11月某日、朝。泊地の朝の気温も日に日に下がり、場所によっては0度になるところもちらほら。
しかし大規模作戦が終盤戦に差し掛かった当鎮守府に所属する面々は寒さなんてなんのそのである。
気合十分に次々と抜錨していく艦隊を見送り、提督はマントに身を縮めながら執務室を目指した。
今回は残存勢力の殲滅戦であるため、提督が直接指揮するようなことはなく、その分執務をしっかりとこなす予定だ。
「うぅ〜、人より脂肪が付いてるのになんでこんなに寒ぃんだ」
朝の寒さにぼやく提督。するとフワッと温かい感覚が背中に伝わってきた。最初は駆逐艦や潜水艦、海防艦の者たちかと思ったが、どうもそれより大きい。
こんなことをするのは限られているので、提督はその内の何名かの顔を思い浮かべ、つい苦笑いを浮かべる。
そして振り返り、犯人の顔を確認すると、「おはようございます、司令官さん♡」と天使のような笑みを浮かべる羽黒の姿があった。
挨拶をした羽黒はまた提督の背中にピッタリと身を寄せ、寒さでほんのり赤くなった頬をスリスリと何度も背中に擦りつけている。
「おはよう、はぐはぐ。今日はやけに甘えん坊さんなんだな」
悪戯っぽく言葉を返す提督に羽黒は「寒いのは苦手なんですぅ」と右頬を膨らませて抗議。
「なっはっは、確かに今朝は寒ぃよな。流石に俺もマント無しじゃキツい」
「でもこうしてると司令官さんの温もりと羽黒の温もりが合わさって、落ち着く温かさです♡」
そう言うと羽黒は「ん〜♡」と甘えたような声を出してまた頬擦りする。
そんな甘えん坊を提督は大きな娘をあやすように、ゆっくりとその頭を撫でた。すると羽黒は「はにゃ〜♡」と何とも言えない甘い声をあげる。
こんなところを阿賀野に見られたら……と愛する妻の顔を思い浮かべる提督だったが、羽黒が素直に甘えるのは珍しく、嬉しいことでもあるため、『これは浮気じゃない。父親が娘に抱くあれだ』と心の中で言い訳して羽黒の頭を撫で続けた。
すると、ストンっと自分の胸に軽く衝撃が伝わる。
撫でる手を止め、それを確認すると、
「提督、榛名はもう大丈夫です♡」
これまた意外な艦娘が甘えてきた。
「どうしたんだ、榛名?」
「はい、榛名、寒くて辛かったんです。でもそこへ提督が榛名を救いにやってきてくれたんです……だから榛名はもう大丈夫です!♡」
ここはいつから南極や北極のような極寒の地になったのだ……というか、自分から来たよね?とツッコミそうになったが、提督はその言葉を呑み込み、「大袈裟なやつだ」と微笑んだ。
「大袈裟じゃありません! 榛名、今日はこんなに寒いと思ってませんでした……」
羽黒と同じく頬をプクッと膨らませて抗議する榛名に、提督は「わぁったわぁった」と苦笑いで返してなだめる。すると榛名は「えへへ♡」と無邪気(多分)な笑みをこぼして、また提督の胸へ自分の顔を埋めた。
「榛名さんも寒いの苦手なんですね」
「えぇ、この季節は提督が恋しくて〜」
未だ背中から離れていない羽黒からの言葉に、榛名は当然のように返す。
するとまた、
「これでもくらえ〜♪」
「おはようございます、提督♡」
右腕に文月、左腕に筑摩と両サイドから抱きつかれた。
文月は父親に甘える娘のように腕に頬擦りし、「ふみふみぃ」と独特な鳴き声?のような声をもらしている。超絶可愛い。元々甘えん坊なのもあり、これはこれでいつも通りなので提督も父性あふれる笑みを浮かべている。
一方で筑摩の方はやはり羽黒たちと同じく珍しい行動であった。普段は利根のことを完璧にサポートする『出来る妹』というイメージが強い……が、筑摩でも甘えたくなる時はあるのだろう。その証拠に筑摩は身長差を活かして提督の肩に頭を預け、「提督は温かいですね♡」と言いながら身を寄せている……しかし、羽黒と榛名はわざわざ身を縮めるようにしているのに、あえて身長差を活かす狡猾な手段である。
そんな意図とは露知らず、提督は筑摩がこういう風に素直に甘えてくれるのは正直言って嬉しいため、文月と同じく父性あふれた笑みで「筑摩もおはよう」と返していた。
さて、ここで提督は思った。文月は阿賀野との娘ポジであるため引っ付かれていても甘える娘と受け入れる父親ということで何ら問題はない。寧ろ微笑ましい状況だ。
提督も
しかし……しかし、羽黒たちは別だ。提督は自分が今置かれている状況を客観的に見ると、羽黒たちという美少女たちに包囲され、しかもみんなして自分の体に頬擦りしているのだ。
これは非常にまずい……。
だってこんなところを阿賀野は勿論のこと、由良や青葉、陸奥、武蔵、金剛、加賀といったアグレッシブ過ぎるLOVE勢たちに目撃されたら……考えただけで背筋が凍る。まして矢矧に見られたとなれば自分はあのシャイニングフィンガーで頭を……頭蓋骨をリンゴの如くプシュッとされかねないのだ。
しかし普段からあまり甘えられない羽黒たちがこうして甘えてきたのに、それを拒むという選択をすることは提督には出来ない。
提督はまずいと思いながらも、自分ではどうすることもできず、ただただこの子たちを受け入れるしかなかった。
提督がそう思い、お釈迦様のように無の境地に悟りをひらいている頃、三人の乙女たちは提督の体温や感触を楽しみつつ自分と同じ行動をとる
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(司令官さんは素敵な人だからやっぱりモテるなぁ……でも司令官さんの背中は今だけは羽黒のです♡)
