自分が思う艦これを形にしたいと思い投稿してみました。
作者はSSも書いたことのない初心者です。色々とお見苦しいとは思いますがどうかよろしくお願い致します。
「俺が提督になるとはなぁ…」
本日着任する秘書艦を待っている男が誰もいない鎮守府の執務室で独り言を漏らす。
「叢雲は分かるのだがもう一人は誰だ?」
履歴所のような書類に目を通していたが一枚だけ写真のあるところに『NO DATA』と書かれていた。
考え込んでいたところにドアをノックする音がした。
「失礼するわ。…ふーん、あんたが司令官ね。私は特型駆逐艦、5番艦の叢雲よ。」
「俺は黒野界斗だ。よろしく頼む。もう一人来るはずだが叢雲は見てないか?」
「私は見てないわ。ていうか秘書艦って普通は一人じゃないの?」
「いや書類が2枚あったから二人来るものと思っていた。」
二人が話していたところにまたもドアをノックする音がした。
「失礼します。あなたが提督?私は軽巡洋艦、大井です。よろしくお願い致しま・・・す・・・ね?え、黒野君?」
「え、教官?何しているのですか!あなた練習艦でしょ!」
「今は軽巡よ黒野君。でもあなたが提督ねぇ…。ま、せいぜい頑張りなさい!」
「はい…」
「何?あなた達知り合いなの?あ、私は叢雲。よろしくお願いしますね大井さん」
「よろしくお願いしますね、叢雲さん。では早速、鎮守府を見て回りましょ」
こうして秘書艦二人と黒野の鎮守府運営が始まった。
1ヶ月後 2013年5月
初の大規模作戦に参加することとなった黒野達。
深海棲艦に初めて姫級と呼ばれるモノを確認した作戦だった。
戦力もまだ十分とは言えず深海棲艦についてもまだ研究途上であったにも関わらず半ば強制的に出撃させられた為に艦隊に甚大な被害を被ってしまった。幸い轟沈艦を出さずに完遂したが黒野の指揮の甘さと勉強不足が浮き彫りになる形となった。
「「司令官(提督)、反省会しましょ」」
土下座させられた黒野の前に二人の秘書艦が仁王立ちで笑っていた。いや顔は笑っているが目の奥が全然笑っていなかった。
「艦隊の練度、装備、地形の確認、何故進撃出来る時に進撃しなかったのかとか色々あるわね。」
叢雲が書類を見て黒野に問う。
「まず艦隊の練度、駆逐艦と軽巡(大井以外)の練度が低すぎるわ。練度が高いのは戦艦と空母ぐらいじゃない。」
「・・・練度が上げやすかったからです。」
黒野が答える。
「装備は何?主砲ガン積みとか命中率を考えてないでしょ、あんた」
叢雲が責める。
「地形の確認…これはまぁ仕様がないわ。次、何故進撃しなかったの?」
大井が問う。
「中破してボロボロだったからです…」
黒野が答える。
「はぁ…あのね、学校で習ったでしょ。自分の状態は艦娘自身がよく知っているの。なのに中破と言っている艦娘に撤退しろなんて。中破はまだギリギリで大丈夫、大破で進撃が危険と教えたよね。」
大井が責める。
「いや、予想以上にボロボロでしたし、なんかきわどかったし…」
後半から声が小さくなる。
「まぁいいわ。今度から気をつけましょ。課題として私達駆逐艦と軽巡の強化、装備の積み方を考えないと。」
「黒野君。あなた成績は10位以内にいつも入っていたのだからバカじゃないでしょ。どうして主砲をガン積みしたの?」
「火力特化なんてロマンかなぁと思いまして…」
「…」
大井が顔を手で覆う。
練習艦時代のことを振り返り、あぁ男ってこういう生き物だったと思いだした。女の自分にはあまり理解出来なかった故に見落としていたのだ。
「あとはこれは予想外だったわ。深海棲艦って自己修復出来るのね。時間が経てば全回復するから短期決戦しないと」
叢雲の指摘に対して。
「資源を貯めて、修復材も貯める。今回は本当に時間が無かったから十分な資材を用意出来なかった。明日から遠征メンバーの練度上げと効率化を進めるよ」
「そうね。私達は遠征から攻撃支援まで多くを指定されているもの。駆逐艦を攻撃力の低い艦と舐めていると痛い目を見ると分かったでしょ」
