提督夫婦と愉快な鎮守府の日常《完結》   作:室賀小史郎

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ズイ₍₍(ง˘ω˘)ว⁾⁾ズイ

 

 9月某日、朝。

 

 ー海上訓練用海域方向の埠頭ー

 

「ん〜……今日は天気もいいし、絶好の訓練日和ね〜!」

「ふふふ……頑張りましょうね、瑞鶴」

 

 今日の訓練内容は対空戦闘、発着、空母護衛がメイン。まだ訓練開始時刻より一時間以上早い時間だが、五航戦である翔鶴型装甲空母一番艦『翔鶴』とその二番艦『瑞鶴』はもう既にやる気十分で桟橋に立っている。

 

 翔鶴はいつも笑顔を絶やさない優しい艦娘。提督のことを敬愛し、提督のために日々頑張っている忠犬勢。

 妹の瑞鶴は血気盛んなところはあるが真面目で翔鶴の足手まといにならないよう、日々努力を重ねる努力家。提督のためならなんでもするLOVE勢で見守り勢。そんな提督に手を出す加賀とはいつも喧嘩になるが、喧嘩する程なんとやらである(普段は良き先輩後輩の仲)。

 

 海上訓練をする海域といっても敵が滅多に出没しない鎮守府が制海権を持つ正面海域で、執務室からでも見える程の近場である。

 しかし安全確保のために訓練中は潜水艦娘による水中からの警護と彩雲による索敵が常時行われている。

 

「お〜、二人共早ぇな〜」

 

 そこへ提督が一人でトボトボと歩いてきた。今日は提督が見るべき書類が今のところ少ないので、訓練を見にやってきた次第。

 こういう場合、大抵は阿賀野や補佐艦の誰かが一緒に付いてくるのだが、阿賀野は矢矧と出撃で能代と酒匂は経理業務で手が離せないので一人でやってきたのだ。

 そんな提督に翔鶴と瑞鶴はすかさず駆け寄り、瑞鶴はすぐさま提督の右腕を取って支えてあげる。

 

「気ぃ遣わせて悪ぃなぁ」

「これくらい気にすることじゃないわよ♪ ね、翔鶴姉?」

「瑞鶴の言う通りです。今倉庫から折り畳みの椅子をお持ちしますね」

 

 翔鶴の気遣いに提督は感謝を述べると、翔鶴はニッコリと笑みを返して埠頭の側にある訓練用具用の倉庫へ椅子を取りに向かった。そしてこれにはそれと同時に瑞鶴を提督と二人きりにさせるという、姉の配慮もあるのだ。

 

「提督さんはどうしてここに? もしかして訓練見に来たとか?」

 

 瑞鶴の質問に提督が「その通り」と返すと、瑞鶴はえへへと嬉しそうに笑って「そっかそっか♡」と頷く。見守り勢であるが、やはり好きな人が近くで訓練を見てくれるというのは嬉しいもの。

 

「空母の練度や他の艦娘との連携度も書類だけじゃなくて、この目で確認しなきゃだからな」

「流石提督さんね♪ ならいつも以上にいいとこ見せなきゃ♡」

「ははは、期待してるぞ〜♪」

 

 提督はそう言って瑞鶴の頭をワシャワシャと撫でる。こうすると髪型が少し乱れてしまうが、瑞鶴にはこれくらいの力加減が好評なのだ。

 その証拠に瑞鶴はいつもの頼もしさは消えて、代わりに妹気質全開で「(*≧ω≦)(こんな)」表情を浮かべてかなりご満悦。

 

「……おはようございます」

 

 そんな二人の間から加賀がヌッと顔を出して雰囲気をぶち壊す。加賀としては瑞鶴が提督に構ってもらってるのが悔しいからだ。

 

「げぇっ、加賀さん!?」

「まるで人を関羽のように言うのね……」

「別にそこまで言ってないでしょ。単に驚いたってだけで……」

「提督、五航戦の性悪ツインテ娘にいじめられてます。大至急私を慰めてください♡ 出来ればあちらの物陰で激しく♡」

 

 瑞鶴の理由も聞かず……というよりは端から聞く気もない加賀は早速提督を物陰に連れて行こうとしている。

 

「何酒保にでも行くみたいなノリで連れてこうとしてるのよ! そもそも加賀さんもこれから私たちと訓練でしょっ!」

「ちっ……貴女はそうやっていつもいつも私と提督の仲を引き裂くのね」

「加賀さんお願い。ちゃんと私と会話して。心のキャッチボールして……というか舌打ちじゃなくて口で『ちっ』とか言う人あんまいないから」

「提督、五航戦のツインテ娘が容赦なく私をいじめてきます。早くあの物陰で激しく濃密に慰めてください♡」

 

