ドラゴンクエストアリア ―忘却の聖少女―   作:朝名霧

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 キャラクターデータ

 アリア(♀)
 Lv:10
 性格:いのちしらず
 職業:剣士
 特性:攻撃力10%UP
 武器:はがねのつるぎ
 防具:はがねのよろい
 装飾:天竜のペンダント
 HP:86
 MP:33
 攻撃力:59(+5)
 守備力:40
 ちから:26
 すばやさ:17
 みのまもり:15
 かしこさ:14
 うんのよさ:9

 シオン(♂)
 Lv:11
 性格:ぬけめがない
 職業:アーチャー
 特性:素早さ20%UP
 武器:ショートボウ 
 防具:みかわしの服
 装飾:なし
 HP:58
 MP:47
 攻撃力:43
 守備力:38
 ちから:18
 すばやさ:28(+5)
 みのまもり:10
 かしこさ:19
 うんのよさ:12
 
 ルイ(♀)
 Lv:1
 性格:いくじなし
 職業:賢者
 特性:消費MP3/4減少
 武器:チェーンクロス
 防具:悟りの衣
 装飾:なし
 HP:10
 MP:5
 攻撃力:31
 守備力:39
 ちから:3
 すばやさ:9
 みのまもり:4
 かしこさ:14
 うんのよさ:10



第十話 不穏なる洗礼の儀 『◆』

 旅の準備を済ませてグランダリオンの入口まで戻って来た3人だが、最初に訪れた入口とは正反対の位置にある場所。つまりは王城の裏手にある裏口に来ていた。

 ルイが誰からも見送られずに出発したいと言い出したのだ。ルイが王家の洞窟へ向けて出発した事を知っているのは、王を初めとする身内の者と、裏口を警備していた数名の兵士のみ。その兵士等も最初こそ驚いたもののルイの事情を察してか、「ご武運を」と敬礼するだけに留まった。

 自分の身勝手な事情だというのに、手厚く送り出してくれる兵士にルイは心から感謝するばかりであった。

 

 アリア「……よし。じゃあ出発だね!」

 

 まずここから北西に向かった先にある『王家の洞窟』へ向かう。

 そしてその奥地に潜んでいるゴーレムと戦い、ゴーレムの欠片を持ち帰る事。

 目的としては比較的楽な部類には入るであろうが、当人のルイは戦闘経験が皆無。その点をどう補うかもアリアにとっては重大な課題でもある。

 そんな思いを張り巡らせながら出発しようとした時であった。

 

 シオン「……今更で悪いんだけどさ。アリアもルイ王女も、本当にこれでいいのかい?」

 

 それは彼にしては、やや遠回しな問い掛けだった。

 まだ裏口と言えど若干は人目につく街の中で、シオンは珍しく懐疑心を露わにしながら。

 

 シオン「アリアの気持ちも分かる。ルイ王女の言い分だって間違っちゃいない。……だけど僕達がやろうとしているのは『本当の旅』なんだ。一歩間違えた判断が死に直結する事だってザラだよ。はい死にました、じゃ済まないんだ。アリアはともかく、王女様は本当にその事を分かっているのかな?」

 ルイ「……なんですのそれ。ならやっぱり大人しく帰ってじっとしてろって言いたいんですの?」

 

 お互いに懸ける想いがあるからこそ、どちらも不快感を隠さなかった。

 思えばシオンは国王に頼まれた時からずっと浮かない顔をしていた。それがいくら一国の主からの依頼であるとはいえ、役目と責任を丸投げされたような状況に相当な不満を抱えていたのだろう。

 

 シオン「違うよ。確かにアリアは王女様を護るとは言った。だけどもそれに甘えるつもりなら僕は反対だ。自分の弱さを誤魔化す言い訳にだってならないし、何より貴方自身の向上には全く繋がらないよ。『自分から立ち向かう』という気持ちが生まれない限りはね」

 

 それは冒険者であれば全くの正論だった。

 だからこそルイは歯ぎしりから伝わる悔しさが募るばかりで、何も言い返せない。

 

 アリア「ま、まあまあ! それは少しずつ慣れて行けばいいじゃない! いきなり無理に戦いに加わったってそれこそ命を粗末にしちゃうし、戦闘の流れを見て知る事だってとても大事なんだよ!」

 

 このままではいけないとアリアは本気で思った。三者三様の気持ちのまま戦闘に臨むのはパーティとしては致命的な弱点になるからだ。

 そして弱点の原因ははっきりしている。

 からこそ、ルイは先に口を開いたのだろう。

 同時に、懐に収めていた『武器』を取り出しながら。

 

 ルイ「……私だってそれなりの覚悟は決めましたの。指を咥えて眺めているつもりなどありませんわ」

 

 それは、鞭の一種である『チェーンクロス』だった。

 鞭の基本的な動かし方や手捌きなど一連の動作を見せると、決して素人の動きではないのが二人にはすぐ分かった。少なく見積もっても三ケ月以上は扱ってきたと踏んでいたが、それは常人の発想であると思い知らされる。

 

