提督夫婦と愉快な鎮守府の日常《完結》   作:室賀小史郎

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色んな胸部装甲

 

 ー鎮守府本館・廊下ー

 

「遠征部隊は予定通りで大丈夫?」

「あぁ、問題ねぇ」

「なら準備が出来次第向かわせるわね。出撃部隊の方はどう?」

「それも事前に通達した通りだ」

「了解」

 

 朝食を終え、本日の任務内容を確認し合う提督と矢矧。そしてそんな二人の話を聞きつつ、阿賀野は提督と腕を組みながら歩く。

 

 提督は歩くのに時間が掛かるので、大抵は移動時間中に確認を済ませてしまう。その方がスムーズで無駄がないのだ。

 

(あ〜、お仕事のお顔してる慎太郎さん、素敵〜♡)

 

 そんな中、阿賀野は提督に見惚れ胸を高鳴らせていた。

 普段、自分に対して見せる甘く優しい表情も大好きだが、阿賀野としてはこうした真面目な表情も大好きなのだ。

 

「あ、ちょっとタンマ。午後からの演習の編成と午前の編成で変更するところgーー」

 

 提督が任務の相談をしようとした矢先、廊下の突き当りで提督は誰かとぶつかってしまった。ドンッと顔面を強打した提督はまるで島風のように「おうっ!?」と声をあげて、尻もちを着いてしまう。

 

「イテテ……ケツが割れそうだ……」

「もとから割れてるでしょ……」

「提督さん大丈夫?」

 

 自身の尻を押さえて、痛みを訴える提督に呆れる矢矧と心配して尻を擦ってあげる阿賀野。

 

「す、すみません、提督! 大丈夫ですか!?」

 

 そしてぶつかった艦娘が慌てて提督へ駆け寄る。ぶつかったのはあの大和型戦艦一番艦『大和』で、その隣には妹である武蔵も一緒だった。二人は午前に出撃予定なので会議室へ行く前にお花を摘みに寄った帰り。

 

 大和はその名の通り大和撫子であり、艦隊の頼れる大戦艦。提督への忠誠が高く、艦隊決戦で頼りになる一方、少しばかり天然気質。最近の私生活では妹の武蔵と阿賀野がいつ本格的に殴り合うか心配している。

 

「大和がすまないな。詫びにこの武蔵が抱っこしてやろう♡」

 

 阿賀野や大和に割り込み、武蔵はそう言って提督をお姫様抱っこする。そんな武蔵に阿賀野はどす黒い笑みを送り、大和は思わず「はわわ!」と狼狽え、矢矧はやれやれという具合に両手をあげていた。

 

「? 提督よ、だいぶ頬が赤くなっているな……尻よりそちらの方を冷やすべきではないか?」

「あぁ……大和の胸は硬いからな……」

 

 武蔵の言葉に提督は苦笑いを浮かべてそう返す。

 そんな二人に矢矧が、

 

「超合金パッドが入ってるからね、大和の胸には」

 

 淡々と言うと、流石の大和も「矢矧!?」と声を荒げた。

 

「た、確かに今の私の胸には九一式徹甲弾の被帽があるけれど……そんな言い方しなくたってぇ」

「だが提督は現に大和とぶつかって頬が赤くなってしまったぞ?」

「うぅ……それは……」

「大丈夫大丈夫。そもそも俺の不注意が原因なんだしな。そう落ち込むなよ、大和」

 

 しょぼくれる大和の頭を提督がポンポンっと優しく叩くように撫でると、大和は恥ずかしそうにしながらも笑顔で頷く。武蔵が未だに抱え上げてるので、提督は大和の頭に触れることが出来ているのだ。

 

「念の為に言っておきますが、大和の胸は被帽がなければちゃんと柔らかいんですからね?」

「言わなくても大抵はそうだと思ってるって……」

 

 大和本人はちゃんと自分は豊満な女性であると主張したいのだろうが、提督としては苦笑いを浮かべる他ない。そもそも女性ならばそんなことを主張しなくてもいいように思うが、これが大和の天然要素なのだ。

 

 そんな提督を見て、大和はまだ信じてもらえてないと思い、すかさず提督の手を取って「ほら、ここから触ってみてください!」といきなり自身の脇ら辺から横乳辺りを触らせた。

 

