提督夫婦と愉快な鎮守府の日常《完結》   作:室賀小史郎

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サンタの衣装を着ている艦娘がいますが、細かいデザインは割愛させて頂きますので、お好きなデザインをご想像ください!



クリスマスパーティ

 

 日付けは12月25日の夕方。世間はクリスマスであり、街をクリスマスツリーやオーナメント、イルミネーションが彩り、家族連れやカップルたちを楽しませている。

 それでも鎮守府は変わらず深海棲艦から人々を守るために任務を遂行しているが、今日は早めに任務を終えて鎮守府だけでのクリスマスパーティを開催する予定だ。先の残党勢力殲滅作戦のこともあり、今回は去年より豪華にするのだとか。

 イベント委員会や手の空いている者たちがお昼過ぎからせっせと食堂を色々とデコレーションしたり、パーティに出す料理の下準備をしたりしたので、準備は万全である。

 酒保もクリスマスということでお菓子の詰め合わせや掴み取りというサービスをし、サンタの貸衣装も結構な数が借りられていった。

 

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 そして一六〇〇過ぎになると執務室の前には長蛇の列が出来た。

 他の鎮守府ではどうか知らないが、ここでは提督がお手製のクッキーやカップケーキの詰め合わせをサンタから受け取ったという体で配る。

 ただしサンタではなく提督が作ってくれたと殆どの艦娘たちが理解しているので、配る時に大抵の者たちには「ありがとう、提督」と言われてしまう。そんな中でも、サンタを信じている者たちはキラキラと輝く笑顔で受け取っていたので、提督はその笑顔にとても癒やされた。

 

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 こうしてお菓子を配り終えると、クリスマスパーティのために全員が食堂へ集合する。

 テーブルには既にオードブルは勿論のこと、サンドイッチからおにぎり、フライドチキンやらローストチキン、様々なケーキが並び、艦娘たちや妖精たちの胸を大いに踊らせた。これも全部間宮たちと手の空いている者たちで作ったもの。

 

 食堂のみんなに注目される位置に設置されたお立ち台には、正面から見て左からウォースパイトがピアノ、アーク・ロイヤルがヴァイオリン、プリンツがヴィオラ、ビスマルクがチェロ、コマンダン・テストがアコーディオン、リシュリューがコントラバスと並び、その後ろではガングートがティンパニー担当として佇んでいる。

更にはヴァイオリンの後ろにハープを構えるサラトガ、フルートを構えるローマが控えていた。

 

 みんなは目配せするとクリスマスに定番の『Silent Night』……きよしこの夜を演奏する。

 その演奏にウットリと酔いしれる者、楽しげに歌を口ずさむ者、ゆったりと耳を傾ける者……多くの者たちの心を掴んだ。

 

 そんな中で提督がみんなの前に立つと、クリスマスパーティの開催宣言をした。

 それと同時に一曲が終わると、食堂内からは割れんばかりの拍手が巻き起こり、盛大にクリスマスパーティが幕を開けるのだった。

 

 すると、

 

『メリークリスマース!』

 

 アイオワとイタリアが大声でお立ち台に上がる。二人してセクシーなサンタ衣装を身にまとい、エレキギターのレスポール(アイオワ)とエレキヴァイオリンのYEV105(イタリア)が握られている。

 アイオワが合図をすると妖精音楽隊が先程と同じように『Silent Night』を奏でるが、エレキギターとエレキヴァイオリンの音色で全く別物のロックテイストな曲に変わった。

 

 みんなはそれに手拍子をしたり、ステップを踏んだりと先程とはまた違う反応を見せるも、心から音楽を楽しむのだった。

 

 ーーーーーー

 

 一通り演奏会も終わり、立食パーティが本格的に始まると、酒瓶を高速で空にする者たちや料理のエベレスト山をことごとく踏破する者たちが周りを湧かせている。

 

「今回もみんな楽しんでくれてるな〜。良かった良かった」

「うふふ、そうね〜♡」

 

 提督と阿賀野も肩寄せ合ってパーティを楽しんでいるが、

 

「提督さん、由良たちとも一緒に過ごしましょ〜♡」

「部屋に戻れば阿賀野とは過ごせるんだから、今くらいは私たちと過ごしてくれてもいいでしょ?♡」

 

 由良と陸奥のガチ勢に拉致られてしまう。

 提督は阿賀野に助けを求めるが、阿賀野は阿賀野で「がんば♡」と慈悲はなかった。

 

「良かったの阿賀野姉ぇ?」

 

 それをそばで見ていた矢矧がそう訊ねると、阿賀野は笑顔で頷いてみせる。

 

