「一丁練習試合でもしてみるか」
街のはずれに着いた時、ロカがそう言ってひのきの棒を2本用意してきた。
「相手してやるよ、かかってこい」
ひのきの棒を1本受け取り、打ってかかる。
「やーっ!!」
ぐっと足を踏み込んで出た一撃に、意表をつかれたのか、ロカは吹っ飛んだ。
「思ったより強いな、本気で行くか」
打ち合い、払い合い、そして…数時間が過ぎた。
「はあ、はあ、な、なんとか勝った。おまえ、強いな」
「いやー、ロカとこれだけ戦えるとは…感心ですねえ」
「アバン、お前もやってみろよ、こいつ、ほんと強いぜ」
「いえ、打ち合いはロカとの”試合”で充分でしょう。これから一緒に戦うなら、技術は教えますが…まあ、今日はもう夕暮れですから明日にしましょう」
アバンはロカの持つ棒を取り上げ、宣言した。
「今夜は適当な宿を探して、休む事にしましょう。」
宿屋で食事をし、シャワーを浴びて部屋に戻る。
部屋は自然に男3人と女2人に分かれた。
「アテナ、あなた強いのね。ロカといい勝負だったわよ」
レイラはベッドに腰掛けながら話しかけてきた。
「明日はモンスターが襲ってこなくても、マトリフの力試しとアバン様の特訓が待っているわよ、早く寝ないと」
「そうですね、そうしましょうか」
「ねえ、アテナ…」
「はい?」
「あなた、お姫様じゃないわよね?」
「え?」
出来るだけ平静を装って聞き返す。
「いえね、パプニカのお姫様、行方不明なんですって。あなた、年頃も近いから…」
「え?お姫様が行方不明?」
「ええ、王太后さまが亡くなって、塞ぎこんでいたお姫様がいなくなったんですって」
「…」
レイラは一息ついてから諦めたように言った。
「さ、寝ましょ。明日は朝早いわよ」
そしてその日は就寝した…
次の朝。
朝食を食べ終わって身支度を済ませ、宿屋を後にする。
街のはずれで、まずはマトリフによる力試しが始まった。
「よし、ここでやるか、いくぞ」
大きく息を吸って、マトリフが先手を打つ。
「メラ!」
「ヒャド!」
「ほー、そいじゃ、イオラ」
ドドーン!!
「おい、マトリフ、いきなりそれは、やりすぎじゃねえか?」
とロカがニヤニヤとつっこむが、マトリフは上を見やる。
「おめえ、空も翔べるのかよ」
空中での戦いが繰り広げられる。
「ベギラマ!」
「ベギラマ!」
「へっ、そうかい、じゃ、もいっちょ、イオラ!」
「イオラ!」
「バギマ!」
「バギマ!」
「なかなかやるじゃねえか、おめえ…メラミ!」
「ヒャダルコ!」
「おめえ、やるな」
マトリフも感心していた。
「剣も呪文も使えるなんて…っ…」
マトリフの体のあちこちに切り傷が出来ていて、そこから血が流れる。
「ちょっと手加減すりゃあ、これだもんよ」
アテナはさっと歩み寄って手を当てる。
「ベホマ」
傷が塞がるのを見るや、レイラまでも声をあげた。
「あなた、回復呪文も使えるのね。私より強いかも…」
「へっ、頑張んねえと俺も追い越されるかもな」
マトリフまでこの調子だ。それを見ていたアバンが口を開く。
「アテナ、まだ余裕ありそうですねえ?」
1人納得したように話し続けるアバン。
「そうですか、ロカともマトリフともそれだけ戦えるのでしたら、モンスターと闘いながら特訓するのが手っ取り早いでしょうね。次にモンスターに襲われた時に、ちゃちゃっとやっちゃいましょう」
簡単に言うアバンに、またそれを簡単に言わせたアテナに、3人は呆れた…らしい。