緋弾のアリア 〜Side Shuya〜   作:希望光

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約2ヶ月ぶりの投稿です。構想が全くまとまらなくなって遅れてしまいました。次回の話の投稿も遅くなることが予想されますがご了承ください。


第09弾 バスジャック

 金曜日。

 俺は朝6時半から登校している。

 何故かといえば先日頼んだベレッタM93Rを受け取るためである。

 ちなみに今いるのは、装備科(アムド)の平賀さんの部屋である。

 

「これがご注文のお品物なのだ」

 

 そう言って平賀さんが出したのはマッドシルバーのベレッタM93R。

 

「いつもありがとう。ところで()()()()()、作業場借りても良いかな?」

 

 普段俺は彼女にはお客さんとして接しているため「平賀さん」と呼ぶが、今の俺は同じ学科の者(同僚)として彼女と接しているため『平賀ちゃん』と呼んでいる。

 

「ご自由にどうぞなのだ」

「ありがとう」

 

 作業場を借りた俺は、受け取ったばかりのベレッタM93Rの改造に取り掛かるのであった。

 

 

 

 

 

 ……ようやく終わった。

 結構時間が掛かったな……。

 今は7時半。

 つまり改造に約1時間使ったということになる。

 

 作業が終わった俺は、平賀さんにお礼を言った。

 そしたら作業場の使用料(30分単位での金額)を請求された。

 今は金欠だった為、ツケといてもらった。

 

 これ以上行くと今月破綻してしまいそうだからだ。

 その後、登校時間に遅れないようにする為早めに教室に向かおうと思い装備科の建物を後にしようとしたら、携帯に着信が入った。

 知らない番号からだ。誰だろうかこんな朝早い時間に? 

 

「もしもし?」

『もしもし、シュウヤ?』

 

 電話の主はアリアだった。

 

「どうしたんだ、こんな朝早くに?」

『アンタ今どこにいる?』

「装備科棟だが?」

『そこから車輌科(ロジ)に行ってヘリを用意して。大急ぎで』

「は? どういうことだよそれ?」

 

 いきなりヘリを用意しろと言われて素で質問してしまう。

 

『今は説明している暇は無いわ! 後で話すから、今は私の言ったことを急いでやって!』

 

 彼女の口調から、何かとんでもないことが起きるということが予想できた。

 

「わかった。ヘリでどこに向かえば良い?」

『女子寮の屋上よ。キンジ(アイツ)が来たら連絡するからいつでも出られるように準備して待機してなさい!』

「了解」

 

 そう言った俺は通話を終了して装備科棟から車輌科まで走る。

 雨が降っているがそんなもの今は気にしていられない。

 そのまま、全速力で走った俺は濡れながら車輌科の施設に辿り着く。

 だが、そこに他の生徒の姿は無い。車輌科は基本的に朝は人がいない。

 他の奴にヘリの操縦を任せようと思ったがそうもいかないようだ。

 

 取り敢えず、車輌科担当教師の江戸川先生の元に行ったら、既にアリアが連絡をしてヘリの使用許可を取って居たようだった。

 それを聞いた俺は急いで装備を整える。

 

 インカム付きのヘルメットを被り、簡易仕様の操縦服に着替える。

 この簡易仕様の操縦服は、武偵高の制服の上から着るもので見た目は防弾チョッキのようなものである。

 

 簡易仕様の操縦服に着替えた俺は、自身の携帯武装を再確認してヘリに乗り込む。

 その際、アリアからメールが入っていて、インカムで合わせる周波数が書かれていた。

 

 ヘリに乗り込み操縦席についた俺はインカムを起動する。

 そして指示された周波数に合わせる。

 そして合わせると、僅かなノイズの後、雨の音が聞こえた。そして向こう側にいると思しき人間に語り掛ける。

 

「アリア、聞こえるか?」

『聞こえてるわよ』

「今何が起きてるんだ?」

『事件よ。第3男子寮の前を7時58分に出るバスがジャックされたわ』

「マジかよ。バスの状態は?」

『恐らく爆弾が積まれているはずね』

「爆弾……! かなりマズイなそれ」

『これは、キンジ(アイツ)を狙ったやつと同じ奴が起こした事件ね』

「まさか……()()()()!」

『そうよ』

 

 

 

 

 

 ———武偵殺し———

 武偵を狙った事件を起こしている犯人を示して使われる言葉。

 その手口は乗り物などに爆弾を仕掛けてジャックすること。

 また犯人は、その名の通りに武偵ばかりを狙っている。

 

 

 

 

 

「マズイな……。でも、武偵殺しは捕まったんじゃなかったのか?」

『あれは誤認逮捕よ! 本当の犯人はまだ捕まっていないわ!』

 

 捕まった犯人は冤罪だと? 

 政府は何をやっているんだ! 

 本当の犯人を探すのが行政機関とかの仕事だろうに。

 

「犯人はバスに乗っているのか?」

『乗っていないはずだわ。武偵殺しは基本的に遠隔操作したものを使って事件を起こすわ』

「急がないと大変なことになりそうだ……! キンジ(アイツ)はまだ来ていないのか?」

『まだよ』

「そうか。ちょっと考え事するから、キンジが来たら呼んでくれ」

 

 そう言って一旦回線から離れ、武偵殺しについて考えてみる。

 とりあえず、武偵殺しの狙いはなんだ? 