「ね!? ちゃんと柔らかいですよね!?」

「やややや、大和さん? すごく分かったから早く手を離してくだしゃぁ!」

「いいえ! 敬愛する提督に誤解されたままでは生きて行けません!」

「もう十分分きゃったから! 俺のシャイニングフィンガーに誓って脳髄にインプットしたからららら!」

 

 提督は大和の行動にかなり狼狽していた。それもそのはずで、

 

『…………』

 

 阿賀野、矢矧、武蔵が提督に穴でも開けるかの如くものすっごい鋭利な視線を飛ばしているからだ。

 なのに大和は「誤解が解けて良かった♪」とのほほんとしながら、やっと提督の手を離す。

 

「なぁ、提督よ……大和の胸より、ここに張りもよく布一枚越しに伝わる胸があるだろう……ん?」

 

 すると早速武蔵が自分の胸をアピールし、提督の頬へムニムニと押し当てた。何度も言うが提督は武蔵に抱え上げられている為、逃げることは不可能で冷たい視線を浴びつつ柔らかく心地良い弾力に身を委ねるしかない。

 

「し・ん・た・ろ・う・さ〜ん?」

「私たちのゴッドフィンガーも喰らっとく〜?」

 

 爆発数秒前の阿賀野と矢矧の声が提督の耳にこだまする。提督は武蔵に止めるよう目配せするが、武蔵は武蔵で大好きな提督を抱きしめているためヘブン状態。

 

 同時に手袋をキュッとはめ直す阿賀野と矢矧。

 天使のような悪魔の笑顔で二人は一歩、また一歩と提督へ近づいて行く。

 

「あ……あぁ……」

『天誅!』

「いぎゃぁァァァァ!」

 

 ーーーーーー

 

 ー執務室ー

 

「なるほど……では私と武蔵は出撃ではなく、午後からの演習に参加するということなのですね」

「出撃ではなくとも演習でも我々大和型の力を見せつけてやろう♡」

 

 やっとこさ執務室に着いた提督一行はこれから出撃予定の大和型姉妹も連れて、彼女たちへ本日の任務の変更点を一足早く伝えた。

 

ばぁ、ほうひゅうほほへふぁもむ(じゃ、そういうことで頼む)

 

 大和たちが頷く一方で、提督は嫁と義妹からのフルスイングのお陰で両頬が膨れ上がっている。そのせいで何を言っているか聞き取り難いが、そこは日常茶飯事なのでみんなとの会話は成立している。

 

 するとドアがトントントンと丁寧にノックされた。

 提督の代わりに矢矧が「どうぞ」と返すと、ガチャリと開いたドアからこれから出撃予定だった第一艦隊の面々と大和たちの代わりに出撃する者たちが入室。

 

「来たで〜、司令官……って顔パンパンやんか! どないしたん!?」

「遅くやってきたおたふく風邪?」

「んなことぁ、あらへんやろ!」

 

 入って早々漫才を披露するのは軽空母『龍驤』と軽空母『春日丸』の空母組。

 

 龍驤は艦隊のムードメーカーで落ち込んだ子を見ると放っておけない、見た目とは裏腹に姐御肌な艦娘。そして提督LOVEの一員で愛人枠でもいいから側にいたいと思っている。

 一方の春日丸は艦隊へ着任して日が浅い新人空母。しかし努力家で何事にも熱心に取り組む艦娘だ。今回の出撃に参加したのは練度をあげるための出撃である。

 

「どうせまた阿賀野さんか矢矧さんを怒らせたんでしょう? 司令も懲りないわね〜♪」

「とても痛そうですが大丈夫ですか、司令?」

 

 龍驤たちの後ろからそう言ってくるのは陽炎型一番艦『陽炎』とその四番艦『親潮』。

 

 陽炎は陽炎型ネームシップにして陽炎型姉妹をまとめるリーダーシップあふれる艦娘。提督に妹扱いされると嬉しさ半分くすぐったい気分半分になるとか。

 親潮は気立ても良く影で姉妹を支えるお姉さん。妹たちが頑張っているのを物陰から応援している姿はよく目撃されている。

 この二人……というよりは親潮の練度をあげるための出撃でもあり、陽炎は親潮の手本として出撃。

 

「Ciao♪ 大和たちの代わりは私たちにお任せ♪」

「期待以上の戦果を約束するわ」

 

 そして最後に入って来たのは、大和たちの代わりに出撃することになったイタリアのヴィットリオ・ヴェネト級戦艦二番艦『イタリア』と四番艦『ローマ』。

 

