Fate/origin   作:amber world

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1 1859.12.31

「用意が整いました、若様。」

 

「わかった。ありがとう、爺や。じゃあ行ってくるよ。。」

 

そう言って、白狼(ハクロウ)風雅(フウガ)は、自室の椅子から立ち上がった。決戦の地に赴くために。

 

ーー1年前ーー

 

北海道、深山守人市(みやもとし)と呼ばれる山の一角を切り開いて出来た町の一等地にあるーー当時では珍しい洋館の中に風雅(ふうが)は住んでいた。彼はこの館の持ち主である白狼(白狼)家の次期当主だった。

ある日、風雅は、右手の甲に不思議な痣が現れた。最初は何かの傷かと思っていたが、ハッキリしていくのを見た壮太は、父ーー雅文(まさふみ)に相談した。雅文はその痣を見て、感極まった声で彼に言った。

 

「それは……令呪だ!遂に、我らの一族が認められる日が……!」

 

「ちょっと待って、父さん。……令呪って何なんだよ?」

 

そう質問すると、雅文は次第に落ち着きを取り戻し、息子に説明した。

 

『根源』。それは、全ての魔術師にとっては悲願とされるもの。……万物の始まりにして、終焉であり、この世の全てを司り、全てを創造する神の座である。

そんな、「根源」に到達しようと、60年前、とある魔術によって「根源」へ到達しようとした者達がいた。アインツベルン、マキリ、遠坂。彼等は幾多の伝承に存在する『聖杯』ーーありとあらゆる願望を実現する万能の釜ーーの召喚のために三家の魔術師は、己の秘術を提供し、遂に聖杯を冬木という町に降臨させた。

 

しかし、聖杯はただ一人の人間の願いのみしか汲み取ることは出来なかった。その事がわかると三家は聖杯を力ずくで奪うこととなり、血を血で洗う闘争となった。サーヴァントは暴走し、結果として聖杯は、誰の手にも渡らないまま、消えてしまった。そして、彼等もサーヴァントの暴走を反省し、三度のみの命令権たる『令呪』を組み込み、次に現れる聖杯戦争のために時を待った。そして、今令呪が現れた。

 

「……令呪は聖杯戦争が始まることを聖杯が告げるためにあたえるのだ。そして、お前はその7人のマスターの1人に選ばれた。」

 

一通りの話を聞き、風雅は雅文に問う。

 

「話はわかったよ、父さん。だけど肝心のサーヴァントはどうするんだよ?」

 

聖杯戦争で勝ち残るためには、サーヴァントの質の高さ、そして、強さが必要だった。そのためには、『聖遺物』と呼ばれる英霊の(ゆかり)ある品が必要だった。聖遺物はものによっては、国が保管しているものがある。例えば……

 

「その点に関しては問題は無い。あるルートからにお願いしてな。手に入れてきたのだ。」

 

そう言って、雅文は机の引き出しから、包まれた木箱を取り出し、風雅の目の前の机に置いた。

 

「……これは?」

 

「それが聖遺物だ。決して、他の者に口外せずに、お前が持っておくのだ。そして、それを使いサーヴァントを召喚せよ。クラスで言うならば……剣の英雄『セイバー』を必ず呼べるはずだ。それと、これは一族の悲願がかかっている。家の者にはお前の指示通りに動くように言っておく。」

 

そう言われ、風雅はそっと包みを開け、木箱の蓋をとった。中には、錆びれた金属の破片が入っていた。しかし、錆びていたのは刃ではなく、刀身の内側の一部だけで、残りの部分は、美しい艶を放っていた。

 

「これは……何の欠片なんだ?」

 

「……瀬戸内海に置いて見つかった剣の一部、だそうだ。恐らくは、神剣だ。……失われた剣にして、今は別の剣がその名を引き継いでおる。故にその破片遠坂関わりがあり、召喚に参上するサーヴァントは限られておる。これならば間違いなく勝てるだろう。」

 

「……わかった。これから冬木に向かい、拠点を構える。」

 

「…そうしてくれ。くれぐれも負けるでないぞ。……そうだ。言い忘れていたが、それと冬木に赴いた際にアインツベルン、遠坂、間桐のいずれかの家を訪ね、協力関係を一時的に結べ。なんせ、私も召喚の詠唱までは知らんからな。」

 

そう言われてから剣の破片を元の木箱に戻し、包み直してから風雅は部屋から木箱を持って退出した。

 

「……爺や」

 

廊下に出てそう言うと、後ろに誰かが音もなく現れる。

 

「何でしょうか若様。」

 