「だってイブの夜は〜、た〜っくさん愛してもらっちゃったから〜、今くらいは大目に見てあげようかな〜って♡」

 

 火照った両頬を手で押さえ、クネクネと身をよじりながら言う阿賀野に、矢矧は「そすか」とだけ冷めた返事をした。

 日本では前々からクリスマスの聖なる夜が"性なる夜"と呼ばれてしまっているが、どうやらこの夫婦もその中の一組らしい。矢矧はそれを聞かなかったことにして、能代や酒匂も呼んで姉妹揃ってローストチキンを頬張るのだった。

 

 ーー

 

 提督が拉致られてLOVE勢たちにあんなことやこんなこと(KENZEN)をされていると、お立ち台に数人の艦娘が上がる。

 それはお揃いのサンタ衣装(ヘソ出しで上着はロング袖、下はミニスカート)を身にまとった重巡洋艦のネームシップたち。

 

『は〜い、皆様、ご注目ください♪ これより重巡洋艦ネームシップの方々が「Snow Song Show」を歌って踊ってくださいます♪』

 

 大淀のアナウンスにみんなは拍手や声援を送る。前に立つ面々は笑顔で手を振っているが、古鷹や妙高は恥ずかしいのかはにかんで手を振っている。利根が妙にドヤ顔なのも気になるところだが……。

 

 曲が始まるとみんなして揃ったダンスを披露。食堂では自然と手拍子が生まれ、舞風や子日なんかは楽しそうにステップを踏んでいるのが可愛い。

 

 古鷹・青葉が『ーー悲しみで雪だるま〜♪』と歌い、妙高・高雄が『夜空からプレゼント♪ どこまでもーー』と歌うと、『届け』の部分からは全員でキレイに合わせ、サビを歌い終える。

 続く『ーー街を鳴らす足音〜♪』まで最上・利根が歌い、しっとりと歌い上げるところは利根が完璧に歌い上げた。見せ場があるからこそ、最初からドヤ顔していたのだろう。

 そのあとは各カップリングで上手に歌をまとめ上げ、

 

『紡いでく未来へのこのメロディー♪』

 

 完璧に歌とダンスをこなし、最後はみんなして一礼すると、みんなへ割れんばかりの拍手が送られる。

 

『はい、重巡洋艦ネームシップの皆様、ありがとうございました〜! 続いての出し物は潜水艦の方々による「好き! 雪! 本気マジック」です、どうぞ!』

 

 その声と共にイクたちがサンタ衣装(背中がバッサリと開いているノースリーブのミニ丈ワンピース)で前に出てきた。

 

『イクたち、今日のために頑張って練習したのー!』

『ダンスも歌も頑張りまーす!』

 

 イクとゴーヤの挨拶に食堂からは拍手が巻き起こる。

 そして曲が始まると息ぴったりのダンスと共に歌が始まった。

 

 頭のサビから『Ah Whipしたケーキのような街は 好き! 雪! 本気 Magic♪』とみんなで歌い、また可愛らしいダンスが観客を魅了する。

 その時、スカート丈が短いためイクの青と黒のレースとゴーヤのピンクと白の縞々、ろーちゃんのライトグリーンが眩しく光るが提督は何も見ていないと脳内メモリーから抹消したのは秘密。そもそもアンダースコートをゴーヤとろーちゃんは履き忘れたのだが、イクに至っては元から提督に見せるために履いてなかったらしい。

 

 ともあれその後はイク・ニム・ゴーヤ・イムヤ・はちのグループとヒトミ・イヨ・しおい・まるゆ・ルイ・ろーちゃんのグループで完璧に歌い分け、観客を大いに湧かせた。

 最後の決めポーズのあとで、イクとろーちゃんだけは提督へ向かって投げキッスをすると提督は微笑ましく思って手を振って応えたが、周りにいるLOVE勢たちに睨まれたのは言うまでもない。勿論その遠くにいた阿賀野からも……。

 

 その後も那珂ちゃんのクリスマスライブやウォースパイトたちの即興演奏オーケストラ、駆逐艦たちが『赤鼻のトナカイ』を合唱、海防艦たちのハンドベルによる『星に願いを』があり、大いに盛り上がった。

 因みに恒例行事『大食い大会』と『早食い大会』も開かれ、大食い大会の料理はフーカデンビーフ、早食い大会の料理は10号の苺ショートホールケーキだった。

 

 ーーーーーー

 

