戦姫絶唱インフィニット・シンフォギアーthe twin edges of ZABABA― 作:U創世
意外と長い文章となっていますが、楽しめたらなと思っています。それではどうぞ。
???side
風薫る春の季節――
それは、おそらくこの日本という場所に住んでいれば誰でも――特に新しい人生の門出を迎える人達は――感じられるものだと思う。
それは、今日から私達が通う、この『IS学園』においても例外ではないと思う。皆、この日この時を待ちわび、咲き乱れる花のような笑顔を――
「・・・・・・ハァ~・・・。」
――いや、いた。一人だけ例外が。しかも、初日から溜息を吐くぐらいの。まぁ、境遇が境遇だから、仕方ないのだろうけど。それにしたって、あの落ち込みぶりはないと思う。
でも、それも致し方ない事なのかもしれない。だって、彼は世界で初の『男性IS操縦者』となってしまい、女子の花園たるここ『IS学園』に半ば無理やり入れられたようなものなのだから。まぁ、そもそもの話、試験会場を間違えるなんていう、バカみたいなミスをしなければ、こんな事態にはなってないのだけれど。試験会場の地図までもらってたのに、なぜ間違えたのだろうか。ほら、隣のあの『切ちゃん』ですら、呆れてものも言えなくなっちゃってるし。
とはいえ、あのままじゃ満足な喋りや自己紹介もできないだろうし、幼馴染(?)として、助け船ぐらいは出そうかな。ハァ、こういうのはガラじゃないけど、仕方ない。
―――――――――――――――――――
一夏side
(・・・・・・気まずい・・・。)
あ~、どうしてこんな事になっちまったんだ。もしあの時、試験会場を間違えず、ISに触れたりしなければ――、いや、今さらそんな事を言っても仕方ねぇ。・・・とはいえ、この大量の視線はなぁ。
まぁ、『本来女性以外が動かせないISを世界で初めて動かした男』、ってなったら、そりゃ珍しく見えるのか。こう、ツチノコとかみたいな・・・、いや、それは言いすぎか。昔のパンダを初めて来た時、と同じ状況、の方が近い、のか?
IS――正式名称、インフィニット・ストラトス。
10年前、天才科学者篠ノ之束によってもたらされた、宇宙空間での活動を想定して作られたマルチフォーム・スーツ・・・なんだが、現状、今ではスポーツの道具の一つや、軍事兵器としての意味合いが強いものとなってしまっている。前者はともかく、後者はおそらく、その発表後に起こったあの事件、『白騎士事件』の影響だろうと思うが、それは今回は割愛しよう。
で、何でさっき俺、織斑一夏が、自分の事を『本来女性以外が動かせないISを世界で初めて動かした男』といったかというと、このIS、『女性にしか扱えない』という、最大の欠陥を持っているのだ。その為、必然的にそのISを学ぶここ『IS学園』も女子しかいないはずなのだが、何の因果か、俺はたまたま試験会場を間違え、偶然そこにあったISを興味本位で触れて動かしてしまい、ほぼ半ば強制的にここに入学させられたのだった。
まぁ、おかげで絶賛檻の中のパンダ状態を味わってるんだけどな。世の中には『ハーレム万歳!!』、とか言ってる男達がいるかもしれないが、そういう人達は一回同じ経験をしてみたらいいと思う。絶対嫌になるから。
ただまぁ、そういう視線じゃないのもあるにはある・・・三つほど。