 瑞鶴の願いも叶うことはなく、加賀からの心の千本鬼ノックは続く。

 

「加賀さん、もうその辺にしたらどうですか?」

「あのアトミラールが対応に困り果てて無言になっているじゃないか」

 

 そんなところに艦隊唯一のアメリカ装甲空母『サラトガ』とドイツ空母『グラーフ』の二人が止めに入る。提督は二人が来るなりそそくさとサラトガたちの背中へ避難。

 サラトガはいつもにこやかでお姉さん気質あふれる艦娘。提督のことを尊敬していて、つい先日Mk.II Mod.2に改造され、更に頼もしくなった。

 グラーフは凛々しく頼もしいドイツ軍人らしい艦娘。物言いや立ち振る舞いは堂々としているが、提督に対してはニャンニャン声で激甘口調になるLOVE勢。それは提督の生き様に心底惚れているが故。

 

「よ〜ちよち、怖かったね〜♡」

「ふふ、提督ったら甘えん坊さんですね♪」

 

 グラーフは提督の頭を優しく撫で、その豊満な胸いっぱいに抱きしめる。サラトガはそれを微笑まし気に見ているが、加賀はぐぬぬと拳を握り、瑞鶴はペタペタと自分の胸を触って小さくため息を吐く。

 

「あら、皆さん。おはようございます」

 

 そこへ翔鶴が椅子を持って戻ってきた。その隣には赤城もいて、赤城は訓練に使う備品の入った大きなカゴを持っている。

 翔鶴に加賀たちも挨拶を返すが、

 

「加賀さ〜ん、備品運ぶの手伝ってくださいよ〜。提督を見つけるなりすっぽかすなんて酷いですぅ〜」

 

 赤城はプンプンと頬を膨らませて加賀に抗議。それに対して加賀は「提督しか目に入ってませんでした。ごめんなさいね」とブレなかった。これには赤城もため息を吐くが、ちゃんと謝ってくれたのでそれ以上は何も言わないことにした。

 

「どうぞ、提督」

「おう、悪ぃな用意させちまって」

「いえいえ、脚がそのようになっても私たちのことを気遣ってくれる提督のためですから」

 

 翔鶴は優しく微笑んで思ったままの言葉を提督に返すと、提督はお礼代わりに翔鶴の銀色に輝く綺麗な長い髪をそっと撫でた。少々子どもに対する振る舞いのようだが、翔鶴としては提督からこうされるのは嬉しくてたまらない。その証拠に翔鶴はずっとニコニコしながら髪を撫でられている。

 

「アトミラール、椅子があるとはいえ見ているのも大変だろう。今テーブルとコーヒーを用意してあげよう♡」

「みんなが頑張ってるのに俺だけ優雅に過ごす訳にいかねぇだろ……」

 

 グラーフの提案を断ると、グラーフは親に構ってもらえない子どものようにその場へしゃがみ込んで瞳いっぱいに涙を溜める。

 

「あ〜あ〜、泣くなよ。気持ちは十分に受け取ってっからよ!」

 

 提督はグラーフをあやすように頬をムニムニと撫でると、グラーフは途端にキラキラの表情に変わった。

 それを見てホッとした提督だったが、すぐ背後から冷たい視線が背中に突き刺さってくる。

 

「提督さんってグラーフにはな〜んか甘いよね〜」

「頭に来ました……」

 

 視線の正体は瑞鶴と加賀。加賀は勿論だが、見守り勢でもLOVE勢である瑞鶴にとって今の状況は不愉快なのだ。

 すると加賀と瑞鶴はアイコンタクトで互いに頷き合い、行動を開始。こういう時の二人は普段の何倍ものコンビネーションを発揮する。

 

 加賀はグラーフを提督から遠ざけ、瑞鶴は提督と翔鶴の間にスルリと入った。

 そして、

 

『(。♡ω♡)』

 

 二人して目をハートにして両サイドから提督へ構って光線を浴びせる。こうなると提督の選択肢は一つしかないので、提督は苦笑いを浮かべつつ二人の頭をワシャワシャするのだった。

 

「お前らはなんだかんだ仲がいいよなぁ……」

「なんだかんだ一年以上は任務や訓練で一緒に行動してるからね〜♪」

「不本意ですが五航戦の小うるさい方の言う通りです……んっ、提督、もっと撫でてください♡」

「ほいほい……」

 

 当然のように瑞鶴をディスった加賀だが、瑞鶴は構うことなく流している。慣れてしまえば何ら痛くも痒くもない……というよりは瑞鶴が大人になり、加賀がある程度は許容するようになったからだろう。

 

 ーーーーーー

 

 続々と訓練予定の艦娘たちが集まりだす。

 本日は提督もいるということで、みんな妙にやる気満々で訓練前だがみんなして提督と談笑し、提督もみんなとのコミュニケーションを楽しんでいる。

 

