪のことなんつった…?」
(あれなんだこれ?)
「俺のこのヘアースタイルがサザエさんみてえだとぉー…!」
『そ、そこまで言って…』
「確かに聞いたぞコラァー!!『クレイジーダイヤモンド』!!」
『ドラララララララララララァァァァーーーー!!!!!!』
あぼーん
*没理由
ハイ分かりますね。破壊力Aあったら素で学校ぶっ壊せるからです。原作ブレイクってレベルじゃねーぞ!
ちなみに葵というのは苗木君の妹の仮名です。公式で名前ないんだもん。