一つは、さっきからすげぇバカを見るみたいな呆れた顔で見てくる隣の金髪の自称常識人の幼馴染、『暁切歌』。何で自称、なのかというと、切歌のいう常識っていうのが、大抵常識はずれな事が多いからっていうのと、後はその、切歌は趣味で手紙を書いたりするんだが・・・。これがまた、ひどい誤字だらけで、しかも英語、漢字、ひらがな、カタカナごちゃ混ぜの『読みだけ合わせました!!』みたいな手紙で、初めてもらった時、調がいなかったら本気で落書きか何かと勘違いしてたかもしれねぇ。
ただまぁ、切歌は今こう呆れた感じの表情だが、普段はもっと底抜けに明るかったりする。能天気、とは言わないけど、有り体な言い方をするなら、『ムードメーカー』的な存在なのだ。それに、どっちかというと表情が表に出やすいから、どう思ってるかも分かりやすいしな。
あと、1年前に切歌ともう一人、後ろから感じる視線の主の一人は、向こうの都合でしばらく会えていなかったのだが、ISを動かしてから数日後、千冬姉に頼まれたからって理由で、わざわざ俺の家まで来てくれたりもした。俺としてはとても助かったし、何よりISについて色々と教えてくれたりもしたので、持つべきものは友達だなと思ったりもした。何だかんだ、切歌とそのもう一人は、同年代では一番関わりが長かったから、ほぼ腐れ縁みたいなものでもあるのだ。
・・・が。さっきも言った通り、絶賛切歌は俺を呆れながら、バカを見るみたいな目でずっと見てるのだ。おい切歌、さっきから何でお前そんな人をすげぇバカを見るみたいな顔で見てくるんだよ。俺お前になんかして――
( ..)φカキカキッ
・Λ・) /|チラッ
――ん、何々?「今皿デスけド、何でうご菓子やがったんDeathカ、このトー変撲!!( #`O´)ノ」、だと? 知るか、こっちが聞きたいわ!! つーか、その誤字しまくり変換の癖、まだ治ってなかったのかよ。後、 顔文字がやけにリアルなんだが・・・。というか、お前もアイツと一緒に来てたんだからホント今更――
トントンッ
「って、うわぁっ!?」
な、何だ!? 今何か肩をトントンって・・・っ、まさか!?
「ジーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。」
ヒィィィィィィィィィィッ!? ・・・見てる、めっちゃ見てるよ! まるで穴が開きそうなレベルでこっちを見てるよ!! いやまぁ、誰が見てるかっていうと、さっき言ってたもう一人の腐れ縁なんだけどさ。
俺のもう一人の腐れ縁、『月読調』。
切歌と同じ時期に知り合った、俺の幼馴染の一人でもある。つい先程、切歌の事を自称常識人といったが、正直、常識に関しては調の方がちゃんとしてると思う。まぁ、たまに突飛な行動に出る事もあるが。
それと、調は切歌と違ってあまり感情が表に出ないから、正直最初の頃は、話してて何を考えてるのかわからなかったりもしたが、今ではだいたい、どういう気持ちで話してるかっていうのが分かるようにはなった。切歌は細かな表情まで何となく分かるらしいが、俺はまだそのレベルではないらしい。
後、調は手先が器用で、家庭科の授業とかでよくやる裁縫とかもすげぇうまい。そして、その手先の器用さは、調の趣味のヨーヨーでもよく発揮されていて、見ててすごいかっこいいんだよな。この前来た時に久しぶりに見せてもらったけど、アイツまた上達してたな。今度夏休みに大会があるとか言ってたから、都合が合えば見に行ってみるか。
まぁ、それはともかくとして。調、いつの間に俺の後ろにいたんだ?! さっきまで何の気配も感じなかったぞ!!
「あっ、調!!」
「切ちゃん、おはよう。」
「おはようデース!!」
・・・って、ナチュラルに何か俺いない扱い? 調、お前さっきまで俺見てたよな?
