提督夫婦と愉快な鎮守府の日常《完結》   作:室賀小史郎

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みんなの過ごし方

 

 ゴールデンウイークラストとなる今日。

 そんな日の朝、艦隊はこの日を休日という形で迎えた。この休日を勝ち取るために、みんなで任務を数多くこなした結果である。

 ただ、完全に休みということではない。鎮守府正面海域の警護や哨戒任務を必ずやらなければ、最悪の事態に対応が遅れるからだ。

 しかしここの鎮守府の正面海域は鎮守府が完全に制海権を奪還しているので、哨戒や警護もみんな警戒態勢は厳としているが攻略海域より断然気楽なもの。

 なので、

 

 ー鎮守府正面海域ー

 

「あっちに逃げたクマ!」

「任せるにゃ! 今夜のおかずは逃さないにゃ!」

 

 艦娘たちは任務をこなしながら、その合間にこうして暇を潰して(?)いる。

 此度は球磨と多摩が艦隊を引き連れて哨戒任務にあたっているが、今はこのように球磨と多摩が一方的に『今夜の自分たちのおかずになれ!』と決めた()()()()()()を追い詰めているところだ。

 

「ん〜、毎回これくらい楽ちんだといいんだけどなぁ〜」

 

 そんな球磨たちを見ながら時津風はそんなことをつぶやく。

 すると、

 

「海である以上、敵が来る確率はゼロじゃない。気は緩め過ぎるなよ?」

 

 隣にいる初月がソナーから目を離さなずに時津風へ釘を刺した。時津風は真面目だなぁ……と思いながらも口では「了解」と言葉を返す。

 最初こそ時津風は真面目勢と組むのは苦手だったが、今ではその真面目勢も手を抜くべき時を心得、ぐうたら勢もオンとオフの切り替えはしっかりと出来るようになったからだ。

 その証拠に……

 

「時津風、少し下がった方がいい」

「え、なんーー」

 

 で?ーーと訊ねようとした時津風だったが、その言葉は水しぶきの音で掻き消された。

 何故なら、

 

「ぷはぁ〜……あ〜、疲れた!」

「でも大漁だよ!」

「ちょっと〜! 浮上する前にちゃんと上確認してよ! 口に海水入った〜! ぺっぺっ!」

 

 ろーちゃんとルイが急浮上してきたから。そんなルイの手には網が握られており、網の中にはイワシやサバ、タコから貝まで入っている。二人は今回の哨戒任務で敵潜水艦以外と遭遇した場合のために艦隊へ編成されているのだが、海中の偵察ついでにこのように海の幸を頂いてきた次第だ。

 

「だから僕は少し下がれと言ったんだ……ほら、タオル」

「むぅ……なら最初からそう言ってよねぇ」

「言ったらイタズラにならないだろう?」

 

 ふふんと得意気に鼻で笑う初月の態度に時津風はとても悔しそうに唸った。

 

 ……このように初月ほどの真面目な艦娘でも仲間と楽しむ余裕があるのは、艦隊にとってはプラスであり、みんなが仲良しということでもあるのだ。

 

 時津風が唸っているのを初月が今度は可笑しそうに笑って見ていると、ふと二人の足元にいるろーちゃんとルイが揃って『あ』と声をあげた。

 そして次の瞬間、初月のすぐ後ろでザパーンと大きな水柱が立ち、そのせいで初月は時津風とは違い、頭から海水を被る形になってしまう。

 

「っしゃー! 確保クマー!」

「今夜はマグロ丼にゃー!」

 

 水柱の正体はこの二人とカジキマグロのせい。

 

「…………」

「バチが当たったね、初月〜♪」

「……あぁ、全くだ……あはは♪」

 

 こうしてみんなが休みの中での哨戒任務であるが、その面々は自分たちなりにリラックスして任務にあたっているのであった。

 因みにその日の昼はろーちゃんたちが捕まえた海の幸を艦隊で食べ、夜になると初月・時津風・呂五〇〇・ルイージの四名は球磨と多摩にカジキマグロ丼をご馳走されたそうな。

 