「さっきの話は聞いていたな。」

 

「勿論にございます。何なりと命じください。」

 

「なら、さっそく準備に取り掛かる。まずは武器と拠点を用意する。魔石の準備を……」

 

「……若様の仰せのままに。」

 

そう言って、風雅は聖杯戦争に参加する決意を固めた。

 

しかし、なぜ自分なのだろうか。部屋に戻った風雅は、木箱を自身の机の上に置き、近くにあった舶来製のソファーに背から倒れる。聖杯に選ばれる人間には何かしらの願望があるという。だけど、風雅自身にはこれといった願望があるのかと言われると、無いとしか答えることしかできない程に願いには疎かった。必死になって魔術を学んだし、秘伝の魔術も継承している。しかし、それはあくまで家が魔術師の家だから(、、、、、、、、、、)というだけであってそんなに根源への到達を望んでいるかと言われればこれを望んでいる訳でもなかった。そんな自身に聖杯は何の願いを見出したのだろうか。結局、理由はわからず風雅は眠気に襲われてソファーで眠った。外には雲一つもない晴天の中に月が光を放っていた。

 

所離れて冬木ーー深山町(みやまちょう)の和風町並みの中でも一つだけ他の家とは異なる洋風の館が一つだけその違和感をより目立たせていた。

 

「もうじき、聖杯の魔力が満ち、二度目の聖杯戦争が始まるだろう。今回はお前にマスターを務めてもらいたいと思っている。受けてくれるな、鷹信(たかのぶ)。」

 

「以外だな、親父。」

 

そう言って、鷹信と呼ばれた男は蟲を侍らせながら影から這い出でる。

 

「何が以外なのだ。」

 

「親父のことだ俺はてっきり、俺を蟲の魔力のための貯蔵庫として使うものかと思っていたんだが。」

 

そう言って、不敵に笑うが老軀ーー間桐臓硯は顔色を変えずに話を続けた。

 

「……最初はそのつもりだったのだがな。聖杯の敷設に加え、聖杯戦争において受けた傷が癒えておらん。この傷さえなければ此度の聖杯戦争も参加していたのだがな。」

 

臓硯は胸のあたりを軽く撫でた。恐らくはそこに前回の聖杯戦争において受けた傷があるのだろう。鷹信はさっきの噺の続きを言う。

 

「つまり、俺は親父の代理参加しろという訳だ。……前回のことを考えると召喚しても、裏切られて負け、がオチだと思うだが。」

 

そう言って、鷹信は苦笑いした。前回の聖杯戦争において間桐はサーヴァントを召喚し参加した訳だが、最後の最後サーヴァントに裏切られた。故にその結果を反省し、三度の絶対命令権の『令呪』を作り、聖杯戦争に組み込んだ訳だが。

 

「まぁ、そんな顔をするでない。今回は最高の品を用意するつもりだ。最凶で最高のサーヴァントを。」

 

鷹信は少し、間を開けてから落ち着いた口調で言った。臓硯が最凶というには間違いなく最凶の使い魔(サーヴァント)なのだろう。だがクラスがわからない。もし狂戦士(バーサーカー)なんて与えられたらこちらとしてはたまったものではない。だが、あの臓硯の事だからそんなことはないと思い、尋ねてみることにした。

 

「……クラスは?」

 

「安心しろ。間違っても狂戦士ではない。まぁ、下手すれば狂戦士よりも恐ろしいがな。お主に用意したのはライダーのサーヴァントの聖遺物だ。」

 

そう言われて、鷹信は安心する。ライダーなら、セイバー・ランサー・アーチャーの三騎士クラスには劣るが、サーヴァントによっては十分に勝てる要素があった。

 

「……わかった。そこまで言うなら、親父の言う通りに間桐のマスターとして聖杯戦争参加しようじゃないか。……その代わりに条件がある。」

 

「お前が要求とは珍しい。まぁ、聞いてやろうではないか、話してみよ。」

 

臓硯にとって鷹信が要求することなど初めてだった。そして、鷹信は臓硯に要求を突きつける。

 

「……俺の中にいる刻印蟲を解放しろ。参加するにしても、俺は親父の力を借りるつもりは無い。俺は俺自身の力で聖杯を手にする。時間はあるんだ。二日後までに決めてくれ。」

 

「……鷹信ももう子供ではないか。時が流れるのは何とも早いことよ。」

 

そう言って、臓硯は近くにいた蟲を集め、呪文を唱え始める。薄暗いその部屋の中には無数の赤い目が光っていた。鷹信は臓硯の独り言に耳を貸さずに部屋を去った。

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