最初に仕掛けた羽黒はそう考えながら提督の匂いを肺いっぱいになるまで何度も何度も嗅ぐ。
朝起きて枕元に置いてある提督の写真(撮影・青葉)におはようのキスをし、朝食は提督の背中が見える席で提督と阿賀野の微笑ましいやり取りを見ながら食べた。
そして予定通り提督は一人で埠頭にて艦隊を見送りに来た。今日は阿賀野が演習艦隊で他の鎮守府へと赴く上、矢矧たちも大規模作戦の書類で提督と一緒ではない確率が高いと読んだ羽黒はこっそり提督をストーキング見守っていたのだ。
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(前が空いてて良かった♡ 榛名としてはどこでも大丈夫だけど、やっぱりこうして恋人のように抱きしめるのが一番だもん♡)
次に仕掛けた榛名は提督の胸に顔を埋め、みんなには見えないように破顔していた。
金剛専用の提督ボイスが流れる目覚まし時計(作製・夕張)でスッキリと甘い、甘美な朝を迎え、いつものように金剛たちと朝食を共にした。それもどんなに席が離れていても、提督がちゃんと自分の視界に入る席に座り、姉妹たちと雑談していてもしっかりと提督と阿賀野が仲良く食べているところを見ながら。
そして予定通り提督は一人で埠頭にて艦隊を見送りに来た。今日は阿賀野が演習艦隊で他の鎮守府へと赴く上、矢矧たちも大規模作戦の書類で提督と一緒ではない確率が高いと読んだ榛名はこっそり提督をストーキング護衛していたのだ。
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(こんなことならもっと姉さんを急かすべきでした……でも文月ちゃんの協力もあって自然に提督の左側を取れたので、今回は及第点ですね♡)
三番手として仕掛けた筑摩は提督の肩に頭を預けたのをいいことに、頬擦りしながら好きな人の首筋の匂いを嗅ぎ、朝だというのに少しばかりよだれが増える感触を感じた(どこのとは言ってない)。
筑摩は早起きである。何故なら提督の姿を模した抱き枕(自作)が何故かいつも朝になると色んなシミまみれになっているので、それを洗濯することから筑摩の1日が始まるからだ。朝食は姉の利根と一緒に食べるが、その席は必ず自分が右を向けば提督の姿が視認出来る場所であり、今日も提督と阿賀野の仲睦まじい食事シーンをおかずに朝食を食べた。
そして予定通り提督は一人で埠頭にて艦隊を見送りに来た。今日は阿賀野が演習艦隊で他の鎮守府へと赴く上、矢矧たちも大規模作戦の書類で提督と一緒ではない確率が高いと読んだ筑摩は利根と別れ、こっそり提督をストーキング守護していたのだ。
しかし誤算があった。まさか自分以外に二人も提督を
(流石ですね、皆さん)
(流石は皆さんですね)
(流石としか言えませんね)
三人して同じような言葉でそれぞれを褒めると、
(でも羽黒が一番いい場所を取りました♡)
(しかし榛名が一番いい場所ですね♡)
(私が皆さんよりも一番いい場所なんですよ♡)
一番は自分だと心の中で胸を張った。
同じ人を好きになった者同士、これはもう仕方のないことなのかもしれない。
さぁ、そんな中提督はというと、冷や汗にも近い心地悪い汗を垂らしながらこれをどう切り抜けようかと思案していた……が、提督は考えることを止めた。提督は考えることを止めたのだ。大切なことだから。
何故なら、
「おしくらまんじゅうですか。腕がなります」
一航戦の危ない方にロックオンされたから。
加賀は両手を上げ、手をワシワシと高速で動かしながら、目をランランに輝かせて手の動きとは裏腹にゆっくりと近付いてくる。それはもう獲物を狩ろうとする何かだった。
「ま、待て、加賀! ステイ! 待って! 待ってください!」
提督は懸命に加賀を止めようとした。しかしみんなが自分の好きな人とイチャイチャしているのに、自分だけ除け者とは面白くない……と加賀は歩を止めることはしない。しかもターゲットは動けないのだから加賀としては好機にしか見えないのだ。
すると羽黒が
「いいでしょう、一航戦の誇りを見せてあげます。そして私の提督を我が手中に!」
メラメラと愛の炎を燃え上がらせる加賀に、羽黒たちも負けじと愛の炎ーいや、炎というより業火であろうーを燃え上がらせ、提督を守るために一致団結する。
それは傍から見ても激しい熱戦であるが、提督を気遣ってかゆっくりとした静かなる闘いだった。
しかし、終わりというのは突然訪れるものである。
ーー仕事もせずに何をしてるの?
そう冷たく響き渡る声、かの
それはもう殺意の波動に目覚めた武術家やなんたらゲリオン初号機の暴走状態を凌駕する勢いであり、両手に
これには羽黒たちも対応しきれず、愛しの人はいとも簡単に奪われ、次の瞬間には提督は地にその身を預けていた。
しゅ〜っと二本の得物からは煙が立ち込め、射殺せんばかりに眼光鋭く倒れた提督を睨む修羅の背中に、羽黒たちや遠巻きにそれを見ていた全員は『滅』の文字が浮かんでいるように見えた。
こうして急遽開催された鎮守府団体カバディ選手権の幕は修羅の降臨で降ろされるのであったーー。
はい、今日は甘いあとにデイリーやはぎん!っていうことで書きました。
ちょっと羽黒ちゃんたちの愛があれかもしれませんが、ご了承を。
では読んで頂き本当にありがとうございました!