提督夫婦と愉快な鎮守府の日常《完結》   作:室賀小史郎

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※お知らせ
艦これ第二期開始にともない、本家艦これではこれまでの海域をまた攻略し直すことになってますが、本作ではそのことには触れないことにします。
ご了承お願い致します。


暑いから食おう!

 

 8月ももう終わり目前。それでも夏の暑さはまだまだ衰えない。

 鎮守府では近々大本営から大規模作戦が発令されるとあって、資源集めに奔走している。

 そんな彼女たちを労うのと大規模作戦成功祈願で提督はイベント委員会のみんなと準備して、夕方からバーベキューをすることにした。

 

 中庭にバーベキューグリルや丸テーブルをあるだけ並べ、手の空いている艦娘たちに肉や野菜などの買い出しを頼み、あとは夕方になるのを待って入渠も全員済ませた後に提督がバーベキュー大会を宣言して今に至る。

 みんな楽しく笑顔あふれるバーベキュー大会になっているが、中にはわざわざ沖に出て魚を調達した者もいて、その者たちが獲ってきたマグロやらウニやらクルマエビやらと豪華な海の幸も並んでいた。

 そしてバーベキューといえど、今の鎮守府は国際色が強くなったことで各テーブルにお国柄が見えている。

 

 ードイツ艦娘たちが仕切るテーブルー

 

「ドイツのバーベキューは肉のみを焼くのよ!」

「お野菜が食べたい方は他のテーブルに行ってくださいね〜♪」

 

 ビスマルクとプリンツの二人はレーベやマックスと色んなソーセージやらいろんなブロック肉を豪快に焼いていく。

 

「どうしてドイツのバーベキューはお肉しか焼かないの?」

 

 そこへ藤波が最もな疑問を側にいたグラーフにぶつけた。

 

「そうだな……ドイツにはバーベキューで肉以外を焼くという概念がないからだろうな。ホームパーティのバーベキューで野菜などを持ってきてもそれは邪道だと言われるくらいだ」

「とても体に悪そう……」

 

 浜波が苦笑いでそう言うと、その隣にいた夕雲が「外国のお食事はみんなそんな感じよね」と返すと、他の姉妹たちもうんうんと納得する。

 

「まぁ、体云々ではなくその場の雰囲気を楽しむのがバーベキューだからな。それより焼けたから食べろ。色んなソースで食べるのがドイツ流でそのお供はドイツビールだ」

 

 こうしてグラーフに言われるがまま夕雲たちはドイツ流バーベキューを楽しみ、ビスマルクが持ってきたドイツビールを味わうのだった。

 

 ーイタリア艦娘たちが仕切るテーブルー

 

「今お肉を焼いてるから、みんなは前菜とワインを楽しみながら待っててくださいね♪」

「ワインはポーラの秘蔵ワインを全部用意してますから、好きな物を飲んでください♪」

 

 アクィラとザラの言葉にそのテーブルに集まる者たちは笑顔で生ハムやサラミ、チーズといった前菜とワインを楽しんでいる。

 ザラの足元にポーラが泣きべそで転がっているが、こうした姉妹のやり取りももう日常茶飯事だ。

 

「イタリア流のバーベキュー、好き……!」

「塩コショウに加えてローズマリーを加えたシンプルな味付けがいいよね」

 

 若葉と初霜がそう言っている横では初春と子日がワインを飲みながらうんうんと頷いている。

 

「イタリア流のバーベキューはお肉を塊のまま焼いて、レアで食べるのが主流だよ♪」

「そしてデザートもあるからね!」

「今回は私と姉さんが用意したスフォリアテッレよ」

 

 ローマの言葉に初春たちや他の面々も小首を傾げると、

 

「スフォリアテッレってのは貝みたいな形をしたパイ状のドルチェで、セモリナ粉を使った生地の中にリコッタチーズクリームやカスタードクリームを入れた物だよ!」

「今回の中味はヘーゼルナッツチョコクリームにしたわ♪」

 

 リベとイタリアが説明と補足をすると、みんな目をキラキラと輝かせた。

 そしてみんなイタリア流バーベキューを心から堪能させてもらうのだった。

 

 ーイギリス艦娘たちが仕切るテーブルー

 