 二二〇〇過ぎにはクリスマスパーティも終わり、ある程度の片付けを終えたらあとは明日に回すことにして解散となった。

 みんなが笑いながら(中には千鳥足の者も)自分たちの寮へと戻っていき、提督と阿賀野も本館にある自室へと戻ろうとしていた。

 

「楽しかったね、慎太郎さん♡」

「そうだな……俺はほぼ酒を飲まされたり食べ物を詰め込まれたりしてたから、腹がはち切れそうだ」

 

 苦笑いで自分の腹を擦る提督を阿賀野はクスクスと楽しそうに笑う。提督はパーティ中にLOVE勢だけでなく、殆どの艦娘たちからお酌をされたり、声をかけられたりしていたのだ。

 

「そんなに笑うなよ〜」

「えへへ、だってみんなから慕われてる人が阿賀野の旦那さんだって思うと嬉しいんだもん♡」

「…………そうかよ」

「んふふ〜、照れちゃった〜?♡」

「て、照れてねぇし」

 

 口ではそういうものの提督の頬は赤く、目線も逸らしっぱなしなので阿賀野にはバレバレである。

 すると阿賀野が「あ」と何かを思い出したのか、提げていた手提げ袋からある物を取り出した。

 

「今は二人きりだから、してもいいよね?♡」

 

 それは例の二人用の赤いマフラー。阿賀野の申し出に提督は無言の肯定をすると、阿賀野は鼻歌交じりにいそいそとマフラーを巻く。

 マフラーを巻き終えた阿賀野は定位置である提督の左側に立ってピッタリとくっつくと、提督は何も言葉を発することもなく阿賀野の肩を抱き寄せた。

 

「せっかくだし、埠頭の方まで散歩してから帰るか」

「慎太郎さんが寒くないならいいけど……大丈夫?」

「気遣うのは男の役目だろ……まぁ、俺は阿賀野の体温が温かいから少しくらい平気だ」

「えへへ、ならお散歩してから帰ろ♡」

 

 そう言うと阿賀野はギューッと更に提督の左腕に抱きついた。提督が寒くないようにと、提督の優しい提案に感謝の気持ちをいっぱいに伝えながら……。

 

 ーーーーーー

 

 埠頭の桟橋にまで足を延ばした夫婦は月明かりに照らされて、海面が見せる無数の星の海をのんびりと眺めていた。

 夫婦の間に言葉はなかったが、言葉がなくとも波の音や少しだけ強い潮風の音、互いの息遣いや鼓動の音だけで十分な程である。

 

「…………ちょっと暑ぃな」

 

 やっと言葉を発した提督の一言に、阿賀野は「そうかな〜?」と小首を傾げた。

 阿賀野は確かに先程よりも提督から伝わる体温は高いと感じていたが、それは酒のせいだと思っていた。もしかしたら熱でもあるのかと、阿賀野は少し心配して提督の様子を見ようとしたが、それより早く提督が自分でマフラーを解いてほんの数センチだけ離れてしまう。

 

「そんなに暑いの? おでこくっつけてみて」

「熱はねぇよ……ただ、本当にちょっと暑かったんだ」

「それならいいけど〜」

 

 ジロジロと提督を見つめる阿賀野に対し、提督は苦笑いを返しながら深呼吸した。

 すると提督は制服の内ポケットから何やら細長い箱を取り出す。

 

「タバコケース……にしては長いね」

「タバコケースじゃねぇからな」

 

 そう言って提督がその箱を開けると、中には綺麗なネックレスが入っていた。

 シルバーのティラチェーンが月明かりを反射してキラキラと輝き、トップのペンダントはシンプルなハート型で表のど真ん中にラピスラズリがあしらわれ、その下に夫婦の結婚記念日が彫られている。更に裏には夫婦のイニシャルが彫られており、それを囲むようにペリドットが嵌め込まれていた。

 因みにラピスラズリは『永遠の誓い』、ペリドットは『夫婦の幸福』という意味の石言葉がある。

 

「え……どうしたの、これ?」

「クリスマスなのに大事な嫁へプレゼントを用意しない程甲斐性無しじゃねぇぞ、俺ぁ」

「え? え、え?」

「サプライズ成功だな。今年はまぁ、夫婦になって初めてのクリスマスだろ? だから俺なりにこう……準備をしてたんだよ」

 

 時間的にプレゼントを渡すのがギリギリになっちまったけどな……とはにかんで頭を掻く提督。その気持ちに阿賀野は目頭が熱くなり、幸せの波が全身に押し寄せてくる。

 

「ほら、着けてやるよ」

「う、うん♡」

 

 マフラーを取り、照れ笑いを浮かべて待機する阿賀野のしなやかな首に、そのネックレスを提督がしっかりと着けてあげた。

 