 アリア「すごい……! その鞭捌きはいつから覚えたの?」

 ルイ「多分一週間前だったと思いますわ。丁度一年経ちましたし、お父様がいい加減痺れを切らして無理矢理放り出されるかも知れないと思って、密かに練習してましたから」

 シオン「い、一週間!? 流石は軍神とも称されたキーツボルト国王の血を引くだけの事はあるね……」

 ルイ「……でも所詮非力な私の鞭ですし、それに私はいくら多くの呪文を習得しているとは言っても『肝心の魔法力が皆無』ですの。自分でも情けなくなりますけれど、精々メラを二、三発を撃てる程度ですわ。今ではもう『名だけの賢者』って噂されてるのも、とうに知っています……」

 

 控えめに言っても足手まといである事は当然自他共に分かっていた。

 パーティとしても、彼女をサポートしつつ戦わなければいけないのは本来ならば相当の足枷になってしまうからだ。

 むしろルイがいない方が目的のみを果たす上ではスムーズに進められるのは明白であるからこそ、このハンデは戦力的にかなりの痛手となる。

 

 シオン「そうか……。王女様の魔法を見た者が誰もいないって言うのは、そういう意味だったんだね。いくら知識が豊富で呪文を覚えていても唱えられなきゃ意味がない」

 ルイ「……ええ。これでも正式な賢者なのですから殊更恥ずかしくなります……」

 アリア「……心配ないよ。誰でも始めは怖いし、強くなんかないんだから。……大事なのは、前に進もうとする『勇気と心』だよ!」

 シオン「……随分と臭い台詞だけど、まあそうだね。もうここでグチグチ言ってたってしょうがないか」

 

 最初から結果ばかりを求めていてもそれは詮無き事。

 ならば後はひたすらに前進あるのみ。

 

 アリア「じゃあ行こう。――『王家の洞窟』へ!」

 

 

 アリア達はグランダリオンからの道中も特に苦労する事はなく、難なく目的の場所へと到達できた。

 三人が見つめた先には、巨大な竜が口を開けたようにぽっかりと空いた洞穴。

 穴の先には地の底へと誘うように闇が奥まで伸びる道のりが続き、王家の洞窟の入口までやって来たのだと知る。

 外から見る限りは至って普通の洞窟だ。特筆する特徴もなければ、怪しげな罠や仕掛けも見当たらない。

 何はともあれまずは中に入らなければならない。アリアを先頭に後ろにはシオン。ルイを前と後ろから守る陣形を維持しつつ先を進んでいく。

 いかにもモンスターがいそうな洞窟の見た目とは裏腹に、一階にはモンスターどころかスライム一匹すら影も形も見せなかった。

 拍子抜けしたままに、地下二階へと降りる階段を見つけ難なく降りていく。

 

 アリア「王家って名前がついた割には随分と無骨な洞窟なんだね。もっとド派手なイメージかと私思ってた」

 シオン「……いや。無骨って程でもないかもね」

 

 月並みな意見を言うアリアに対し、シオンの反応は若干色が異なっていた。

 

 シオン「一階部分と比べて、地下二階は通路や壁の形が妙に整ってる。それこそ『誰かがこの洞窟に手を加えた』みたいにね」

 ルイ「……そうです。シオンさんの言った通りですわ。私も、城の書物に書かれていたここの詳細を知るまではアリアと同じような考えでしたけれども」

 アリア「……この洞窟の詳細?」

 ルイ「この洞窟は、実は王家と全く無縁の場所である可能性が高いのですの。それは初代からずっと手掛かりが掴めずにいる『とある場所』があるからなのですが……」

 

 ならばその『とある場所』とは何処かとアリアは聞こうとした。

 ――だがその先を聞く事は叶わなかった。

 突如洞窟内に反響する、地の底から唸るようなおどろおどろしい叫び声によって問い掛けは遮られてしまう。

 そして声の主は近い。分かれ道にもなっていた通路の曲がり角を注意深く覗いた先に『それ』はいた。

 

 ――魔物の群れが現れた!――

 

 影そのものが実体のシャドー。泥に魂を吹き込まれた存在のドロヌーバ。極めつけは名うての冒険者でもできる事なら戦いたくない『ばくだんいわ』が数体。

 しかしまだモンスター共はアリア達に気づいていないのが救いだった。

 

 アリア「どうするシオン? 結構相手にしたくないのもいるからここは逃げた方がいいのかな……?」

 シオン「そうだね……できるなら無用な戦闘は避けたいね」

 ルイ「……ま、まさか逃げるんですの?」

 

 そのまさかだった。

 

 シオン「――今だ!」

 

 モンスターの気が最大限に緩んだ隙をついて、三人は一気に通路を駆け抜けた。

 運動自体に慣れていなかったルイにとっては、短距離のダッシュでさえも息が上がる行為だった。だが二人とはぐれる事は今の自分には死に直結する。意地でも離れる訳にはいかないと、必死で食らいつく。

 先を走っていたアリアだが、走る事ですら不慣れであるルイの様子にはすぐに気が付いた。

 心配そうに振り返りながら少しスピードを緩めると、辛そうなルイの速さに合わせながら手を取る。

 モンスターも一時は追いかけて来てはいたが、距離があまりに離れ過ぎていたのか諦めは割と早かった。

 

 ――アリア達は、逃げだした!――

 

 前途を不安とさせる逃亡から始まった洗礼の儀。

 アリア達は果たして、無事にゴーレムの欠片を持ち帰る事はできるのだろうか。

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