パプニカ城に戻ると、父王がカンカンに怒っていた。
「度々顔を見せろと言ったのに、半年以上も留守にしよって…」
「申し訳ございません」
ひとしきり怒った後、王は深呼吸して向き直った。
「それで?どのようにして過ごしていたのだ?」
「以前城を留守にした時に出逢った者達に会ってきました。そのうちの1人がちょうど出産したので、手伝いをして
おりました」
「そうか、それで、無事に生まれたんだろうな?」
「はい、元気な女の子が誕生致しました」
「そうか、よくやったぞ。ダマラもご苦労だったな」
「それで…」
アテナは荷物を差し出す。
「村の者たちからお礼に、と作物を押し付けられまして…国内の困窮者に配って頂けませんか?」
「うむ…」
王は荷物を受け取ると、それを広げて唸る。
「ずいぶん沢山あるな。よし、これは困窮した者達に配るとしよう。お前には褒美として追加の資金を提供する」
「ありがとうございます」
物資と資金のやり取りを終えた後、王は言った。
「そうだ、サラにも会って行け。おまえがなかなか帰って来ないんで心配していたからな」
「はい、わかりました」
「1週間はゆっくりしていけ。俺もお前の旅の話をもっとじっくり聞きたいしな。もちろん、私的にだぞ」
「はい」
王との話を終えたアテナに、ダマラが声をかけた。
「アテナさま、サラさまの部屋へ参りましょうか」
「ええ」
廊下をゆっくりと歩く。何となく気分が落ち着かず、そわそわしていると、ダマラが口を開いた。
「アテナさま、サラさまにお会いするのもお久しぶりですね。」
「ええ、ほんと久しぶり」
「王様でさえずいぶん心配されていたようですから…カンカンに怒られるかも知れませんね」
「そうかもね」
母の部屋の前に着くと、ダマラがドアを叩いた。
「サラさま、ダマラでございます。アテナさまも一緒です。入ってもよろしいでしょうか?」
「どうぞ」
部屋に入ると、母サラが一目散に駆け寄った。
「アテナ!ずいぶん長く留守にしてくれちゃって!心配したじゃない!」
そう言って抱きついて来た母を、抱きしめる。
「なかなか帰って来れなくてごめんなさい…」
手を握って見つめ合っている間に、ダマラがお茶とお菓子を用意していてくれたので、テーブルについて話をした。
「背が伸びたんじゃない?」
「少し伸びたかも」
「髪もずいぶん、伸びたわね」
「うん、伸ばしっぱなしだからお手入れしたいけど」
お茶を飲みながら、アテナは母に、色々な話をした。
この半年ちょっとで友人に子供が生まれた事や、その時の村人たちの話。そして、1週間程ゆっくりしたら、また旅立つ事も。
サラはサラで、王妃の忙しさなどを思いの丈話した。ほぼ愚痴であった事は、その場に居た者だけの秘密だ。
昼食の時間にも話し込んでいたので、サラの部屋で昼食を取った。
そして、翌日にまた話をする約束をして、アテナは自分の部屋に戻った。
「アテナさま、お疲れじゃありませんか?」
「そうね、お母様とゆっくり話せたのは嬉しかったけど、一気に喋ったから疲れたかも」
「少し横になられたらいかがですか?夕食の時は、またお声がけ致しますよ。」
「ありがとう。お願いね」
そしてベッドに横になると、久しぶりにぐっすりと眠った。
気付くと日は沈みかけていた。
「アテナさま、夕食のお時間ですよ…まだ寝てらっしゃったのですか?やはりお疲れになりましたか?」
「そーねー、この4ヶ月、妊産婦と赤ちゃんのお世話で、割とギチギチな生活だったしねぇ…。ブロキーナにも稽古つけてもらったしね」
「っていうか、アテナさま、お料理やお掃除、どこで覚えたんですか?」
「…」
ちょっと痛いところを突かれたアテナは、一瞬無言になる。
「ダマラは口固い?」
「え?ええ、話すな、と言われれば、他では絶対に話しません」
じっと見つめ合う…が、あまりの気迫にダマラはついに目を逸らした。
「やっぱりだめ。話せない」
ツーンと突き放されたダマラは、苦笑しながらもアテナを食堂へ連れて行った。
パプニカ城では他にも祖母やバダックともゆっくり話をした。
図書室の魔導書も片っ端から読みふけったが、特にこれと言って今から契約したい呪文は見つからなかった。
久しぶりだからと、兵士たちの剣の相手もした。すっかり強くなったアテナに、敵う者はいなかった。
実はこの時兵士たちの訓練を見学しながら、そういえば闘気とは自分にも見える物なのだろうか…と、目を閉じて良く観察もしていた。
結局、1週間の予定が1か月を超える事になり、城の生活を満喫したアテナは、また旅に出た。