今日も私は散歩する。
川こえ、山こえ、平原こえ。
今日も私は散歩する。
今日はどこに行こうかな...
今日はフラっと人里へ。だが今日は満月が光る夜に来た。
寝付けなくて抜け出してきたのだ。
いつもなら居酒屋等が賑わう時間だが、今日は満月だ。妖怪が凶暴になったりならなかったりする、それに調子にのった妖怪が人里にやって来たりする。
ルールとしては人里の人間は襲ってはいけないが、脳みそが少なすぎる奴は忘れていたりする。
人里の通りの真ん中を堂々と歩く、人がいないと道の真ん中で眠ることも出来る。
こういう事が出来るから夜の散歩はたまにしたくなる。
静かな里の雰囲気を楽しみながら歩いていると、前の方から何かが走ってくるのが分かった。
よく目を凝らすと、緑の何かが走ってきていた。
道の脇に避けると、一瞬で緑の何かが横を通り過ぎていく。
その何かはモフモフとしており、雄叫びを上げながら走っていた。角は.....生えていたか覚えていない。
道の端っこを歩きながらさっきの緑のモフモフについて考える。
まぁ、考えても分からないのだが気が紛れる。あんなのがもう1度走ってきたら失神してしまうだろう。なんと言うか.....全体的に怖かったからだ。
妖怪の私が怖がってもいいのだろうか...
空を見上げて立ち止まっていると、前方から賑やかな声が聞こえる。
緑のモフモフかと思ったが、複数の声だったので違うのだろう。
賑やかな声はこちらに近寄ってくる。目を凝らすと、凄い数の妖怪がこちらに行進してきていた。
戦争でも始めるのかと思いながら、妖怪達に近寄っていく。緑のモフモフは何か分からないから怖かったが、同じ妖怪に怖がる事はない。
先頭にはベロンベロンに酔っ払ったメガネを掛けた化け狸。その後ろには2列となった妖怪達が。
とりあえず一番前に話を聞いても意味は無さそうなので、前から3番目にいた油すましに話を聞こうと近くによる。
すると、その油すましにはおかしな点があった。尻尾が生えているのだ、1番前にいた狸のような尻尾だ。
私は行進している妖怪達を注意深く観察する。
すると、歩いている妖怪全てに狸の尻尾が生えている。
これは話に聞く百鬼夜行かと思ったが百鬼夜行ではなく、狸の百鬼夜行だったようだ。
私は歩みを止め、なんちゃって百鬼夜行を観察することにした。
九尾、見越し入道、龍やよく分からない鎧武者.....不思議な事に1匹として同じ妖怪がいない。そこはちゃんと百鬼なんだな~と感心した。
最後まで見ていたが、見ているだけで楽しめる出来栄えだった。
私は満足し、家に帰ることにした。今日はいい夢が見れそうだ。
今日の散歩はそれで「ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!」
列の先頭の方で聞き覚えのある雄叫びと衝突音、そして前の方から吹き飛んでくる先頭の狸や妖怪(狸)が飛んできた。
何事かと思い、一番後ろにいた火車の上に乗る。
熱くは無かったが、私の体は汗でびっしょりだった。
前の方ではただ、妖怪(狸)がなす術もなく吹き飛ばされ、真ん中では逃げようとする奴らが衝突している、後ろの奴らは私のように前の方を見ている。
徐々に削れていく列の先頭には、ついさっき見た緑のモフモフがこちらに走ってきていた。
私は命の危機を感じ、火車から飛び降りて一目散に走り出した。もちろん逃げる方向は緑のモフモフのいない方向だ。突っ込んでいくバカはいないだろう。
「てめぇらが騒ぐせいで寝れないだろがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!どうしてくれるんやゴラぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
列から30歩程離れると、その叫びが聞こえてきた。
列の後ろの奴らも危険を感じ、一斉に回れ右して走り出した。
先頭に私、その後ろに妖怪改め狸達、一番後ろには狸達を吹き飛ばしながら走ってくる般若のような緑のモフモフ。これを地獄絵図と言わずしてなんと言う。
必死で走っているうちに家に着いた
化け物はもう追ってきてはいなかった
あの晩
人里ではぐれた狸と
再会することはついになかった
あの化け物の正体は何だったのか
今では知る術もない
緑のモフモフ.....一体誰なんだろうか...