 イタリアは元はリットリオという名前だったが、改造を施したと同時に改名。イタリア人らしく、ノリもよくいつも笑顔が絶えないお姉さん。ゆくゆくは提督とケッコンカッコカリをして、そのまま祖国へ連れて行くという大胆な艦娘。

 ローマは姉のイタリアよりも落ち着いていてお堅いイメージだが、今ではすっかり艦隊に馴染み、グラーフなどともお酒を飲む度量も身につけた。イタリアが提督にちょっかいをした際には、姉の代わりにローマが阿賀野へ菓子折りを持って謝罪しに行くんだとか。

 

「提督〜、ほっぺが痛い痛いね〜? 私が癒やしてあげる♡ ちゅっ♡」

 

 早速ご挨拶とばかりにイタリア流のアプローチをするイタリア。その身のこなしはあの阿賀野が出遅れる程。

 イタリアから頬へキスされる提督だが、隣に佇む阿賀野が絶対零度の笑みで提督の脇腹をつねっているので、内心としては構わないでほしいといったところ。

 

「姉さん、止めなさいよ。提督は阿賀野のmarito()なのよ?」

「今は仕事中だからみんなの提督だも〜ん♡」

 

 ローマの言葉に対し、イタリアは全く気にすることなく提督の顔を自身の胸にギュッと収める。

 顔は柔らかく脇腹は痛い……提督はもう涙目で席から立ち上がり、龍驤へまっしぐら。

 

「なんやなんや〜? うちのところに来るん? よ〜しよ〜し、もう怖ないで〜♡ ええこええこ〜♡」

 

 大っきな子どもと小さな大人……それを見て阿賀野は少しやり過ぎたと反省し、イタリアは龍驤に盗られたと唇を尖らせる。

 

「やっぱ今の時代はデカさやないな〜♪ 君はちゃ〜んとうちという木ぃに止まってくれるもんな〜♡」

「どうする、離婚する?」

ふふふぁへへぇばろ(する訳ねぇだろ)!」

 

 陽炎の問いに提督が即答すると阿賀野はつい嬉しくて頬がだらしなく緩む。

 

「君はあれくらいで心変わりする男ちゃうもんなぁ♡ うちはそういう一途なところも含めて大好きやで〜♡ 例えうちがその目に映っとらんくても♡」

 

 硬い胸や柔らかい胸に何かと厄介になったこの短時間、提督にとってこの何の変哲もない胸部装甲はかなりの癒やしだった。

 

「龍驤さんにとても甘えますね」

「まぁ、武蔵さんやイタリアさんだと、司令は少し背が足りませんからね……」

 

 春日丸と親潮が提督と龍驤のやり取りを苦笑いで見ているその隣で、二人の言葉に反応した武蔵やイタリアは自分の身長の高さを悔やみ、顔をしかめる。

 

 すると阿賀野がゆっくりと提督へ近付き、そのまま提督の背中に抱きつく。

 

あふぁほ?(阿賀野)

「ごめんなさい、慎太郎さん……阿賀野のこと嫌いにならないで……」

ふぁひぃふぃっふぇんふぁ(何言ってんだ)……むふぁふぁふぇふぇふぁお(んな訳ねぇだろ)

 

 謝る阿賀野に提督は龍驤のまな板から離れ、そう言って阿賀野の頭を優しく撫でる。

 

「たくさん痛いくしてごめんね?」

ほぅひぃ〜お(もういいよ)ほへほほほへん(俺こそごめん)

 

 阿賀野は謝りながら提督の赤く腫れた頬に軽い口づけを何度も何度もした。

 

「なはは、結局うちは阿賀野にはなれへんねんな〜。ま、この二人の幸せそうにしとるとこ見んのも好きやけど♪」

「あなたも姉さんと同じく逞しいわね……」

「恋は偉大ですね〜♪」

 

 龍驤に対してローマと大和はそう言ったが、その表情は対照的だった。何故ならローマは呆れ顔で大和は微笑んでいたから。

 

「はいはい、もうそれくらいにして。時間が無くなっちゃうから」

 

 そして矢矧が強引にまとめ、やっと本日の任務へそれぞれ赴くのであったーー。




前回の続きって感じで書きました!

読んで頂き本当にありがとうございました!

そしてリアルの方がちょっと忙しくなるので、更新を少しの間だけお休みさせて頂きます。
ご了承お願い致します。
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