「えへへ、嬉しいなぁ♡」

「ペンダント、開いてみ」

 

 言葉に従ってペンダントを開くと、その中には夫婦の写真(結婚式の時の)が嵌め込まれていた。

 

「…………うぅ、どうしよう、慎太郎さん」

「ん、何が?」

「阿賀野ね、今幸せ過ぎて、どんな顔してるか分かんない……」

「泣きながら笑ってるぞ?」

「もぉ、や〜だ〜♡」

 

 阿賀野はそう叫び、自分の顔を隠すように提督の胸に埋める。そんな阿賀野を提督はしっかりと受け止めると、「喜んでもらえて良かった」と愛する嫁の頭を優しく撫でた。

 

「はぁ、やられた……こうなるなんて考えてもいなかったから、阿賀野なんにも用意してないよ〜」

「それならとっくにもらったさ」

「え?」

「……あの囮任務でちゃんと帰って来てくれたろ? 阿賀野が生きてるって、どんな贈り物より嬉しいもんはねぇのさ」

 

 その言葉に阿賀野の胸は更なる幸福で甘い悲鳴をあげる。

 

「今日の慎太郎さん、怖い……阿賀野をこんなに幸せにしてどうする気なの?♡」

「酔ってる勢いってことで……」

 

 提督は自分で思い返して頬がこれまで以上に熱くなるのを感じたが、幸い阿賀野はまだ顔を上げていないので無難な言葉で誤魔化すことが出来た。

 すると不意に阿賀野が提督へ口づける。それはほんの一瞬だったが互いの唇が離れると、そこには満面の笑みを浮かべる阿賀野が自分を優しく見つめていた。

 

「慎太郎さん、愛してる♡ 愛してるなんて言葉じゃ足りないくらい、いっぱいいっぱいい〜っぱい愛してる♡」

「そうか……俺も愛してるぜ、阿賀野」

 

 互いに今思っている言葉を伝え合うと、海に反射して映っていた二つの影が一つへの重なり合うのだったーー。




 ーおまけー

 そんな夫婦の幸せな一幕を建物の物陰から覗いている者たちがいた。

「あっま……」
「青葉見ちゃいました〜♪」
「由良もいつかあんなロマンチックなことされた〜い♪」

 それは名だたるLOVE勢たちと矢矧である。
 LOVE勢たちはあのまま夫婦のクリスマスが終わるはずがないと予測し、夫婦をこっそりと(大勢で)尾行していたのだ。
 ただ矢矧だけは夫婦の邪魔をしないか監視しようと思って行動を共にしていたのだが、思っくそ砂糖を吐くことになってしまった。
 みんなして夫婦のその一幕を自分に照らし合わせては妄想に更け、鼻や口、はたまた人には言えないところからLOVEがあふれ出てしまう。

「ふむ、今夜はヤる気だな」

 武蔵の言葉に陸奥も夫婦を見つめたままコクコクと頷く。

「てかいつまでチュッチュしてるクマ? さっさと部屋に行ってズッコンバッコンすればいいクマ〜」
「にゃ〜、こういう時の余韻は大切にゃ」
「そのあとに布団の中でテイトクのご立派なテイトクが阿賀野と濃厚なキッスをするのネ!」

 何とも乙女がしていい話題ではないが、肉食揃いの面々では致し方ないのかもしれない。
 その後もみんなして夫婦の一幕を色々と妄想を交えながら、夫婦が本館へ姿を消すまで見守っていたそうな。
 因みに部屋に戻った矢矧は抹茶やブラックコーヒーをガブ飲みしたとかーー。

 ー更なるおまけー

 大食い大会の結果

 1位:雲龍  ・量:?個
 2位:赤城  ・量:74個
 3位:大和  ・量:67個
 4位:サラトガ・量:55個
 5位:イタリア・量:43個

 雲龍は2位が決まった時点で食べるのをやめた。

 優勝賞品

 肉の詰め合わせ(5キロ相当)


 ホールケーキ早食い勝負の結果

 1位:山風・タイム:0.67秒
 2位:海風・タイム:0.95秒
 3位:弥生・タイム:2分3秒
 4位:加賀・タイム:15分22秒
 5位:利根・タイム:ギブアップ

 優勝賞品

 サラトガ特製5キロ苺タルト

 ーーーーーー

はい、ということでクリスマス回を楽しく甘〜く書きました!
因みに次の更新で今年の更新は最後になります。
ご了承お願い致します。

ではでは、読んで頂き本当にありがとうございました♪
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