10月最後の日となる31日、昼前。
今日は世間ではハロウィンということで、鎮守府もハロウィンイベントを行っていた。
訓練や任務以外の艦娘(主に駆逐艦)たちはフェイスペイントやボロいシーツを頭から被って仮装し、仲間たちのところを転々としてお菓子回収に精を出している。
ー執務室ー
「トリックオアトリート〜♡」
「お菓子無いので悪戯キボンヌ!」
ただ、この夫婦はある意味で平常運転だった。
阿賀野が吸血鬼の格好をして例の合言葉的なことを言うと、提督は両手を広げて待機。
すると阿賀野は提督に抱きつき、首筋やら唇をハムハムと甘噛みする。
「吸血鬼っていうか、やってることは淫魔よ……」
そんな夫婦のやり取りを矢矧は真顔でツッコミを入れていた。能代と酒匂は『まぁまぁ』となだめてはいるが、否定しようとはしていない。
提督と阿賀野は先程まで駆逐艦やらLOVE勢にてんやわんやしていたので、夫婦のハロウィンがやっと出来ているのだ。傍から見ればそれはいつも通りだが、やはりシチュエーションが違うと盛り上がるものである。
それから数分後、ヒートアップした故に矢矧の怒号が炸裂するとは夫婦はまだ想像もしていない……。
ー中庭ー
一方で、ここにも多くの艦娘たちがハロウィンを楽しんで……
「やだ……怖い怖い怖い怖い怖い……」
「私を食べても美味しくないよ〜!」
「もう! アイオワさん!」
「いくらなんでもやり過ぎです!」
「そ、ソーリー……」
「貴女ならやると思ったのよね……」
……いるはずである。
頭を両手で覆い、その場にしゃがみ込み、半べそになって震えているのは嵐と舞風の二名。
そしてその二人を庇う野分、萩風から怒られているのは、白塗りのハロウィンマスクにおもちゃのナイフを持っているアイオワ(正座中)である。
アイオワはハロウィンイベントということで気合を入れて仮装したのだが、気合を入れ過ぎたのだ。
何故ならアイオワのハロウィンマスクは返り血を浴びたペイントが施され、ナイフも血で薄汚れている風……極めつけはジョークグッズであるリアルな心臓を手にぶら下げていたから。
そしてその記念すべき第一被害者が第四駆逐隊だった。ホラーが苦手な嵐は当然だが、そのリアルさに舞風もご覧の有様……野分と萩風は二人の驚き様がかえって冷静にさせたので今に至る。
「ここは日本なんですよ。ここでまでアメリカクオリティを発揮しないでください!」
「やるならもっと相手を選んでください! 冗談が通じない人だっているんですからね!」
「ゴメンナサ〜イ……」
美少女二人から正座で叱られるブギー〇ン……いやこの場合はブギーウー〇ンだろう。
アイオワに付き合わされて一緒に行動していたウォースパイトはこれだけで笑える構図……と通信機でその風景をカメラに収めるのだった。
しかし、ウォースパイトも野分たちから「そもそもどうして止めてくれなかったんですか!」と非難を浴び、注意されたのは言うまでもない。
ー空母寮の談話室ー
「皆さ〜ん、サラとアークで作ったパンプキンパイで〜す♪」
「Happy Halloween、だ♪」
そしてここでは英米合作『パンプキンパイ』でハロウィンを楽しんでいた。
パイに使ったカボチャはこの日のために特別に取り寄せた大きなカボチャで、その大きさは特大スイカをもう二周りくらい大きくした物。
因みにカボチャの中身をくり抜いたあとは寮の玄関に特大なジャック・オ・ランタンとして鎮座している。
「これがアメちゃんクオリティ……」
「大きいですね……」
「流石物量作戦が十八番な国……」
龍驤、祥鳳、瑞鶴のつぶやきに他の面々もその大きなパイに度肝を抜かれているが、
「甘くて美味しいわね♪」
雲龍だけは美味しそうにみんなと同じ大きさのパイというエベレストを既に踏破しようとしていた。サラトガたちが雲龍の分は特別にみんなとは別で作っていたのだ。
「あの細い体のどこにあれが消えるのかしら……?」
「胃袋にブラックホールでもあるじゃないかな?」
加賀の疑問に蒼龍がそう返すと、
「まさかおっぱいに栄養が……!?」
衝撃を受けたかのように葛城へ電撃が走り、それは各フラット控えめな空母たちにも
すると我先にとパイを食べる控えめな空母たちは他の面々から苦笑いされ、結局いつもより少し多く食べただけに留まった。
方や雲龍はその余りをもぺろりと平らげ、皆はいつの間にか拍手していたそうな……。
ー特務艦寮の談話室ー
「はい、では皆さん、いただきます♪」
『いただきま〜す!』