「はい…申し訳ないです」
「よし、反省会終わり!黒野君、作戦完遂おめでとう。初めてにしては良くやったわ。次からはこの反省点を生かしてね」
大井の締めと共に反省会が終了した。
2014年夏
「あの、提督?次の作戦が、MI作戦というのは、本当でしょうか?」
赤城、加賀が不安そうな顔で黒野に訊ねた。
「あぁそうだ。そうかお前たちは・・・」
黒野は思いだした。史実での赤城達の最後を。
「私達は大丈夫です。もう二度とあの悲劇は繰り返しません」
先ほどの不安そうな顔から覚悟を決めた顔つきへと変わった。
「無理はするな。お前達だけで戦うんじゃない。みんないるんだ。今度は全員で勝利を勝ち取るんだ!」
「「「「はいっ!!」」」」
AL作戦・MI作戦、自分達に似た深海棲艦と戦いトラウマを克服した赤城達はまさしく黒野にとって誇りであった。
2016年春
北太平洋にて深海棲艦の大規模泊地を発見、そして中枢にいる深海棲艦の撃破。同時に敵勢力に永い間制圧されていた同方面友軍泊地への救援奪還作戦を実施。
これまで以上に激戦になるだろう。もしかしたら生きて帰れないかもしれない。五体満足で帰れるだけ奇跡かもしれない。そんな空気が流れていた。
「全員注目してくれ。この戦いは今までよりも激戦になるだろう、だがこれまで生きて作戦を完遂してきた君たちなら戦い抜けると信じている。練度も最高、装備の質も最高、潤沢な資材、あとは君たちの頑張り次第だ。全鎮守府・泊地の艦娘も来てくれる。総力戦だ。ここにいるみんなで戦うわけじゃない。世界中の艦娘と一緒に戦うんだ。全員生きて明日を迎えよう!!」
黒野の励ましに先ほどまで涙目になっていた者、死んだ目をした者全員の顔つきが戦士の顔つきへと変わっていた。
黒野がその場を後にし執務室へと向かった。
「中々やるじゃない」
執務室へと向かう廊下、後ろから声を掛けられた。叢雲だった。
左手の薬指には指輪がはめられていた。最高練度に達しさらにその先の限界を超えた証である。叢雲が改二になったその日に渡したものだ。
「士気は高めないとな。あのままじゃ出た矢先に死ぬようなものだ。それだけは絶対に避けたい。死ぬために行くんじゃない、生きるために行くんだと伝えたかった。みんなに伝わっているかな?」
「大丈夫よ。みんな分かっているわ。あとはあんたが信じて送り出すだけ。」
叢雲の言葉に黒野。
「ありがとう、この戦い絶対に勝つぞ」
再び振り向き執務室へと入っていった。
「成長したわね黒野君。3年前とは大違いだわ。」
「大井さん!」
軽巡から重雷装巡洋艦へと艦種を変え艦隊の主力として黒野を支えてきた。彼女の指にも指輪がはめられていた。
「もう着任したての未熟な彼はいない、立派な提督よ」
「ええ。分かっています。もうあのころとは違う。みんなあの人を信じてついて行きます」
黒野を一人の戦士として、夫として信じている言動であった。
2016年夏 北太平洋戦域
中盤までは順調だった。北太平洋上の戦略要地に広大な飛行場を擁する前線航空基地を開設した。南方ラバウル基地に展開した航空隊は次々と深海棲艦を殲滅、リコリス棲姫を撃破した。しかしこのときからだろうか。海の色がさらに赤みを増し次第にどす黒く変色、何もかも吸い込みそうな色をした海へと変貌していた。
北太平洋深海中枢泊地沖、機動部隊による中枢泊地への進撃、基地航空隊の展開、その全てが順調に思えた。黒野は海の色に気をつけながらも前線で指揮を執っていた。
黒野が乗っている船、艦隊総司令部船は戦場のわずか後方に護衛を付け停船していた。海の色が黒く染まり始めたころ、全ての遠距離通信が使えなくなり艦隊との連絡が取れなくなり急遽総司令部船を発船させたのだ。戦域内であれば辛うじて通信が繋がる程度だ。
「叢雲、中枢棲姫の状態はどうだ?」
「中枢棲姫は半壊状態よ、だけど敵が多すぎてダメージが与えづらいわ」