「イギリスのバーベキューって日本のバーベキューと似てるね」

「我々の国ではベジタリアンの方もいるからな。王道の肉は焼くが、ベジタリアンの方向けの物も焼くのがイギリス式だ」

 

 大和の言葉にアークがそう返すと、

 

「なんか親近感が湧くわね……」

「流石日英同盟ね!」

 

 矢矧の言葉にジャーヴィスがそんなことを言う。

 やはり似ているとなんか嬉しくなるのだろう。

 

「コールスローサラダも美味しい♪」

「串焼きとよく合う♪」

 

 なので吹雪や白雪といった駆逐艦たちにも好評で、みんなで仲良くほのぼのとしたバーベキューを楽しんだ。

 

 ーアメリカ艦娘が仕切るテーブルー

 

「バーベキューといえばアメリカ!」

「この日のためにブリスケットとリブをブロックで用意したわ!」

 

 アイオワとイントレピッドは豪快に牛のリブやブリスケットを焼いていく。

 リブはスペアリブでお馴染みの肋骨周辺の肉で、ブリスケットは主に牛の肩バラ肉のこと。どれもフィレなどに比べて安く手に入るため、アメリカではこういった脂の少ない赤身肉が主流なのだ。

 地域によってメインはことなるが、今アイオワたちが焼いているブリスケットやリブの他にも、ターキーやラムも続々と焼かれている。

 

「それっぽく言えばなんでもかっこよく聞こえるわよね。例えば……食らえ! 必殺『鶏肉100グラム69円!』ってな具合で」

「安っ……て、なんもかっこよくないわ!」

 

 そんなお肉たちを前に不知火と黒潮は妙な漫才じみた会話をしていた。

 

「じゃあ……秘技『バーベキューソース&マヨネーズ最強コンボ!』ってのは?」

 

 そこにサムまでもが参戦し、かなりカオスとなるが黒潮や谷風がちゃんとボケを拾って絶妙なツッコミを返すので、このテーブルは爆笑必至なバーベキューとなっているのだった。

 

 ーフランス艦娘が仕切るテーブルー

 

「フランスのバーベキューといえばメルゲーズとアンドゥイエットよね」

「ですです♪ フランスのバーベキューはみんな大好きな『手抜き料理』ってことですから♪」

 

 リシュリューとテストが仕切るこのテーブルは、フレンチとは思えない手抜きっぷり。

 日本では近年フレンチバーベキューなんて小洒落たバーベキューをする人々もいるが、当のフランス人たちのバーベキューは肉オンリーのまさに手抜きバーベキュー。

付け合せも箸休め程度のトマトやキュウリを使った簡単なサラダに、肉を焼いている脇でホイル焼きにしたジャガイモくらい。

そして飲み物はロゼワインが一般的。

 

「おフランスなのに実際は豪快なんだな」

「でも異文化を知れて楽しいわね♪」

 

 このテーブルにいる松風が意外そうにつぶやいていると朝風は楽しげに言葉を返す。

 

「えっと……メルゲーズとアンドゥトロワ、だっけ?」

「神風姉様、アンドゥイエットですわ」

「見たところソーセージみたいですね」

 

 神風・春風・旗風は聞き慣れないフランスの食材に興味津々。

 

「メルゲーズは辛めのスパイシーなソーセージね。それでアンドゥイエットは豚の内臓で作るソーセージ。こっちはちょっとクセがあるから苦手な人もいるわね」

 

 リシュリューが優しく説明すると、食べ物に物怖じしない朝風が早速一口もらう。

 

「………………」

 

 そんな朝風にテストが「どうですか?」と訊ねると、

 

「私は好き! でも春風と旗風は苦手な部類かも」

 

 ちゃんと姉妹たちにも伝わるように感想を伝えた。

 しかし春風と旗風もせっかくの機会だからと一口だけもらった……が、やはり朝風が言ったようにダメだったらしく、水で流し込んでいたという。

 

 ーロシア艦娘が仕切るテーブルー

 

「ロシアのバーベキューといえばシャシリクだ! 他は酒以外何も要らぬ!」

「野菜とかほしいって人は他のテーブルで食べてね〜」

 