 奴の起こした事件を思い出してみよう。

 

 最初の事件は確か———バイクジャック。

 次がカージャック。

 で、その次がチャリジャック。

 そして今回のバスジャック。

 

 分からない。

 全く分からない。

 何かのメッセージか? 

 だとしたら誰に向けて? 

 

 ますます謎が深まって行くばかりである。

 そんなことを考えていたらインカムに通信が入った。

 

『キンジが見えたわ。今から来て』

「了解、女子寮の屋上だよな?」

『そうよ、急いで。今の事態は1分1秒を争うわ』

 

 急かされた俺は、ローターを動かしてヘリを急速発進させた———

 

 

 

 

 

 ———女子寮の上空から下を見ると、何やらキンジとアリアが言い争っている。

 取り敢えず、ヘリの高度を下げて着陸することにした。

 着陸してから気づいたがレキもいた。相変わらず陰が薄いというか、隠密というか。

 多分、アリアに呼ばれたのであろう。

 アリアの奴、結構人選が上手いな。

 

 そんな事を思いながらも、3人が乗ったことを確認した俺はヘリを発進させる。そして台場へと向かう。

 通信科(コネクト)からの情報で武偵高行きのバスであるいすゞ・エルガミオが台場に入ったことを伝えられた。

 

 そのため、バスのいる台場へと向かっているのである。台場に向かいながら3人の会話をインカム越しに聞いていた。アリア以外は俺に気づいていない様子だ。そんな事を思っていると、レキが台場上空に到達したあたりでこう言った。

 

『見えました』

 見えたって? この距離でか。冗談だろ。

 まだ、車は小さくしか見えない距離だ。

 今見えているのは台場の建物と湾岸道路とりんかい線だけだ。

 

『何も見えないぞレキ』

 

 キンジも同じことを思ったらしくレキに問いかけている。

 

『ホテル日航の前を右折しているバスです。窓に武偵高の生徒が見えます』

『よ、よく分かるわね。あんた視力いくつよ?』

 

 あの双剣双銃(カドラ)さんでも質問しちゃうレベルなんだな。レキって。

 

『左右ともに6・0です』

 

 ……は? 

 6・0?? 

 お前本当に人間か?? 

 

 確かに狙撃科(スナイプ)でSランクに格付けされてるけど、まさかここまで超人だったとは……。

 本当に危ない奴しか居ないんだな武偵高(ウチ)は……。

 

 そんな事を思いつつも、ヘリをレキの言った辺りへと降下させていくと、本当にそこに武偵高のバスが走っていた。それもかなりの速度で。

 俺は他の車を追い抜かしながら走るバスから離れないようにヘリの速度を上げる。

 

『空中からバスの屋上に移るわよ。あたしはバスの外側をチェックする。キンジは車内で状況を確認、連絡して。レキはヘリでバスを追跡しながら待機』

 

 インカム越しにアリアのテキパキとした指示が聞こえる。

 どうやら俺は、そこにいる超人狙撃手(レキ)を乗せてバスを追跡することになったらしいな。

 

『内側……って。もし中に犯人がいたら人質が危ないぞ』

 

 それには同意見だな。

 

『「武偵殺し」なら、車内には入らないわ』

『そもそも「武偵殺し」じゃないかもしれないだろ!』

 

 確かに『武偵殺し』が犯人の確証も持てない。

 これはキンジの言い分の方が正論だ。

 

『違ったらなんとかしなさいよ。あんたなら、どうにかできるハズだわ』

 

 この返しはあんまりだろ。

 いくら元強襲科(アサルト)のSランク武偵とはいえ、今は探偵科(インケスタ)のEランクだぞ。

 キンジ(こいつ)を含めたチームメンバーの力を過信しすぎじゃないか? 

 

 それに、有無を言わさず現場に一番に乗り込んで短期でカタをつけて制圧しようとする辺り、セオリーも何も無いな。

 ———こんなに凄い武偵なのに何故パートナーが居ないのかがなんとなく理解できた。

 

 

 

 

 

 強襲用のパラシュートを使ってキンジとアリアがバスへと落下していった。それを俺は上から見ていた。

 バスの上に着地した後滑り落ちそうになったキンジをアリアが助けたのを見て俺は冷や冷やしていた。

 

 なんとかバスの中に侵入していたのを見て俺は少し安心したがやはり不安である。

 何か起こる。

 そんな気がしたからである。

 

 キンジ達がバスに入って1、2分後1台のルノー・スポール・スパイダーがバスに近付いてきた。そしてバスに追突した。

 よく見るとそのルノーは無人である。

 それを見て俺はマズイと気付いた。

 

 そして、ルノーがバスの横に並んだ瞬間、バスに大量の銃弾が撃ち込まれた。それを見て俺は確信した。あのルノーが、『武偵殺し』によって遠隔操作されているものだと。

 

『シュウヤさん』

 