お昼を迎えた頃、特務艦寮は潜水艦の者たちも呼んで、龍鳳主催のハロウィンランチパーティを過ごしていた。
テーブルにはハロウィンらしいパンプキングラタンやカボチャを模したパンが並ぶ他、カボチャの煮物やカボチャコロッケといった物も並んでいる。
「この煮物美味しいでち!」
「皮はホクホクで身はトロトロなの〜♪」
「それはニムが作ったんだ♪ お口に合って良かった♪」
潜水艦たちはニム特製の『肉かぼ』を大絶賛。
肉かぼとは肉じゃがのカボチャ版という創作料理で、ほんのり甘くそれでいて箸が進む一品なのだ。
「カボチャのパンにカボチャのスープ……カボチャ尽くしっす!」
「しかも洋食、和食どっちもなんて贅沢よね♪」
「たまにはこういう変わり種もありよね〜」
その隣では占守たち海防艦勢とイムヤやはちが龍鳳の料理に舌鼓を打っている。
「ふ〜……ふ〜……はい、冷めたであります」
「ありがとうございます♪」
「あ、ありがとうございます」
「召し上がれ〜♪」
猫舌なまるゆと松輪にはあきつ丸と択捉がちゃんと世話を焼き、のほほんとした空間でまったりとした時間が流れていた。
「みんな喜んでくれて良かったですね♪」
速吸が龍鳳へそう言うと、龍鳳は満面の笑みで「えぇ♪」と返すのだった。
ーーーーーー
ー食堂ー
日も落ち、ハロウィンはいよいよ大詰め。
みんな待ち焦がれたハロウィンパーティが提督の音頭で幕を開け、特設お立ち台では早速有志による発表が催されている。
『お菓子くれなきゃ、イタズラしちゃうよ♪』
妖精音楽隊の演奏に合わせ、睦月型姉妹がそれぞれ仮装して「Happy Halloween」をダンスと共に披露。
『ねぇ もう暗くなりそうだから♪』
『デちゃってもいいかしら♪』
睦月と如月は猫耳と猫の尻尾を付けた猫娘の仮装で、
『きっと もう霧が濃くなるから♪』
『ミンナ集まるかな♪』
弥生も猫娘の仮装だが、卯月はブレずにうさ耳でうさぎ娘(?)の仮装をしている。
『ひとつ♪』
『ふたつ♪』
『鐘の音♪』
『騒ぎ出す♪』
『小さいオバケたち♪』
『今日は許してくれるの♪』
『さあ 街に行こう♪』
皐月・水無月・文月・長月はゾンビメイクに裾などがボロボロになった白いワンピース姿で、菊月・三日月・望月は顔や首などに包帯を巻いた赤ずきんちゃんの仮装。
みんな睦月たちへ声援を送ると、睦月たちはそれにウィンクや投げキッス、手を振って応え、
『今日は Happy Halloween♪』
『さぁ Let's trick or treat♪』
『赤いキャンディーコロがして♪』
『朝まで寝たくない♪』
第二十二駆逐隊、第二十三駆逐隊&三日月、第三十駆逐隊と歌い、ラストは姉妹全員声を揃えて歌い終えた。
拍手喝采は勿論、中には飴玉や一口チョコレートをお立ち台へ投げ込む者たちもいた。
睦月たちがお菓子を拾い終え、その場を笑顔で退くと、続いてお立ち台に上がってきたのは赤と白のチロルワンピース姿の赤城。
そしてお立ち台の後ろでは加賀がローマのハロウィン衣装姿で電子ドラム一式をセットし、配置について赤城へアイコンタクトをすると、
『深い深い森の奥に 迷い込んだ村の娘♪』
ハロウィンにピッタリな「Bad ∞ End ∞ Night」を歌い出す。
その美声に観客は拍手をするが、
『ーー夜の館に辿り着く……♪』
のフレーズから少しすると、加賀が見事なドラム演奏を開始。加賀はこういう日のために頑張ってドラムの鍛錬を積み、妖精音楽隊と念入りに打ち合わせをし、こうして今宵晴れて皆の前で赤城と共に一航戦の誇りをお披露目出来たのだ。
加賀の見事なドラム演奏……赤城のどこまでも響き渡る歌……そしてそれに絶妙に合わせる妖精たちのコーラス隊のハーモニーが食堂に広がり、手拍子がこだまする。
『ーー手紙を拾って泣いていた♪』
歌い終わり、赤城と加賀が揃ってみんなへお辞儀をすると、食堂は割れんばかりの拍手喝采が巻き起こった。
今回は子どもではないからか睦月たちのようにお菓子が投げ込まれることはなく、オレンジのガザニアや黄色い菊が投げ込まれるのであった……が、二人は嬉しそうに花を拾ってお立ち台をあとにした。
その後もハロウィンの定番「This is Halloween」を陽炎型姉妹のみんなが歌ったり、アイオワが「Thriller」を本格的に再現した発表など、かなりの盛り上がりを見せ、
『はい、皆さ〜ん♪ ハロウィンパーティの締めはパンプキンパイ大食い大会で〜す♪』