「あっ、後一夏もおはよう。久しぶり。」
「お、おう。久しぶり。」
切り替え速いな、オイ。
「んもー、調。そんなトーヘンボク、放っといていいじゃないデスカ。」
「そういう訳にもいかないよ、切ちゃん。一応、これでも幼馴染なんだし。何より、腐れ縁だし。」
「・・・まぁそうデスケド。」
「それに、このままだと一夏、ガチガチに緊張してまともな自己紹介も出来なさそうだし。なら、幼馴染の私達と話してたら、ある程度緩和されると思うから。」
し、調。お前、そこまで考えて・・・! ありがとう、持つべきものは友達、いや、幼馴染だぜ! よし、今度何か奢ってやることにしよう。何がいいだろう? ヨーヨーも何かと体力使うとか言ってたから、スポーツドリンクとか――
「ジーーー。」
「な、何だ?」
「・・・今、変な事考えてなかった?」
「か、考えてないぜ。」
「・・・ホントに?」
「ホントだって!」
「怪しいデース。」
「切歌、お前もか!」
あ~、もう! どうしてこうなった!! 俺はただ、調に何かお礼に奢ろうって思っただけなのに。それにしてもコイツら、ホント仲いいな。息ぴったりっていうかさ。今発揮しなくてもよかったが。
さて、ここで下手な回答をするとヤバい事になるっていうのは、小さい頃からその被害に遭ってきた俺にはよ~く分かってる。ちょっとでも嘘っぽい素振りをすれば調からガン見の刑、かといって素直に答えたら切歌が騒ぐし。ハァ~、どうしたら――
ガラガラ
「は~い、皆さん。席に着いてください。SHRを始めますね~。」
来た!! 先生ナイスタイミング!! 助かったぜ。
「・・・チッ、時間に助けられましたか。」
「じゃあ、また後でね。」
「あ、あぁ。」
調は俺の返事を聞きながら、自分の席へと戻っていった。ふぅ、これでとりあえず、さっき考えてた事に対する追求はないだろう。調は元々、この手の話でそこまで引きずるタイプじゃないし、切歌だって成長してるだろうから、たぶん追及される事はないだろう。それに気持ち程度かもしれないが、調と切歌と話したおかげで、ちょっとだけ気持ちに余裕が出てきた気がする。
さて、色々考えるのはここまでにしよう。思考を現実に戻すと、学校ではよくある先生の自己紹介をしていた。今さっきいいタイミングで入ってきた先生は、『山田真耶』先生というそうだ。話してる感じ、すごいおしとやかな先生って感じがした。ただ・・・、うん、この際だからはっきり言ってしまおう。デカイ。女性にとって特徴的なあそこが、かなりデカイのだ。切歌や調だって、同年代で見ればそこそこ大きい部類だと思うけど、あんなにデカイのは見た事な――
ガンッ
「イッテェ!?」
「お、織斑くん!? どうしました?!」
「い、いえ。大丈夫です。ちょっと、足の小指が・・・。」
「そ、そうですか。あの、本当に痛かったら言ってくださいね。保健室に連れていきますから。」
「・・・はい、ありがとうございます。」
クッソ、切歌のヤツ。アイツ思いっきり俺の足踏んづけやがったな。いくら隣の席だからって、やっていい事と悪い事があるだろう? そう思いながら踏んづけてきた本人を睨もうと目線を向けると――
「~~~♪」
――窓の方を向きながら、めっちゃいい音程で口笛吹いてやがった。しかもアイツ、前より上手くなってやがる。なんか、地味に腹立つな。
まぁ、こんな事がありはしたが、先生の自己紹介が終わって、いよいよ俺達生徒側の自己紹介が始まった。
―――――――――――――――――――
side切歌
フゥ~、何とか誤魔化せたデス(;´Д`)
それにしても、一夏は相変わらずのドスケベなのデス。うちの先輩達と会った時だって、あんな風にいやらしい目を向けてましたし。今度あんな目向けてたら遠慮なくヤってやるのデス。
・・・と、そんな話をしてたら、手前の人の自己紹介が終わったみたいなので、自己紹介させてもらうのデス!
「初めまして、暁切歌デス!! 『S.O.N.Gコーポレーション』の企業
『『『『ガタッ!!!』』』』
ン、なんか皆がずっこけてますが、どうしたんデs――
{き~り~ちゃん~?}
「っ!?」
っ、い、今の声はまさか・・・!? マズいデス、私の予感が的中していたら――。そう思いながら、急に背中を走った悪寒に対する予感に従って視線を後ろに向けると――
「ジーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。」
「ヒィィッ!?」
お、怒ってるデス。激おこの調が無茶苦茶私をガン見してるデス! 例えるならそう、この前やった古いゲームの英雄さんが言ってた、『真の英雄は目で殺す』っていうぐらいの勢いで見てきてるデス!! ヤ、ヤヤヤヤバイデス!! と、とにかくこの空気を何とかしないと!!
