白猫あうあう物語   作:天野菊乃

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連続投稿。秋休み中なので投稿していこうかと。


遺跡探検 その6

「ここが最深部みたいだな」

「ああ」

 

 嫌々歩いているうちに気づけば遺跡最深部までやってきてしまった。どうしよう、今直ぐにでも帰りたいとそう思ってしまう。

 アイリスはカイルが宝箱を開けた時に貰った古びた剣を腰に下げながら後ろを歩いていた。

 軽口を叩き合いながらこの道のりを歩いている。原作とは大きく乖離してしまっているが、この世界ではきっと、これが正史なのだろう。

 

「……開けるぞ」

 

 アキトが目の前にある巨大な扉を───力いっぱい蹴り開けた。

 思わず目を剥くアイリスとカイル。

 

「おい!」

 

 堪らずカイルが叫ぶと、アキトは耳を押さえながら何かを訴えるような視線をカイルに向けた。

 

「……うるさいぞカイル」

「開けたって……限度ってもんがあるだろ!?」

「……!何かいる!」

 

 アキトが剣を引き抜き、瞬時に臨戦態勢に入る。凄まじいほどの殺気。

 

『ぐぁぁぁぁ!!』

 

 禍々しいオーラを放つドラゴンがアイリスたちの目の前に立ち塞がる。

 アイリスは思わず冷や汗を垂らした。第一の島だからなんとかなるだろう、正直そう考えていた。しかし、目の前のこのドラゴンから放たれるこの濃密な殺気は【ラスボス】そんな言葉がよく似合う。

 

「……勝てるの、か?」

 

 と弱気な言葉を呟くカイル。

 

「に、逃げるのよ!」

 

 敵前逃亡を図ろうと扉へ向き直るキャトラだったが、それを許さんと言わんばかりに扉は重く閉ざされてしまった。

 

「……」

 

 そんな中、一人興味深そうに黒の剣を構えるアキト。ならば自分もと杖を構えようとしておや、と思う。先程使用していた時よりもかなり杖が軽いような感じがするのだ。そう、まるで質量そのものを失ったかのようなそんな感覚───。

 恐る恐る杖の方を見やると、真横からアイリスの杖がへし折れていた。

 

「……って、なんで咆哮だけで杖が折れるの!?」

 

 ただの咆哮だけで折れたのだ。なぜ折れた!?思い当たる節は自分が落下した時に下敷きになったくらいしかない。

 要は杖がアイリスの自重に耐えられなかったのだろう。アイリスは手に持った杖でソウルを込めようとするも、悲しいかな、折れた杖ではその力を発揮することは叶わなかった。

 そんなドラゴンはアイリスを嘲笑うように、口に巨大なエネルギーを溜め込む。

 ファイアブレス。広範囲攻撃で焼き払うつもりなのだろう。

 

「……ファイアブレスだ、避けろ!!」

 

 カイルが言い終わるのと同時に、ドラゴンの口から火炎が撒き散らされる。

 アキトは黒の剣を上段に構えてから振り下ろし、剣圧で炎を掻き消した。

 

「「はぁ!?」」

 

 カイルとキャトラはその様子を見て思わず素っ頓狂な声を上げた。アイリスはそんな様子を見て絶句せざるを得なかった。

 アキトは再び剣を上段に構え、剣にソウルを込めていく。

 

「バスター……ブレイド!」

 

 上段一閃。極限まで込めたソウルの刃で、ドラゴンの身体を切り払う。

 これで今回も終わりだ。自身の杖も折れていたことだ、これで終わるのなら───そう思った時だった。

 

『がぁぁ!!』

 

 ドラゴンの前足の鱗がアキトの放ったバスターブレイドを容易く受け止めたのだ。

 アキトは驚愕に目を見開き、技の発動後の硬直で動けずにいた。そんな隙だらけの状態を見逃す筈なく、ドラゴンの放った頭突きがアキトを吹き飛ばした。

 

「……ちっ!」

 

 アキトは剣を地面に突き刺して勢いを殺しながら壁に着地。そのまま立ち上がるも───ふらついて堪らず膝をつく。

 

「あいつなかなか……」

 

 アキトはコンマ一秒目を閉じてから、覚悟を決めたような顔で再度立ち上がった。

 

「───アイリス、カイル。一分でいい。時間を稼いでくれ」

「ア、アキト!?何言ってるの!?」

 

 アイリスが堪らず声を上げるも、カイルは特に何も言わずアキトの顔を見つめながら続けた。

 

「何をする気だ?」

「それは見ればわかる。早く行け!」

 

