提督夫婦と愉快な鎮守府の日常《完結》   作:室賀小史郎

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円満鎮守府

 

 今日で2月も最後となり、寒さが段々と和らいで春に移り変わっていく、そんな今日この頃。

 鎮守府では大本営から発令された『捷号決戦!邀撃、レイテ沖海戦』を遂行し、無事に誰も失うことなく完全攻略。更に泊地全体でも前の教訓を得て、攻略後の残党殲滅作戦も行い、同じ状況に陥ることのないよう一丸となって遂行している。

 

 今日は当鎮守府が中央鎮守府から待機(お休み)を言い渡されたので、出撃任務を取り止め、これまで殲滅作戦参加艦たちには英気を養ってもらっている。

 しかし海上訓練海域では艦娘たちが、前線へ赴いていた者たちに負けじと紅白戦を繰り広げ、昂ぶる士気を維持していた。

 

「ビスマルク姉様、距離十分です♪」

「そう……では、行こうかしら!」

 

 プリンツの声に白組旗艦ビスマルクはそう言うと、右手をあげる。

 するとグラーフがすかさず艦載機を放つ。

 

「攻撃隊、出撃! Vorwärts(前進)!」

 

 ーーーーーー

 

「来たわね……よしよし♪ アクィラ艦載機隊、いっけ〜♪」

「Swordfish shoot!」

 

 一方で紅組のアクィラとアークも艦載機を放つと、

 

「みんな〜、対空戦闘の準備よ〜♪」

 

 旗艦イタリアが艦隊へ号令を出す。

 一見、空母二隻を有する紅組の方が有利に見えるが、参加している空母の中ではグラーフが自身の練度、艦載機熟練度共にあとの二人を大きく引き離しているため、制空権争いは五分五分。加えて対空戦闘の練度が紅組より高い布陣である白組の方が優勢なのである。

 

「その間延びした物言いを何とかしなさい。これなら私かローマが旗艦をした方がよかったわ」

「貴女ももう慣れなさい。私なんて前からこの号令を受けてきたのよ」

 

 イタリアの横で苦言を呈すウォースパイトへローマは死んだ魚のような目をして声をかける。その瞳を見たウォースパイトは、これまでのローマの苦労を察し、そうねというように頷いて対空戦闘準備に入った。

 

 ーーーーーー

 

 グラーフの航空隊に対し、アクィラ・アークの航空隊は奮闘するもグラーフ隊の練度と熟練度の差で空を制することは出来なかった。

 しかしグラーフ隊も無傷ではない。よって互いの艦戦隊は艦攻隊、艦爆隊と取りこぼし、本隊への雷爆撃を許してしまう。

 

「レーベ、マックス!」

Einverstanden(了解)!」

Alles klar(大丈夫よ)

 

 ビスマルクの声にレーベたちは臨機応変に陣形を変えて対空戦闘を開始し、

 

「呂号!」

「はーい♪ ろーちゃんいきますって!」

 

 ろーちゃんは先制雷撃を放つ。

 

 ーーーーーー

 

 対する赤組も対空戦闘をする中、

 

「ルイちゃ〜ん、いける〜?」

 

 相変わらずイタリアはにこやかに声をかける。

 

「さぁ、どうかな〜?」

 

 口ではそう言うものの、ルイは狙い定めて魚雷を発射。

 

 ーーーーーー

 

「っ……グラーフ、避けて!」

「っ!?」

 

 次の瞬間、グラーフの姿は爆発によって生じた水柱の中へと消える。

 水柱が消えるとグラーフは、

 

「やはり潜水艦は苦手だ……」

 

 苦笑いでずぶ濡れになっていた。

 

 紅白戦ということで全ての弾薬は練習用。勿論、魚雷も練習用なので直接的なダメージはないが、各自の肩に乗っている審判妖精は『中破』という判定を出している。

 こうなると本当の海戦時のように個人の能力等が制限されてしまうのだ。

 

 ーーーーーー

 

「きゃぁぁぁっ!」

「ぐっ……こんなところで!」

 

 グラーフが中破する一方、赤組のアクィラはろーちゃんの魚雷、アークがグラーフ隊の爆撃によって中破判定をもらう。

 

「どんまいどんまい♪ それじゃ無事なみんなで、砲撃開始〜♪」

 

 どこまでもブレないイタリアにウォースパイトはある意味で尊敬し、砲撃戦を開始。

 その後も紅白戦は白熱したが、航空隊を動かせなかったことが災いして赤組は敗北を喫するのだった。

 