中枢棲姫を守護していた艦隊は4割を切っていた。基地航空隊により半壊状態にされた敵は沈黙していた。こちらの艦隊も大破艦を交代させながら敵を減らしていたが中枢棲姫に有効打を与えられず時間だけが過ぎていった。他の艦隊には轟沈艦が出ており士気が下がるところもあった。黒野の艦隊は何隻かの大破艦を出した程度ですぐに後方に下げて修理していた。明石考案の大規模修理装置がなければ戦線を維持出来なかったであろう。
数時間後、中枢棲姫に変化が見られた。空に向かって叫び始めたのだ。叫び始めたのと同時に戦域の空までもが変色していった。
赤城、加賀に戦域全体の偵察を頼んだが濃い雲が戦域を覆い始めたために不可能となった。濃い雲はやがて外周を張り付くように形作っていく。
そして中枢棲姫の叫びが戦域の全艦娘に伝える言葉して変化した。
「スベテヲ シズメテヤロウ……。ナンドデモ、ダ…」
突如、中枢棲姫の体が発光。最前線にいた艦娘全員が光に呑み込まれ轟沈した。わずか後方にいた艦娘がその光景を見てパニックを起こす。他鎮守府の提督も状況が呑み込めず茫然とする。一生懸命提督に指示を仰ぐ艦娘。光は徐々に広がり、触れた艦娘は考える間もなく沈んでいく。
「カラダガ…トケテイク……。アカツキノ ヒカリニ……ワタシモ…セカイモ…カエッテイク」
光とともに外周の雲が晴れていく。この機を逃すまいと黒野は撤退の指示を出す。
「全員撤退!!晴れ間が見えているチャンスだ、一気に抜けろ!!」
最後方にいた艦娘が晴れ間を抜けようとした瞬間、前方から至近距離で砲撃に合い艤装ごと体を吹き飛ばされる。晴れ間から出てきたモノ、それは深海棲艦の大規模援軍だった。向こう側が見えず隙間さえ見当たらない。逃げ場がなくなったのだ。
「やっと繋がった!司令官!生きてる!?」
「叢雲!?」
「今からそっちに向かっているわ!あんたは指示を出して頂戴!」
「あ…ああ!そうだな、全員状況報告!!」
「姉さまが!姉さまが!」「日向!前!」「まだこの程度で、この武蔵は…沈まんぞ!」「翔鶴姉ぇ…行かないで」「駄目…かな…皆…ごめんね…」
「駄目だ…みんな混乱している…どうすれば…光がこっちにくる…」
「黒野君!いえ…提督!!しっかりしなさい!」
背後から声がした。そこには大井の姿があった。
「あなたはこの艦隊の提督であり総司令官よ!胸を張りなさい!」
「でももう艦隊のほとんどが全滅、残りは修理中の艦娘のみでどうすれば…」
「とにかく脱出することを考えるの。一点突破で突っ切りましょう!」
「この船は深海棲艦に通用する武装が無いんだ」
「私がこの船の砲になるわ。修理中の艦娘も固定砲台ぐらいにはなるでしょう」
「わ、分かった!すぐに修理中の艦娘を乗せる。あとは叢雲の帰りを待つだけだ!」
「その必要はないわ。すぐに取り掛かって司令官!」
叢雲の声がした。大井と話している間に帰還していた。
「時間が無い!もうそこまで光が来ている。司令官は修理中の子を乗せて!私は時間を稼ぐから!」
叢雲、大井は船にあった補給用の弾薬を使い近くの敵を倒していった。
数分後、艦娘を乗せた司令船は全速力で海域を離脱しようとした。
「ニガサナイ…スベテ…シズメテヤル…!」
中枢棲姫の砲撃が船に直撃する。
他の艦隊が水上打撃部隊で出撃した島に勢いよくぶつかり大破した。
固定砲台となった艦娘は船から放り出され、敵の砲撃に直撃し、息絶える。
黒野、叢雲、大井も放り出され浜辺に打ち付けられた。
黒野の体はまともに動けない。人間よりも頑丈に出来ている艦娘でさえもやっと動ける状態だった。
光と深海棲艦が迫ってくる。
「「あなただけは…守る…」」
二人は黒野を守るように覆いかぶさった。そして光が三人を包む。
「ごめん…みんな…」
黒野の意識はそこで途絶えた。
2040年春、黒野達がいた世界とは別の世界
ハワイ諸島を中心に赤い雨が降り注ぐ。海面はどす黒くなり人間以外の生物は死に絶える。そして海面から現れたモノ、それはこの世界では今まで現れることの無かった深海棲艦だった。