「あ、あと、趣味は手紙を書くことと、ギターを弾く事デス!! い、以上デス!!」
私が自己紹介を終えて座ると、次の子がぎこちなさそうに自己紹介を始めてました。フゥ~、何とか乗り切ったデス・・・。それにしても、何が調の逆鱗に触れたんデスか? そもそも、調が理由なく切れるようなことは多分な――
{切ちゃん、『企業
{あっ・・・。}
し、しまったデス。そういえば昨日、自己紹介の練習みたいなのを一夏の家でやった時に、調に指摘されて直したのに、まさか本番でまた同じことをしてしまうとは・・・。これは大目玉をもらっても仕方ないのデス。
{・・・もしかして忘れてた?}
{・・・ごめんなさいデス。}
{・・・後で突っ込まれてもフォローはするけど、責任は自分でとってね。}
{はい。}
ハァ~、これはもしかしたら放課後、部屋でいろいろ言われるかもデスね。うぅ~、まさかこんな初歩的なミスを私がやってしまうなんて・・・。ハッ、そういえば、私たち以外の代表候補生、このクラスにいませんよね!? いたら割とマジで色々と社会的にヤバ――
{――因みに、箒の近くにいる金髪の子、イギリスの国家代表候補生だから、後で何か言われるかもね。}
{デデデデース!?!?!?!?}
――この後しばらくの間、私が恥ずかしさのあまり悶絶してたのは内緒デス。
―――――――――――――――――――
一夏side
あ~あ、切歌のやつ。昨日調に突っ込まれてたのに、またやっちまったのか。流石の俺でも、あれは擁護できないぞ。あっ、切歌がめっちゃ顔赤くして悶絶し始めた。大丈夫か?
ちなみに、俺は調と切歌から色々とIS関係の事を教えてもらっていたので、『
それと余談だけど、切歌が『企業』ってつけてたのでわかる人もいるかもだが、代表候補生には『企業』の代表候補生と、『国家』の代表候補生の二つのパターンがある。『国家』の場合はその国家に所属していて、『企業』の場合もまた然り。ただ、企業だと多国籍企業とかのパターンもあるから、国家と違って、明確に『どこの国』の所属っていう事にはならず、その『企業』に所属しているっていう扱いになるらしいので、そこまで国籍とかをとやかく言われることはないそうな。まぁ、国家代表候補生の場合も、例外は存在してるらしいが。
さて、それはさておき、今は俺の一つ前の番号の人の自己紹介中だ。この後に俺の自己紹介があると思うと緊張するが、先ほど切歌が(本人には悪いが)派手にミスってくれたおかげもあって、さっきよりもさらに余裕がある。落ち着いて自己紹介すれば、問題はないはずだ。
そう考えていると、ちょうど一つ前の番号の人の自己紹介が終わったみたいだった。さて、いよいよ俺の番だ。
「初めまして、織斑一夏です。初めての男性IS操縦者として、この学園に入学することになりました。好きな事は映画鑑賞と修行、趣味は料理です。みんな、気軽に接してくれると嬉しいので、これからよろしくお願いします。」
よし、何とかやり切った。変な注目を浴びないよう、無難な自己紹介内容にしたから、多分大丈夫なはず・・・!