 ーーーーーー

 

 紅白戦から戻ってきたビスマルクたちが埠頭の桟橋に上がると、

 

「お〜、お疲れ、みんな」

 

 桟橋には提督と矢矧がみんなを待っていた。

 いつもなら提督へ飛びつくイタリアだが、紅白戦とは言え負けたあとでは素直に飛び付けず、イタリアはただ「来てくれて嬉しいわ」と精一杯の気持ちを伝えることしか出来なかった。

 赤組は負けはしたものの、イタリアの状況判断や的確な砲撃によって奮戦したので、それをちゃんと執務室のモニターで見ていた提督はイタリアの頬を優しく撫でる。

 

「ほれ、んな顔してんじゃねぇよ。甘い考えかもしれねぇが、さっきの反省を本当の戦場で活かせりゃそれでいいんだ」

「提督……」

「お前が笑顔で艦隊を鼓舞したから、みんなもあれだけ戦えたんだ。誰もお前を責めるやつなんていねぇぞ?」

 

 そう言ったあとで、提督は赤組へ「な?」と訊ねるとみんなは笑顔で頷いた。

 ただ、

 

「私が旗艦ならもっと上手く、それでいて優雅に立ち回れたわ」

「姉さんはいつものんびりし過ぎなのよ。部屋に戻ったらしっかりと反省会だからね」

 

 ウォースパイトとローマの愛の鞭にイタリアは「トホホ……」と項垂れるのだった。

 

「ちょっと、私たち白組が勝ったのにどうして先に負けた方を褒めるわけ!? まずは私たちを褒めるのが普通でしょう!? いいのよ、褒めても!」

 

 我慢の限界といった感じにビスマルクが提督に詰め寄ると、提督は「あぁ、偉い偉い」とビスマルクの顎を猫の顎でも撫でるかのようにこしょこしょする。

 するとビスマルクは大好きな飼い主に構ってもらえた猫のように「んふふ〜♪」とだらしない顔をした。

 

「アトミラール、私も褒めてくれ♡」

「提督〜、ろーちゃんも〜!♡」

 

 こうなると当然LOVE勢のグラーフとろーちゃんも擦り寄ってくる。

 グラーフだけでなくレーベやマックス、ルイも提督の側へ来て、提督は犬猫に囲まれる飼い主ようになるのだった……。

 

 ーーーーーー

 

 それから一通りみんなのナデナデタイムも終え、総括をし、解散となった。

 イタリアはローマによって連行され、ビスマルクとプリンツはウォースパイトとお茶へ向かい、アクィラとアークはグラーフと食堂へ、ルイはろーちゃんと共に提督から貰ったお駄賃で酒保へ走っていく。勿論、ちゃんと精密検査や制服を乾かしたあとで。

 

 提督はそんなみんなの背中を見送りながら、「頼もしい限りだなぁ」とつぶやいた。

 

「ふふふ、この調子なら殲滅作戦も大丈夫そうね……もうこの前みたいにはさせないんだから」

 

 矢矧が提督へそう言って笑顔を見せる。

 

「はは、そうやすやすと再現なんかさせねぇさ。そうさせないために泊地全体で作戦を立ててるんだからよ」

「そうね……今後も指揮は頼むわよ、提督」

 

 提督の言葉に矢矧はそう言うと、お茶目にウィンクしてみせた。すると提督は「おうよ」と返し、矢矧の頭を軽く叩くように撫でるのだった。

 

 すると、不意に提督は背後から何者かに抱きしめられ、驚きの声をあげる。

 

「こんなところにいたのか、提督よ♡」

 

 その犯人は武蔵で、

 

「おい、提督に不敬だぞ」

 

 その横では長門が武蔵を注意していた。因みにその後ろには大和と陸奥の姿もある。

 長門が注意する一方、提督は武蔵の姿を見て表情をほころばせた。

 

「お〜、武蔵! その様子は無事に終わったみてぇだな!」

「あぁ、これで更に提督の力になれる……期待していてくれ♡」

 

 互いに向き合い、提督は武蔵の頬をムニムニと撫でる。

 武蔵はつい先ほど改二への改造を終え、早く提督にその姿を見せようと探しており、こうしてお披露目に来たのだ。

 

「おい、私の話を聞いてるのか? 提督も……」

「お〜、悪ぃ悪ぃ。驚いたが嬉しい驚きだったぜ!」

 

