(ぶっちゃけ続くかどうかはわから)ないです。
地獄を越えて
全ての始まりは、あの山荘での出来事だった。
父さんの知り合いのイギリス人数人と一緒に、イギリスの山奥へとちょっとした旅行に出かけたのだ。ただし、当時は両親共に仕事があったので、ちょうど高校生活最後の夏休み中だった僕だけが、この旅行に同行する事になった。
だが、その途中で車がエンスト。仕方なしに歩きで助けを求めに向かった先にあったのが、あの山荘だった。
ノックしてみても、誰も出ない。どうやら、人がいなくなってそんなに時間は経ってないらしい。だから、この山荘の持ち主が帰ってくるまで、しばらく止めてもらおうと考えたわけだ。
正直に言えば、僕はそこに行くのは反対だった。こればっかりは勘でしかなかったが……今思えば、そういう
山荘を一目見た時に感じた一瞬背筋が凍り付くような感覚は、そして妙な違和感は、間違っていなかったのだ。
結果から話すと、それはもう、凄惨なものだった。
イギリス人の同行者は皆殺しにされ、後からやってきた山荘の持ち主の娘と助手、そして彼女に雇われた地元の人らしい二人もまた、
そして僕は――
そしてやってきたのは、中世のイギリス。
そこで僕は、かの有名なアーサー王と円卓の騎士数人、そしてあのクソッタレ……もとい、インチキ魔術師の野郎と出会い、現代に戻る為に冒険を繰り広げる事となる。それはもう頭のおかしくなりそうなぐらいぶっ飛んだ冒険だったが、ここでは割愛しよう。
数多の冒険を繰り広げ、クソッタレな
――心に、大きな
あんな出来事があった事を、誰かに理解してもらいたいとは思わない。いや、ちょっとぐらいは同情して欲しいが、まぁ、少なくとも誰も信じてはくれないだろう。
事実、あれ程までに凄惨な事件が起きた山荘には、そんな事件などまるで無かったかのように、あの夜の出来事が夢か幻であるかのように、その痕跡が綺麗さっぱり消えてなくなっていた。死人は確かにいたというのに。
中世時代での冒険が切っ掛けで歴史が変わったと捉えるならそれまでだ。だが、僕の……いや
何より――山荘での戦いでチェーンソーでぶった切った後、中世で貰った鋼の義手の冷たい感覚が、あれが現実だった事を、暗に教えてくれている。
しかも、あの事件を引き起こしたクソ忌々しいクソッタレな本……『
中身の数ページが無くなっていたのが妙に引っかかるが、まぁ気にする事でもないだろう。
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「この畜生共め! 日本のマナーってのを教えてやらぁ!」
……気にする事では、なかったはずなのに。
今、俺がいるのは日本某県某市の、とあるアパート。
あの事件の後、俺は右手の怪我の事もあり、イギリスの病院に放り込まれてしまった。
流石に、事件の真相、そして中世に行った事は話さなかった。黄色い救急車のお世話にはなりたくなかったからな。
とりあえず俺は、黙秘を貫く事にした。するとどうだ。夜中に誰かの気配がするじゃないか。
最初、俺は
そして入ってきたところを……ドカッ、とぶん殴ったわけだ。そして電気をつけてみれば、普通の生きた人間だったってオチだ。
黒服にグラサンと、如何にもな恰好をしたそいつを見て、「やっちまった」と思った。
だからとりあえず、そいつを廊下まで引きずり、それっぽくもたれかけさせると、ナースコールを押して収容してもらった。
その時は結局、黒服の男が何者か分からなかったし、その後数日して日本に帰ると、そいつの事はサラッと忘れてしまっていた。
だから、高校をなんとか卒業した直後にアパートでひっそりと一人暮らしを始めてすぐ、外に黒服が数人立ってるのを見た瞬間、その時の記憶が甦った。
けど、まぁ、殴っていい連中だとは思ったんだよ。何をしたのかわからんが、鍵をかけてたのに勝手に空いたんだから。つまり不法侵入者だ。殴られたって文句は言えないだろう。
「オラオラオラ!」
「うがっ」
「げっ」
次々と入ってくる黒服を、殴って、蹴って、絞めて、エトセトラ。
なんかこっちを指さしてブツブツ呟いてた奴には、土産で貰ったクリケットのバットを投げつけてやった。
「――そこまでよ」
女の声が聞こえた、ような気がした瞬間、倦怠感が俺を襲った。そこに、黒服達の決死のタックル。
不覚にも取り押さえられてしまった俺を見下すように、銀髪の女が部屋に入ってくる。
「な、なんでェこんにゃろうがぁ……あがが」
抵抗するも、力が入らない。今まで殴られた仕返しと言わんばかりに力を込められ、畳に押し付けられた頬が痛い。
「貴方ね? 例の事件の生き残りというのは」
銀髪の女がそう問いかけてくる。
『例の事件』、『生き残り』……どう考えても、アレの事だろう。
「て、テメェら……俺に、俺に何の用だ!」
はっきり言って、あんなのに巻き込まれるのはもう御免被る。誰が巻き込まれたくて、あんなスプラッタな出来事に巻き込まれるというのだろうか。
「アレか! 本が目的か! 持ってくなら好きにしろ! 俺を巻き込むんじゃねぇ!」
「……全く、喧しいわね。ジャパニーズはもっと物静かだと聞いているのだけれど」
クソッ、せめてこの拘束をどうにかできれば……そう思ったのも束の間。
「……――――」
何事かを呟く声。そして――
「――フォウ」
「……あぁ?」
気付けば、妙ちくりんな小動物に顔を舐められていた。
ああ、そういえば自己紹介が遅れたな。俺は藤丸立香。Sマート××店の家庭用品係をやってる、しがないアルバイターさ。無断でこんな所に来ちまったんだから、多分バイトはクビになってるだろうがな。