仮面ライダーAP   作:オリーブドラブ

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第6話 仮面の戦士

 怪人はアウラに覆い被さらんと、駆け出した。そんな悍ましい怪物の猛威に怯むことなく、アウラは持ち込んでいた煙幕で姿をくらます。

 

 だが、エチレングリコール怪人は諦めることなく、彼女を探し回る。びちゃりびちゃりという音が、ますます激しくなっていった。

 

 やがて煙幕を抜け出し、獣欲に爛れた瞳でアウラを見据え、執拗に付け狙うエチレングリコール怪人。

 

「ふふふ、くはははは!」

「くッ……!」

 

 狂うように笑いながら、あっさりと彼女に追いついてしまった彼は――彼女の柔肌を手に入れようと、その手をゆらりと伸ばし……。

 

「はああっ!」

「ぐおっ――ぁあぁぁあッ!?」

 

 突如、コンクリートの壁をぶちやぶり現れた――もう一人の異形の者に、跳ね飛ばされてしまった。

 白く輝くバイクの体当たりを受けたエチレングリコール怪人は、その身を激しく吹き飛ばされていく。

 

「ぐぬぅッ!?」

 

 自らを覆う粘液を撒き散らしながら、彼の体はぐちゃりとコンクリートの床にたたき付けられてしまう。

 

 粘液の存在が多少は衝撃を緩和したようだが、それだけでダメージが無くなるわけではない。

 

 痛む箇所を押さえながら、粘液を纏う怪人は、颯爽と現れ、自らを襲った人物を睨み据える。同時に、アウラは自分を救った仮面の戦士に目を奪われていた。

 

「遂に現れたな……!」

「あ……あな、たは……!」

 

 純白のオフロードバイク。

 

 赤と黒の配色を持つ、シャープなスタイル。

 

 左足に伸びる真紅のライン。

 

 金色に煌めく大きな複眼。

 

 バックルに納められた、一つのワインボトル。

 

 そして――胸と複眼に輝く「G」の意匠。

 

 シェードが最も恐れ、最も危惧すべき戦士――「仮面ライダーG」。その凛々しくも雄々しい姿が日の光を後光にして、まばゆい輝きを放つ。

 

「あの事件から7年。よくもこれまでのうのうと生きて来たものだ! 我々の相手をしながら……」

 

 息を荒立てるエチレングリコール怪人を尻目に、Gは悠然とバイクを降りる。

 

 ――そこには、確かな歴戦の貫禄があった。

 

 静かな足取りで、ある程度の距離まで近づくと、彼はようやく重い口を開く。

 

「どこまでも生きていけるさ。この世界を守ると、約束したのだから。彼らと――彼女と」

 

 孤独な愛の戦士の脳裏に、7年前の戦いが蘇る。

 

 テレビ局での、かつての恋人だった日向恵理(ひなたえり)との運命の再会。

 思い出のワイン。洗脳からの解放。

 彼女を守る決意。裏切り者の烙印。

 隊長格の織田大道(おだだいどう)との死闘。

 

 そして、10人の仮面ライダーとの出会いと、激励。

 

 あれから7年間。洗脳されていた時の犯行声明が原因で社会からも迫害された彼は、たった独りでシェードの刺客と戦い続けていた。

 

 ――恐れはなかった。

 愛する者を守る事、それだけがGを戦いへと突き動かしていたからだ。

 

「人間社会は改造人間を受け入れない。そして我々は裏切り者を受け入れない! 貴様の行く末に、安住の地などないのだ!」

 

「安住の地なら、ある。彼女という、安住の地が」

 

 Gは語る口を止めることなく、拳を握り締める。これから始まる戦いに、己を奮い立たせるために。

 

「その安住の地を守る為に、僕は貴様達に立ち向かって来た。これまでも――これからも」

 

 Gはエチレングリコール怪人と真っ向から向き合い、握り締めた拳を構える。しかし、怪人に怯みは無い。

 

「馬鹿め! 私の体は猛毒の粘液で満たされている! さっきはバイクでの追突だったから通じなかっただけ……直に触れれば貴様とて!」

「なら――触れなければいいんだろう?」

 

 言うが早いか、Gの胸のプロテクターから、同じ形の物体が現れた。

 それは彼の右手に渡り、掌中に収まると同時に、先端にソムリエナイフを思わせる刃が出現した。

「し、しまっ――!」

 

 まばゆく閃くGの剣が、凄まじい勢いでエチレングリコール怪人に向かって行く。一切の隙を与えない、電光石火の連続攻撃。

 7年間に渡る実戦経験の賜物である、その剣技を前に――怪人は防戦を強いられた。

 

「うっ、ぐうっ!」

 

 後ずさりするしかない。怪人に焦燥が走る。

 

 反撃しようと踏み込めば、間違いなくそこから生まれる僅かな隙を狙われ、切り裂かれてしまうだろう。

 防御するために突き出した彼の両腕からは、激しく火花が飛び散り続けていた。

 

 一方で、Gも攻撃を緩めるつもりは全くなく、流麗かつ素早い剣捌きでエチレングリコール怪人を圧倒する。

 

「――ハッ!」

 

 そして、連続攻撃の末に繰り出された、大きく振りかぶった一撃。

 

「グギャアァアッ!」

 

 それを浴びた怪人は、容赦なく吹き飛び、再び地を転げ回った。毒性の粘液を撒き散らし、怪人は二度に渡って襲い来る痛みにのたうちまわる。

 鮮やかな身のこなしで武器を操るGとは対照的だ。

 

「これ以上は無駄な事。早々に諦め、降伏することだ。幸い、ここに改造人間を人間に戻せる姫君もいる」

「――!? ど、どうして私のことを……!」

「シェードのヨーロッパ支部と戦っている最中、奴らの情報網から君のことを偶然知ったんだ。……まさか、日本に来ているとは思わなかったが」

「……」

「――さあ。貴様も改造人間としての役目を捨て、人間に立ち戻れ。僕も、不要な争いはしたくない」

 

 先刻の滑らかな動きからは想像のつかないような毅然な姿勢で、Gは怪人に降伏を勧告する。だが、エチレングリコール怪人は降参の意を示さない。

 痛みに苦しみながらも、Gの威圧に屈する様子が見られないのだ。

 

「……流石だ。7年間に渡り、我々を翻弄し続けて来ただけの事はある」

 

 ひび割れたコンクリート壁に寄り掛かりながら、粘液を纏う怪人は立ち上がる。

 

「だが――その7年間という月日は、我々に貴様の様々なデータを残していったのだ」

 

「僕の……データだと?」

 

 自分の情報が話に関わっていると知り、Gはマスク越しに顔をしかめる。

 

「そうだ! 我が食前酒計画の真髄、心行くまで堪能していただく。行け、APソルジャー!」

 

 その時。

 

 Gは己の背後に凍てつくような殺気を感じた。

 

「っ!」

 

 後ろにいる――敵が!

 

 咄嗟の判断で水平に身をかわす。

 

 すると、さっきまで彼が立っていた場所に、謎の五人衆が舞い降りて来た。

 

「メインディッシュは、最後まで取っておくもの。まずは前置きから楽しんでいただかなくてはな!」

 

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