 すると頭上にブーンと航空機がやってきた。

 

「あれはなんだ!?」

 

 航空機を見るなりそう叫んだのは若葉。

 

「瑞雲です!」

 

 その声に初霜がすぐに報告すると、瑞雲は徐々に高度を下げ、海に浮かぶ的へ機銃掃射。

 

「大変だ! 的は中枢部をやられた! きっと爆発してしまうよ!」

 

 ど真ん中が射抜かれた的を指差してそんなことを言うのは綾波型駆逐艦九番艦『漣』。

 いつもおちゃらけていて姉妹や提督たちを振り回すが、それはみんなと笑顔でいたいからこその行動。提督のことを『ご主人様』と呼んでいて、よく懐いている。

 

「みんな下がれ! 早く! 的が爆発する!」

 

 漣に続き叫んだのが漣の姉である同型駆逐艦七番艦『朧』。

 何事にも実直な艦娘だがふざけることも好きな子。そして提督のことを密かに想っているLOVE勢。妹の曙が提督のことをクソ呼ばわりすると、どこぞの世紀末伝説の三男みたいなセリフを真顔で言うんだとか……。

 

「ほあああああっ!!」

 

 そしてとどめばかりに断末魔のような悲鳴の真似を披露するのは吹雪型駆逐艦四番艦『深雪』。

 いつも元気でノリのよい艦娘。みんなとふざけ合うのが大好きで、それにノリよく付き合ってくれる提督のことも大好き(LIKEの意味で)。

 

 この謎連携にポカン顔する者もいるが、元のネタを知っている面々はクスクスと笑い声をあげる。この一連の元ネタは若葉たちが好きなアニメのワンシーンなんだそうな。

 その証拠に子日なんかは「ほあ〜! ほあ〜!」と何度も笑顔で叫んでいる。しかし初春に至っては「愚妹たちめ……」とぼやき、開いた扇子で顔を覆っていた。

 

「ふむ……瑞雲の調子も上々だな」

 

 満足気につぶやきながら現れたのは伊勢型航空戦艦二番艦『日向』。

 エブリデイ瑞雲、エブリタイム瑞雲な艦娘。自分のことを航空戦艦として育て上げてくれた提督のことを弟のように可愛がり慕っている。

 

「いや、その前にこの状況の収集しなさいよ……」

 

 そんな日向のあとから頭を抱えつつ現れたのが同型航空戦艦一番艦『伊勢』。

 面倒見がよく、頼りになるお姉ちゃん。伊勢はLOVE勢であるが見守り勢。阿賀野からはよく相談されているとか……。

 

「お〜、これで揃ったな。きっちり訓練開始十分前だ」

「そんなに褒めてもアパッチやコブラは載せないぞ?」

「ヒュ〜……じゃなくて、んなの当たり前だろ」

「ふふ、相変わらずお前はノリが良くて可愛いやつだ♪」

 

 日向は上機嫌で提督の頭を撫でるが、それを見る伊勢はこめかみを押さえて複雑な表情。

 そんな伊勢を気遣って提督がニカッと笑みを見せると、伊勢は胸の奥がトクンと跳ね、小さく笑って「いいんじゃない♡」と返した。

 

 すると提督の通信機に反応があった。それは矢矧からのメールでその内容は、

 

『そろそろ訓練開始時刻よ。

 デレデレしてないで

 みんなに号令出しなさい!

 ٩(๑òωó๑)۶矢矧

 

 帰ったらキスしてね!♡

 あなたの阿賀野より♡   』

 

 と二人分のメッセージが送られてきた。それを見て提督は何処かで見てるんじゃないかと、思わず辺りを見回すが二人の姿は当然何処にもない。

 それから提督は「まぁいいか……」とつぶやき、みんなに訓練開始の号令を出すと、みんな意気揚々と海を駆けるのだった。

 

 ー執務室ー

 

「ふぅ、矢矧から頼まれた任務はこれで完了っと……」

「司令、キョロキョロしてて可笑しかったね〜♪」

 

 執務室の窓から矢矧に頼まれて提督の動向を監視していた能代と酒匂は、提督が号令を出すのを確認してからまた自分たちの仕事に戻る。

 能代が提督の動向を矢矧に送り、まだ移動中だった矢矧が提督にメールを送りつけたというシナリオだ。勿論、阿賀野は矢矧に「私の言葉も送って♪」とお願いされて送った次第。

 

 あながち提督の勘も的を射ているのであったーー。




今回、阿賀野と矢矧は出てませんがメールで登場したから、デイリーやはぎん達成!ってことで。
ともあれ、今日は朝というか午前中の風景を書きました!

読んで頂き本当にありがとうございました!
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