 いきなり、レキがインカム越しに語りかけてきた。

 ていうか、気付いていたんだな。俺だって。

 

「どうした」

『レインボーブリッジ付近に先回りしてください』

「先回り? なんでまた?」

『2人が危ない』

「バスに行った2人のことか?」

『はい』

「なんでそう思う?」

『風がわたしに言いました。「あそこに居る2人が危ない」と』

 

 風? なんだそれ。

 レキのいうことはよくわかんない。

 だけど、今のレキの言ったことに俺自身は同意である。

 

「わかった」

 

 荒れた天候の中俺は、ヘリを飛ばして行く。

 目的地であるレインボーブリッジへ———

 

 

 

 

 

 先回りしたつもりだったが、ヘリとバスはほぼ同時にレインボーブリッジに到達した。

 よく見るとブリッジの入り口は封鎖知れている。

 警視庁が手を回したのだろう。

 

 バスは猛スピードでレインボーブリッジに進入していく。

 そして、入ってすぐのところにある急カーブに差し掛かり横転しそうになるがなんとか曲がりきる。

 

 バスがカーブを曲がっている間に俺はヘリのスピードを上げてバスとの差を広げる。

 ある程度の距離を取ったところで、ヘリの高度を下げていく。

 それと同時にレキもヘリのハッチを開け放つ。冷たく強い風と雨粒がヘリの中へと入ってくる。

 

 肩に担いでいたドラグノフを構えたところを見るに、準備万端と言うことだろう。

 俺はバスにいる2人に援護射撃を行うことを伝えるためにインカムを繋いだ。

 その時、インカム越しに2発の銃声が聞こえた。

 

『アリアっ!』

 

 直後、キンジのアリアに呼びかける声が聞こえた。

 ……まさか、やられたのか? 

 ……まただ……また目の前で見ているだけだった……。

 キンジの呼びかけの後に、アリアが転がったであろう音が聞こえてきた。

 

『アリア———アリアああっ!』

 

 聞こえてきたキンジの叫び声が頭の中に響き渡る。

 その声が自分の無力さを思い知らせてくる。

 

『アリア———!』

 

 インカム越しに聞こえた絶叫により我に返った。

 そして、震える手でヘリの高度を調整した俺は、反射的に叫んだ。

 

「———レキッ!!」

 

 そんな俺の叫びと同時に、パァン! 

 レキのドラグノフの音だ。

 さらにもう一度、パァン! 

 その後、爆発音がした。

 恐らくルノーが壊れた音だろう。

 

『———私は一発の銃弾』

 

 インカムから、レキの声が聞こえてきた。

 

『銃弾は人の心を持たない。故に、何も考えない———』

 

 抑揚の無い声でレキが呟く。

 

『———ただ、目的に向かって飛ぶだけ』

 

 これは、レキの集中していることの証だ。

 これはなにかを確実に狙う。

 そう言う場面でよく呟いていた。

 

 そんなセリフを言い終えた直後に、レキは弾を放ったらしい。

 パァン! パァン! パァン! 

 3回分の銃声が、俺の耳に届く。

 

『———私は一発の銃弾———』

 

 この声に続いて、銃声。

 そして僅かに、バスの側で火花が散った後———

 

 

 

 

 

———ドウウウウッ!! 

 

 

 

 

 激しい爆発が起こった。

 レキはこの位置から、バスに搭載された爆弾を撃ち落としたらしい。

 やはり、こいつは普通じゃないなと心の底から思ってしまった。

 そして、爆発物の処理が完了したことを確認した俺はインカムを起動させる。

 

「中空知、聞こえるか?」

『はい、なんでしょう』

 

 

 

 

 

 ———中空知美咲

 2年通信科所属のBランク武偵。

 クラスは俺と同じくC組である。

 通信科の生徒で恐らく誰よりも滑舌が良い。

 

 例えるなら、アナウンサーと同じぐらいすごいと言えば伝わるだろう。

 しかし、彼女は極度のあがり症のため人と会って会話するのが苦手であったりもする。

 

 

 

 

 

衛生科(メディカ)救護科(アンビュラス)、並びに武偵病院に連絡を入れてくれ」

『分かりました。直ちに連絡します』

「頼んだ」

 

 そう言って、回線を閉じ別の回線を開く。

 

「お疲れ」

 

 レキにそう伝える。

 

『はい』

 

 いつもの抑揚のないロボットみたいな喋り方で、返事を返してきた。

 仲間が負傷した。

 それだけでもかなり気分は沈むが、この雨はそれを一層引き立たせるのであった———

 

 

 

 

 

 アリアとキンジが乗った車と俺とレキの乗ったバスは、ほぼ同時に武偵高に到着した。

 到着と同時にアリアは待機していた衛生科の生徒に容態を確認してもらっている。

 

 激しく降る雨の中、騒ぎを聞いたらしい野次馬が集まっているのが見えた。

 遠くから救急車のサイレンも聞こえてくる。

 恐らく、アリアを運ぶためのものであろう。

 ヘリから降りた俺は、アリア達を見送らず車輌科棟へと向かった———




次回の投稿はなるべく今年中にできるように頑張りますのでよろしくお願いします。
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