 ーーーーーー

 

 一方、鎮守府ではというと各寮の談話室で同時に催し物が開かれており、みんな好きな場所で過ごしている。

 ラインナップは以下の通りーー

 

 戦艦寮  :お菓子食べ放題

 空母寮  :ボードゲーム大会

 重巡洋艦寮:お昼寝&お喋り会

 軽巡洋艦寮:カラオケ大会

 駆逐艦寮 :映画鑑賞会

 潜水艦寮 :漫画読み(飲み物等は各自持参)

 特務艦寮 :間宮&伊良湖の料理教室

 

 ーーこのように全体で休みの日を満喫するのだ。

 

 ー駆逐艦寮ー

 

「いやいや、そこはアカンて! アカン、逃げて〜!」

 

 ここでは映画鑑賞で休日を楽しんでいる。

 今は荒潮オススメのホラー映画『リンゴ』を観ているところで、中でも黒潮が絶叫中。因みに『リンゴ』とはとあるリンゴ農園がもたらした呪いのリンゴを食べた者は必ず不可解な死を遂げるという、サスペンスホラーだ。

 

「あはは、黒潮のせいで笑っちゃうよ〜♪」

「お前本当にリアクションいいよなぁ」

 

 黒潮がワーキャーしている横では、皐月と摩耶が黒潮の反応を楽しんでいる。

 

「せやかて〜、あそこであんなフラグビンビンのセリフと行動やで? まんま死んでまうやんか〜……うち、この俳優というか演じてるキャラ好きやから、死なんでほしいの〜」

 

 皐月と摩耶に黒潮はそう言葉を返しながら、目は映画に釘付け。

 

「そんなに心配なら〜、ネタバレしとく〜?」

 

 荒潮がそう言い、その隣にいる山雲が「あの人はね〜」と語ろうとすると、黒潮は「いやや〜、聞きたくない〜!」と耳を手で塞いだ。そして思った通りの反応を見せる黒潮を荒潮と山雲はとても喜々として見ていたのでみんなして苦笑いし、その後も楽しく映画鑑賞をするのだった。

 余談だが、黒潮が好んだキャラは最後まで生きていたという。

 

 ー戦艦寮ー

 

「追加のお菓子貰って来たわよ〜♪」

 

 そしてここではみんなしてお菓子を堪能中。

 今は丁度、扶桑が特務艦寮から出来上がったばかりのお菓子を大きなバスケットいっぱいに貰って戻ってきたところで、みんなして扶桑の周りに群がる。

 正確に言うと、特務艦寮の催しで多量にお菓子を作るので、それをここにいるみんなが食べるという催しだ。あの黒い三ツ星シェフたちも携わっているが、必ず誰かがマークしているのでとんでもない料理が出来ることはない。

 

「卯月、あれとあれとあれ持ってきて」

「任せるぴょん♪」

「あたしも行く〜♪」

 

 そしてスイーツクイーンの弥生はリスのようにクッキーをサクサクしながら、卯月へ次に食べたい物を持ってきてとお願いしているところで、卯月の後ろから文月もちょこちょことそのお手伝いに向かった。

 

「弥生ちゃんはよく食べるね〜……」

 

 そんな弥生の側にたまたま居合わせた白露は、ココアを飲みながら声をかける。すると弥生は「まだまだ食べられるよ?」と何故か疑問系で小首を傾げて返した。

 

「まぁ、弥生ちゃんだもんね〜。それに私の妹の中にもよく食べてる子がいるしね……」

 

 そう言う白露の視線の先には、

 

「はい!」 「ほい!」

「パクッ」 「パクッ」

「はい!」 「ほい!」

「パクッ」 「パクッ」

「はい!」 「ほい!」

「パクッ」 「パクッ」

 