 一斉に散会。カイルは槍を片手にドラゴンの周囲を駆け回りながら堪らず叫ぶ。

 

「今回の旅はついてねえなぁ!おい!!」

 

 カイルが空中に飛躍し、刺突の雨をドラゴンにお見舞いする。一瞬怯んだ様子を見せるも、直ぐに怯みから回復し、カイルに頭突きを喰らわせる。

 その攻撃がカイルに直撃、壁の方まで吹き飛ばされた。だがここは歴戦の冒険者、しっかりと受け身を取っていたのだろう。所々傷はあるが、動かないような傷ではなかった。

 

「カイルさん!」

「よそ見をするな!!」

「───!」

 

 気づけばドラゴンはアイリスの直ぐそばまでやってきていた。

 折れた杖で魔法を放とうとするが、やはりソウルが上手く安定せず魔力球を生み出すことができない。

 ドラゴンが振り下ろした前足をかろうじて避けて、アイリスは思わず呟いた。

 

「……こういう時になんで武器がないんですか」

 

 そこで、今自分が腰に下げていた古びた剣のことを思い出した。

 自身は魔術師だ。剣士ではない。しかし、今はそんなことを言っている場合ではない。

 一か八かの賭けにはなるが、この錆びた剣で応戦するしかない。アイリスが柄に手を伸ばし、鞘から引き抜いた瞬間。

 アイリスの意識がホワイトアウトした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ここは?」

 

 再度目を覚ますと、そこは白い空間であった。

 

「私は、死んだんですか?」

「違うわ」

 

 自身の呟きに背後から答えられ、思わず背筋を震わせた。恐る恐る振り返ると、そこには微笑を浮かべたアイリスが立っていた。

 

「ア、アアアア、アイリスさま!?」

「あら、今はあなたもアイリスよ?」

「そ、それはそうなんですが───」

 

 そこで、目前に立つアイリスは本当にアイリスなのだろうかと訝しむ。自分が今、その身に纏っている装いが僅かに違うのだ。そう、まるで今着ている自分の装いに装飾品を付け加えたような───目前のアイリスはそんな少女の姿を見て、クスクスと笑う。

 

「ア、アイリス様はなぜここに?」

「私はその剣に込められた私の残留思念」

「残留思念、ですか?」

「今あなたが持っているその剣は、かつて私が使用していたもの。今では錆びついてしまっていて本来の姿を失ってしまっているようだけど」

 

 かつての自分の相棒を懐かしむような視線を向けながらアイリスはその剣の名前を呟く。

 

「名はレクス・ルクース。かつて私が◼️◼️◼️◼️を統べていた時に使用していた剣」

 

 なにを統べていたか。そこの文字だけ、ノイズが掛かり聞き取ることができなかった。

 アイリスは少女にゆっくりと近づき、優しく剣に触れると、錆が剥がれ落ちていき、その姿を徐々に露わにしていく。

 アイリスは少女の掌を優しく包み込むと、申し訳なさそうに呟いた。

 

「ごめんなさい。本来であればその使命は私がやらなければならないのに、あなたに使命を押し付けてしまう形になってしまった」

 

 アイリス様、なにを───そう言おうとした唇にアイリスは人差し指を当てて薄く笑うのみだった。

 

「でも、彼と一緒ならあなたも歩んでいける筈。だから───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!アイリス!!」

 

 カイルが叫ぶ。剣の柄に触れた瞬間、アイリスの動きが止まってしまったからだ。

 萎縮し、動けなくなってしまったのかと思い駆け出そうとするカイルだったが、るとアイリスの姿が消えた。

 

「たぁ!」

 

 裂帛の気迫と共に、銀色の閃光がドラゴンの右腕を吹き飛ばした。

 

『ぐぁぁぁ!!?』

 

 堪らず絶叫を上げるドラゴン。翼をはためかせ、後方へ跳躍。大きく距離を置く。

 しかし、ドラゴンのその行為を嘲笑うかのように光の弾がドラゴンの体に直撃。爆音を鳴らしながら地面に沈む。

 

「アイリス、お前───」

 

 宙からゆっくりと地面に降り立つアイリスにカイルはたまらず声を漏らした。

 

「私も今の自分のことについてはよくわかっていません。ですが───」

 

 アイリスは青い瞳を輝かせて、静かに呟いた。

 

「あのドラゴンを、討ち取りましょう」




アイリスさま……覚醒しませんよ。一時的です。
この作品の根幹は『イチャイチャラbあ、なにするやめ……』


アイリスさまに邪魔されました。
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