 ガン子たちのテーブルはシャシリクというロシアのバーベキューでは定番の串焼きが振る舞われていた。

 シャシリクは豚肩ロース肉を2cmほどの角切りにし、皿に並べ、玉ねぎスライス、オリーズオイル、白ワイン、粗挽き黒コショウ、ワインビネガーを入れ、よく混ぜて一時間ほど漬け込んでから肉だけを串に刺して遠火でじっくりと焼いた物。

 

「うわぁ、ジューシーで美味しいわ!」

「他のところで焼いたお野菜と食べると、もっと美味しいのです!」

 

 ここでは暁や電がシャシリクの美味しさに頬をほころばせており、

 

「響姉、ビールのお代わりいる?」

「はぐはぐ……ほしいな」

 

 あの響もシャシリクに夢中。いつも通りなのは雷くらい。しかし雷もシャシリクの味に満足しており、既にガン子からレシピを教えてもらっている。

 

「ロシアのバーベキューはシャシリクを焼くことに意味があるからな。バーベキュー=シャシリクだ」

「バーベキューじゃなくてシャシリクパーティって言われてるくらいだしね」

 

 ガン子とタシュケントがロシアのバーベキュー事情を話すと、暁たちだけでなく他の面々も興味深く聞き入り、貴重な他文化を知るテーブルになっていた。

 

 ー提督が仕切るテーブルー

 

「焼き鳥各種出来たぞ〜! 焼きトウモロコシも食い頃だ!」

 

 一方、提督が仕切るテーブルには相変わらず多くの艦娘たちが集まっている。

 ここは日本のバーベキューらしくなんでもござれで、提督お手製料理が堪能出来るからこそ多くの艦娘たちがその味を堪能しにきていた。LOVE勢やガチ勢はただ提督のエプロン姿を見ているだけでご飯が進んでいる模様。

 

「提督、焼くの代わりましょうか? 提督も食べてください」

 

 そこへ能代が交代を申し出るが、提督よりも先に阿賀野が「平気だよ」と返した。

 能代はどうしてと小首を傾げたがーー

 

「はい、提督さん♡ あーん♡」と由良

「もぐもぐ」

 

「提督〜、私からも〜♡ あーん♡」と陸奥

「もぐもぐもぐもぐ」

 

「提督、赤城さんに食べられてしまわない内に♡ あーん♡」と加賀

「もぐもぐもぐもぐもぐもぐ」

 

 ーーみんなから問答無用であーんをされているので、食べながら焼いている状態。

 それに加えてーー

 

「司令官さん、お水どうぞ♡」と羽黒

「ゴクゴク……サンキュー」

 

「提督、汗をお拭きしますね♡」と筑摩

「おぉ、あんがと」

 

「提督、こちらのお肉はお皿に移しますね♡」と榛名

「ありがとうありがとう」

 

 ーー榛名たちによる絶妙なアシストもあり、至れり尽くせりなのである。

 

「ね?」

「……確かにこれなら交代しなくても大丈夫そう」

 

 しかし能代はここで「あれ?」とまた小首を傾げた。

 何故なら阿賀野が全く怒ってないからだ。いつもの阿賀野ならば嫉妬の炎が燃え上がるはずなのに……。

 

 すると提督が「阿賀野〜」と妻を呼んだ。

 そして阿賀野が提督のすぐ側まで行くとーー

 

「は〜い、ちゅ〜っ♡」

「最高!」

 

 ーー夫婦は平然とキスをした。

 これは提督が阿賀野の嫉妬によって自身の脇腹が大破しないようにと考えた愛の補給法……つまり定期的に阿賀野とキスすることで妻を構っているのだ。

 阿賀野もみんなの前でキス出来てまさにwin-winであるため、それを見た能代は『相変わらずねぇ』と苦笑い。

 そんなキスシーンを見せつけられているガチ勢が暴走しないのはーー

 

「はい、皆さん。提督とキスしているコラ写真が欲しい方はこちらにご署名を」

「なので暴動はご法度ですよ〜。暴れたら提督接近禁止命令半年となります〜」

「青葉の特殊加工技術で加工致します!」

 

 ーー高雄と妙高が青葉を味方に引き入れて、鎮圧していたから。因みに提督と阿賀野の了承は得ている。

 

 そんなこんなで艦娘たちはバーベキューを楽しんで、英気を養うのであったーー。




夏といえばバーベキュー!ってことで、バーベキュー回にしました!

読んで頂き本当にありがとうございました!
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