もうここの鎮守府のイベント事では定番となった『大食い大会』が大淀の声で幕を開ける。
今回は前大会の覇者である海風は優勝したが故にお休みのため、スイーツ大食いプリンセスこと弥生や元祖大食い艦である大和、新鋭アイオワ……そしてダークホース的な若葉にもそれぞれ注目が集まっている状況だ。
因みに雲龍と山風は大食いだと長期戦必須+食材不足必須なので参加は自粛している。
『では参加者が出揃ったところで、パンプキンパイ大食い大会……始めっ!』
大淀の合図で一斉に食べ始める参加者たち。此度のパンプキンパイは一口サイズということもあり、アイオワに至っては一気に2個食いしてスコアを伸ばしている。
スコアは妖精たちがそれぞれ数えているので間違いはないが、アイオワのスピードだと少々大変そう。
「ん〜、おいひぃ♪」
「甘くて、美味しい……♪」
「美味い」
「美味しいですわ♪」
一方で大和たちはモキュモキュ、もぐもぐと美味しそうに食べている。早食い大会ではないのでみんな自分のペースで食べているが、その手は案外早い。
この中で一番遅いのはパンプキンパイでお腹いっぱいにしたいという理由で参加した三隈で、みんなが既に二桁を平らげているのに三隈だけ3個しか食べていない状況。
「三隈姉って本当にマイペースだね〜……」
「寧ろそうでない三隈さんは想像出来ませんわ」
「三隈〜、もっと食べなよ〜!」
そんな三隈を妹の鈴熊はお茶を嗜みつつ眺め、姉の最上だけは声援を送っていた。
ーーーーーー
「もう入りません……」
『大和選手リタイア! 残るはスイーツプリンセス弥生さんと超新鋭アイオワさんの一騎打ちとなりました!』
大食い大会もクライマックスに突入し、アイオワと弥生へ観客たちは声援を送る。
アイオワの方がスコアは上であるが、弥生の方は淡々とスコアを伸ばしているためどちらにも優勝の可能性がある。
しかし、ここまで来るとアイオワも勢いが衰えて2個食いではなく1個1個を着実に消費していくが、弥生は全く衰えを見せない。
そして、
「ぎ、ギブアップ……」
アイオワがとうとう脱落し、当初の予想通り弥生に軍配が上がった。
一人になっても尚、手を止めなかった弥生はスコアを最後まで伸ばし、余裕の優勝を飾るのだった。
ー結果ー
1位:弥生 ・パイの数:94個
2位:アイオワ・ 〃 :77個
3位:大和 ・ 〃 :58個
4位:若葉 ・ 〃 :41個
5位:三隈 ・ 〃 :7個
ということで大食い大会は幕を閉じた。
優勝した弥生には後日提督から『スイーツバイキング招待券(睦月型姉妹全員分)』が渡される予定で、弥生は睦月たちからとても感謝され、暫く崇め奉られることになる。
このようにハロウィンパーティは閉幕し、艦隊は鋭気を養うのであったーー。
ーおまけー
仮装大賞・各受賞発表(提督のコメント付き)
《ハラ賞》
受賞者:響
これはもう響やガングートのためにあるような賞の名前ですが、銀色の髪に合う可愛らしい銀色の狼耳でみんなを和ませ、まさにXорошоでした。
(ガングートはハロウィンの仮装をしていない)
《可愛いで賞》
受賞者:初霜
座敷わらしの仮装でしたが何ら違和感なく一家に一人は居てほしい愛くるしさで、寧ろ娘に欲しかった。
《小悪魔で賞》
受賞者:プリンツ
どこかの格闘ゲームにいるようなサキュバスの仮装で大変目のやり場に困る悪魔っ娘でした。
《セクシーで賞》
受賞者:由良
これもどこかの格闘ゲームに出てくるキャットウーマンみたいな仮装で良い子には見せられない魅惑的な仮装でした。眼福☆眼福
(後、阿賀野からビンタを喰らう)
《心臓に悪いで賞》
受賞者:扶桑
ただ髪を湿らせて顔を覆い、廊下に佇んでいるだけで道行く人たちを震え上がらせたのは流石姉様の一言に限る。
《愛でま賞》
受賞者:龍驤
胸にまな板、背中に洗濯板を装備して『お前の乳袋を頂く!』と泣きながらキョヌーの方々を追いかけている姿に、一部の者たちは尊敬の念を抱いたはずです。なのでそんなあなたにこの賞を送ります!
《◇大賞◇》
荒潮
返り血メイクにリアルおもちゃのチェーンソーを振り回しながら高笑いしていたところは、きっと多くの方々の夢に出ます。よってあなたが大賞です!
各受賞者には後日、提督と阿賀野から賞状とトロフィー、提督のお手製スイーツを贈呈。
ーーーーーー
ということで、此度は少し早いですがハロウィンパーティの回にしました!
色々とネタを盛り込んだことにはご了承を。
読んで頂き本当にありがとうございました!