僕にヒーローマカデミア 作:Athlon
俺は動きやすい服装に身を包み、コンクリートや最新の防衛設備でびっしり固められた門の前まで来ていた。
そう、今日は雄英高の受験日である。あの俺カツアゲ事件から特に事件は無く、家でゴロゴロしたり前世ぶりにゲームしたりRTA実況見たりしてたら割とすぐに来てしまった。
街へは不良たちが絶対に出迎えてくるのであんま行ってない。まあ悪い事はしなくなったらしいので気にはしてないが。
「どけデク!」
唐突に前から怒声がなった。ちらっと見てみるといかにも不良そうな男。どうやら気弱そうな少年に絡んでいるらしい。
ヒーロー試験なのにこんなのまで受けに来てんだなぁ。
と、そんな風に思ってると、不良少年の絡みはすぐに終わり、気弱そうな少年はぽつんと取り残された。試験受けに来たっていうのに、不幸な奴である。
っと、
「ん」
少年がこけそうになったので、手を伸ばして止める。
「わっ」
「ん?」
あれ、めっちゃ軽い。軽いっていうかふわぁーって浮いていた。俺は一切能力は使っていないのだが。
「あ…」
「…?」
すると少女と目が合った。少年は俺に服をつかまれたままふわふわ浮いて、何が何だか分からないみたいな顔でびくびくしている。
「えへへ、私の個性なんだ。えっと、大丈夫?」
「えっ、えっ…!?」
「ごめんね勝手に。でもころんじゃったら縁起悪いもんね」
少女はうららかな笑顔を浮かべた。ナイスジョブ。俺は少女に親指を立てた。
「いやぁ」
照れた。可愛い。
「緊張しちゃうよね。二人も頑張ってね」
彼女は俺と少年に小さくがっつポーズをして歩いて行った。
俺は少年と目を合わせた。
「…」
「…え…そ…あの…」
ま、俺たちも先を急ぐか。俺は少年に親指を立てて、先を急いだ。
でも今のシーン、なんかデジャヴ感じるんだよなぁ。多分気のせいだけど。
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「PLUS,ULTRA!それでは皆よい受難を!」
プロのヒーロープレゼント・マイクの説明が終わり、ついに試験が始まるようだ。
試験の中身は至極単純である。模擬の街で仮想ヴィランを行動不能にし、ポイントを稼ぐだけである。
そして仮想ヴィランの中には0ポイントヴィランと言って、とても大きなヴィランが現れるらしい。ロボットはロマン。巨大であれば巨大であるほどロマン度は上がる。天元を突破するドリルのロボットとかAIがヒロインな海で浸かった地球を飛び交う彗星のロボットとか。
楽しみである。
「広いな…」
「雄英すげー…」
皆模擬市街ステージの前に集められた俺を含む受験生は、試験が始まる時間をただ待つのみである。
「ふー…できる、私ならできる…多分きっとできる…!」
服がしゃべってる…っていうか透明人間?がしゃべってるのを聞きながら、目を閉じて音の反響やら風の流れやらでここからできる限りのマッピングを済ませていると、ついに試験がスタートした。
とりあえずできるだけ人の少ない所まで早く移動して、見つけ次第仮想ヴィランを倒していく。
仮想ヴィランは人ではなく、機械でできている。ので物理的に倒すよりも電流を操作して中から壊していった方が効率は良い。時間もかからないし、個性あんま見られたくないのよね。
『スッゾオラー!』
早速一体お出ましだ。向こうから横なぎの攻撃を放ってくるが、1ポイント仮想ヴィランなので全然遅い。それを軽く飛び越えて、奴の頭に手を置いて中身を探る。電流を切るためには、この辺をいじくればいいんかな?
『アイエェェ…』
仮想ヴィランはキュイィィィンと機械音を鳴らして完全停止した。
構造は覚えたので、次からは一秒とかからずに電源を落とすことが出来るだろう。後は適当に合格ラインまで倒しまくるだけである。
っと、視界の端でサイドテールの女の子が戦っているのが見えた。前からくる仮想ヴィランを手を大きくして吹っ飛ばしているようだが、一体背後から来ているのに気づいていない様子だ。
俺は地面を蹴ってそいつに飛び乗って、電源を落としてやった。
「わっ…あ、ありがとう!」
可愛い。美少女のお礼ももらえて満足した俺は、サムズアップしてそこから去った。
グッドラック。雄英でまた会おうぜ。
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『終了ー!』
あれ?俺は足を止めて、思わずスピーカーを見上げた。
まだ0ポイントヴィラン見れてないんだけど!?でかいって聞いたからすぐに見れると思ってあっちこっち探し回ってたのに、影もみなかったぞ!?
そんな…マジかよ…こんなのって…!
「あの子、めっちゃがっかりしてんな…ダメだったのか?」
「いや、仮想ヴィラン何体も止めてたぞ…?」
「じゃあなんであんなに落ち込んでんだろう…」
ぼそぼそと声が聞こえるが、俺には関係の無い事だろう。はー、期待してた分気持ちの落ちようは結構でかい。まあ、雄英に入れればいつか見る機会はあるとは思うが…。
はあ、見れなかったものは見れなかったで仕方がないか。
試験はこれで終わり。後は筆記試験を受けて、結果を待つのみである。
そういえば、あの手の大きなサイドテールの女子はあれから合格できたのだろうか。
まあ、いつか会う事もあるだろう。