 長門が捨てられた子犬のような目で訴えると、提督はすかさず笑顔で返して、長門の頬もムニムニと撫でる。すると長門の顔はフニャっと緩んで嬉しそうに撫でられていた。

 それを見た矢矧は勿論、大和や陸奥も長門が飼い主に構ってもらえて喜ぶ犬みたいに思えて和んでしまった。

 

「にしても、武蔵の改二姿はすげぇな。かっこいいぞ!」

「あっはっはっは、そうだろうそうだろう。私は大和型。長門の改二に負けていられないからな」

 

 武蔵がそう言う横で、長門は「ふっ、片腹痛い」と返す。しかし未だに提督に頬をムニムニされながらのそのセリフは特大ブーメランにしかなっていなかった。

 

「それでね、提督。みんなから提督に言いたいことがあるみたいよ?」

 

 このままでは話が進まないと察した+自分が構ってもらえなくてつまらない陸奥が強引に話を持っていくと、提督は「お〜、なんだ、どうした?」と長門から手を離して体勢を戻す。

 

「あぁ、実はな、提督に何かお礼をしようと思ってな」

「お礼?」

「うむ……殲滅作戦中なのにも拘らず、私に改造を施してくれた。先の作戦でも大いに暴れさせてくれた。だから……」

 

 何かしてほしいことはないか?ーーと武蔵が付け加えた。

 

「僭越ながら、大和も武蔵の姉として提督へ感謝の気持ちを何かで返したく思っています」

「私もだ、提督。この長門も先の作戦では武蔵と共に大いに力を振るわせてもらったからな」

 

 大和、長門もそう言って提督へ言葉をかけて、武蔵の両脇に並び立つ。

 すると陸奥は提督の左腕にピッタリとくっついたまま「あらあら提督、どうするの?」と小悪魔っぽく迫った。

 武蔵たちの行動に対し矢矧は「素直に受け取れば?」と笑みを見せたが、提督はすぐに首を横に振る。

 

「む、遠慮する必要はないぞ? 私と提督の仲だろう?」

「大和たちのお礼ではお気に召しませんか?」

「私たちは少しでも提督に喜んでほしいんだ」

 

 武蔵、大和、長門はそう言って提督へ詰め寄ると、提督は「落ち着け」と冷静に返し、言葉を紡ぐ。

 

「別に遠慮なんてしてぇよ。俺はお前らを含め、俺のところにいる艦娘が無事に俺のところに帰って来てくれさえすりゃぁ、それでいい。寧ろ、それが一番の喜びなんだ」

『…………!?』

 

 だからこれからもちゃんと帰ってこい……提督が素直な自分の気持ちを大和たちへ伝えると、

 

「大和、これからも提督のために全身全霊を持って推して参ります!」

「ビッグ7の力を提督の元で余すことなくに振るおう!」

 

 大和と長門は誇らしげに胸を張って返した。

 一方、

 

「さすがはこの武蔵が認めた男だ……言うことが違う♡」

「提督のことがもっと好きになっちゃったわ〜♡」

 

 武蔵とすぐ隣でその言葉を聞いていた陸奥は目にハートマークを浮かべて恍惚な表情を浮かべている。

 勿論、その場にいる矢矧もカァーッと顔を赤くして、提督の言葉を噛みしめていた。

 

 すると、遠くの方からよその鎮守府との演習任務から帰還した阿賀野が提督に手を振って駆け寄ってくる。

 当然、提督は両手を広げ、飛び込んでくる妻をしっかりと抱き寄せるとめいっぱいの愛情を込めて「おかえり阿賀野」と声をかけた。

 

「えへへ〜、やっぱり提督さんのところに帰ってくるとホッとする〜♡」

 

 そう言って提督の胸板に顔をグリグリと押し付ける阿賀野。

 そんな夫婦を見て、

 

「やっぱり阿賀野さんに対する愛情だけは違いますね」と大和は微笑み、

 

「あぁ、だがそんな二人を見ていると、胸が熱くなるな」と長門が頷き、

 

「本当に阿賀野は幸せだな……羨ましい」と武蔵は舌打ちし、

 

「私もいつかああしてもらお♡」と陸奥はブレなかった。

 

 そんな夫婦を矢矧がしっかりと一喝し、鎮守府は今日もほのぼのとした時が過ぎていくのであったーー。




ということで、今回はここまで!
ザラさんやポーラさんが出てないのは、お休みだったということでオナシャス。

武蔵さんの改二がメガネ消えた!……と思ったらちゃんとあって安心した室賀でした←

てなわけで、読んで頂きありがとうございました!
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