 パンケーキとどら焼きをまるでわんこそばの如く食べる海風と山風の姿が……。そして相変わらず楽しそうに二人へ食べ物を与えているのは江風と涼風の両名。因みに江風は山風にパンケーキ、涼風は海風にどら焼きを与えている。

 

「あの二人は弥生の永遠の(ライバル)……」

「そっか……これからも二人と仲良くしてね?」

「うん……でも、白露とも仲良くする」

 

 ニコッと曇りない笑顔で弥生にそんなことを言われた白露は、自然と弥生を抱きしめていた。そして大量のお菓子を持って戻ってきた卯月や文月に『弥生(ちゃん)だけズル〜い!』と可愛い抗議をされたので、白露は二人のことも抱きしめて癒やされるのだった。

 

 ーーーーーー

 

 鎮守府にいるみんながそれぞれ休みを満喫する中、

 

「初雪〜、部屋でゲームしてるだけでいいの?」

「モッチーもいいの?」

「吹雪だって部屋(ここ)にいるじゃん」

「ミカもな〜」

 

 駆逐艦寮の吹雪型1号室では吹雪・初雪・三日月・望月の四名がまったりと過ごしている。

 初雪と望月は仕事が休みなので自分たちのハマっているゲームをしており、吹雪と三日月はそんな二人のそばにいるのだ。

 

「だって初雪は目を離したらずっとゲームしてるんだもん」

「モッチーもだよ。だからこうして一緒にいるんだもん」

 

 二人が言うように吹雪たちは初雪たちがゲームのし過ぎにならないよう監視している……と言っても一定時間になるとゲームを止めさせて5分ほどの休憩をさせるのみで、本心では二人を放っておけないお節介なのである。

 

「吹雪も一緒にやる?」

「私は見てるだけでいいかな〜……目が回りそうだし」

「ミカは?」

「わ、私も見てるだけ……でも見てるだけで十分楽しいよ?」

 

 三日月はそう言うと吹雪へ「ね?」と訊ねた。すると吹雪は笑顔で頷きを返す。

 そんなそれぞれの姉たちを見る妹たちは心の中で姉の優しさにお礼を言い、二人を楽しませるように難しいミッションを派手にこなすのであった。

 

 ーーーーーー

 

 その頃、提督はというと地元の漁協が管理している港へ艦娘たちと来てきた。

 提督に休みはない。今回訪れたのも仕事の一つ。

 しかし、

 

「全艦空砲用意……放て!」

 

 今回は漁協が催したゴールデンウイークのイベントに呼ばれたので、堅苦しい仕事ではない(ただ、変なところは見せないようにしている)。

 このイベントでは港にあがった魚介を使った料理の屋台は勿論、実際に船に乗って遊覧したり、マグロの解体ショーがあったり、しらすの袋詰め放題があったりと多くの来客たちを楽しませているが、今はこのように本日のメインイベントとなる『地元の海を守る艦娘たち』というなんちゃって観艦式に臨んでいる。

 

 そのイベントに参加しているのは阿賀野、矢矧、神通、伊勢、日向、アイオワ、ウォースパイト、蒼龍、飛龍、高雄、愛宕、電、叢雲である。

 

 一般の人々が艤装を身に着けた艦娘を間近で見れる貴重なイベントなので、皆は艦娘たちの写真や動画を撮ったり声援を送ったりして大興奮。

 

 このなんちゃって観艦式は漁協の組合長が提督と始めたことで、今回で3回目となる。

 最初は反日マスメディアがこぞって取材という名目で批判をし、大々的に『平和とは程遠い軍の行為』などとマイナス的なイメージの報じ方をした。しかしそれとは裏腹に、自分たちを守ってくれる国防軍や艦娘たちを支持する声が多く、晴れて3回目を開いている状況で今回に至っては何かとうるさい反戦デモ団体が来ていない。

 