「ほう、周りが女子だらけでガチガチに緊張して、まともな自己紹介も出来ていないと思っていたのだが。存外ちゃんとやれてるじゃないか、織斑。」
「っ!?」
えっ、今の声は!? 聞き覚えのある、どころか、今まで何度も聞いてきた声がした方を向くと、そこにいたのは――
「――ちふ、っ、織斑先生!」
今俺に声をかけてきたのは、俺の自慢の姉であり、初代ブリュンヒルデという肩書きを持つこのIS学園の教師、織斑千冬。
小さい頃から色々と世話になりっぱなしで、俺にとっては頭の上がらない人でもあるが、世間ではISの世界大会『モンドグロッソ』の初代優勝者にして、2連覇を達成した『世界最強のIS操縦者』として有名だ。今はもう現役を引退して、ここIS学園で教師をやっている。と言っても、引退してすぐの頃はドイツに特別教官として教導に赴いてたらしいが。
まぁ、そんな事があったりするが、俺にとっては自慢の姉であり、超えたい目標の一つでもある。他にも目標はあるんだけど、それはまた、追々話す機会があれば話そうと思う。
にしても、危ねぇ。危うくいつもの調子で『千冬姉』って呼びそうになったぜ。昨日調達から、千冬姉がIS学園で先生になってるって聞いてなかったら、たぶん素で呼んでたわ。・・・アイツらにも、頭が上がらないな。まぁそれはともかく、まだ二文字目までだから、ギリギリセーフだよな。
ポンッ
「言い直した辺りが、まだまだだな。だが、今回は見逃してやる。次はないぞ、織斑。」
そう言って千冬姉は、俺の頭に軽く出席簿を当ててきた。その感じは何だか、幼い子供を叱る母親のような感じもした。実際、千冬姉がめったに見せない優しそうな笑みを浮かべていたので、たぶんあってると思う。ただ、表情に出せばたぶん本気で叩かれるだろうと思い、俺はなるべく、それを表に出さないように努めた。
「・・・フッ。」
な、何だ今の笑い方? ・・・まさか、表情に出てたか? だとしたら、見逃してもらったって事か?
俺の戸惑いも他所に、千冬姉――織斑先生は自己紹介を始めた。
「諸君、私が担任の織斑千冬だ。私の仕事は、若干15歳を16歳までの1年で使い物になるまで育てる事だ。私の言う事はよく聞き、よく理解しろ。出来ない者には出来るまで指導してやる。逆らってもいいが、私の言う事は聞け。・・・いいな?」
うわぁ、聞いてはいたけど、本当に独裁系の指導なんだな。まぁ、
『キャアァァァァァァァァァ!!!』
「!?!?!?」
「デデデデース!?」
「「・・・・・・!?」」
な、何だ今の叫び声!? そんなに叫ぶ事あったか?! というか切歌、そのびっくりした時とか困った時に言う「デデデデース」とか言う奇声、未だにあげてるんだな。まぁ、それでこそ切歌らしい気はするが。
さて、さっきまで悶絶してた切歌だが、流石の皆の叫びにびっくりして恥ずかしさが吹っ飛んだようで、今どういう状況かを理解しようとキョロキョロしていた。そして、千冬姉を見つけて、「あっ、織斑先生! おはようございますデス!!」といった。千冬姉は一応手だけで反応していたが、それよりも、今の状況でまず切歌の声を聴きとれた事にびっくりしたわ。なぜなら、今のクラスの状況、あちこちで叫び声が上がってるんだよ。例えば――
「本物‼本物の千冬様よ‼」
「私、ずっとファンでした‼」
「私、お姉様に憧れて、この学園に入学しました‼山口から‼」
「私は北海道から来ました‼」
「あの千冬様に、ご指導していただけるなんて、嬉しいです‼」
「私、お姉様のためなら死ねます‼」
――とまぁ、こんな感じで絶賛カオス状態で、とてもじゃないが個人の声を聞き取る余裕なんかないだろうっていう状況なんだよ。後、一部突っ込んじゃいけない言葉が聞こえたが、聞かなかったことにしよう。というか、中央当たりに座ってる調がそろそろ辛いんじゃないか? アイツ耳結構いいから、俺達以上に音量が聞こえてだいぶ辛いかもしれねぇ。とはいえこの状況、一人の声で静めるのは――
バンッ!!
