第一話奇跡のように灰から
「__そうだ___私だ__」
「__化物___だ」
「ふ___当たった____」
「_____いい戦争だったか?____」
轟轟と燃える飛行船の1室に1人の男がいた。
その男、彼の仲間からは博士と呼ばれた男は血走った眼をしながら必死に台に置いてあるパソコンや資料をかき集め次々と鞄に入れる。
「終わりか!?いや!違う、違うとも。技術は理学を糧に突き進む、研究は飛躍する。否!否!研究は飛躍した!
どうすればいい、どうすればいい?何が!何が!まだだ、まだ届かない、何がいけない?何が足りない?
そうだ!いつの日か!いつの日か!世界の全てに一人残らず配給するのだ。奇跡の様な科学を!科学のような奇跡を!」
彼は体の隅から隅までが科学者そのものを体現したかのような男だった
まるで探求の塊のような男だった
探求のためには何人の犠牲をもいとわぬ男だった
しかしその命を冒涜した「ツケ」はいつかやってくる
「どこに行くつもりだい大博士(グランドプロフェッツォル)。」
「!!・・・ウ・・・ウォルター・・・!」
自分が手を加えた「モルモット」が目の前にたたずんでいたのを見て目を見開いた。
「駄目駄目ドク、往生際は良くしなければ。ナチの残党の残党なんて笑い話にもなりゃしない。」
元ヘルシングの執事、ウォルター・C・ドルネーズはほとんどぼろ屑になりそうな躰を台に預けながら博士を、ドクを諭すかのように声を掛ける。
「この・・・ッ、出来損ないめが!」
彼は許せなかった
自分の探求の邪魔をされることが許せなかった
自分の作り上げた科学をモルモットごときに否定されることが許せなかった
「一夜一幕の茶番劇さ、この戦(いく)さも この世の中も。
僕は・・・僕はその中で できるだけ いい役が演じたかっただけさ。
ひっどい末路さ、アーカードの言う通りだ、みっともないよねぇ。」
ウォルターは呟く。
呟きながら立ち上がろと台に手を掛けようとするが腕が根元からどろどろに崩れ指の根元から飛び散った。
彼はこの有様に少なからず不満だったが今ではそんな事は全く気にしていなかった。
なぜなら自分はこの一夜の為だけに存在していたのだから
この一夜の劇を演じるためだけに全てをかけてきたのだから
しかしドクは違った
「そんな欠陥品の貴様が・・・ッ、失敗作の貴様が・・・ッ、私達を笑うと言うのか。
貴様なぞに!私の研究を茶番呼ばわりされてたまるか!少佐殿の大隊を笑われてたまるか!お前なんかに!お前みたいな ものに!
理論は飛躍する!研究は飛躍する!理学は実践を食(は)んで油断無く進む!」
彼はこれからも研究を続けるつもりだった
そしてさらに飛躍するつもりだった
奇跡の様な科学を 科学のような奇跡を
しかし目の前に執事はそれを許しはしなかった
ウォルターは残った手でワイヤーを操りドクの手足を切り裂いた
「グオォォ…アアァァァ!!」
いままで味わったことのない熱と痛みに床にうずくまる
「全部消えるんだ、お前も、この俺も…」
ウォルターは鉄柱にワイヤーを絡ませドクの上に落とす。
「ああ・・・畜生。勝ちたかったなぁ、あいつに。」
煙草を吸いながら残念そうに言う。
「御然(おさ)らばです、お嬢様。」
こうして役者は全員劇場を去り一夜の劇は終わりを告げたのであった。
はずだった・・・・・・
どこで劇場の歯車が狂ったのか分からない・・・
神のいたずらかもしれない
誰かがくれた彼へのチャンスかもしれない