 仮に来たとしても周りから白い目で見られるのがオチであり、そもそも自分の命を危険に晒して国や自分たちを守る国防軍や艦娘たちを否定するならば、反戦デモ団体が深海棲艦へお得意の話し合いで『日本は平和なので攻めて来ないてください』と言えばいい……寧ろそうしてこいと日本国中から叩かれたこともあって、反戦デモ団体にとっては居心地の良い場所ではないのだ。

 

 ーー

 

 そんなこんなで艦娘たちの実演が終わると、今度は来てくれた人々との交流会が始まる。

 交流会では艦娘と話をしたり、握手をしたり、一緒に記念撮影をしたり出来るため、このイベントで一番盛り上がる時間だ。ただ艦娘のそばには常に警察官と憲兵がいるので、ここで不届きなことをする者はそうはいない。

 

「あ、あの! 握手してください!」

「えぇ、勿論」

 

「と、とってもかっこよかったです! これからも頑張ってください!」

「はい、頑張ります」

 

「主砲の音がすっごくかっこよかったです!」

「あらそう、ありがとう♪」

 

「瑞雲! 瑞雲! 瑞雲!」

「まぁ、そうなるな……」

 

 矢矧、阿賀野、伊勢、日向は一般の人たちとそれぞれ握手をし、笑顔で言葉を交わす。日向の周りは傍から見れば怪しい宗教団体にも見えるが、気にしないことにする。

 その横では神通が老略男女問わず多くの人々から記念撮影を頼まれててんやわんやし、更にその横では電が色んな人々からお菓子を大量に貰ってはわわとしていた。

 そして、

 

「お姉ちゃんたちおっぱいでっけー!」

「うちの母ちゃんよりでっけー!」

「あ、あはは……」

「もぉ、そんなこと言ってちゃダメだよ〜?」

 

 二航戦や高雄たちは子どもたち(主にエロガキ)に群がられている。しかしみんなは怒ったりはせず、子どもだからと優しくたしなめる程度。

 すると、

 

「ヘーイ、ボーイズ! そんなデリカシーのない行動をしているとガールズからモテないわよ!」

「そうよ、男子たるもの常に女子には礼儀正しく接しないといけないわ」

 

 海外勢代表でイベントに出たアイオワとウォースパイトにそう言われると、子どもたちは蒼龍たちの時とは打って変わって『は〜い!』と素直に返事をした。何故なら二人の大きく開いた胸元が眩しくて、心からモテたいと思ったから……。

 これには蒼龍たちも子どもは正直でまっすぐだなぁ……とつくづく思うのだった。

 

 その一方、

 

「ねね、あの軍服を着た偉い感じの人、何気カッコよくない?」

「太ってるけど〜、ギャップがあっていいよね〜☆」

「分かる〜☆ 命令してる時とかパナかったもん☆」

 

 提督は提督でギャルっぽい女性たちの話題になるくらいモテていた。

 今提督は組合長と共に地元の記者やジャーナリストたちからの質問に応答しているため、いつもより二割増にキリッとしている。

 そんな提督を遠巻きではあるが女性たちは提督の写真を撮ったりしてキャッキャしているところ。

 

「………………」

 

 そんな女性たちを妻である阿賀野は死んだ魚のような目で睨んで見ていた。

 

「阿賀野姉ぇ、顔顔……とても怖い顔してるから」

 

 すかさず矢矧が注意すると、阿賀野はいつもの顔に戻るが「提督さんの魅力がバレちゃう〜」と危機感を顕にした。

 すると叢雲が「バレてもいいんじゃない」と言ってきたので、阿賀野は「どうして?」と訊ねる。

 

「だって、それだけモテてる人があなたの旦那なんでしょ? 鼻が高いじゃない?」

 

 叢雲がそう言うと、阿賀野は途端にニヤァとだらしない顔に早変わり。

 そんなこんなで艦隊のゴールデンウイークは楽しく賑やかに、それでいて穏やかに終わるのだったーー。




せっかくのゴールデンウイークなのでこのような回を書きました♪

読んで頂き本当にありがとうございました!
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