「静かにせんかバカ共!!」
――いや、出来たな。さすが千冬姉。というか、今叩いたの、俺の頭の上に置いたあの出席簿だよな? あれ、本当に同じ奴か? 音の出方が明らかに出席簿から出る音じゃなかったと思うんだが。因みに、今の音で流石に叫んでいた生徒達も黙ったようだ。
静まったのを確認してから、千冬姉はため息をついた。
「・・・ハァ、全く毎年毎年、よくもこれだけのバカ者が集まるものだ。それとも何か? 私のクラスだけに、これだけのバカを集中させているのか?」
あ~、これだいぶイライラしてるかもな。というか、これ毎年の恒例なのかよ。まぁ、『世界最強』だなんて肩書を持ってたら、こうもなるのはしょうがないんだろうけど。流石にこれは弟の俺も同情するよ、千冬姉。俺はそう思い、今度家に帰ってきたらマッサージとか愚痴聞きとか、色々やってあげる事にしようと心に決めた。
―――――――――――――――――――
調side
た、助かった・・・。耳栓を咄嗟に付けたからよかったけど、正直危なかった。もしあのまま続いていたらと思うと、ちょっとぞっとする。流石に私や切ちゃんのISの特性上、耳をやられたらどうしようもなくなっちゃうし。
それにしても千冬さん、この前会った時から少しだけ疲れてるのかな? まぁ、実の弟である一夏が学園に入る事になっちゃったから、たぶんそれに関する諸々の手続きやら事情説明やら色々やる事があったのだろうけど。
さて、自己紹介自体はまた再開して、さっき箒とその近くにいたイギリスの代表候補生、確か、『セシリア・オルコット』さん、だっけ? その子の自己紹介が終わった所だった。ちなみに、箒っていうのは一夏や私達の幼馴染で、ISの生みの親である『篠ノ之束』博士の実の妹、『篠ノ之箒』の事である。束博士がISを生み出した関係で、家族である彼女とその両親達は、要人保護プログラムというのによってバラバラにされ、箒も、その関係で6年前に私達の元を離れていってしまっていた。正直、私はこの学園に来ると決まった時に、会える予感はしていた。政府としても、束博士の妹にIS適性などを期待してる部分もあるだろうし、何よりここなら、どの国からの干渉も受け付けないから、保護もしやすい。そういう『日本政府にとって』合理的な理由から、おそらく箒はここに一夏と同じく、半ば強制的に入学を強要されるであろうとは思っていた。まぁ、流石に同じクラスになるとまでは思わなかったけど。
それにしても、この前新聞で見てびっくりしたけど、中学の剣道の大会で箒、優勝したんだね。以前から、『篠ノ之流』と呼ばれる箒のお父さんが教えていた剣道を嗜んでいるのは知っていたけど、箒の場合、何と言うか、ちょっと暴力的な剣が多い気がしてたから、正直大丈夫なのかと心配していた時期もあったし。でも、流石に大会だからそんな事はしてないと思いたいけど。
まぁ、箒に関してはこのくらいにして、もう一人の方、イギリスの代表候補生『セシリア・オルコット』さんについても、ちょっと気になる事がある。さっき自己紹介を聞いていたんだけど、どこか自分を誇示してる節があると思ったし、何より話してる感じからどうも、私の嫌いな『あの思想』に染まってる気がした・・・。後、切ちゃんがミスしてた事をバカにしてる節もあったから、ちょっと注意しておかないといけないかな。おっと、気になる事に関して考えるのはここまでにしておかなきゃ。そろそろ私の自己紹介の番みたいだ。
「初めまして、月読調です。切ちゃん、暁さんと同じく『S.O.N.Gコーポレーション』の『企業
私が自己紹介を終えると、皆拍手を返してくれた。まぁ自己紹介っていったら、これくらい無難なものでいいと思う。正直、切ちゃんみたいなミスを連発したら、うちの会社の沽券に関わるし。・・・後でもし切ちゃんに、この事に対する追及があったら一応フォローはしてあげるつもりだけど・・・。何だろう、ちょっとだけ気が重くなってきた気がする。『あの人』の幼馴染の人の気持ちが、今なら少しだけわかる気がする。
そして、各自の自己紹介はこの後滞りなく終わり、少し休憩時間を挟んで、1時間目の時間へと入っていった。
to be continued...
はい、いかがだったでしょうか。
次回はIS系二次創作小説恒例の『アレら』が起こる・・・かも?
感想等々、お待ちしております。では、また次回!